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雑学・コラム

2026.05.26

カビの季節がやってくる…放置で肺炎も? 梅雨前にやるべき“正しいカビ対策”を微生物・建築・医療の専門家たちが伝授

Kindai Picks編集部

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梅雨

梅雨が近づくと家の中がなんだか湿っぽい。そうなると気になり始めるのが室内のカビです。キッチンや浴室、トイレなど、湿気がこもりやすい場所に、いつのまにかカビが広がっている…ということがあります。カビを放置してしまったら、住まいや健康にどんな影響が出るのでしょうか。梅雨の季節にやるべきカビ対策を研究分野が異なる3人の専門家に聞きました。

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微生物の専門家に聞く。カビの正体と増殖する条件とは

牧 輝弥(まき てるや)の写真
牧 輝弥(まき てるや)

理工学部 生命科学科 理学専攻 教授
大気、水圏、土壌に生息する微生物(細菌やカビなど)を採取し、その生態学的特徴を、環境ゲノムDNA解析を使って調べ、健康や生態系への影響を解明します。人の生活に役立つ微生物も、分離培養し探索しています。

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まず登場するのは微生物の専門家です。そもそも「カビ」という生物の正体はどういうものなのか聞きました。


カビの正体とは?

インタビューを受ける牧先生の写真

——カビの種類はとても多いと思いますが、身近なものとして、どんなカビがあげられますか?

理工学部・牧
カビはこの地球上に150万種存在するといわれており、今わかっているだけでも約10万種あります。家の中で一番よく見かけるのは浴室などに生える、いわゆる黒カビです。お酒を醸造するのに欠かせないコウジカビや、チーズにつけたカビのように食べられるものもありますが、野菜やお餅などにつくカビは、少量なら問題ないかもしれませんが、基本的に食べるのはお薦めできません。生えたては白いのですが、菌糸をのばし、胞子を作り出すと黒くなっていくのが生活環境で目立つクロカビです。
カビは常に空気中に存在していて、1リットルあたり 10個から50個ぐらいの胞子が飛んでいます。その中の相当数は死んで、下に落ちて消えていきます。生きている胞子だけが食べ物や水分のある場所について発芽し、成長して、私たちの目にとまるのです。


住まいの中でカビが好む環境と撃退策

——カビが発生しやすい環境や場所についておしえてください。

理工学部・牧
家の中で発生する黒カビは、湿度が高く、冷たい空気が入り込みやすい場所に生えます。湿度が高いところに冷たい空気が入ると、壁やドアが冷えて結露が発生します。そこにカビの胞子がつくと、発芽して菌糸を張り巡らし、周囲がどんどん黒くなっていくのです。浴室のタイルの目地やドア付近も発生しやすいですね。人が体を洗った後に残った垢などの有機物を餌にして、さらに増殖するのです。


結露している窓の写真

——具体的に、有機物とはなんでしょう?

理工学部・牧
空気中に飛んでいる窒素やリンを含んだ粒子などのほか、人間の垢や石鹸カスも有機物です。除菌やカビの抑制のためにアルコールを噴霧する人もいると思いますが、アルコールも有機物ですので、残ったアルコールが変化してカビの餌になることがあります。だから、除菌後は乾いた布などで、しっかり拭いておかないといけません。


——カビが増えやすい素材はありますか?

理工学部・牧
水がつきやすくツルツルした素材の表面にもカビがつきやすく、キッチンのシンクや玄関の出入り口のタイルなどが増えやすいです。家電も要注意です。空気清浄機のフィルターを長い間交換しないでいると、フィルターに溜まったほこりや油の成分を栄養として、カビが増殖し始めます。そのまま使用すると、カビが空気中に吹き出されて循環します。カビを避けるために使っているつもりが、手入れを怠ると、逆に増やしてしまう危険性があるんです。除湿機に溜まった水や、エアコンのフィルターも同じで、こまめに掃除しないといけません。


——カビの増殖に気づくポイントはありますか?

理工学部・牧
気づきやすいのはにおいですね。カビ臭いと感じる時点で、目で発見できる程度に成長していると思います。
カビは、利用できるものはなんでも利用して増殖するため、抗菌剤だけでは対処できません。こまめな掃除が一番です。一度発生してしまうと、掃除をしても、少しでも残っていればまたすぐに生えてきます。カビの胞子は空気中に飛んでいますし、完全に除去するのは難しいのですが、薬局などで売っている次亜塩素酸を掃除に使うと除菌しやすいと言えるでしょう。


——掃除が大事なんですね。これから夏に向かいますが、近年のような猛暑でもカビは増殖できるのでしょうか。

理工学部・牧
暑すぎる環境ではカビも元気をなくすのですが、室内が20~30℃ぐらいで、湿度が60%を超えると増殖し、目につきやすくなります。


——ほかに、気づきにくいけれど、カビが発生しやすい場所はありますか?

理工学部・牧
湿気がたまりやすい靴箱も要注意です。例えば、一年を通じて湿度の高い日本海側の地域などでは、靴箱の中でよく革靴にカビが生えてきます。革自体が脂質などを含んだカビが生えやすい有機素材であり、磨くためのオイルもカビの餌になります。密閉された靴箱の中に保管したままにせず、風通しのよい場所に置いて、適度に履くことが大事です。

金魚鉢や水槽にもカビはいますが、カビが生きていくのに酸素が必要なので、部屋の壁などに見られるカビは水の中にはあまりいません。ただ、水草の表面や金魚の体に生えやすい別のカビもいて厄介です。魚の病気もカビが原因であることが多いですね。


建築の専門家に聞く。気密性の高い住宅でカビを防ぐには

安福 勝(あぶく まさる)の写真
安福 勝(あぶく まさる)

建築学部 建築学科 総合理工学研究科 建築学研究科 教授
断熱材、吸放湿材の物性、雨が建物に及ぼす影響、建築・文化財の塩害等について研究しています。4年間ベルギーにて研究し学位を得ました。その後、スイスで1年間の研究生活を経験しています。

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家の中でカビが発生すると心配になるのが、住宅そのものへの影響です。湿気が住宅に与える影響を研究する専門家に聞きました。


“湿害”が家を蝕む!

インタビューを受ける安福先生の写真

——近年、住宅にカビが発生しやすくなっていると聞いたのですが、気候変動と関係があるのでしょうか?

建築学部・安福
はい、関係あります。全国的に気温の上昇だけではなく、空気中の水分量も増えており、結露とカビの相談が増えています。その中で、新しい住宅で問題が発生するケースと、これまで問題がなかった住宅で、最近になって発生するようになったケースが見られます。
日本の常暑地域、つまり蒸し暑い地域の代表的な地点の50年以上の気候変動データを見ると、特にこの10年、空気中に含まれる水分量の上昇が激しいのです。2020年ごろを境に、これまで見られなかったような問題が増えてきています。地域差はありますが、全国的に同じ傾向です。


——住宅に結露やカビが発生すると、具体的にどういう被害が出るのでしょう。

建築学部・安福
結露はカビの原因になりますが、最大の問題は、長期的な結露が建物そのものを腐らせてしまうことです。建材が腐ったり、金属に錆が発生したりするほか、断熱材が傷みやすくなるだけでなく、水を含むと非常に熱を伝えやすくなり、断熱性能が落ちてしまいます。ここまでになると、壁を壊して何百万円、何千万円かけて改修しないといけません。

住宅模型のイメージ写真


——カビが生えるのは初期段階で、住宅自体に大きなダメージを与えるのは湿気や水分ということでしょうか。

建築学部・安福
そうですね。カビが壁の中にまで入り込んで、内装や壁の中など外から見えない部分を蝕んでいることもありますが、やはり問題は水分です。


——では、カビが生えてきたら最初の危険信号だと考えられますね。

建築学部・安福
はい。カビが住宅自体を壊すことは滅多にありませんが、健康障害や強烈な臭いが発生して生活に支障が出るのは問題ですね。人が住んでいればすぐ気づくんですけど、ホテルなどで、普段使われない部屋があると、気づいたら臭いが発生するほどの状態になっていたということがあります。住宅でも、地下室や納戸のような部屋があれば、要注意です。


今すぐできる住まいのカビ対策

——昔ながらの日本家屋と、鉄筋コンクリート造のマンションなどの住宅では、どちらがカビが発生しやすいのでしょう?

建築学部・安福
昔ながらの日本家屋の方が、カビは発生しにくいかもしれません。通気性が高く気密性が低いので、たとえ水分があってもすぐ逃げるからです。風が通ると、住む人は寒くて不快かもしれませんがカビは発生しにくくなります。コンクリート造など、気密性の高い建物は湿気がこもるだけでなく、コンクリートが非常に熱を伝えやすいので、結露も発生しやすいです。だから、断熱がうまく施されていないコンクリート造の建物は、カビが発生しやすいです。


——断熱というのがポイントなのでしょうか。

建築学部・安福
日本の建築の歴史をたどると、木造から鉄筋コンクリート造が増え、アルミサッシが普及しました。コンクリート造は、断熱性能が低く、かつ気密性が高いので、カビが発生しやすい住宅だといえます。近年、北海道を中心に断熱性能を高める活動が広がっています。断熱性能が高まると温度が変化しなくなるので、カビの原因の一つである結露が発生しなくなります。ただし、部分的に断熱性能を高くすると、温度の高いところと低いところの差が生まれ、むしろ結露が発生しやすくなりますから、しっかりと住宅全体を断熱することが重要です。北海道では断熱性能の高い住宅が普及しつつありますが、全国的にみるとまだまだ普及しているとはいえませんし、欧米に比べると遅れています。


——私たちがすぐにできる住まいのカビ対策を教えてください。

建築学部・安福
一番の対策は除湿機です。雨の日なら湿度を40%程度に設定して、夏の間はつけっぱなしにしておくほうがいいです。換気は重要ですが、除湿機を稼働させているときに換気をすると効果が低くなるので、窓を閉めることが重要です。

1台の除湿機で家全体を除湿したい場合は、除湿機と合わせて扇風機やサーキュレーターを弱運転でかける方法があります。建物全体の空気をかき混ぜるようにすれば、効果が高まります。


——近年の暑さだとエアコンもつけっぱなしで電気代が気になりますが、合わせて除湿機もつけておくほうがいいんですね。

建築学部・安福
そうですね。それでもカビが出る場合は、換気の制御がうまくいっていないことも考えられます。単純に窓を開けておけばいいという話ではなく、換気用のファンの設置場所を建物全体で設計しなければならないこともあります。そうなると専門的な知識が必要なので、建築業者や、建築士などに相談されるほうがいいですね。でもまずは除湿機とサーキュレーターでやってみてください。


専門医に聞く健康障害と対策。その咳、もしかして「カビ」のせい?

西山 理(にしやま おさむ)の写真
西山 理(にしやま おさむ)

医学部 呼吸器内科・アレルギー内科 准教授
主に間質性肺炎について臨床的な研究をしています。さらに慢性閉塞性肺疾患、肺高血圧症、呼吸リハビリテーション、在宅酸素療法、急性肺傷害などの管理についても臨床研究を進めています。

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身の回りにカビが発生すると、人間の体にはどんな影響があるのでしょうか?アレルギーの専門医に聞きました。

カビが引き起こす「感染症」と「アレルギー」

インタビューを受ける西山先生の写真

——カビが原因の健康障害があると聞きました。代表的なものを症状も含めておしえてください。

医学部・西山
カビ(真菌)が肺など体内に入り込んで引き起こす疾患は、大きく分けて「感染症」と「アレルギー」の2パターンがあります。

まず感染症として代表的なのが「深在性真菌症(しんざいせいしんきんしょう)」です。中でも「アスペルギルス」というカビを吸い込んで肺に感染を起こすタイプが多く見られます。持病がある方やステロイド薬・免疫抑制薬を服用しているなど、免疫力が低下している方は発症しやすいので注意が必要です。主な症状は、咳や痰、発熱、倦怠感、そして痰に血が混じる「血痰(けったん)」などです。

次にアレルギーによる疾患です。喘息患者さんの一部に見られる「アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)」は、咳や痰に加えて「ゼーゼー、ヒューヒュー」という喘息特有の喘鳴(ぜんめい)が強くなるのが特徴です。

また、肺に炎症を起こす「過敏性肺炎」も無視できません。高温多湿でカビの繁殖しやすい環境に疾患が多く、日本では夏場、「トリコスポロン」というカビを吸い込むことで起きる「夏型過敏性肺炎」が多く報告されています。発熱や咳、呼吸困難が主な症状ですが、一般的な風邪と違って痰があまり出ないのが特徴の一つです。


——症状が出たとき、病院を受診する目安はありますか?

医学部・西山
風邪であれば通常1週間程度で落ち着きますが、症状が改善しない、あるいは倦怠感が非常に強い、動いたときに息切れを感じる、といった場合です。「ただの風邪かな?」と思って市販薬で様子を見たり、かかりつけ医で風邪薬を処方されたりしても、一向に良くならない場合は、呼吸器専門医のいる病院を受診してください。


——もし重症化してしまったら、どうなるのでしょうか。

医学部・西山
重症化すると肺の病変が広がり、日常生活に支障をきたすほどの強い息切れ(呼吸不全)を招きます。肺の深在性真菌症で、血痰が悪化して「喀血(かっけつ)」、つまり口から大量の血を吐くような状態になると、窒息の危険性もあり命に関わります。また「過敏性肺炎」の場合に、掃除していないエアコンや加湿機、浴室などに潜むカビを長期間吸い込み続けると、肺が硬く縮んで元に戻らなくなる「線維化(せんいか)」が起き、深刻な事態を招く恐れがあります。


マスクをした人の周りにカビの胞子が舞うイメージ写真


身近に潜むカビ増殖の罠〜健康障害を防ぐには

——カビによる健康障害を引き起こさないために、日頃からしておくべきことを教えてください。

医学部・西山
カビを生活環境からゼロにすることは不可能です。大切なのは「カビを増やさない、なるべく減らす」という意識を持ち日常的に掃除をしておくことです。
自宅の環境が原因で過敏性肺炎などを発症してしまった場合、入院などで、自宅から離れるだけで症状が劇的に改善することもあります。しかし、元の環境に戻れば再発してしまいます。こういった場合は、自分で掃除をするとさらに胞子を吸い込んで悪化する恐れがあるため、家族に協力してもらうか、プロの掃除業者に依頼して、徹底的にカビを除去してもらうことをお勧めします。
日常的には、汚れがたまったり、カビが目立つようになってから一気に掃除するのではなく、日頃のちょっとした心がけと定期的なケアが、健康を守ることにつながります。


「カビを増やさない」環境づくりからはじめよう

カビは空気中に常に存在しているため、完全になくすことはできません。大切なのは、「発生させない」「増やさない」環境をつくることです。3人の専門家の話から見えてきた、梅雨から夏にかけて特に意識したいポイントをまとめました。

  • 湿度は40〜50%程度を目安に保つ
  • 結露はすぐに拭き取る
  • 浴室やキッチン、洗面所の換気と乾燥
  • 除湿機を活用し、サーキュレーターで空気を循環させる
  • エアコン・空気清浄機・除湿機はこまめに手入れする
  • 「なんとなくカビ臭い」は危険信号
  • 咳や息苦しさが続くなら受診を


取材を通して印象的だったのは、「カビは特別な場所だけに発生するものではなく、私たちのまわりに常に存在している」ということでした。なんとなく気になりながら後回しにしていた結露やエアコンのフィルター、靴箱の湿気など、身近なところに原因がひそんでいることを改めて実感しました。

毎日のちょっとした換気や掃除、湿度管理の積み重ねが、住まいと健康を守る第一歩になります。湿度が高くなる梅雨前からカビ対策を心がけることは重要ですね。
梅雨や夏を気持ちよく過ごすためにも、改めて家の環境を見直してみましょう。


この記事を書いた人
笠原 美律(カサハラ ミノリ)
まち情報や時事問題、子育て・教育、専門家取材の機会を多く持つ。特に得意な分野は、食と農。書籍や雑誌、カタログ、冊子など紙媒体の企画編集、インテリアや食の撮影ディレクションも行う。カラダにいいコトや食が大好き。


取材・執筆:笠原美律
編集:アール・プランニング


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