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2021.01.19

コオロギは美味しい!?食糧危機を救うタンパク源「昆虫食」の魅力を、学生起業家"昆Tuber"が語る

Kindai Picks編集部

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コオロギ

近畿大学農学部3年生の清水和輝さんは、コオロギやハチ、バッタやセミなどの昆虫を食べる「昆虫食」の魅力を発信し続ける学生実業家。彼が開発したコオロギパウダー入りのコーヒーは、クラウドファンディングサイトで多くの支援者を集めました。「昆虫食ってどんな味?」「危険じゃないの?」「メリットはあるの?」これまで100種類以上の昆虫を食べてきた清水さんが、その魅力について語ります。

清水 和輝(しみず かずき)
近畿大学 農学部 環境管理学科3年
1999年奈良県生まれ。2018年近畿大学農学部に入学。昆虫食の魅力を伝えるために、試食イベントや講演を開催しているほか、YouTubeにて“昆Tuber”としての発信を行なっている。2020年6月、クラウドファンディングサイトにてオリジナル製品「コオロギコーヒー」の販売計画を発表し、目標金額を大きく上回る支援を集めた。



イナゴの佃煮のおいしさに感動! 昆虫食に目覚めた高校時代




ーー昆虫食の魅力について、さまざまなところから発信を続けている清水さん。昆虫食に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう?

初めて昆虫を食べたのは高校生の頃で、担任の先生が名古屋のおみやげでイナゴの佃煮をくれたのがきっかけでした。それ以前にテレビ番組で昆虫食について知る機会もあって、何となく興味はあったんですが、実際口にしてみると想像以上においしくて。それからは「あの虫はどんな味だろう?」っていう好奇心が湧いて、いろんな虫を自分で捕まえて食べてみるようになりました。

ーー昆虫食を始めた清水さんに、周囲の方々はどんな反応をされていましたか?

やっぱり驚かれましたし、最初はゲテモノ扱いされましたね(笑)。突然そこらへんにいる虫を採って食べるようになったので、親から「家でちゃんとしたご飯食べさせてないみたいだから、やめて!」って言われたこともあります。「虫を食べる=貧乏」っていうイメージもあったようです。

奈良キャンパスはまわりが森林になっているので、今でも授業の一環として虫を採って食べたりしていますよ。バッタがよく採れるので、下茹でしてから素揚げにして、スナック感覚で食べています。



ーーもともと昆虫好きだったんでしょうか?

実は、どちらかというと苦手だったんです。でも“食べられるモノ”という見方ができるようになってからは、苦手意識はなくなりました。細かく種類分けしたら100種類以上の虫を食べているので、生きている姿を見ても味の想像ができるようになりましたからね(笑)

自分で食べておいしいと感じたものは、友達や家族にふるまってみたりもしました。親にはしっかりと料理したものを出したので、意外とすんなり食べてもらえましたね。友達もみんな「意外といける!」って喜んでくれて、自分だけでなく周囲の人の昆虫食に対する価値観もガラッと変わったと思います。


スズメバチの幼虫は、ぼんじりのような味!? オススメの昆虫と食べ方




ーーこれまで100種類以上の昆虫を口にしたとのことですが、とくにおいしかった昆虫は何でしたか?

いろいろありますが、食材として一番おいしいと感じたのはオオスズメバチですかね。薬剤を使わない方法でスズメバチを駆除している業者さんがいて、幼虫からサナギの間の状態のものを譲っていただいたんですが、脂質も高いしほのかに甘みもあって、めちゃくちゃおいしかったんです。バター醤油で焼いたらぼんじりみたいな味がして感動しましたね! タンパク質も豊富ですし、ぜひ食べてみてほしいです。


タガメエキスを使用したドリンク「タガメサイダー」

あとは、タガメのオスがメスにアピールをするときに出すフェロモンがあるんですけど、それがラフランスの匂いにすごく似てるんですよ。そのフルーティーさを利用した「タガメサイダー」っていうドリンクが販売されているんですが、すごくおいしいです。コップに移して「フルーツサイダーだよ」って嘘をついて人に出しても、絶対バレないと思います(笑)

ーー反対に、食べてみたらあまりおいしくなかった昆虫はありますか?

いろんな虫を採って食べていた時期に、アリジゴクを食べてみたんです。本当はどんな虫でも加熱してからでないと口にしてはいけないんですが、当時はそんなことも知らなかったので、生でそのまま……。すると殺虫剤のような強烈な味がして驚きました。

あとでわかったことですが、アリジゴクってフグの130倍もの強さの毒を持っているんですよ。殺虫剤のような味の正体はそれでした。幸い、人体に影響を及ぼすほどの量ではなかったので無事でしたが、どんな虫でも加熱せずに食べることはオススメしません!

ーー加熱しないで食べると、とんでもないことになりそうですね……。

どんな虫でも、食べる前に茹でたり凍らせたりして、まずはシメなければいけません。調理をするのはそれから。でもこれは何も昆虫食に限った話ではなくて、牛でも豚でも鶏でも同じこと。そのまま食べたら危ないし、おいしくないというのは当たり前だと思います。

あとは、家の中に現れた虫を捕まえて食べることもオススメしません。自然の中で育ったものと違って、どんな菌を持っているかわかりませんから。僕はキャンパスの森林で捕まえたゴキブリも食べたことがありますが、自宅で見かけたときはさすがに駆除していますよ(笑)


コオロギパウダーを混ぜることで、コーヒーがさらに風味豊かに!




ーー初めて昆虫を口にする人には、どんな虫がオススメですか?

コオロギですね。FAO(国際連合食糧農業機関)でも、コオロギは昆虫食の食料として推奨されていますし、最近では無印良品でもコオロギ粉末入りのせんべいが販売されていたりと、昆虫食の中でもメジャーな食材になっています。製品も多いですし、栄養価も高いので、初めての人でもチャレンジしやすいんじゃないかな。

ーーなぜ今、コオロギが食材としてとくに注目を集めているのでしょう?

一番の理由は養殖のしやすさにあると思います。昆虫って、幼虫のときは土の中にいて、成虫になったら羽ばたいて木の上で生活するようになって……というように、成長の過程で住む場所が変化することが多いんですが、コオロギは生涯同じ場所で過ごせるんです。養殖しやすいということは、つまり供給しやすいということなので、食材としてかなり魅力的ですよね。


タイ産のコオロギスナック

ーークラウドファンディングで注目されていた「コオロギコーヒー」も、初めからコオロギを使用するつもりで開発されたのでしょうか?

そうですね。無印良品のコオロギせんべいが発売されたときに、コオロギのパウダーを販売している業者さんがあることを知って、コーヒーに混ぜてみたらどうかなと思ったんです。

ただ、コオロギのパウダーをそのままドリップすると、甲殻類系のダシの味がするんです。だから入れすぎるとダシの味になってしまう。でもすごく香りがいいので、その風味を生かしつつ、かつコーヒーとしておいしく飲んでもらえる配合を見つけるのがなかなか大変でした。

ーー豆との相性を考えるのも大変そうですね。

いろいろとテイスティングを重ねた末に、今回はブラジル産のサントスという豆を採用しています。酸味は少しあるんですが、苦みやフルーティーさは控えめで、いい意味で風味が少ないことが特徴です。コオロギパウダーが加わることで、まろやかで飲みやすいコーヒーになりました。ブレンドは、大阪・天満にある「SANWA COFFEE WORKS 」でしていただいています。


2020年12月、奈良キャンパスにオープンした多目的ホール「つながる館」オープニングイベントにて、コオロギコーヒーをふるまう清水さん

ーー実際に飲んだ方からは、どんな反応がありましたか?

昆虫食初体験の人がほとんどだったんですが、「普通のおいしいコーヒーじゃん!」という感想が多かったですね。初めての人にはコオロギの風味までは感じていただけないかもしれませんが、最初はそれでいいと思っています。

多分、昆虫食を敬遠している人には「何となくまずそう」っていうイメージがあるんです。だから、まずは「こうやってコーヒーに混ぜたりしても、変な味しないでしょ? おいしいでしょ?」というのをわかってもらえたらと思っています。もちろん、コオロギの味を知っている人には、しっかり香りや風味を楽しんでもらえるようにも仕上がっていますよ!


「コオロギブレンドコーヒー」の他に、昆虫コーヒーシリーズとして新たに「バッタブレンドコーヒー」や「カイコブレンドコーヒー」も発売開始した。


昆虫食はゲテモノじゃない! 栄養豊富でおいしいサステナブルな食材




ーー昆虫食が広まることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

昆虫食に興味を持った当初は知らなかったんですが、環境管理学科に入ってから、昆虫食が地球の環境問題の解決に貢献できるかもしれないということを知りました。牛や豚などの家畜を育てることにより、膨大な土地を消費してしまうというのは現代では世界的な問題になっていますが、昆虫の養殖にはそこまでの土地は必要ないですし、必要な餌や水も家畜と比べればとても少ないんです。それでいて、食肉と同等のタンパク質が得られるので、とてもサステナブルな食材なんですよね。

牛肉、豚肉、鶏肉とコオロギ可食部のタンパク質の割合


出典:文部科学省「食品成分データベース」(牛もも肉・豚もも肉・鶏むね肉の数値)/日本食品分析センターにて分析(コオロギの数値)

ーー昆虫食が食肉の代替品となるのでしょうか?

僕も含め、昆虫食を広めたいという人は誰も「肉を食べるのをやめて、昆虫に置き換えればいい」とは思っていません。むしろ、これから先もずっと肉を食べ続けるために、昆虫食を取り入れてほしいと思っているんです。

たとえば、今10割肉食という人が、2割昆虫食に変えてみるだけでも、環境問題の解決に大きく貢献できるはず。そうすれば、肉が一切食べられなくなる未来は阻止できるかもしれません。

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ーーコストはどうなのでしょう? 肉を食べるよりも食費が安くなる、ということはありますか?

そこはまだ難しいんです。昆虫食はまだ需要が少ないので食肉と比べたら供給も少なくて、養殖業者や加工業者も多くありません。なので、生産にコストがかかってしまうんですよね。もっと昆虫食がメジャーになれば、販売業者も増えていって、今よりもっと安価に手に入るようになると思います。



ーー人々の昆虫食に対する価値観が変われば、市場も変化していくということですね。

最近では昆虫食の製品も増えてきて、以前より知名度が増しているとは思います。でも、YouTubeの昆虫食紹介動画でもそうですけど、「ゲテモノ食べてみた!」みたいなエンタメとして消化されがちなんですよね。それはそれでおもしろいんですが、そのままじゃ普通に食卓に並ぶようにはならないんじゃないかなと思っていて。

昆虫食って言われると“気持ち悪いモノ”っていうイメージがあるかもしれないんですが、実際にはシャコとかホヤとか、魚貝類系にもグロテスクなものってたくさんあるじゃないですか(笑)。でも実際食べてみるとおいしいから、みんなゲテモノ扱いはしないですよね。そんなふうに、昆虫も実際に食べてみたら価値観が変わると思うんです。だから「まずは偏見を取り払って食べてみてほしい」という一心で発信を続けています。


価値観の柔軟な若い世代にもっとアプローチしていきたい



奈良の県営馬見丘陵公園で開催された虫取りイベントで、昆虫食に挑戦する子どもたち。

ーー今後はどのような活動をしていきたいですか?

イベントなどを通して、価値観が柔軟な若い世代に対してもっとアプローチしていきたいと思っています。子どもってまだそんなに「虫=気持ち悪いモノ」というイメージが定着していないので、先入観なく昆虫食にもチャレンジしてくれるんです。それで子どもたちが昆虫食に興味を持ったら、親世代も関心を持ってくれるはず。子どもの興味のあるものって、親も気になりますからね。

ーー現在清水さんは3回生ですが、在学中に取り組みたいことはありますか?

一応もう卒論のテーマが決まっていて、肉だけ・魚だけ・果物だけなど、与える餌によって雑食の昆虫の味はどのように変化するのかを研究したいと思っています。食べているものによって昆虫の味って違って、たとえば同じ幼虫でも、土の中にいるものよりも朽木にいるもののほうがおいしいんですよ。樹液を吸っているセミやカブトムシなどは、木独特の爽やかな風味がしますし。そういった餌の違いによってもっとおいしい昆虫食はつくれるのかというのを、卒業までに研究してみるつもりです。

ーーありがとうございました!



昆虫食を珍しいものとしてではなく、1つの自然な食材としてアピールし続ける清水さん。紹介してくれる昆虫食の数々は本当においしそうで、「食べてみたい!」と思わせられるものばかりでした。昆虫を使ったメニューが日本の食卓に並ぶ日も、そう遠くはないかもしれません。


取材・文:藤間紗花
撮影:西島本元
編集:人間編集部

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