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雑学・コラム

2026.05.01

過去最高ペースで感染拡大中のはしか(麻疹)は今や「大人の病気」。2026年、日本で何が起きている?

Kindai Picks編集部

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はしか
麻疹
感染

2026年に入り、全国的に過去最高ペースではしか感染者が急増。厚生労働省や日本感染症学会からも注意喚起がされ、日本医師会では急遽、はしか(麻しん)の感染拡大防止への協力を求める動画が公開されています。インフルエンザの約10倍、新型コロナの約6倍にあたる感染力をもつとされるはしか。今、日本でなにが起きているのか。流行の理由や症状、医療機関受診の目安について、近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授の大塚篤司が解説します。

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大塚篤司先生
大塚 篤司(オオツカ アツシ)
近畿大学医学部 皮膚科学教室 主任教授
専門:アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎を含む皮膚アレルギーの診断、病態機序、治療法、皮膚悪性腫瘍、とくに悪性黒色腫に関すること、免疫チェックポイント阻害剤を専門にしています。
教員情報詳細

2026年大流行の「はしか」とは

――今年「はしか」感染者が急増しています。いま日本で何が起きているのでしょうか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
2026年は明らかに「異常な増え方」をしています。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の集計では、第14週(4月8日)までで236例、第15週で299例、第16週(4月22日)で362例と、毎週60例以上のペースで増えています。昨年(2025年)の年間累計265例は、すでに4月の時点で大幅に超えました。その背景には、下記の4点が重なったことが考えられます。

①コロナ禍で世界的にワクチン接種率が下がったこと
②国際往来が完全に戻り海外からの持ち込みが増えていること
③MRワクチン・MMRワクチンの供給が一時逼迫したこと
④SNSで誤情報が拡散しワクチン忌避が広がっていること

アメリカは2025年に排除宣言(※)以降で最多、カナダは27年維持してきた排除認定を2025年に喪失しており、日本も「対岸の火事」ではない状況です。

※世界保健機関(WHO)が定める麻しんの排除確認の国際的判断基準をクリアすることで、土着株が存在しない「排除状態」にあると認定される。

――2026年の増え方は、過去数年と比べてどのくらい深刻なのでしょうか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
2007〜2008年に1万人規模の大流行が起きて以来の警戒水準です。2020〜2022年はコロナ禍の渡航制限もあり年間で数例〜十数例にとどまっていましたが、2024年45例、2025年265例、そして2026年は4月下旬時点ですでに362例。前年同期比でみると4倍以上のスピードで、関係学会・厚労省ともに「2009年以降で最大の流行となる可能性」を明確に指摘しています。
日本は「排除認定国」ですが、これは国内に土着株が3年以上見つかっていない状態を指すもので、海外株が持ち込まれた後の二次・三次感染が広がれば、この認定そのものを失うリスクが現実的に出てきます。

――首都圏を中心に流行しているようですが、関西では現時点でどの程度注意が必要でしょうか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
大阪府の2026年累計報告は4月28日時点で14例と、東京都の100例超に比べれば数字としては少なく見えますが、油断はできません。4月下旬には大阪市西成区のスーパーマーケットや浪速区の医療機関を10歳未満の男児が利用していたことが報道され、接触者調査が進んでいます。
関西で警戒すべき理由は大きく三つあります。一つ目は関西国際空港という国際的な玄関口を抱えていることで、過去にも空港関連の集団感染が起きています。二つ目は、大阪府のMRワクチン第2期接種率が91.4%(2024年度)と、集団免疫の目安である95%を下回っていること。三つ目は、これからのGWで首都圏からの観光客や帰省者の流入が一気に増えることです。一週間後の数字がどうなっているかは、今の私たちの行動次第と言えます。

――ニュースでは感染者がどの店に立ち寄ったかまで報道されていますが、それはなぜでしょうか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
はしかは空気感染で、感染者がその場を離れた後も最大2時間ほどウイルスが空気中に漂います。つまり、同じ時間帯にその店舗にいただけで感染が成立しうるため、保健所はどうしても「同時間帯にその場にいた可能性のある人」全員に呼びかける必要があります。
もう一つ重要なのが、ウイルスに触れてから3日以内であれば緊急のワクチン接種、4〜6日以内なら免疫グロブリン製剤の投与で発症や重症化を防げる可能性があるという点です。時間との勝負なので、立ち寄り先が具体的に公表されるのは、二次感染を一例でも減らすための公衆衛生上の合理的な判断と理解していただければと思います。

――「大人はしか」という言葉を聞きますが、子供のはしかとは違うのでしょうか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
病気そのものは同じウイルスによる同じ疾患ですが、「大人がかかった『はしか』は症状が重い」というのが医学的な実感です。大人では肺炎や脳炎などの合併症の頻度が小児より高く、妊婦さんでは流産・早産につながります。実は2026年の感染者の8割以上が15〜49歳の活動世代に集中しており、20代と30代だけで全体の半数以上を占めます。「大人はかからない」というイメージは、MRワクチンの定期接種が当たり前になった世代の話で、それ以前の世代にとってはむしろ「自分のこと」として考える必要のある病気です。


そもそも、麻疹(はしか)とは

――はしかとはどのような病気ですか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
麻疹(ましん)ウイルスによる急性のウイルス感染症で、高熱・全身の発疹・カタル症状(咳・鼻水・結膜炎)の三つが揃うのが典型です。発疹が「耳の後ろ→顔・首→体幹→四肢」と中心から末梢に広がる典型的な経過をたどる代表疾患でもあります。感染力は現存する感染症のなかで最強クラスで、免疫を持たない人がウイルスに触れるとほぼ100%が発症します。日本は2015年にWHOから「排除状態」と認定された国ですが、海外からの持ち込みを契機に再び国内で広がっており、2026年は2009年以降で最大規模の流行となる可能性が指摘されています。

――発症するとどの部位に、どのような症状が出やすいですか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
はしかは典型的に三つの段階を踏みます。
まず「カタル期(2〜4日)」では38℃前後の発熱と咳・鼻水・結膜充血が出て、いわゆる風邪と区別がつきにくい状態が続きます。この時期に頬の内側の粘膜に直径1mm前後の白い斑点(コプリック斑)が現れることがあり、診断の決め手になる重要な所見です。
いったん熱が下がりかけたタイミングで「発疹期」に入り、再び39.5℃以上の高熱とともに、耳の後ろや首から赤い発疹が出始め、24〜48時間で顔・体幹・四肢へと一気に広がります。発疹は融合する傾向があり、見た目はインパクトが強いものの、強いかゆみは目立ちません。
「回復期」には発疹が褐色の色素沈着に変わってしばらく残り、これも麻疹を後から推定するうえで参考になります。

――重症化するとどうなりますか?最悪の場合どうなりますか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
はしかは「ただの発疹の出る風邪」ではありません。先進国であっても約1,000人に1人が亡くなる感染症です。主な合併症は肺炎・中耳炎・脳炎で、特に肺炎は死亡原因として最も多く、脳炎を起こした場合は約15%が死亡し、生存者でも約3割に後遺症が残るとされています。
さらに見落とせないのが、感染してから数年〜十数年経って発症する「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という進行性の脳疾患で、有効な治療法がなく致死的です。
もう一つ近年注目されているのが「免疫健忘」で、はしかにかかると過去のワクチンや感染で得てきた他の感染症への免疫記憶までが部分的に消去されてしまい、その後しばらく他の感染症にかかりやすい状態が続きます。妊婦さんが感染すると流産・早産のリスクも高まります。

――この病気は人にうつりますか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
極めてうつりやすい病気です。麻疹ウイルスは空気感染・飛沫感染・接触感染のすべての経路で広がり、感染者が部屋を出た後も最大2時間ほどウイルスが空気中に漂うことが知られています。感染力の強さは「基本再生産数(1人が感染させる平均人数)」で12〜18人とされ、インフルエンザの約10倍、新型コロナの約6倍にあたります。
やっかいなのは、発疹が出る前のカタル期(風邪のような症状の時期)にすでに最も強い感染力を持つことで、本人も周囲も「ただの風邪」と思っているうちに通勤電車や職場で広げてしまう構造的な問題があります。感染力のある期間は、おおむね発疹出現の4日前から、出現後4〜5日間程度です。

――予防接種を小さい時に受けていれば抗体を持っているので大丈夫でしょうか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
「子どもの頃に1回打ったから大丈夫」とは言い切れない、というのが正直なところです。はしかワクチンは1回接種で約95%程度、2回接種で97%以上の予防効果がありますが、1回だけだと数%の方には十分な免疫がつきません。特に注意していただきたいのが、1972年10月〜1990年4月頃に生まれた、いわゆる「ワクチン空白世代」(2026年時点でおおよそ30代後半〜50代前半)で、定期接種が1回だった、あるいは制度の谷間で未接種の可能性が残ります。時間の経過で抗体価が下がる「二次性ワクチン不全」も知られており、不安な方はまず母子手帳で接種歴を確認し、はっきりしない場合は抗体検査か追加接種を医療機関にご相談ください。

――代表的な感染原因を教えてください。

大塚先生
皮膚科医・大塚
原因ウイルスは麻疹ウイルス(パラミクソウイルス科)一つです。感染ルートとしては、海外で感染した人が帰国・来日後に発症するいわゆる「輸入例」が起点となるパターンが最も多く、2026年は東南アジア(ベトナム・インドネシア)、ヨーロッパなどからの持ち込みが目立ちます。いったん国内に入ると、ワクチン接種が不十分な人を中心に、職場・学校・公共交通機関・商業施設・医療機関などで二次感染が広がるという流れです。今年は海外渡航歴のない国内感染例も多数報告されており、市中での感染連鎖がすでに起きていると考えるべき段階に入っています。

――年齢や性別、体質など、発症しやすい人の特徴はありますか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
性別による差はほとんどありません。一番リスクが高いのは「免疫を持っていない人」で、具体的には
①ワクチンを2回打っていない方
②接種記録が残っておらず接種歴が不明な方
③1歳未満でまだ定期接種を受けていない乳児
です。先述の「空白世代(1972年10月〜1990年4月頃の生まれ)」は接種が1回だけだった可能性が高く、現在の流行の中心年齢層と完全に重なります。また、がん治療中・ステロイドや生物学的製剤を使っている方など免疫が抑えられている方も重症化リスクが高く、ご自身の判断ではなく主治医に相談していただきたい層です。実際、2026年第12週までの全国報告152例のうち、未接種・1回のみ・接種歴不明を合わせると半数以上を占めています。

――はしかは子供がかかるものと思っていましたが、大人でも感染するのでしょうか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
むしろ今や「大人の病気」と言えるほど、流行の中心は大人世代に移っています。2026年の累計報告299例(第15週時点)の年齢分布をみると、20代が31%、30代が21%で、この二つだけで半数以上。中央値は27〜30歳前後です。ワクチン制度が整う前後の世代差がそのまま出ているかたちで、社会の中核を担う「働く世代」「子育て世代」がもっとも感染しやすく、かつ広げやすい立場にあります。電車・職場・学校・飲食店・商業施設で1日に多くの人と接触する世代が、最強の感染力を持つカタル期(風邪症状の時期)に「ちょっと風邪っぽいけど出勤しよう」と動いてしまうのが、流行の構造的な原因になっています。

発症したらまずは医療機関に「電話」

――発症したときは、まず何をすべきですか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
一番大事なのは、いきなり医療機関に行かないことです。はしか疑いの方が予約なしで来院すると、待合室で他の患者さんに広がってしまうため、医療機関側にも非常に負担がかかります。まずは電話で「発熱と発疹があり、はしかの可能性があるかもしれない」と伝え、受診時間や入り口について指示を仰いでください。保健所への相談も有効です。
自宅では
①外出を控える
②同居家族とできるだけ別の部屋で過ごす
③タオル・食器を分ける
④部屋の換気をこまめに行う
⑤家族の母子手帳でワクチン歴を確認しておく
を心がけてください。

受診の目安は、「39℃以上の高熱が2日以上続く」「全身に発疹が広がる」「咳・鼻水・結膜充血が目立つ」「身近にはしか患者がいた/流行地から帰国したばかり」のいずれかが当てはまる場合です。

――医療機関ではどのような治療が行われますか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
残念ながら麻疹ウイルスに直接効く特効薬(抗ウイルス薬)は今のところありません。治療の中心は対症療法で、解熱・水分や電解質の補正・栄養管理・必要に応じた酸素投与、二次性の細菌性肺炎などには抗菌薬を併用します。重症例や合併症が疑われる場合は入院管理となります。皮膚科的には、発疹自体は強いかゆみを伴うことは少ないですが、高熱で消耗した皮膚は乾燥しやすいため、刺激の少ない保湿などスキンケアでサポートします。むしろ医療がもっとも効果を発揮するのは「感染してから発症する前」の段階で、患者さんと接触してから72時間以内であれば緊急のワクチン接種、4〜6日以内なら免疫グロブリン製剤の投与で発症・重症化を抑えられる可能性があります。接触の心当たりがある方は、発症してからではなく、その時点で早めに医療機関にご相談ください。

感染を広げないために

――自分が感染した場合、感染を広げないために注意すべきことは?

大塚先生
皮膚科医・大塚
はしかは学校保健安全法で「解熱後3日を経過するまで出席停止」と定められており、社会人の方も同じ目安で自宅療養していただきたいです。具体的には、
①個室で過ごし、家族との接触をできるだけ少なくする
②通院は事前連絡のうえマスク着用で(マスクは万能ではありませんが飛沫を抑える意味は残ります)
③公共交通機関・商業施設の利用は避ける
④保健所からの行動歴の聞き取りに正直に協力する
⑤同居家族や濃厚接触者にワクチン歴の確認を促す
ことが重要です。
行動歴は記憶があいまいになるので、症状が出る数日前からどこに行ったか、誰と会ったかをメモしておいていただけると、その後の接触者対応が一気にスムーズになります。

――家族が感染した場合、自宅で気をつけるべきことはありますか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
同じ家にいる以上「完全な隔離」は難しいのですが、リスクを下げる工夫はいくつもあります。
まず患者さんは個室で過ごし、ドアを閉めたうえで時間を決めて頻回に換気をしてください。タオル・食器・寝具は分け、共有スペースの利用時はマスクをつけていただきます。
次に、家族全員のワクチン歴を母子手帳でチェックし、不明な方や1回のみの方は接触から3日以内のワクチン接種について医療機関に相談してください。特に注意していただきたいのが、まだワクチンが打てない0歳児、妊娠中の方、免疫が下がっている方(治療中の方など)が同居している場合で、この方々への二次感染は重症化リスクが高く、保健所と連携した特別な対応が必要です。保健所による健康観察は接触から21日間続きますので、その間の体調変化(発熱・発疹)には敏感でいてください。

――感染しない為に気をつけた方が良いこと、対策はありますか?

大塚先生
皮膚科医・大塚
対策はシンプルで、「ワクチンを2回打つ」これに尽きます。手洗いやマスクは大事ですが、空気感染するはしかに対しては残念ながらワクチンの代わりにはなりません。具体的なステップとしては、まず母子手帳で2回接種が確認できれば、まずは安心してよい層です。記録が見つからない、1回しか打っていない、自分は空白世代に入ると思う、という方は、医療機関で麻疹IgG抗体検査(2,500〜4,000円程度、結果は1週間ほどで判明)を受けるか、迷うくらいなら追加接種をしてしまう、という選択肢があります。海外渡航を予定している方は、出発の4週間前までには接種を済ませておきたいところです。流行地域では人混みや換気の悪い屋内空間を避ける、体調不良のときは無理に外出しない、といった基本も、結果としてはしか以外の感染症対策にもつながります。

――GW中の過ごし方など注意喚起があればお願いします。

大塚先生
皮膚科医・大塚
今年のGWは、はしか流行という観点で見るとかなり緊張感のある連休になります。理由は三つあります。一つ目は海外旅行が一気に増えることで、ベトナム・インドネシア・欧米など、はしかが流行している地域への渡航が珍しくありません。出発前に必ずワクチン接種歴を確認し、不安があれば接種をご検討ください。二つ目は国内の大規模な人の移動で、新幹線・空港・テーマパーク・百貨店など、まさにはしかが広がりやすい環境が連日生まれます。三つ目は、帰国・帰省後の発症です。はしかの潜伏期間は10〜12日で、連休後にちょうど発症するタイミングと重なります。連休明けに発熱・発疹が出た場合は、まず電話で医療機関に相談し、いきなり受診しないでください。「自分は健康だから大丈夫」ではなく、「自分が誰かにうつさないために何ができるか」という視点で、この連休を過ごしていただけたらと思います。

▼日本医師会公式動画
https://www.youtube.com/watch?v=y0HvUn1wwmU

取材・執筆:Kindai Picks編集部
企画・編集:Kindai Picks編集部

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