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2026.10.19

中咽頭がんの原因はタバコだけじゃない?HPV感染との関係と男性のリスク

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
中咽頭がん
HPV

お笑いコンビ・シャンプーハットの恋さんが中咽頭(ちゅういんとう)がんを公表し、大きな反響を呼んでいます。 恋さんのがんの原因は明らかにされていませんが、一般に「がんの原因」と聞くと、タバコやアルコールを思い浮かべる人が多いかもしれません。ところが近年、意外なウイルスが原因のがんが増えています。それが「HPV(ヒトパピローマウイルス)関連の中咽頭がん」です。 HPVは子宮頸がんの原因として知られていますが、男性にとっても深刻なリスクとなっています。なぜ中咽頭がんは男性に多いのか。治療の実際やワクチンの必要性について、頭頸部がん治療の最前線に立つ近畿大学病院腫瘍内科准教授の田中薫に聞きました。

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田中薫(たなか かおる)

近畿大学病院腫瘍内科 准教授
専門:腫瘍内科

肺がんの診断と抗がん剤治療、頭頸部がんの抗がん剤治療。
教員情報詳細



喉の奥にできる「中咽頭がん」と、近年の傾向

――まず、中咽頭がんとは、どのような場所にできるがんなのでしょうか。

腫瘍内科医・田中
咽頭は鼻の奥から食道へ続く部分で、上咽頭・中咽頭・下咽頭に分けられます。そのうち中咽頭は、口の奥に位置する扁桃腺や舌の付け根(舌根)などを含む場所を指します。咽頭にできるがんは部位によって発生要因や治療方針が大きく異なります。

――中咽頭がんには、どのような特徴や近年の傾向がありますか。

腫瘍内科医・田中
初期には自覚症状が乏しいことがあり、のどの病変が小さくても首のリンパ節への転移をきっかけに発見されることがあります。また、中咽頭がんには喫煙・飲酒との関連が強いものと、HPV感染が関係するものがあります。日本の全国登録データでは、中咽頭がんのおよそ半数がHPV関連と考えられています。

喫煙・飲酒から「ウイルス」へ。男性に多い理由

――なぜ、HPV感染による中咽頭がんが増えているのでしょうか。

腫瘍内科医・田中
従来、中咽頭がんの主な原因として喫煙や飲酒が知られていました。近年、喫煙率の低下などを背景に、喫煙に関連する頭頸部がんが減少傾向にある一方、HPV感染に関連する中咽頭がんは欧米を中心に増加しています。
その結果、中咽頭がん全体に占めるHPV関連がんの割合が相対的に高まっています。日本でも、HPV関連中咽頭がんの割合が増加していることが報告されており、現在では中咽頭がんのおよそ半数がHPV関連と考えられています。
つまり、中咽頭がんの原因として、従来の喫煙・飲酒に加えて、HPV感染がますます重要になっているということです。

――感染経路や男女差については、どう考えられていますか。

腫瘍内科医・田中
HPVは主に性的な接触を通じて感染する、ありふれたウイルスです。口腔・咽頭への感染にはオーラルセックスなどの接触が関係すると考えられています。感染の多くは自然に排除されますが、一部で長期間感染が持続し、がんの発生につながることがあります。感染した時期や経路を個人について特定することは、通常できません。
中咽頭がんは男性に多いがんです。その背景には、喫煙や飲酒の習慣における男女差などが関係すると考えられています。また、HPV関連中咽頭がんも男性に多く、海外の研究では口腔内のHPV感染率自体が男性の方が高いことが報告されています。ただし、こうした性差が生じる理由は完全には分かっていません。

機能の温存を目指す治療。ただし治療の負担は大きい

――治療法や、治療後の経過について教えてください。

腫瘍内科医・田中
がんの広がりやリンパ節転移の状況、患者さんの全身状態などに応じて、手術、放射線治療、抗がん剤と放射線を組み合わせる化学放射線療法などから選択します。中咽頭は食べる、飲み込む、話すといった機能に関わるため、がんを治すことに加えて、これらの機能をできる限り保つことが重要です。化学放射線療法は、手術による切除を行わずに根治を目指せる治療法で、発声や嚥下に関わる臓器を切除せずに治療できることがメリットです。ただし、治療による影響で飲み込みにくさなどの機能障害が残る場合もあります。また、HPV関連の中咽頭がんは、一般にHPV非関連のものより治療成績が良いことが知られています。

――治療時の身体的な負担や、復帰までの期間はいかがでしょうか。

腫瘍内科医・田中
化学放射線療法では、一般的に6~7週間程度かけて放射線を照射し、抗がん剤を併用します。治療中は口やのどの粘膜炎、痛み、飲み込みにくさ、味覚の変化などが生じ、食事や水分摂取が難しくなることがあります。必要に応じて経鼻胃管や胃ろうなどで栄養を補いますが、すべての患者さんに胃ろうが必要なわけではありません。治療終了後もしばらくは食事が取りにくい状態や倦怠感が続くことがあります。回復や仕事への復帰までの期間には個人差が大きく、比較的早期に復帰できる方もいれば、数か月以上の療養を必要とする方もいます。

男性にもHPVワクチンを。そして、異変を感じたら早めの受診を

――予防のためのHPVワクチンや、男性への公費負担について、先生のお考えをお聞かせください。

腫瘍内科医・田中
HPVワクチンは、がんの原因となる型のHPVへの新たな感染を予防するワクチンで、男性にとっても接種する意義があります。HPV関連中咽頭がんの予防にもつながると期待されていますが、中咽頭がんの発症をどの程度減らせるかについては、直接的なデータがまだ限られています。
2026年10月現在、日本では女性のみが定期接種(公費負担)の対象で、男性は国の定期接種の対象ではなく、原則として自己負担となります。ただし、一部の自治体では独自の費用助成が行われています。
HPVワクチンによる感染予防は、将来のHPV関連がんの予防にもつながると期待されています。男性にも接種の意義があることから、経済的な負担によって接種機会が制限されないよう、男性への公費助成の拡充や定期接種化が進むことを期待しています。

――最後に、メッセージをお願いします。

腫瘍内科医・田中
注意していただきたいのは、首のしこり、長引くのどの痛みや違和感、飲み込みにくさ、片側の耳の痛みなどです。特に痛みのない首のしこりが最初の症状となる場合もあります。もちろん、これらの症状があってもがんとは限りませんが、症状が続く場合や原因の分からない首のしこりがある場合には、放置せず耳鼻咽喉科を受診してください。中咽頭がんは、早期に発見し、適切な治療を受けることで根治が期待できる病気です。中咽頭がんには、一般の方を対象とした確立したがん検診がないため、気になる変化を早めに相談することが大切です。



HPVは、特別な人だけに関係するウイルスではありません。
今回の取材で印象的だったのは、中咽頭がんが「早期に発見できれば十分に治る病気」だということ。
喉の違和感や首の腫れなど、小さな異変を見逃さない。そして、ワクチンという予防の選択肢があることを知っておくこと。それが、予防や早期受診への第一歩になります。気になる症状がある方は、ためらわず専門医に相談してみてください。




取材・執筆:近畿大学広報室

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