2025.09.30
日焼け予防は年中必要!?酷暑ジャパンの新常識とは【専門家に聞く】
- Kindai Picks編集部
33 View
日本の夏は年々厳しさを増し、秋になってもなお、強い日差しを浴びる期間が長くなりました。「ちょっと外に出ただけなのに、気付いたら日焼けしていた…」という経験はありませんか? 洗濯物を干す、買い物に行くといった短い時間でも、紫外線は確実に私たちの肌に降り注いでいます。シミやシワも気になるし、昨今の日焼けが肌に与える影響を正しく知るべく、近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授の大塚篤司先生にお話をうかがいました。
この記事をシェア
お話を伺った先生

専門:アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎を含む皮膚アレルギーの診断、病態機序、治療法、皮膚悪性腫瘍、
とくに悪性黒色腫に関すること、免疫チェックポイント阻害剤を専門にしています。
教員情報詳細

――今年はとりわけ暑さが厳しく、暑い期間も長くなりました。強い日差しで、日常生活をしているだけでも日焼けしてしまって、肌の状態が気になっています。

――晴れた日も多く、紫外線が強かったと思います。実際に日焼けしやすい状況だったのでしょうか。

――紫外線が多いのは、真夏だけでしょうか?

――そもそも紫外線とはどういうものなんでしょうか

紫外線にはUVA(320〜400nm)、UVB(280〜320nm)、UVC(100〜280nm)の3種類があります。このうちUVCはオゾン層でほぼ吸収されるため地表に届きません。そのため、私たちの肌に影響を与えるのはUVAとUVBです。UVAは、肌の奥にある真皮まで届き、UVBは表皮に作用します。


※メラノサイト(melanocyte)…皮膚や毛髪、眼の色にかかわる色素細胞

――日焼けというのは皮膚の炎症なんですね。

――かつて黒く焼けた肌が魅力的だと言われた時代もありました。

――「子どもは太陽に当たる方が成長する」というのは、過去の考え方なんですね。

実際に日焼けによる健康被害は増加しています。先ほども申し上げたように、急性では皮膚の赤み・腫れ・水ぶくれといった目に見える症状が出ます。目に見えない慢性として、シミ・しわ・皮膚がんのリスク上昇があげられます。紫外線は皮膚の遺伝子に損傷を与え、皮膚がんの発症リスクを高めることがわかっています。また、熱中症や脱水症状も併発しやすくなります。とくに高齢者は老化が加速し、良性・悪性の腫瘍が発生しやすくなるなど、健康にとって、良いことはありません。

――日焼けには注意しないといけないということはわかりました。室内にいても日焼けをするのでしょうか?

――え!こわい!

――室内にある明かりはどうでしょうか?


――室内でも予防することが必要なんですね。


――日焼け止めや日傘は女性が使うイメージでしたが、もうそんな状況じゃなさそうですね。男性や子どもも対策が必要ですね。

第一に日焼け止めを
日焼け止めに記載してあるSPF、PAとは
SPFとは、UVB防止効果を示す数値です。たとえば、SPF50は紫外線量を1/50に減らす効果があるということを表しています。PAとはUVA防止効果を示すもので、+の数が多いほど強く、PA++++が最高です。紫外線吸収剤と紫外線散乱剤
日焼け止めの種類には紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の2つがあります。紫外線吸収剤は化学的なもので、肌の上に膜を作って紫外線を吸収します。軽い塗り心地ですが、肌刺激の可能性があります。紫外線散乱剤は物理的なもので、粉末で肌の表面で紫外線を反射・散乱させます。肌に優しいですが白浮きしやすいのが難点です。選び方のポイント
男女や年齢に関わらずシーンごとに選ぶことが大切です。日常生活ではSPF30/PA++。屋外ではSPF50/PA++++くらいがおすすめです。ただし敏感肌の人は散乱剤を優先するほうがいいですね。注意点としては、 汗で落ちやすいので2〜3時間経ったら塗り直しが必要です。男性用や子ども用も成分は同じですが、塗り心地やボトルのデザインは変えてありますね。男性は顔に何かを塗るということに慣れていないので、伸びが良くてサラッとした使用感のものが多いようです。子ども用は低刺激、ノンケミカルなど、肌にやさしいのが特徴です。効果的な使い方
日焼け止めは、ムラなく塗ることが大切です。顔であれば額や鼻、頬を中心に円を描くように広げ、首は耳の後ろまできちんと塗ります。体も二の腕から肩にかけて、露出している部分を丁寧にカバーしてください。量の目安は、顔だけでもパール粒2個分ほど必要です。2〜3時間ごとに塗り直すのが基本で、特に汗をかいたときはすぐに塗ることをおすすめします。メイクをしている時は、上から使えるパウダータイプやスプレータイプを取り入れると便利です。
年間を通して使用するの?
日焼け止めは夏だけでなく、年間を通して使ってください。紫外線の量は夏に多くなりますが、秋冬や春も一年中降り注いでいます。曇りや雨の日でも紫外線はゼロにはならないので、毎日の習慣にしてほしいですね。また、どんな日焼け止めを使った場合でも、夜には必ず石けんなどで洗い流してください。塗ったまま寝てしまうと、肌に負担がかかってしまいます。
日傘が効果的
日傘の効果
UVカット率99%以上の日傘なら、皮膚に届く紫外線量を大幅に減らすことができます。実際、日傘を使うと、使わないときに比べて、熱中症の指標となるWBGT値(※)が1〜2℃下がり、体感温度も全身で1〜2℃、頭部では4〜9℃も低くなると報告されています。紫外線だけでなく暑さ対策としても有効なんですね。ただし、日傘でも地面からの反射光までは防げないため、日焼け止めとあわせて使うことが重要です。※WBGT値(Wet Bulb Globe Temperature/湿球黒球温度)…気温・湿度・輻射熱を総合的に評価した熱中症予防のための指標

日傘の選び方
性能面では遮光率99%以上、UVカット率99% のものを選ぶと、紫外線をしっかり防ぎながら、暑さ対策にもつながります。色は、外側は白で熱を反射し、内側は黒で光を吸収するタイプが効果的です。素材はポリエステルやコットンにUV加工が施されたものが安心です。
サイズは50cm以上あると体をしっかり覆ってくれます。晴雨兼用タイプなら、急な雨の日にも活躍します。様々なデザインがあるので、機能性と合わせて気に入ったものを選びましょう。ちなみに、濃い色の生地は紫外線を通しにくい反面、生地自体が熱を吸収して熱くなりやすいことを覚えておきましょう。
その他の紫外線予防法
服装では、つばの広い帽子、アームカバー、長袖のUVカット衣類、UVカットレンズのサングラスが効果的です。行動習慣としては、日差しの強い10〜14時の外出はできるだけ避け、やむを得ない場合はなるべく日陰を利用。時間帯や場所を工夫して、受ける紫外線量を減らします。
内面のケアとして、ビタミンCを含む食品(果物や野菜)を積極的にとることは、抗酸化作用で肌を守る助けになります。ただし、柑橘類の皮には「ソラレン」という成分が含まれており、摂取や皮膚に付いた後に紫外線を浴びると炎症や色素沈着を起こすことがあります。食べ過ぎや摂取直後の直射日光には注意してください。
また、ストレスを減らし、十分な睡眠をとることも免疫力を高め、肌の回復力アップにつながります。

すぐにやるべきケア
赤み・ヒリヒリ・腫れが出たら、すぐに冷水シャワーや濡れタオルで冷やして炎症を抑えます。次に保湿です。使いなれた化粧水や乳液、ワセリンなどでうるおいを補給。痛みが強い場合は医師の指導のもとでステロイド軟膏を使うのも有効です。やってはいけないことは、熱いお湯を浴びると炎症が悪化し、皮を無理に剥くと感染リスクが高まります。フェイスパックも刺激になるのでNGです。
水ぶくれができたり体調不良を感じたら、早めに医療機関を受診してください。基本的に72時間以内のケアが重要です。


取材を終えて
10代の頃から「肌が強いから大丈夫」と思い込み、日焼けにはあまり気を配ってきませんでした。出かける前に化粧と一緒に日焼け止めをひと塗りするだけで、塗り直しもせず、日焼け後はフェイスパックで水分を補えば十分だと信じていたのです。外に出ることが多い日々で、紫外線を浴び続けてきたことを、今さらながら反省しています。無防備な日焼けが将来のシミや老化、健康リスクにつながることを知って、これからは油断や過信をやめ、今回教わった紫外線対策を続けようと決心しました。写真・取材 松田 きこ
編集 ウエストプラン
この記事をシェア