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2025.09.30

日焼け予防は年中必要!?酷暑ジャパンの新常識とは【専門家に聞く】

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
健康
医学部
日焼け
大塚篤司
皮膚科学

日本の夏は年々厳しさを増し、秋になってもなお、強い日差しを浴びる期間が長くなりました。「ちょっと外に出ただけなのに、気付いたら日焼けしていた…」という経験はありませんか? 洗濯物を干す、買い物に行くといった短い時間でも、紫外線は確実に私たちの肌に降り注いでいます。シミやシワも気になるし、昨今の日焼けが肌に与える影響を正しく知るべく、近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授の大塚篤司先生にお話をうかがいました。

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お話を伺った先生

大塚篤司先生
大塚 篤司(オオツカ アツシ)
近畿大学医学部 皮膚科学教室 主任教授
専門:アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎を含む皮膚アレルギーの診断、病態機序、治療法、皮膚悪性腫瘍、
とくに悪性黒色腫に関すること、免疫チェックポイント阻害剤を専門にしています。
教員情報詳細


紫外線とはどんなもの?

――今年はとりわけ暑さが厳しく、暑い期間も長くなりました。強い日差しで、日常生活をしているだけでも日焼けしてしまって、肌の状態が気になっています。

大塚先生
大塚先生
気象庁の発表によると、今年の夏(6~8月)の全国平均気温は1898年以降で最も高かったようです。近畿大学のある関西圏でも平年(1991~2020年平均)より2℃も高く、体感としても厳しい暑さでした。そうした環境下では、日焼けを心配する声が増えるのも自然なことです。

――晴れた日も多く、紫外線が強かったと思います。実際に日焼けしやすい状況だったのでしょうか。

大塚先生
大塚先生
はい、紫外線の量と日焼けには相関関係があります。近年の猛暑と気候変動によって、紫外線量は年々増加しており、気象庁の観測でも「非常に強い」レベルの日が増えています。特に近年の夏は危険度が高い状態が続いており、10年前と比べると紫外線量は4.6%増えています。また大気汚染の改善によって空気が澄んで、結果的に紫外線が透過しやすくなっていることも影響しています。

――紫外線が多いのは、真夏だけでしょうか?

大塚先生
大塚先生
紫外線の量は、3月頃から急増し、5〜7月にピークを迎えます。だいたい4〜9月で年間の70〜80%を占めます。でも、だからといって秋冬も油断はできません。量が減るとはいえ、紫外線は降り注いでいますから1年中警戒が必要です。ちなみに1日の中では10〜14時が最も強く、地理的には南に行くほど量が増えます。

――そもそも紫外線とはどういうものなんでしょうか

大塚先生
大塚先生
紫外線とは、太陽光に含まれる電磁波の一種で、波長が10〜400nm(ナノメートル)の範囲の不可視光線です。可視光線より波長が短く、可視光線の中で一番波長が短い紫色の外側にあるため「紫外線」と呼ばれています。よく耳にするUVというのはUltraviolet(ウルトラバイオレット)の略で、紫外線のことです。

紫外線にはUVA(320〜400nm)、UVB(280〜320nm)、UVC(100〜280nm)の3種類があります。このうちUVCはオゾン層でほぼ吸収されるため地表に届きません。そのため、私たちの肌に影響を与えるのはUVAとUVBです。UVAは、肌の奥にある真皮まで届き、UVBは表皮に作用します。

UVってなに?

大塚先生
大塚先生
これらの紫外線が皮膚に当たると肌の細胞がダメージを受けます。そのため、皮膚にあるメラノサイト(※)という細胞がメラニン色素を生成して肌を守ろうとします。その結果として炎症(日焼け)や色素沈着が生じるのです。皮膚内部で活性酸素が発生してDNA損傷を引き起こす化学反応が起こります。これが長期的には皮膚の老化やがんリスクの上昇につながることがわかっています。
※メラノサイト(melanocyte)…皮膚や毛髪、眼の色にかかわる色素細胞


日焼けは健康美ではなく皮膚の炎症

――日焼けというのは皮膚の炎症なんですね。

大塚先生
大塚先生
はい、日焼けとは、紫外線による皮膚の急性炎症(サンバーン:赤み・痛み・腫れ)と色素沈着(サンタン:肌の黒化)の状態を指します。 海水浴や炎天下で強い紫外線を浴びたとき、ヒリヒリしたり赤みが出るような明らかなケースだけでなく、日常生活でも少しずつ積み重ねられます。ゴミを出しに行く、洗濯物を干す、といった短い時間でも、肌は確実に紫外線を受けて日焼けしていくのです。

――かつて黒く焼けた肌が魅力的だと言われた時代もありました。

大塚先生
大塚先生
1970年代から1980年代にかけては、海やプールでサンオイルを使った積極的な日焼けがブームになり、日焼けサロンも人気を集めました。当時は日焼けした肌が健康美の象徴とされ、夏休みにどれだけ黒くなったかを子ども同士が競うようなこともありました。しかし、1980年代後半から日焼けによる害が指摘され始め、1990年代には広く認識されるようになりました。オゾン層の破壊による紫外線増加が明らかになって、皮膚がんや老化のリスクが科学的に証明されことも大きな要因です。

――「子どもは太陽に当たる方が成長する」というのは、過去の考え方なんですね。

大塚先生
大塚先生
紫外線は、体内でビタミンDを合成するのに必要で、骨の成長や発達に欠かせないと考えられていました。ただ、今は食事から十分な栄養がとれるため、昔のように意識して長時間日光浴をする必要はありません。「日焼けするほど浴びるのではなく、適度に太陽と付き合う」というのが現代的な考え方です。
実際に日焼けによる健康被害は増加しています。先ほども申し上げたように、急性では皮膚の赤み・腫れ・水ぶくれといった目に見える症状が出ます。目に見えない慢性として、シミ・しわ・皮膚がんのリスク上昇があげられます。紫外線は皮膚の遺伝子に損傷を与え、皮膚がんの発症リスクを高めることがわかっています。また、熱中症や脱水症状も併発しやすくなります。とくに高齢者は老化が加速し、良性・悪性の腫瘍が発生しやすくなるなど、健康にとって、良いことはありません。


室内でも油断は禁物!日焼け予防は必須

――日焼けには注意しないといけないということはわかりました。室内にいても日焼けをするのでしょうか?

大塚先生
大塚先生
室内でも日焼けしますよ。特に窓から入るUVAが主な原因です。一般的な窓ガラスはUVBはほぼ完全にブロックしますが、UVAの50~74%を透過させます。透明ガラスだと最大74.3%のUVAが室内に侵入します。

――え!こわい!

大塚先生
大塚先生
怖がらせるつもりはないんです(笑)。すぐにできる対策として、窓にUVカットフィルムを貼れば、UVAを最大99%カットできます。カーテンを遮光カーテンにするという方法もありますね。

――室内にある明かりはどうでしょうか?

大塚先生
大塚先生
蛍光灯から出る紫外線は極めて微量で皮膚への影響は限定的です。一方で、パソコンやスマホのブルーライトには注意が必要かもしれません。2024年の最新研究では、ブルーライトを浴びると肌でメラニン(色素)が増えると報告されています。ブルーライトは皮膚の浅い部分まで届き、特定の細胞内の経路を通じてメラニンの生成を促す可能性があります。ブルーライト(400-500nm)はUVA(320-400nm)とは異なる波長域にあり、表皮を通過し真皮の浅層まで到達します。すぐにシミができるというレベルではありませんが、肌にとっては一つのリスクになると考えられます。今後の研究に注目しています。


ブルーライト注意

――室内でも予防することが必要なんですね。

大塚先生
大塚先生
そうです。外出の予定がなくて室内で過ごすときでも日焼け止めは必要です。ブルーライト対策には、ブルーライトカットメガネや画面フィルターの使用があげられます。


日焼け予防を習慣に

――日焼け止めや日傘は女性が使うイメージでしたが、もうそんな状況じゃなさそうですね。男性や子どもも対策が必要ですね。

大塚先生
大塚先生
もちろん男性や子どもも同様の対策が必要です。男性用や子ども用の日焼け止めや日傘も市販品が増えていますし、実際に使っている人も多いですね。近年の猛暑で紫外線の害への関心も高まって、日焼け対策も多岐にわたっています。UVカットの衣類、帽子、サングラスなども普及しています。具体的な対策を紹介していきましょう。


第一に日焼け止めを

日焼け止めに記載してあるSPF、PAとは

SPFとは、UVB防止効果を示す数値です。たとえば、SPF50は紫外線量を1/50に減らす効果があるということを表しています。PAとはUVA防止効果を示すもので、+の数が多いほど強く、PA++++が最高です。

紫外線吸収剤と紫外線散乱剤

日焼け止めの種類には紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の2つがあります。紫外線吸収剤は化学的なもので、肌の上に膜を作って紫外線を吸収します。軽い塗り心地ですが、肌刺激の可能性があります。紫外線散乱剤は物理的なもので、粉末で肌の表面で紫外線を反射・散乱させます。肌に優しいですが白浮きしやすいのが難点です。

選び方のポイント

男女や年齢に関わらずシーンごとに選ぶことが大切です。日常生活ではSPF30/PA++。屋外ではSPF50/PA++++くらいがおすすめです。ただし敏感肌の人は散乱剤を優先するほうがいいですね。注意点としては、 汗で落ちやすいので2〜3時間経ったら塗り直しが必要です。男性用や子ども用も成分は同じですが、塗り心地やボトルのデザインは変えてありますね。男性は顔に何かを塗るということに慣れていないので、伸びが良くてサラッとした使用感のものが多いようです。子ども用は低刺激、ノンケミカルなど、肌にやさしいのが特徴です。

効果的な使い方

日焼け止めは、ムラなく塗ることが大切です。顔であれば額や鼻、頬を中心に円を描くように広げ、首は耳の後ろまできちんと塗ります。体も二の腕から肩にかけて、露出している部分を丁寧にカバーしてください。量の目安は、顔だけでもパール粒2個分ほど必要です。2〜3時間ごとに塗り直すのが基本で、特に汗をかいたときはすぐに塗ることをおすすめします。メイクをしている時は、上から使えるパウダータイプやスプレータイプを取り入れると便利です。

2~3時間おきに塗り直す

年間を通して使用するの?

日焼け止めは夏だけでなく、年間を通して使ってください。紫外線の量は夏に多くなりますが、秋冬や春も一年中降り注いでいます。曇りや雨の日でも紫外線はゼロにはならないので、毎日の習慣にしてほしいですね。

また、どんな日焼け止めを使った場合でも、夜には必ず石けんなどで洗い流してください。塗ったまま寝てしまうと、肌に負担がかかってしまいます。


日傘が効果的

日傘の効果

UVカット率99%以上の日傘なら、皮膚に届く紫外線量を大幅に減らすことができます。実際、日傘を使うと、使わないときに比べて、熱中症の指標となるWBGT値(※)が1〜2℃下がり、体感温度も全身で1〜2℃、頭部では4〜9℃も低くなると報告されています。紫外線だけでなく暑さ対策としても有効なんですね。ただし、日傘でも地面からの反射光までは防げないため、日焼け止めとあわせて使うことが重要です。

※WBGT値(Wet Bulb Globe Temperature/湿球黒球温度)…気温・湿度・輻射熱を総合的に評価した熱中症予防のための指標

日傘と帽子の写真

日傘の選び方

性能面では遮光率99%以上、UVカット率99% のものを選ぶと、紫外線をしっかり防ぎながら、暑さ対策にもつながります。
色は、外側は白で熱を反射し、内側は黒で光を吸収するタイプが効果的です。素材はポリエステルやコットンにUV加工が施されたものが安心です。
サイズは50cm以上あると体をしっかり覆ってくれます。晴雨兼用タイプなら、急な雨の日にも活躍します。様々なデザインがあるので、機能性と合わせて気に入ったものを選びましょう。ちなみに、濃い色の生地は紫外線を通しにくい反面、生地自体が熱を吸収して熱くなりやすいことを覚えておきましょう。


その他の紫外線予防法

服装では、つばの広い帽子、アームカバー、長袖のUVカット衣類、UVカットレンズのサングラスが効果的です。
行動習慣としては、日差しの強い10〜14時の外出はできるだけ避け、やむを得ない場合はなるべく日陰を利用。時間帯や場所を工夫して、受ける紫外線量を減らします。
内面のケアとして、ビタミンCを含む食品(果物や野菜)を積極的にとることは、抗酸化作用で肌を守る助けになります。ただし、柑橘類の皮には「ソラレン」という成分が含まれており、摂取や皮膚に付いた後に紫外線を浴びると炎症や色素沈着を起こすことがあります。食べ過ぎや摂取直後の直射日光には注意してください。
また、ストレスを減らし、十分な睡眠をとることも免疫力を高め、肌の回復力アップにつながります。


日焼けしてしまった! どうすればいい?

すぐにやるべきケア

赤み・ヒリヒリ・腫れが出たら、すぐに冷水シャワーや濡れタオルで冷やして炎症を抑えます。次に保湿です。使いなれた化粧水や乳液、ワセリンなどでうるおいを補給。痛みが強い場合は医師の指導のもとでステロイド軟膏を使うのも有効です。

やってはいけないことは、熱いお湯を浴びると炎症が悪化し、皮を無理に剥くと感染リスクが高まります。フェイスパックも刺激になるのでNGです。
水ぶくれができたり体調不良を感じたら、早めに医療機関を受診してください。基本的に72時間以内のケアが重要です。


紫外線対策として、今日からできる4つのこと 1. 朝起きて洗顔したら、すぐに日焼け止めを塗る。2. 日焼け止めは顔だけでなく、首、デコルテ、手の甲など表に出る部分にも忘れずに。3. 外出する際は日傘、塗り直し用の日焼け止めを持っていく。4. 日差しの強い時間帯は外出を控えるなど、行動様式を見直す。

大塚先生
大塚先生
紫外線の影響は、日常の中で少しずつ蓄積していきます。20代でも、すでに皮膚の細胞はダメージを受けています。そのダメージが歳を重ねるごとに積み重なり、やがてシミやくすみとなって表面に現れてきます。レーザー治療でシミ自体を消すことはできますが、細胞に刻まれたダメージそのものを取り戻すことはできません。だからこそ、今日から日焼け止めや日傘を習慣化し、室内でも屋外でも紫外線対策を徹底しましょう。


取材を終えて

10代の頃から「肌が強いから大丈夫」と思い込み、日焼けにはあまり気を配ってきませんでした。出かける前に化粧と一緒に日焼け止めをひと塗りするだけで、塗り直しもせず、日焼け後はフェイスパックで水分を補えば十分だと信じていたのです。外に出ることが多い日々で、紫外線を浴び続けてきたことを、今さらながら反省しています。無防備な日焼けが将来のシミや老化、健康リスクにつながることを知って、これからは油断や過信をやめ、今回教わった紫外線対策を続けようと決心しました。


この記事を書いた人
松田 きこ
編集者兼ライターとして、知識人や文化人、経営者など3,500人以上を取材。生活文化・観光・ものづくりを軸に、独自のネットワークで情報を掘り起こします。美味しいものやお酒、旅が大好きで、出会いを大切に、心に残る瞬間を積み重ねています。


写真・取材 松田 きこ
編集 ウエストプラン

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