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2020.04.28

ぶっちゃけオンライン授業ってどうなんですか?先生たちに聞いてみた

Kindai Picks編集部

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オンライン
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コロナウイルス

新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、近畿大学では全授業がWEBミーティングツール「Zoom」を使ったオンライン授業に。前代未聞の取り組みに戸惑う学生も少なくありません。しかし、戸惑っているのは実は先生も一緒でした。戸惑いながらも近大生たちに質のいい学びを与えられるよう先生たちが取り組んでいることとは?
オンライン授業開始にあたり、頭を抱えていた国際学部・柴田先生と、学内で行われたオンライン授業の研修会で、独特な個性を放っていた経営学部・熊谷先生に、Kindai Picks学生ライターが思いを聞いてきました。

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慣れないツールに戸惑いはあった:国際学部 柴田先生の場合


柴田 直治(しばた なおじ)

国際学部 国際学科 グローバル専攻 教授

ジャーナリスト。元朝日新聞記者でマニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任。ハフィントンポストWEBサイトなど執筆記事多数。著書に「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」(めこん)など。






山本夏香

柴田先生、よろしくお願いします。経営学部商学科 3年の山本夏香です。すべての授業がオンライン化されますが、先生方はどのように感じたり、どんな対策を講じているのかをお伺いしたいと思います。





柴田先生

よろしくお願いします。お恥ずかしい話ですが、本日はIT音痴でオンライン授業の準備に悪戦苦闘する教員の代表として、お答えさせてもらいます。





山本夏香

授業がオンライン化すると言われたとき、率直に先生はどう感じられましたか?





柴田先生

「ついにきたか……!」と思いましたね。正直言ってかなり不安を感じました。今も不安は完全に拭い去れたわけじゃありません。





山本夏香

マイナスの感情が強かったんですね。





柴田先生

ええ。私はWEBの知識が豊富でないので、オンライン会議ツール自体は話を聞いたことはありますが、授業の場はもちろんプライベートでも実践したことがなかったんです。





山本夏香

では、授業の準備をしながらオンライン会議ツールを扱うスキルを習得をしなければいけなかったということですね。





柴田先生

そうですね。普段の春休みは授業の中身をどうしようか考える時期だったのですが、今年はそれに加えて新しいツールを複数個使いこなせるようにならないといけなくなり、慣れない人間にはとても負荷が大きかったです……!







山本夏香

授業では主にどのようなツールを使うのでしょうか?





柴田先生

この対談でも使用している「Zoom」、学内掲示板の「UNIPA(ユニパ)」、そして容量の大きな授業資料などのデータは「Google classroom」に格納する予定です。以前から「UNIPA」は使ってはいましたが、出席確認などの機能は使用していなかったため、改めてどこにどんな機能があるかを学び直しました。オンライン講義の要でもある「Zoom」は、ゼミの学生と練習を兼ねたミーティングを行って、ようやく掴んできたという感じです。





山本夏香

先生は週に何コマほどの授業を持っているのでしょうか。





柴田先生

合計で7コマですね。





山本夏香

けっこうありますね……。





柴田先生

コマ数はいいんですが、100人以上の受講生がいる授業が2つありまして、それが少し気がかりです。大教室で行うような講義を、スムーズに届けられるのか。実際に授業が始まってから改善点が判明することもありそうですね。





山本夏香

なるほど、人数の違いで授業内容や教え方を変えていたところがありますよね。他には、先生はどんな心配事がありますか?





柴田先生

もっとも心配なのは、相手のレスポンスをきちんを拾えるか。対面での授業で行っていたコミュニケーションを、画面越しになってもうまく取ることができるかという点ですね。







柴田先生

先日、ゼミの学生とミーティングをしたとお話ししましたが、ゼミ生は3年生・4年生なので以前から対面で何度も授業をしていてすでに人間関係ができていますよね。その人間関係がもともとあるので、多少オンラインでまごついても大目に見てくれるし、PCの操作に慣れている学生も多い。





山本夏香

なるほど。





柴田先生

しかし新入生は違います。人間関係も築けていないし、PCに不慣れな人もいるでしょう。それにゼミと違って大教室などの授業は「コマが空いているので選択した」という人もいると思うんです。その上で私がうまくツールを使いこなせずにまごついていると「何やこのおっさん」と、思われそうで……。





山本夏香

(笑)。





柴田先生

普段の授業では「PowerPoint」を使っておりますので、これを援用し、オンライン授業でも「PowerPoint」で作成した資料を画面共有しながら、私が解説を加えるという手法を取って進行していく予定です。理解度を推し量る手段としては、課題の提出がいいのではないかと考えています。
私は若くはありませんし、若い世代が当たり前に使えているものが理解できないこともあります。ただ、こうしたピンチに適応することは生きる上でとても大切なことだと思いますね。





山本夏香

たしかに……。適応できた人が強いというのはありますね!そういった、この事態だからこそ学生に伝えたいことはありますか?





柴田先生

私は近畿大学に就任する前は新聞記者をしていまして、マニラに駐在していたこともありました。長らく報道の現場にいましたが、今回の新型コロナウイルスの流行、こんなことは60年以上生きていて経験のないことです。学生の皆さんには、歴史の転換点に立っているんだと思って、前向きに過ごして欲しいですね。





山本夏香

前向きな姿勢は大事ですよね!





柴田先生

あとは、ツールの便利さに流されないことです。いまは「Zoom」を使いこなせる人が時代の最先端かもしれません。しかし私の若い頃、新聞記者はいま起こった事実をいち早く本社に伝えられるよう「公衆電話がどこにあるかを把握している人」が最強だった。
つまり、これから先も時代とともに必要とされる道具は変わります。必要なのはそのなかで学ぶ姿勢を持ち続けていることなんですよね。漫然と過ごさずに読書や映画鑑賞など有意義に時間を使って欲しいですね。





山本夏香

今日はありがとうございました!





YouTube投稿も活用した柔軟な授業を:経営学部 熊谷先生の場合


熊谷 哲哉(くまがい てつや)

経営学部 教養・基礎教育部門准教授

ドイツ文学を専門とし、第二外国語としてドイツ語の授業を担当している。著書に「ミニマムドイツ語(朝日出版社)」、「言語と狂気―シュレーバーと世紀転換期ドイツ(水声社)」など。






山本夏香

熊谷先生、今日はよろしくお願いします。先生も、WEBで授業を行うと決まった際は戸惑われましたか?





熊谷先生

戸惑いはあまりなかったですね。「やっぱりな」という思いの方が強かったと言いますか。3月の初頭から教育現場の仲間内でオンライン上に授業の場を移す必要があるのではないかという話は出ていたんです。私自身も、4月には対面で授業ができなくなると考えていましたので。そもそも、どうして私に取材しようとなったんでしょうか?





山本夏香

5月7日からのオンライン授業の準備として、学内の教職員対象でZoom研修会が行われましたよね。そこに参加された熊谷先生のプロフィール画像が、2ちゃんねるのAAで異彩を放っておられたと聞いて。これはネットに対する知見が高そうだな……と!







熊谷先生

なるほど……(笑)たしかに2ちゃんねるの最盛期をよく知る一人です。





山本夏香

先生はこれまでにも、オンライン授業といった”遠隔でのコミュニケーション”を取った経験はありますか?





熊谷先生

授業の前から対面での会議も難しくなってきたので、学部の教員の会議は「Zoom」で行っていました。あとは研究者仲間との飲み会とか……。







山本夏香

なるほど、経験があるんですね!では先生はどういった授業を行う予定でしょうか?





熊谷先生

これに関しては目下模索中です。まずは、セキュリティや学生の通信環境負荷がかからないよう、双方向性を大事にしよう!というところまでは決まりました。私たちとしては、教材と課題を用意して、学生に自学・自習してもらうオンデマンド方式の授業を考えています。





山本夏香

オンデマンド方式……?





熊谷先生

教材は、閲覧権限を設けてYouTube投稿を行います。





山本夏香

ということは動画ですよね……!?どのような動画になるんでしょうか。







熊谷先生

1つは「PowerPoint」や「Keynote」で作った授業スライドに、音声で説明を補足する。で、それをワンセットにした動画。2つ目はPCやスマホのカメラで資料や教科書を映しながら音声で解説を加えたもの。そして3つ目がPCやタブレットの録画機能を用いたものです。私個人としては、3つ目がもっとも作りやすかったですね。





山本夏香

というと……?





熊谷先生

スライドだけでは授業が平坦なイメージなんですよね。iPadに入っているメモアプリの録画機能を使えば、スライドにタブレットペンで補足説明を書いている様子そのものを録画できて、それを学生に共有できるんです。つまり、画面上に「板書にあたるもの」が加わるイメージですね。さらに音声での補足を録音して重ねることで、録画した板書から説明までが1本の動画にできる。要するに立体的なオンライン授業ができるんですよ。





山本夏香

単に「授業をしているところを配信」するのではなく「自宅学習に特化した動画を先生が編集して作成する」というイメージですね。すごくわかりやすいです……!でも、これってかなり大変なのでは?







熊谷先生

結果的にこれが学生にとって学習効果が高いのではないかという結論に至ったんですよね。教員たるもの、どんな状況下でも学生に実りある講義を行わなければいけませんし、その労力を惜しんではいけませんから。とはいえ、教員の皆さん全員がWEBのリテラシーが高いわけでもありません。それに第二外国語って、非常勤の先生方がかなり大勢いるんです。その先生方が私のように動画を作るのは容易ではありません。ですので、今YouTubeで「授業の作り方そのもの」を紹介する動画を公開しています。







熊谷先生
近畿大学ではGoogle classroomを使うことも各学部の方針として決まりましたので、それにともない、非常勤の先生方や広く大学教員向けに、基本的な使い方をユーチューブ動画にまとめて公開しています。








熊谷先生
学生に向けたGoogle classroomの使い方動画もユーチューブに公開しているので、そちらも見てみてください。








山本夏香

わかりやすい……!





熊谷先生

また、オンデマンド方式が最良なのではないかという結論に至った点や、動画のメリットなどをお話ししたブログもまとめました。これはけっこういろんな先生方の参考になったようで、他大学でドイツ語を教えている仲間からも真似させてもらいたいと連絡がきました。





山本夏香

情報をすごくオープンにしているんですね。先生のやり方であればPCやスマホで撮影が可能ということなので、特別な機材がいらないのもいいですね。動画編集などはアプリがいくらでもありますし。





熊谷先生

遠隔授業に必要なのは機材や知識ではなく、既存の技術をどう組み合わせるかだと思うんです。第二外国語はそれぞれ履修者も少ないですし、何とか独自の授業を続けたいなと思っています。







山本夏香

ただ、まったく不安がないか?と、言われるといかがでしょうか。





熊谷先生

これまでの通常授業と同じ学習効果が得られるかは、正直不安はありますね。私だけでなくほとんどの教員にとって初めての試みですから。言語というのは一方的に伝えて完結するものではなく、コミュニケーションによって学び、理解することができます。目標としては、学んだ言語で「なにかをできるようになる」が理想。





山本夏香

学生同士、グループを作ってワークショップをするような授業は難しいかもしれないですね。





熊谷先生

そうですね。授業を実施しながら対応を考えていきたいですね。また、基本的にリモートでの授業になるのですが、小さなお子さんがいらっしゃる先生もいるでしょうし、自宅で授業をするからこそ苦労される面もあるだろうなと。







山本夏香

なるほど……先生方にもそういったご苦労が発生するかもしれないんですね。ただ、私個人としてはYouTubeで何度も授業を見直せる方式は、のちほど復習ができるためありがたいなと思います。リアルタイムの配信だけですと、電波状況などで見逃す部分も出てきそうですし……。





熊谷先生

今後の大学のあり方にも大いに影響すると思うのですが、この自粛期間が落ち着いても、遠隔の授業というのは残っていくと私は予想しています。キャンパスに通うことで得られるメリットはありますが、そのぶん既存の授業は、授業時間の90分間、必ず1つの教室に居続けなければいけないという縛りがある。こうしたYouTubeに動画を残す授業の方法は、理解できるまで何度も見返せますし、授業時間に縛られず学習ができるというメリットがあります。





山本夏香

登校自粛でやむなく始まったオンライン化ですが、学生にとってのメリットも大いにあるというわけですね。





熊谷先生

近畿大学は、遠隔地から片道2時間以上かけて通学してくる学生もたくさんいるんですよね。そうした学生たちが1限に間に合うよう早朝から大変な思いをして動かなければいけないのは、私個人としてはナンセンスだと思うんです。





山本夏香

たしかに、兵庫県の端とか、奈良県の山がちなエリアとか「遠いところから通ってるな」と思う学生は友人にもいます。





熊谷先生

そうした遠隔地の学生はもちろん、海外からも受講しやすくなりますし、オンライン授業を恒常的に取り入れることでより学生たちの多様性に寄り添う大学になるのではないでしょうか。





山本夏香

そうですね……!でも、そろそろ友達にも会いたいですし、大学にも行きたいですね!





熊谷先生

本当に。リアルな場で学生の顔を見たい気持ちはもちろんあります。世界が落ち着いたら、専門としているドイツにも行きたいですね。





山本夏香

オンライン授業のメリットがたくさん聞けて、とても安心しました!先生、今日はありがとうございます!





どの先生も不安を抱きながら学生のことを考えてくれている


「オンライン授業でちゃんと勉強できるのかな……」。私はいままで学生目線で不安だけを抱いていました。しかし今回、ふたりの先生にお話を聞いて不安を抱えているのは先生方も同じだということ、その上で、普段と遜色ない学びを私たちに与えられるよう準備をしていただいているということでした。

柴田先生が言っておられた、「大教室を利用した大人数参加型の講義をスムーズに行えるのか」という問題については、私も気になったので、近畿大学のメディア授業ワーキンググループのリーダーをされている江口先生に聞いてみました。




通常、100人規模の大教室で授業をしていると、学生が教員に質問しづらいこともあるでしょう。そして教員は、発言を頻繁にする学生や意欲のある学生は認知しやすいですが、そうでない学生をよく知ることは難しいんです。しかし、オンラインなら学生がチャット機能を使って教員に質問を投げかけることも可能ですし、顔を見て対話することもできます。今までよりも一人ひとりに丁寧に対応することができるはずで、むしろ近い距離感でコミュニケーションをとることも可能になります。




オンラインの方が丁寧なコミュニケーションが実現できるというのは、学生にとっても安心できるポイントですね。

前代未聞の取り組みは、先生方にとっても同じ。「歴史の転換点に立っている」ということを常に頭の片隅に置いておくことで、授業で戸惑う瞬間があっても冷静に考え、行動することができるのではないでしょうか。

皆さん、同じ教室で受講することは叶わなくとも、オンライン上でしっかりと学びを身にしていきましょう!


(おわり)


取材・文:平山靖子(おかん)
企画・編集:人間編集部

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