Kindai Picks

就職活動

2017.03.03

そのアピール、間違ってます。カリスマ転職代理人が教える、企業が見ている2つの能力

Kindai Picks編集部

3298 View

tag
オリジナル記事
就活
キャリア

3月1日に解禁された就活。選考は6月解禁と言われているものの、実際のところは? そして企業は選考の際、学生の何を見ているのか? 就活にまつわる様々な都市伝説に踊らされないよう、今知っておくべきことを、就活のプロ・海老原嗣生氏が語る。

<近畿大学就職活動決起大会より>

この記事をシェア

  • facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • x

.


【プロフィール】

海老原嗣生(えびはらつぐお)
株式会社ニッチモ 代表取締役
株式会社リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブ
株式会社リクルートワークス研究所 特別編集委員

1964年生まれ。上智大学経済学部卒業。リコー、リクルートエージェントを経て、リクルートワークス研究所の「Works」編集長に就任。2008年にリクルートを退職し、HRコンサルティング企業の株式会社ニッチモを設立。一方、リクルートエージェントのフェローとして、人事・経営誌「HRmics」の編集長に。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』『学歴の耐えられない軽さ』『「若者はかわいそう」論のウソ』『就職、絶望期』『就職に強い大学・学部』など。「週刊モーニング」(講談社)の転職エージェント漫画『エンゼルバンク』のカリスマ転職代理人 海老沢康生のモデルにもなっている。


●面接官のレベルに応じた対策を

就職活動をしていると、必ず聞かれることってありますよね。「学生時代に一番力を入れたこと」「失敗談」「自己PR」「応募動機」、だいたいこの4つです。企業は何百から何千人もの学生を面接をします。となると、採用担当者だけでは足りないので、人事部でない現場の人たちを面接官にします。つまり一次面接で出てくるのはプロの面接官ではないんです。そこで話すことに困らないよう、上記のような決まりきった質問を用意しているというわけです。

「学生時代に一番力を入れたこと」「失敗談」「自己PR」の3つは使いまわせるからいいとして、困るのが「志望動機」ですよね。企業ごとに考えないといけないので。でも、一次面接は向こうも面接の素人なので、一生懸命ホームページを見て、間違ってても自分で考えてきた人には「ちゃんと勉強してるのね」と思うもの。だからここでは普通に勉強しておけば大丈夫です。

でも、二次面接、三次面接と進んでいくと、面接のプロや経営者が出てくる。ここでは「どうして他ではなくうちを志望しているのか」「うちでやっていけるのか」をかなり本格的に確認しますので、しっかりと準備してください。ただし、二次面接まで残っている会社はせいぜい5社か10社程度ですので、そこまで大変ではありません。


●6月解禁のウソとホント

選考は6月から解禁と言われていますが、これは経団連が決めたルールで、それ以外の企業には関係ありません。例えばベンチャーや外資系、新経団連に加盟している企業などですね。特に新経団連に入っている会社は非常に先走りしていますので、ホームページを見てみるといいと思います。 

では経団連に入っている企業は6月まで全く何もしないかと言うと、それも違う。だって、6月まで何もしなかったら他の企業に学生を取られてしまうじゃないですか。そこでどうするのかと言いますと、面接以外のいろんな方法で学生と会うようにしています。例えばOBOG訪問、インターンシップ、大学への非公式訪問ですね。こういうところで選考を進めていくわけではありませんが、「この学生いいなぁ」と思ったら人事の頭の中に残っていくし、社内でも情報が引き継がれていきます。そして、そういう学生には「うちを受けに来れば?いい線まで行くから」「君みたいな学生欲しい」といったオーラを出すんです。

採用人数が100人だったとして、解禁前には60人くらいは既に人事の頭の中で欲しい学生が決まっているという状態になります。何もしてない人は、6月になってから残りの40人の席を取り合うことになるので、かなり大変ですよね。ですから、今から企業の人にできるだけたくさん会っておくようにしましょう。リクナビやマイナビも本選考のエントリーはまだできませんが、インターンシップという名の元に会社説明会と同じようなことを実施し、採用に直結させていく企業はたくさんあります。


●就活の必勝法はコレで決まり!

就活の必勝法、それは「10回面接を受ける」ということです。なーんだそんなことか…と思うかもしれませんが、面接って緊張して最初の5回くらいはまともに話せないんですよ。慣れが必要なんです。5回くらい面接を受けるとようやく普通に話せるようになっていき、6回目以降は面接のツボが見えてくる。企業の人が何を言っているのか、何を質問しているのかがわかってくるようになるんです。そして10回やってやっと一人前ですね。

先ほどお伝えした通り、ベンチャーや外資系、新経団連などは既に面接も始めていますので、早めに面接を10回受けておくようにしましょう。そうすれば、本格的に就活がスタートした後も余裕で面接を受けることができます。


●企業が面接で知りたい、たった2つのこと。



企業は面接でいろいろな質問をしてきますが、知りたいのはたった2つのことです。それは「うちの仕事をうまくやっていけるか」「うちの仲間とうまくやっていけるか」です。

大手メーカーでは、研究者や工場で働く人、お客さんの間に入って全部調整することが重要です。だから、協調的な人が必要で、飛び抜けて失礼な事をやっているような学生は好まれません。どちらかと言うとおっとりしていて、みんなで仲良くやっていくことができ、縁の下の力持ちになれるタイプが好まれます。一方、リクルートでは厳しい営業をしたりするので、ハートが強くて、「3年目で天下を取ってやる!」「おれが一番だ!」と前に出るタイプじゃないとやっていけない。仕事内容が違うので企業ごとに欲しい人材は変わりますが、「うちの仕事をうまくやっていけるか」を見ているという点では同じです。

そしてもう一つの「うちの仲間とうまくやっていけるか」。上記のように企業ごとに人のタイプというのがあって、その人達が集まって仕事をしていますので、そこに入ってケンカばかりしていたり辞められたりしたら困りますよね。

「就活では相性が大事」と言われることはよくありますが、その中身は「うちの仕事をうまくやっていけるか」と「うちの仲間とうまくやっていけるか」なんです。学生はこういった当たり前のことに気づかず、先輩就活生や親に言われる「こうすれば受かるよ!」を信じてしまいますが、そういったどこの企業にも通用する必勝法のようなものはありません。もちろん、何も話せない人は何を考えているのかわからないから落ちます。企業からすると上記2つのことを確かめられませんから。ですから、目を見て話すとか、礼儀正しく話すとか、そういった当たり前のことはできるようにしておきましょう。


●合わない企業に入った時の不幸…

嘘をついて演技をして、「うちの仕事をうまくやっていける」「うちの仲間とうまくやっていける」と思われて企業に入ったらどうなるでしょうか。そもそも合っていない企業で働くわけなので、疲れて辞めてしまう可能性が高い。つまり自分を苦しめることになるだけです。だから面接では、自分のことがよくわかる、ありのままの話をしてください。これが面接の基本であり、企業側の望みでもあります。

そのままの自分ではとても太刀打ちできないと思い、どんどん洋服を着込むように話を盛ってしまうのが学生の悪い癖です。そうなると企業側は「そんなの嘘でしょ?」と思って化けの服を脱がせようとする。そして学生は「裸は見せられない!」と思ってもっと着込む。こういう残念な面接がよくあります。

ブラック企業というのは単に労働時間が長いのが問題なのではありません。無理して合わない企業に入ると、自分のやり方や人格が否定され、それと長時間労働が重なるからつらいんです。逆にあなたのことを愛してくれて、認めてくれて、好きでいてくれる会社に入れば、長時間労働していても楽しいに決まってるじゃないですか。だから入口のボタンの掛け違いだけは、絶対にしないように注意して欲しいんです。望まれてその会社に入るということがとても重要なんですね。


●企業側は、そんな話は聞きたくない!

どれだけ「ありのままのあなたを教えて欲しい」と言っても、学生はすぐに関係のない話をします。よくあるのが「NPOやった」「留学してきた」「起業した」「ボランティアした」「ナントカ委員をやった」みたいな話です。よく知らない小さいサークルの副委員長や予算幹事をやったと言われても、企業の人からしたら「あぁそう…」という感じです。あとは「日本を変えたい」「社会貢献したい」「世界に羽ばたく」みたいな、やたら大きな話をする学生も多い。これも企業の人からしたら「そうですか、良かったですね」で終わりです。

偉いことをした話や凄い話をしたら採用されると思っているのかもしれないけど、そんなのは関係ないんです。だって「なるほど君の話には感動した!素晴らしい!採用しよう!」ってなると思います? あり得ないですよね、そんなの。

そうではなく、先ほどお話しました通り、企業が知りたいのは「うちでやっていけるか」なんですよ。だったら凄い話じゃなくていい。それよりもエピソードの裏側にあるあなたの人間性や能力がわかることを教えて欲しいんです。それも一辺倒に「リーダーシップがあります」でなくてもいい。企業はいろんな種類の「うちでやっていける人」を採用していますから。


●どのタイプの学生が採用されるか?

次の3人の学生のうち、採用されるのは誰だと思いますか?

・A君:元気でやる気があるけど、人の言うことは聞かず、図々しい失礼なタイプ
・B君:すごく繊細であまり喋れないタイプ
・C君:間に入って上手く立ち回り、みんなの言うことを聞きながらまとめるタイプ

これ、実際に企業の人に聞くと、「うちはA君が欲しい」と言う会社もあれば、「B君がいい」「C君がうちに合ってる」と言う会社もあるんです。つまり、繰り返しますが企業によって欲しがる人は違う。言い換えれば、あなたのようなタイプを欲しがる企業もあるということです。

ですから、いかに凄いかを話すのではなく、自分らしさをしっかりと伝えてください。ここがポイントです。「ナントカ委員をやりました」では自分らしさは伝わらないですよね。コミュニケーション能力というのは、口がうまくてベラベラ喋ることではなく、自分の特徴をしっかりと伝えることなんです。


●大手人気企業に採用されたのは、こんな学生

実際にどういった学生が採用されたのかをご紹介しましょう。まずは世界トップクラスの自動車メーカーです。この会社が成長してきた原動力は「改善」です。そのために必要なのはPDCAサイクルを回し続けること。だから、エントリーシートでも面接でも、とにかくPDCAをやったことのある学生なら通すということになっている。

例えば、男子学生は盆栽の話をしました。普通の育て方とは違う方法を模索し、日光の当て方や水のやり方、肥料のやり方を研究して、「こうやったら何日間は大丈夫だった」ということを延々と繰り返していた。それを話したところ選考に通過しました。

また、ある女子学生は妹とケンカばかりしていて母親に怒られていた。その母親は「ケンカしたらお小遣いなし、その代わり一週間ケンカしなければお小遣いを1割ずつ上げていく」という条件を出したそうです。そこで彼女はケンカになる話題として、好きなアイドル、服装、勉強、彼氏…といったことを横軸として書き出し、縦軸には、無視した、言い訳した、出ていった…といった自分の態度を書き出したそうです。そして、どの掛け合わせになるとケンカが起きるのかを分析し、ケンカの原因をなくしていった。その結果、お小遣いは毎週毎週1割ずつ上がっていき、最終的には「これ以上は金額上げられないのでやめよう」と母親の泣きが入った。これって全然「凄い話」ではないんですよ。NPOとかやったわけではない。でも、この話をしたら「うちにはピッタリ!」ということで採用になりました。

別の会社の例も。こちらは国内有数の電話会社です。入社した本人は「英語が得意でTOEICの点数が880点だから採用してもらえた」と言っていましたが、会社側に聞いたら全然違うんです。採用担当者は「人間性で採ったんだよ」と言っていました。その学生は、留学はおろか海外旅行すらしたことがなかったんです。じゃあ英会話スクールに行っていたのかというと、それも違う。なぜTOEICで880点取れたのかと言いますと、NHKの英会話ラジオを8年間、1日も欠かさず聴いたからなんです。そして就活では「私は自分で決めたことは絶対守ってやり続ける自信がある」「御社のような大きな会社で小さな歯車になってつまらない仕事をやれって言われてもそれを積み重ねていく自信があります」と言ったそうです。これで採用になりました。


●自分のことを話してダメなら、こっちから願い下げ



表面的なエピソードではなく、その裏にある「人間性」が大事という意味がわかっていただけましたでしょうか。エピソードは何でも良くて、こういう自分らしさが溢れる話をできるかどうかなんです。エピソードの裏にある、みんなを納得させられる人間性や能力が滲み出てくる話をしてください。かっこつけて「こんなすごいことしました」とか言わなくていいんですよ。

そして自分のことを120%話して落ちたのなら、ショックを受ける必要はありません。単に合ってなかっただけです。もしその企業に受かった友達がいたら、その友達の方が凄いのではなく、その友達には合っていたということです。あなたのことを120%話して落ちた場合は合わない会社なんだから、こっちから願い下げ、落ちて良かったくらいに思っておけばいいですよ。


●日本の企業は、根性のある人が好き

よく欧米では仕事をさっさと終わらせて早く帰ると言われていますが、それはなぜでしょうか。特にヨーロッパは仕事が資格別になっていて、基本的には一生同じ仕事をします。決まった仕事を決まった仕組みでやるだけなので、慣れれば労働時間は短くなります。でも日本はそうじゃない。日本の場合、ある仕事ができるようになると、どんどん難しい仕事が任されていきます。だから昔は全員が課長になれました。こういう働き方をしているのは日本だけです。

例えば銀行の場合、最初は窓口業務をやりながら勉強していき、資格を20個くらい取ります。これでやっと一人前ということで、外に出ることが許されます。そして中小企業を担当する。中小企業の案件をある程度担当できるようになると、次はもう少し大きい企業を担当し、やることも難しくなります。そして、そのうち大企業も任されます。こうやって慣れたらもっと難しい仕事…というのを繰り返していき、給与も上がっていきます。これは他のどの業種でも基本的には同じなんです。 

だから日本の企業は根性のある学生が好きなんですね。「日本で働くためには根性が必要だ!」くらいの気持ちを持って、就活を乗り切ってください。


記事を読む

この記事をシェア

  • facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • x
近大それってなんなん相談所 近大が誇るその道のプロがあなたの悩み・疑問を解決!

ランキング

新着記事

ランキング

全部見る

新着記事

全部見る
近大それってなんなん相談所 近大が誇るその道のプロがあなたの悩み・疑問を解決!

MENU

近大それってなんなん相談所

FOLLOW US

  • facebook
  • x
  • instagram
  • youtube
  • tiktok
  • line