2016.12.22
【リクナビ×マイナビ】就活のプロが語る“学歴フィルター2016”
- Kindai Picks編集部
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企業が求める人材とは。就活生はどこを目指すべきか。そして“学歴フィルター”は存在するのか。
日本を代表する人材サービス企業が、就活の核心に迫る。
<KINDAI studentサミット 第1部全体会「数万社の“求める人物像”を知る就活のプロが語る!イケてる学生とそうでない学生の分岐点」より>
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●スピーカー
池本博則
株式会社マイナビ 就職情報事業本部 総合企画営業統括部 統括部長
東京・大阪で就職情報サービス『マイナビ』の営業担当として従事。総合商社やメガバンク、外資系金融機関、メーカーといった業界を代表するリーディングカンパニーの新卒採用支援を手がけてきた。
岡崎仁美
株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所 所長
営業担当として中堅・中小企業を中心に約2000社の人材採用・育成に携わった後、転職サイト『リクナビNEXT』編集長、『リクナビ』編集長を歴任。一貫して人材関連事業に従事。
●モデレーター
世耕石弘
近畿大学広報部 部長
大学卒業後、近畿日本鉄道株式会社に入社。ホテル事業、海外派遣、広報担当を経て、2007年近畿大学へ。入学センター入試広報課長、同センター事務長を経て、2015年より広報部長に。
※肩書き等はstudentサミット開催当時のものです
●時代は“即戦力”
世耕:さっそくですが、ここ数年の就活動向について教えていただけますか。
世耕石弘 近畿大学広報部 部長
池本:今は採用に関わるスケジュールというものが超短期化していて、説明会やエントリーが3月1日からスタートし、内々定が出るのは6月1日から。つまり、およそ3カ月間で多くを決めなければいけない状況になっています。
岡崎:そんな中、上手く就職している学生とそうでない学生の差はどこから来ているかと言いますと、就活までの助走期間の質です。これは就活の準備に限らず、学生生活すべてですね。いかに充実した毎日を過ごすかということです。
世耕:これからの時代を切り開いていくような人気企業は、どういった人材を必要としているのでしょうか。
岡崎:外需と内需、それぞれ貢献できる人ではないでしょうか。つまり、海外からお金を引っ張って来られる人と、国内のお金をまわせる人です。
前者は、当然海外の人たちがライバルになりますので、そこできちんと肩を並べて、尻込みせずに突破できるかどうかが大事ですよね。後者は、例えば目の前にいる消費者に対してサービスを提供するわけなので、相手の立場になって細やかに物事を考え、より良くしていこうと努力できるかどうかが大切です。
池本:例えば人気企業の人事担当がよく言うのは、「総合商社に行くような人材が欲しい」ということ。つまり、世界で戦っていけるような人材、どんな役割を与えられても総合的な力を発揮して鍛錬しながら成長していける人材です。ただ、これが最近変わってきています。グローバルな視野はもちろん、新しいサービスやプラットフォームを提言できる人。このような学歴では測りきれない能力にも、企業は目を向け始めていると感じています。
岡崎:私が会社に入った時は、新聞をハサミで切るのが一番最初の仕事でした。お客さんの情報が新聞に載っていたら、その記事を切って先輩のデスクに置くんです。
でも、今は名刺情報を登録しておけば、その企業に関するニュースが自動で配信される。つまり、昔は先輩に言われた事をきっちりやる人材が求められていましたが、今は機械化やアウトソースが進んだため、お手伝いのようなことをするのではなく、すぐにバッターボックスに立てるような人材が求められています。
エントリーシートに「御社に入ってから勉強して成長していきたい」みたいなことが書いてあると、スピードが遅いなと感じる企業さんもあるくらいです。
世耕:これからはAI(人工知能)なども進んでいきますので、クリエイティブな人材でなければ生き残っていけないという話も聞きます。企業はいろいろな課題を抱えていますので、そこから「どういった人材が求められているのか」を逆算して考えるのも重要ですよね。
岡崎:つまり、大事な大事なお客さんから得た利益を給与として払いたいと思うような人材でないと、採用しないということですね。
●学歴フィルターはあるのか。
世耕:ところで、短い採用期間で、果たして企業側は一人ひとりの学生をきちんと見ているのでしょうか。
池本:短い期間の中で効率的に採用活動をするためには、どうしてもターゲットを決める必要があります。それが企業によっては特定の学校グループということも。ただし、多くの企業はできるだけ学生と直接会い、良い人材を見極めていこうと考えています。
そのため、説明会が始まる3月までに自分はどうなりたいのか、何をしたいのかを考えておき、本当に入りたい企業があったら3月中にできる限りたくさん訪問して、多くの社員に会ってアピールしていくのがお勧めです。機会は平等に与えられています。その中でやるかやらないかの違いなのです。
世耕:そういう意味ではインターンシップもぜひ活用して欲しいですね。
岡崎:就活生もターゲットをきちんと絞った上で準備をしている人は、比較的上手くいっていますね。ただし、思い込みですれ違いにならないよう、常に新しい情報を仕入れて自分と合うかどうか考えて…ということを繰り返すのが重要。これはビジネスをしていく上でも必要なスキルですね。
世耕:学歴フィルターについては、実際のところどうなんでしょう?
池本:6万人や10万人のエントリーがある人気会社で、一番最初のフィルタリング要素の一つとして取り入れているところはあります。ただし、前提として適性検査、小論文などの結果も踏まえて判断します。結果的に特異性を持つ良い学生を採る可能性をなくしてしまうような「学歴だけのフィルタリング」は減ってきています。
世耕:企業側は短期間で多くの募集者を捌かなければいけないので、システマティックな採用活動をする中で、適性検査や小論文といったフィルタリングをせざるを得ないということですね。
岡崎:一言で学歴フィルターと言っても、「優先的に会う」「特定の大学は選考を一部免除する」「特定の学校以外はすべて候補から除外する」など、いくつか種類があります。
岡崎仁美 株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所 所長
学歴フィルターがなくなってきた事例としましては、3年くらい前に大手総合商社に東京芸術大学の学生さんが入社して話題になりましたね。企業としては、多様な人材がそれぞれの強みを活かして世界で活躍して欲しいという期待があるので、いつも同じ大学の学生だけでは怖いという意識があったそうです。
また、今はリファラル採用というものがあります。リファラルとは「参照する」という意味。社員が知っている学生を推薦する仕組みです。これもまさに、大学名というものを信じなくなってきている証拠です。それよりも、社内にいる良い人が紹介してくれる人の方が、良い人材である可能性が高いと考えているんですね。
●選ばれる人になる
世耕:それでは会場にいる学生からの質問を受けたいと思います。
学生A:外部の方から見て、近大生の強みと弱みはどういったところにありますか?
岡崎:まず前提として、企業の方は学生は一人ひとり違うと思っていますので、近大生だからどうという色眼鏡で見ることはありません。その前提でお話したいと思いますが、やはり元気が良いというイメージはあるかと思います。そして、ビジネスという観点では、近大ネットワークは企業が高く買うのではないでしょうか。これだけ卒業生がいて、キャンパスが6つもある総合大学ですから。先ほどリファラル採用のお話をしましたが、人と人との繋がりでビジネスを展開していくというのは、世界の常識でもあります。逆に言うと、せっかくそういった大学にいるのに人の繋がりを活用していないとなると、消極的でチャンスを逃す人だと捉えられてしまうかもしれませんね。
学生B:私は4年生で既に就活は終わっているのですが、即戦力の人材になるためには、残り約半年、どのようなことをすれば良いでしょうか?
池本:入社する会社に関連するマーケット事情を、その会社の一員になったつもりで見てみてください。就職活動という枠組みではなく。遊ぶことや学ぶことも是非やって欲しいですが、社会人の準備としては、これからやっていく自分がビジネスを知り考えるのが大事だと思います。
学生C:もし池本さん岡崎さんが、この時代に学生に戻るとしたら、どんな力を身につけますか?
池本:世の中を変えようとしているビジネスモデルを知り、自分だったらこんなことをしたいとうアイデアを考えておきたいですね。
岡崎:私は人格形成ですね。先ほど、即戦力が求められているというお話をしましたが、それはバッターボックスに入って、いきなりホームランを打って欲しいということではありません。やっていく中で習得して欲しい、速く習得して欲しいということ。であれば、周りからアドバイスをもらえるような人の方が速く上手になりますよね。
AIが開発されるような時代だからこそ、人の事を尊重し、尊敬し、その結果として自分も尊重や尊敬されるといった人間力が求められるのだと思います。
世耕:それでは最後に就活生に向けてメッセージをお願いします。
岡崎:就活をしてくと、上手くいかない事や手詰まりを感じることも多々あるかと思いますが、そういった時は少し時間や空間を広げてみてください。そうすると、「自分はこんなことで悩んでいたのか!?」と思えるはずです。
例えば学歴フィルターを理不尽に思うことがあるかも知れませんが、そんな時は「学歴フィルターがある会社は10年後や20年後どうなっているのだろう?」と客観的に考えてみて欲しいですね。キーワードは「先見」です。
池本:就活を進めるためにはスケジュールを守らなければいけないし、テクニックも必要だと思います。ただし、世の中を変えようといった志を持っていれば、学歴なんて関係ありません。その志を形に変えていくためには、人との繋がりを大切にすることや自分から新しいビジネスモデルに触れること、世界に通用する力を養っていくことが何より大事だと思います。志を持ち続けて頑張ってください。
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