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2020.06.26

学生起業家が描くLGBTQの未来。マイノリティも生きやすい社会とは?

Kindai Picks編集部

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テレビや新聞などで耳にする機会も多くなった「LGBTQ」という言葉。さまざまな自治体でパートナーシップ制度が制定されるなど、セクシャルマイノリティへの認知度は日々高まっているものの、まだまだ世間には当事者が抱く課題が多く存在しています。その課題を解決すべく、近畿大学の学生2人が「LGBTQ当事者がありのままで過ごせる社会へ」という理念のもと、株式会社マイユニを立ち上げました。どんな活動をしているのか、理想の実現のため、どんな目標を立てているのか。当事者としての思いを聞くため、インタビューを行いました。

この取材は2020年3月27日に行いました。


こんにちは!
近畿大学総合社会学部社会マスメディア系専攻3年生の岡島彩乃です。

みなさんはLGBTQという言葉をご存知でしょうか?詳しく知らなくても、聞いたことがあるという方は多いかもしれません。LGBTQは性自認・性的指向を表す単語の頭文字で、それぞれ以下の意味があります。



2018年に電通ダイバーシティ・ラボが行った調査では、Qを除くLGBT当事者は全体の8.9%という結果となりました。つまり日本人口の約11人に1人であり、日本にいる左利きの人の数と大差ありません。中学・高校でいえば、40人のクラスに3〜4人ほどいるということ。

私自身のセクシャリティはレズビアンで、当事者同士の交流の場が少ないことに課題を感じていました。何か自分にできることがないかと思っていたときに、同じ当事者である近大生の友人に「一緒にLGBTQの方向けの新しいイベントを作らないか」と誘われ、株式会社マイユニに参画し、一緒に活動することになりました。

株式会社マイユニの活動を通じてLGBTQの実情を一人でも多くの人に伝えたいと思い、代表の2人にインタビューを行いました。


起業のきっかけは、当事者の出会い方への課題感



株式会社マイユニ共同代表の江藤天音(えとう あまね)さん(左)と、濱本智義(はまもと ともよし)さん(右)。

岡島彩乃

まず自己紹介をお願いします。



江藤天音

近畿大学理工学部生命科学科2年生の江藤天音(えとう あまね)です。株式会社マイユニのCEOを務めております。セクシャリティはトランスジェンダーです。戸籍は女性ですが、現在、戸籍を男性に変更するための治療を行なっています。



濱本智義

近畿大学経営学部経営学科1年生の濱本智明(はまもと ともあき)です。同じくCEOを務めています。セクシャリティはバイセクシャルです。男性を好きになったり、女性を好きになったりします。セクシャリティは流動的なものだと思っています。



岡島彩乃

株式会社マイユニを立ち上げるきっかけって何だったんですか?



濱本智義

小さな交流会が始まりです。僕自身、かねてより当事者同士の出会い方に課題感を抱いていました。当事者であることをオープンにしている人が少ないので、学校や職場などで友達を作ることが難しいんです。Twitterや出会い系アプリなどのSNSを通じて知り合うことが多いのですが、ネット上では表面的なことしか分からなくて、実際に会ってみると思っていた人と全く違う人が来たり……。相手が年齢を偽っている場合もあって、身の危険を感じることもありました。



岡島彩乃

そうですよね。私も同じように不安を感じたことがあります。



濱本智義

だからこそ、安心して交流できるリアルの場所を作りたいと思いました。そこで、以前から大学内で交流があった同じく当事者の江藤さんと、非当事者ながらアライの島村さん(大学卒業と同時に他社に就職)に声をかけ、ゲイ・バイセクシャルの男性向けのイベント事業を始めました。


※アライ:セクシャルマイノリティを理解し支援するという考え方や、そうした立場の人々を指す。

江藤天音

私自身もトランスジェンダーとして、当事者の出会い方に疑問を持っていたので一緒にイベントに取り組むようになりました。イベントを何度も開催していくうちに、ゲイやバイセクシャルの男性に限らず、LGBTQ全体の課題を解決したいと思うようになったんです。そこで「LGBTQ当事者がありのままで過ごせる社会へ」という理念を掲げて、株式会社マイユニを立ち上げました。



岡島彩乃

私も身近に当事者がほとんどおらず、中高生の頃はひとりぼっちだと思うことがよくありました。当事者同士が出会える場所があるだけで安心できますよね。株式会社マイユニという名前の由来はなんですか?





株式会社マイユニの企業ロゴ。

江藤天音

マイユニの「マイ」には「マイノリティ」と「my(私の)」という2つの意味が込められています。「ユニ」はユニコーンの略で、ツノがそれぞれの人が持つ個性を表しています。そしてユニコーンの虹色のイメージを、LGBTQのシンボルである6色のレインボーフラッグと合わせています。



岡島彩乃

「マイユニ」という名前にはLGBTQへの思いがたくさん込められているんですね。では、株式会社マイユニでは、具体的にどんな活動をされているんですか?



濱本智義

現在は、先ほど述べたゲイ・バイセクシャルの男性向けの交流イベント「GB(ジービー)」と、レズビアン・バイセクシャルの女性向けの交流イベント「Fika(フィーカ)」を運営しています。イベント内でのゲーム企画や、Twitterでの参加型企画を通じて友人・恋人作りのサポートをしています。




カミングアウトという大きな壁




岡島彩乃

当事者であることで、今まで辛かったことはありますか?



江藤天音

一番辛かったのが親へのカミングアウトです。トランスジェンダーであることをカミングアウトした時に、「普通に生きてほしかった」と言われました。当事者であることを受け入れてもらえなかったのがとても辛かったです。私の中での「普通」や「幸せ」が親の考えるものとは違うんだと思い知りました。


※カミングアウト: LGBTQ当事者であることを告白すること。

岡島彩乃

私も当事者の方から、カミングアウトについての悩みをよく聞きます。ただ、その悩みを相談できる人がいるだけで心の救いになると思います。



江藤天音

イベントを実施していく中で、お悩み相談も受け付けています。また、LGBTQに関する講演会を通じて、カミングアウトや、マイノリティへの差別となる考えや言動について伝えていきたいです。非当事者が気づいていないだけで、性差別になり得ることって結構日常の中にあるんですよね。



岡島彩乃

イベントでは当事者へのサポートを、講演会では非当事者への理解促進を。片方だけでなく、双方へのアプローチが大切ですよね。



濱本智義

そうなんです。後々は、LGBTQを社会が「当たり前なものとして受け入れる」ようになっていくのが理想です。



江藤天音

あとは、アルバイトで男女別の制服がある場合は、その都度カミングアウトしないといけないので辛く感じます。また、男女どちらのトイレに入ればいいのかと困ってしまうとか……。



岡島彩乃

日常生活にも支障があるということですね。



濱本智義

僕もカミングアウトでの悩みがあります。先日父と話していた時に、初めて結婚の話をされたんです。「孫の顔が見たい」と言われました。今までは、親にカミングアウトをしなくてもいいやと目を背けていたのですが、その時初めて親の願望を知り、当事者の自分はそれを裏切ってしまうのではないかと思いとても辛くなりました。改めて、親にカミングアウトすることの難しさを実感しました。



岡島彩乃

私にも同じような経験があります。私は母と姉にはカミングアウトしているんですが、父にはまだ伝えられていません。姉が既に結婚しているので、私も同じように結婚して欲しいと思っているんじゃないかなと思って。以前姉の結婚式に出席した時、親戚に「次は彩乃ちゃんの番だね」と何度も言われて。家族にカミングアウトできたとしても、親戚全員に話すとなると、ものすごい重荷です。でもそれって、私だけではなく多くの当事者が抱いている悩みだと思うんです。



江藤天音

日本ではまだ同性婚が国に認められていないことも課題のひとつですよね。また、セクシャルマイノリティだけに関わらず、「結婚」に対する悩みって一定数の人が抱いていると思います。異性愛者の方でも、結婚を望まない人もたくさんいます。世間にある「当たり前」がなくなるだけで多くの人が生きやすくなるのではないでしょうか。



岡島彩乃

ちなみに、大学生活でセクシャルマイノリティへの課題を感じることってありますか?



江藤天音

健康診断の時にブースが男女ではっきりと分けられているので、どちらに入ればいいかと困ってしまいます。あとは、多目的トイレが少ないことですね。



岡島彩乃

物理的な問題は解決が難しいかもしれないですが、時間がかかってでも、全ての生徒が過ごしやすい大学の数が増えていって欲しいですね。学内も、どんな人でも使える多目的トイレがもっと普及すればいいですよね。



濱本智義

僕は男友達と恋愛話になった時、話に付いていけないことがあります。バイセクシャルとは言え、どちらかと言うと男性の方が好きになりやすい傾向なので。また、友達が特定の人を「オカマだ」とイジっている時に、複雑な気持ちになることもあります。自分がカミングアウトした時に差別されたらどうしようと不安になります。親しい人ほど関係性が壊れるのが怖くて、カミングアウトできないです。こういった活動をしているので、いつか間接的に気づいてくれたらなと思っています。



岡島彩乃

自分からカミングアウトするのって結構ハードルが高いですよね。相手の反応を毎回受け止めないといけないですし。



濱本智義

そうなんです。だから自然と気づいてくれるのが理想です。自分たちと同じ生徒に限らず、先生の理解が足りないこともありますよね。授業内で主観的に「男は◯◯だから、女は◯◯だから」と決め付けている先生を見ると、生きづらいなと思います。




マイノリティって辛いことばかりじゃない



昨年開催した当事者向けイベントの様子。実施する度に素敵な出会いが生まれる。

岡島彩乃

逆に、当事者であるからこそ得られたものってありますか?



江藤天音

出会いですね。当事者だからこそ、マイユニのメンバーや、イベントを通じた仲間に出会えました。価値観もすごく広がったと思います。マイノリティは可哀想だと思われがちかもしれないですが、同じ当事者の気持ちが分かるからこそ、株式会社マイユニとして活動ができていますし、私はトランスジェンダーで良かったなと思っています。



岡島彩乃

確かに、マイノリティは損するとか、差別対象になるとか、劣等感ばかり注目されがちですが、辛いことばかりじゃないですよね。



濱本智義

僕も出会いですね。ネットでの出会いは危険を含みますが、利点もあります。当事者という共通点だけで、全国の幅広い世代の人たちと出会えました。株式会社マイユニは大学生5名で運営しているのですが、そのうちの1人は茨城県に住んでいます。イベントを通じて出会い、一緒に活動をしていくことになりました。



岡島彩乃

出会えるって大きな強みですね。私の場合はカミングアウトがきっかけで、非当事者の友人の優しさに気づくことができました。差別されたらどうしようと悩んでいたのですが、実際はそんなことが一切なく、むしろLGBTQについてすごく勉強してくれました。ある友人が「生き方が素敵」だと言ってくれた時は本当に嬉しかったです。いいこともあるんだなって。



江藤天音

トランスジェンダーであるからこそ、男女どちらの気持ちも分かる気がします。それも自分の個性のひとつだなと。



岡島彩乃

トランスジェンダーならではの感覚で素敵ですね。




大学生だからこそ、同年代の当事者に寄り添える



株式会社マイユニの設立メンバー(1名は関東在住のため撮影に参加できず)。

岡島彩乃

LGBTQの課題についてたくさん話してきましたが、株式会社マイユニの強みって何だと思いますか?



江藤天音

1つ目は、メンバー全員が大学生で若いということです。既存の企業や法人は、主に30代以降の方々がLGBTQを人権課題として活動されていますが、学生や20代という同世代に寄り添う形で活動している団体はとても少ないんです。



濱本智義

2つ目は、メンバー全員がLGBTQの当事者であるということ。LGBTQと一括りにされることが多いですが、抱えている課題はそれぞれ異なります。各視点で物事を捉えられることが、より多くの人々に寄り添うことに繋がると思っています。誰もやっていないことをどんどん開発していきたいですね。



岡島彩乃

若い当事者が揃っているからこそ、面白くて新しいアイデアを生み出せる強みがありそうです。それでは、今後の目標を教えてください。



江藤天音

直近の目標としては、LGBTQの理解促進を目指した非当事者向けの講演会を、近畿大学を含む大学や企業で行なっていきたいです。悪気はなくても、無意識のうちに当事者を傷つけてしまっていることがある……というのを知ってほしい。当事者を特別視する必要はありませんが、日常生活には多くの差別用語が潜んでいます。講演会では当事者にしか分からない課題や、適切な関わり方について伝えていきます。



岡島彩乃

まずは知るということが大切ですもんね。



江藤天音

また、レズビアン・ゲイ・バイセクシャルだけでなく、トランスジェンダーの方向けのイベントや、LGBTQを全対象としたイベントも開催していきたいです。もちろん、LGBTQに含まれないセクシャルマイノリティの方のサポートも行いたいと考えています



濱本智義

講演会活動以外にも、行政や他社と積極的に提携していきたいです。当事者ならではの視点と知見を生かしてコンサルティングを行い、LGBTマーケティングで社会に貢献したいです。当事者向けのプロダクト(男性用化粧品やジェンダーレスアイテムなど)の開発も視野に入れています。



岡島彩乃

最後に、近大生に伝えたいことはありますか?



江藤天音

確率論にはなりますが、近畿大学には学生だけで当事者が3000人以上いる計算になります。目に見えないだけで、当事者は身近にいるんです。仲の良い友達も、あなたが知らないだけで悩みを抱えているかもしれません。少し意識を変えるだけで、大切な人を傷つけないことにも繋がります。当事者のみなさん、私たちは味方です。もし悩んだり、困ったりした時はいつでも声をかけてください。


※3000人:33,234人(大学学生数)+376人(短期大学学生数)+5,824人(通信教育部学生数)=39,434人(令和2年5月現在)39,434人×0.089(日本のLGBT当事者の割合)=3,509.626人

濱本智義

在学中に、近大でプライド・パレードをKINDAI PRIDEとして実現したいです。当事者・非当事者に関わらず、私たちの活動に興味を持って下さった方は、下記連絡先までご連絡をいただけると嬉しいです。「LGBTQ当事者がありのままで過ごせる社会へ」を理念に、これからも全力で活動していきます。


※プライド・パレード:「自分の性的指向や性的アイデンティティに誇りを持とう。多様性を認めよう。」という意味のプライド(誇り)を掲げて、アメリカを中心とした世界各地で行われているパレードのこと。


▼株式会社マイユニ 会社情報
メールアドレス:MYUNI.LGBTQ@gmail.com
公式Facebook
公式Twitter


(おわり)


この記事を書いた人



岡島彩乃(おかじま あやの)

近畿大学 総合社会学部 社会マスメディア系専攻3年
株式会社人間でインターンをしながら、株式会社マイユニでCMOを務めている。趣味は音楽制作、特技はラップ。アイドルとフライドポテトのオタク。


撮影:岡島彩乃/東郷侑樹
取材・文:平山靖子(おかん)
企画・編集:人間編集部

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