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2016.05.24

日差しの強い季節到来。「光線過敏症」って、どういうこと?

Kindai Picks編集部

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コラム
健康
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日本では、5月から8月にかけて紫外線の量がピークを迎えます。日焼けやシミ予防のために対策をする人は多いと思いますが、実は、紫外線は重大な病気や症状をもたらすこともあります。本格的な夏が来る前に、「光によって発症する病気」について知っておきましょう。

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監修者:
川田 暁(かわだ あきら)
近畿大学医学部皮膚科教授、医学博士
1979年東京医科歯科大医学部を卒業。防衛医科大学校皮膚科講師、米国留学、帝京大学医学部附属病院皮膚科助教授、近畿大医学部皮膚科助教授を経て2004年から現職。専門は皮膚科学。特に日光によって悪化する皮膚疾患(光線過敏症)と乾癬について診療・研究を行っている。


「光で症状が出る」って、どういうこと?


光によって症状があらわれる病気を総称して「光線過敏症」と言う。原因となる光の種類(波長)はさまざまで、紫外線が原因で発症する病気もあれば、可視光(目で見える光)で発症するものもある。そして、多くの場合、皮膚の発疹を伴う。

「本当は何かの病気が隠れているのに、日焼けによるかぶれだと思って病院に行っていない潜在的な患者さんも多いでしょうね。」

そう教えてくれたのは、近畿大学で光線過敏症の研究をされている川田 暁教授。光によって日焼けやシワができるのは程度の差こそあれ、誰にでも共通している現象。しかし光線過敏症は、あくまでも一部の人がなる「病気」であるという。

「一言で光線過敏症と言っても、実はいろいろな種類の病気があり、メカニズムもそれぞれ異なります。例えば、光線過敏症の一つに『色素性乾皮症(しきそせいかんぴしょう)』という病気があります。私たちの体に紫外線が当たると、細胞の中のDNAが損傷を受けることがあるのですが、通常はそれを修復できます。しかし、色素性乾皮症の方は修復することができません。そのため紫外線によるDNAの損傷が蓄積されていって、がんを発症しやすくなってしまいます。」

その他、主な光線過敏症は以下の通り。大まかな発症メカニズムはわかっていても、その根本的な原因までは解明されていないものも多い。


<主な光線過敏症の例>

●DNAの損傷が蓄積
DNA修復機能が働かず、紫外線によるDNAの損傷が蓄積されていく。
(例)色素性乾皮症、Cackayne症候群、Bloom症候群

●代謝異常
代謝に異常が起き、「光と反応すると毒性を持つ物質」が体内に溜まる。
(例)ポルフィリン症、ペラグラ

●光+薬でアレルギー反応
特定の薬を使用中に光を浴びると、アレルギー反応が起きる。
(例)光線過敏型薬疹、光接触皮膚炎

●光にアレルギー反応
光そのものに対してアレルギー反応が起きる。
(例)日光蕁麻疹、多型日光疹、慢性光線性皮膚炎


原因になりやすい化粧品は、やっぱり…。



光線過敏症の疑いがある人は、どうすればいいのか。通常のクリニックでは診断が難しいこともあるため、専門的な皮膚科診療を行っている病院へ行き、検査を受けるのが一番だ。

「一般的な検査法は『光線テスト』と呼ばれるもので、背中やお腹にいくつかの種類の紫外線を当てます。そして、肌が赤くなるか、蕁麻疹や丘疹(小さいブツブツ)が出るかなどを確認するんです。また、ポリフィリン症は代謝が関係していますので採血検査や尿検査をしますし、遺伝子疾患が関係していそうな場合には、皮膚を切り取るか採血をしてDNA解析をすることもあります。」

紫外線B(波長が短くエネルギーが強い)に対する反応はおよそ5分で検査できるが、紫外線A(波長が長くエネルギーが弱い)は検査に30分から40分は必要。さらに、1回検査を受けただけでは確定的な診断はできないことも多く、例えば「多形日光疹」の診断をする場合は、およそ1週間入院して可視光を使った検査をする場合もあるとのこと。また、原因として薬が疑われる場合には、その薬を使った状態で光を当てる検査を行う。疑われる疾患によっては、根気良く検査を受ける必要がありそうだ。ただし、肌がかぶれるからと言って、必ずしも光線過敏症が疑われるとは限らない。

「化粧をした後に外に出ると肌が赤くなるから、自分は光線過敏症だと思い込んでいる女性は結構多いのですが、そういったケースのほとんどが化粧品のみのアレルギーで、光は関係ありません。もちろん一部は光線過敏症ですので、検査を受けることは全く否定しませんが。なお、化粧品関係の光線過敏症では、日焼け止めが原因になっていることが多いですね。」

いずれにせよ、原因が明らかになれば、適切な対処をすることができる。原因不明の発疹で悩んでいる、特に光に当たった時に症状が出ている人は、一度きちんと検査を受けた方が良さそうだ。


光線過敏症は、根本的に治せるか?


薬と光の組み合わせで症状が出ることがわかれば、その薬をやめるか、他のものに変えればいい。また、一度出てしまった発疹はステロイド剤や抗アレルギー剤で押さえ込むことができる。しかし、いずれも対症療法的な治療だ。光線過敏症を根本的に治すことはできないのだろうか。

「残念ながら、現時点では根本治療はなく、対症療法で皮膚の状態を改善するしかありません。色を作る細胞を刺激する『メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)』という成分を飲むと、肌が黒くなっていき、光が吸収されるようになるから、症状が軽くなるはず。アメリカでそういった研究が行われているのですが、まだまだ夢物語で実用段階ではありません。それに、本当に真っ黒になれば効果はあるかもしれませんが、ちょっと日焼けしたような色ではおそらく難しいでしょうね。」

となると、一番大切なのは光に当たらないようにすることだ。これから夏にかけて日光量、特に紫外線量が増えていき、それに伴って光線過敏症の患者数も増加していく。特にアレルギー性の光線過敏症に関しては、「1回あたりこれくらい光を浴びると発症する」もしくは「トータルでこれくらいの照射量が蓄積すると発症する」という“しきい値”があるので、とにかくできるだけ光に当たらないようにしたい。

「白い生地のTシャツやYシャツは、ある程度光を通しますので、服の下で症状が出ることもあります。光線過敏症の方は、できるだけ色の濃い服を着るようにしましょう。」

適切な対処をして症状を抑える治療をしないと、患部が広がっていく可能性もあるとのこと。中には、重症で日中出歩けないという人も…。

今までに原因不明の発疹が出たことがある。長い時間光に当たった時に症状が出ている。これらに心当たりのある人は、光線過敏症かもしれないので早めに皮膚科に相談しておこう。夏はもう、すぐそこだ!

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