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2017.03.09

ピコ太郎とオバマ大統領に学ぶ、かんたんユーモア英語コミュニケーション

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
英語
最終講義
ユーモア
コラム

英語でユーモアが言えたら・・・。会話がはずみ、異文化間コミュニケーションがうまくいきそうですよね。
英語のユーモアでコミュニケーションをとるコツを、英語学の文学者がお伝えします。
<2017年1月25日 近畿大学文芸学部英語コミュニケーション学科 北爪佐知子教授 最終講義「Dynamics of Language」より>

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●PPAPが面白い理由、それは…

ピコ太郎さんの『PPAP』がYouTubeの再生数世界一になりましたね。まず
はこの動画がなぜ面白いのかを学問的な見地から分析してみましょう。



これは歌詞が3段階に分かれています。まずは、

I have a pen.
I have an apple.
Au’! Apple-pen.

ここで音が「P繋がり」というのはありますが、AppleとPenという全く異質なものが合体します。次に、

I have a pen.
I have a pineapple.
Au’! Pineapple-pen.

これも「P繋がり」で異質な2つの物ですね。

Appleは日本人にとっては果物の一つに過ぎませんが、西洋では特別な意味があります。聖書にはアダムとイブが食べてはいけないリンゴ(Apple)を食べてしまい、人間が原罪を背負うことになった話が書かれていますよね。Pineappleは、松ぼっくり(Pine)に似た「果実」ということで果物の代表である「Apple」が使われて、「Pine-Apple」となったそうです。ピコ太郎さんがそこまで理解していてこれらの果物を選んだのかはわかりませんが、西洋でも受け入れられたのはこういったところに理由があるのではないかと私は考えています。

そして3段階目は、

Apple-pen. Pineapple-pen.
Au’! Pen-Pineapple-Apple-Pen.

ということで、「Apple-Pen」と「Pineapple-Pen」を合体させて「Pen-Pineapple-Apple-Pen」という全く新しいものができています。すべてP音という点で共通していますね。さらにピコ太郎という名前にもP音が入っていますし、音楽にもP音が使われています。

ユーモアを考える時に最も重要なのが、こうやって異なる2つのものに共通点を見出して繋げることです。これを「bisociation(バイソシエーション)」と言います。また、異なるものを合体させることで新たに特殊な構造が創造されると主張している研究者もいます。PPAPの面白さは、こういったところにあるのかもしれませんね。


●英語圏にもある、ダジャレの文化

お気づきの方も多いと思いますが、共通点を見出すという構造がわかりやすいのは「ダジャレ」です。ダジャレは英語で「Pun」と言い、例えば以下のようなものがあります。


This record cost $90.
How expensive; it must be a record.

「このレコード盤90ドルするんだよ」
「それは高いね、記録的だね」

これはrecordに音楽を再生する「レコード」の意味と「記録的」という意味があることで成立しています。


Why are teddy bears never hungry?
They are always stuffed!

「どうしてテディベアはお腹がすかないの?」
「お腹にたくさん詰まっているからだよ」

stuffedは「詰まっている」という意味で、ぬいぐるみはstuffed animalと言います。
また、お腹いっぱいという意味でもstuffedを使います。


Why did the spider go to the computer?
To check his web site.

「どうして蜘蛛がコンピューターの所へ行ったの?」
「ウェブサイトをチェックしに行ったんだ」


これはおわかりになりましたでしょうか?実は語源で繋がっています。Webというのは元々「蜘蛛の巣」という意味で、インターネットが蜘蛛の巣のように見えるということでWeb-Siteという言葉が使われるようになりました。

PPAPが面白いのも、異なる言葉から共通点を見出して組み合わせているところですね。


●動作や相手の反応の中にも「共通点」はある

共通点を繋げてユーモアにできるのは、「言葉と言葉」だけではありません。トランプ新大統領は、演説する時によく「手を広げるジェスチャー」をします。これにアコーディオンを弾いている動画をつけてジョークにした人がいます。


▼トランプ爆笑アコーディオン(YouTube)





また、オバマ前大統領は、地元シカゴで行った任期中最後の演説で、こんなやり取りをしています。会場は大盛り上がりで、スタンディングオベーション、拍手喝采という状況です。


Hello, Chicago! It’s good to be home!
シカゴのみなさん、こんにちは。故郷はいいですね。

(鳴り止まない拍手)

Thank you, everybody. Thank you. Thank you. Thank you.
ありがとう、みなさん。ありがとう。ありがとう。

(鳴り止まない拍手)

It’s good to be home. Thank you so much.
ありがとう。

(鳴り止まない拍手)

All right. Everybody, have a seat!
もうわかりましたから、イスに座ってください。

We’re on live TV. I’ve got to move.
これ、テレビの生放送なので、スピーチを始めないといけないんです。

(鳴り止まない拍手)

You can tell that I’m a lame duck, as nobody is following my instructions.
私にはもう権限はないと思われているみたいだね。誰も私の指示を聞いてくれないよ。

(観衆笑い)


▼オバマ大統領最後の退任演説 inシカゴ 1.11.2017 英語フルバージョン(President Obama final speech) (YouTube)




いつまでもスタンディングオベーションが続いているのだから、もちろんオバマ大統領に対して最大の賛辞を表しているのですが、あえて「もう任期切れが間近で権限がなくなってきたんだね」という解釈をしています。これもユーモアの一つの作り方ですね。「指示を聞いてくれない」という共通点を見出している。

こうやって、言葉に限らず自分の周りで起きているすべてのことをよく観察し、全然違うはずなのに同じ要素がある何かを発見することができれば、ユーモアを作れるのではないかと思います。英語でユーモアが言えないという方がいらっしゃいましたら、ぜひ試してみてください。

【プロフィール】

北爪佐知子(きたづめさちこ)
近畿大学 文芸学部 英語コミュニケーション学科 教授/英語村村長/理事

1971年大阪大学文学部を卒業、1990年同大学院文学研究科を修了。専門は英語学と英語教育。特に英語によるユーモアについて研究。近畿大学の英語村E3[e-cube]の企画運営も行ってきた。著書:『How to Do Things with Humor』(2010年、英宝社)
『近畿大学英語村-村長の告白』(2010年、開文社)

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