2017.06.16
非喫煙者の女性にも多い?肺腺がんの症状と予防方法
- Kindai Picks編集部
5026 View
女優の野際陽子さんが肺腺がんで亡くなった。5月には歌舞伎俳優の中村獅童さんも初期の肺腺がんであることを公表した。
そもそも肺腺がんとはどんな症状なのか?
その原因と予防法について、近畿大学医学部の光冨徹哉先生に聞いてみた。
この記事をシェア
【PROFILE】
光冨 徹哉(ミツドミ テツヤ)
近畿大学医学部教授/医学博士/日本肺癌学会理事長
専門:呼吸器外科学、肺がんの診断治療臨床分子生物学
肺がんの診断と治療、特に外科治療および分子標的治療を専門とし、肺がんの遺伝子変異に基づく個別化医療を実践することで最小の負担で最大の治療効果をあげることを目標にしている。
■肺腺がんはどんな病気?
女優の野際陽子さんが肺腺がんで亡くなられましたが、最近では歌舞伎俳優の中村獅童さんも初期の肺腺がんであることを公表されました。どのような病気ですか?
肺がんは、腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、大細胞がんの4つの組織型に分けられています。
日本においては、腺がんが最も発生頻度が高く、全体の約6割程度を占めます。
肺腺がんになると、一般的にどのような症状がでますか?
肺の末梢部(端の部分)にできることが多いため、咳や痰などの症状は中枢部にできることの多い扁平上皮がんの場合と比べ、初期段階ではあまり出ないことが多いです。
やはり命に関わる重大な病気なのでしょうか?
肺がんは日本人の癌死亡原因の第一位で現在では毎年8万人弱が亡くなられています。このように予後が不良な原因は、半数以上の患者さんは骨、肝脳などへの転移があってから見つかっているからです。このような状態では根治をめざせる外科治療ができません。また早期と思って手術した患者さんでも後に再発することも比較的多いがんです。
そのため初期の段階で発見し治療を行う早期発見、早期治療が最重要です。
肺がんと聞くと男性がかかるイメージがあるのですが、実際はどんな人がかかり易いのでしょうか?
肺がんは、高齢者、男性、喫煙者の患者が多いと思われがちですが、肺腺がんは非喫煙者の女性にも多いのが特徴です。
最近よく耳にしますが、よくある病気なのでしょうか?
国立がん研究センターの統計「2016年のがん統計予測」によると、肺がんの罹患数(133,800人)は、大腸がん(147,200人)、胃がん(133,900人)に次ぐ3位です。
また、死亡数は77,300人と、大腸がんの51,600人を大きく上回っており、この数字からも、完治が難しいことがわかります。
完治が難しいということですが、効果的な新薬などはあるのでしょうか?具体的な治療方法を教えてください。
肺がんには主に3つの治療方法、手術でがん病巣を切除する外科療法、抗がん剤などを用いる薬物療法、放射線をあてる放射線療法が有ります。
ことに21世紀にはいってからの肺がん薬物治療の進歩は著しく、遺伝子のタイプ別に薬剤を選択する分子標的治療(例 EGFR遺伝子変異をもつ肺腺がんにイレッサ、タルセバ、ジオトリフなどの薬、ALK遺伝子異常をもつ肺腺がんにザーコリ、アレセンサ、ジカディア)やさらに最近は免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ、キイトルーダ)などの新薬が出てきています。
治療方法は、肺がん種類、遺伝子の型、進行度合い、全身状態などから、本人、ご家族と相談しながら決めます。
■肺腺がんを予防するには
肺腺がんを予防するために、私たちが普段からできることはありますか?
1次予防としての禁煙、2次予防としての早期発見が挙げられます。
先述のとおり、肺腺がんは非喫煙者も罹患していますが、吸わないに越したことはありません。
そして、健康診断や人間ドックなどの機会を利用し、早期発見、早期治療に備えておくことをお勧めします。
記事を読む
この記事をシェア