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雑学・コラム

2025.09.29

2025年10月から変わる!ふるさと納税“ポイント制度”廃止の真相とこれから

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
ふるさと納税

最近ちょくちょくTVから流れる、ふるさと納税をPRする軽快なフレーズ。9月末でポイント付与が廃止になるらしいけれど、そもそも、ポイントって……?ふるさと納税・超初心者向けに、財政学が専門の近畿大学 短期大学部 教授の鈴木善充(すずきよしみつ)先生に、制度の仕組みやこれからの展望についてじっくり解説いただきました。すでに利用しておられる方はもちろん、これから始めたいという方も必見です!

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鈴木善充先生
鈴木 善充 (スズキ ヨシミツ)
近畿大学 短期大学部 商経科 教授/博士(経済学)
専門:財政学、公共経済学
日本が直面している少子高齢化経済における公共政策について研究しています。特に、税制と社会保障制度についてです。近年は医療経済についても研究をすすめています。
教員情報詳細


ふるさと納税???

そもそも、「ふるさと納税」ってどんな制度?


――今日はよろしくお願いします。先生は近畿大学短期大学部の商経科で「財政学」を教えていらっしゃるのですね。

鈴木先生
はい、主に税制と社会保障制度の改革がもたらす影響について、データを活用した計量分析を専門としています。短大では、ミクロ経済学やマクロ経済学などの講義を担当しています。「ふるさと納税」に関しては、税制の分野の一つとして着目し、研究を進めてきました。

――周囲でも利用者が多い、ふるさと納税。そもそもどういった仕組みなのか、目的や方法について詳しく教えてください。

鈴木先生
まず、2008年度から開始したこの制度は、当時の福井県の西川一誠知事が提唱したことがきっかけで、当時の菅総務相の肝いりで全国的にスタートとなりました。ひとことで表すなら「地方創生」ですね。都会に住んでいても、育ててくれた「ふるさと」に納税できる制度をつくろう、という理念がベースになっています。
総務省の『ふるさと納税報告書』によると、「今は都会に住んでいても、自分を育ててくれた“ふるさと”に対し、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があってもよいのではないか」という趣旨の記述があります。

――なるほど、子どものときは地元で教育を受けて、就職を機に生まれ育ったまちを離れて都心部へ……。お世話になった地元への「恩返し」という意味合いがあったのですね。

鈴木先生
はい。お世話になったところに還元できる制度として、理念としてはとても素晴らしいものだと私も共感しています。ちなみに私は生まれも育ちも大阪で、今もこの地で勤めています。そう、「ふるさとがない人はどうするのか?」問題がありますよね。これに対しては「心の中にも、ふるさとがある」と定義され、その結果、“どこにでも・何度でも”寄付できるようになりました。ふるさと納税の大きな特徴の一つですね。

――制度を利用するメリットについて、正しく知りたいです。真っ先に思い浮かぶのは、豪華な「返礼品」の数々なのですが……

鈴木先生
やはり、そうですよね(笑)。大きなメリットとしては、所得税・住民税の一部を「寄付」としてほかの自治体に納めることで、寄付から2,000円を超える部分について本来支払うべき住民税から全額が控除される。それに加えて、それぞれの自治体から返礼品を受け取ることができるのです。

――「寄付」なんですね?知りませんでした……。

鈴木先生
そうおっしゃる方は多いと思います。日本ではボランティアをする人は多くても、寄付という精神・文化は根付いていないんじゃないかな。返礼品はあくまでも寄付へのお返しであり、商品ではないんですよ。とはいえ、返礼品選びをさながらショッピングのように捉える風潮が追い風となり、少しずつ返礼品競争が過熱してしまいました。
缶ビールやアマゾンポイント、はたまた航空券を返礼品として提供する自治体も現れて……制度が掲げている本来の理念から、遠くかけ離れてしまったことは否めません。

制度の利用方法についてですが、今は「さとふる」「ふるなび」といったポータルサイトを利用することで、簡単にシミュレーションや手続きができますよ。「煩雑な手続きが必要だと思っていた」「もっと早く始めればよかった!」というお声も多いようですね。


POINT1 ふるさと納税には限度額がある!

例)独身サラリーマンで年収が500万円の場合
⇒2,000円負担(実質)での限度額は5万8,000円
※ふるさと納税のポータルサイトで計算ができますので、まずはご自身の限度額を把握するところから始めてみましょう


POINT2 キャッシュレス決済も対応!

クレジットカード、銀行振込、PayPayなども利用OK
※各自治自体によって決済方法が異なりますので、事前に確認しておくといいでしょう

実際に利用されている年齢層や地域は?


ふるさと納税に関するアンケート調査結果グラフ
出典:株式会社オークファン「ふるさと納税に関するアンケート調査結果(令和5年度実施)」

鈴木先生
上記調査を見ると、年齢層は20代から30代と、比較的若い世代が多いですね。各ポータルサイトのCMは、若い世代をターゲットにしている印象も……。
地域としては、やはり都市部(東京・神奈川・大阪・愛知・埼玉がトップ5)です。
男女比では、女性が多いです。

――具体的なイメージがわいてきました!みなさん、どれくらいの額なのかも気になります。

鈴木先生
2023年度の統計によると、ふるさと納税が1兆円程度で、件数が6,000万件。単純に平均してみると、1件あたり約1.7万円になります。しかし、分布がありますので、1万円あたりが一番多いのではないでしょうか。
対象はあくまで、所得税・個人住民税が課税される人たちになります。よって、学生に関してはほとんどが該当しないでしょう。また、所得が高いほど累進課税の関係で「得になる」という一面があることもお伝えしておきますね。


ポイント付与の廃止イメージ

ポイント付与の廃止(2025年10月~)について


――2025年9月末をもって、「楽天ポイント」や「Amazonギフト券」などのポータルサイトを通じて得られる寄付金額に応じたポイントや特典がなくなります。廃止が決まった背景について教えてください。

鈴木先生
ズバリ、「競争への抑制」です。先ほどお話ししたように、もともとふるさと納税には「かつてお世話になったふるさとへの恩返し」「良い政策をやっている自治体を応援したい」という理念・目的がありました。そう、「地方創生」ですね。
ですが、実際に納税をする人たちは「2,000円の負担で返礼品がもらえてラッキー!」、納税を受ける自治体は「返礼品競争」「官製通販」とまで言われてしまう事態が起きてしまった。その結果、ポータルサイト間でポイント競争が過熱してしまったんですね。
この状況を鑑みて、「本来の理念や目的からかけ離れている」と総務省が判断したことが廃止の理由です。加えて、ポイントをつけるという競争が自治体間での公平性を損なうことにつながってしまう、という懸念もありました。

――ポイント付与がなくなることで、自治体側、そして寄付をする側にはどのような影響が出るのでしょうか?

鈴木先生
まず、自治体としては、これまで通りのやり方でふるさと納税を集めることが難しくなるでしょう。最近よく目にするとおっしゃっていた、ポータルサイトのCMに頼ることができなくなりますから。これからは、それぞれ独自の戦略を考え出す必要があるかもしれません。いわゆる、広報戦略ですね。

寄付をする側に関しては、単純に考えてポイント分は受け取ることができなくなります。ですが、住民税の控除といった根幹の仕組みは何ら変わりません。
また、クレジットカード決済をしたときのカードのポイントやマイルは引き続き付与されますのでご安心を。「楽天ポイント」から「さとふる」へといった、いわゆるポータルサイトの「乗り換え」は発生するかもしれませんが、利用者にとっての大きな影響・デメリットはないと考えてよいでしょう。



長崎県 五島産 近大マグロ 丸ごと1本【長崎県五島市】写真はイメージです

初めての方も安心!失敗しない返礼品選びとは


――ポイント廃止直前は申し込みが集中しそうですね。時期や返礼品選びなど、利用するうえでのコツをぜひご教示いただきたいです。

鈴木先生
今回のポイント問題にかかわらず、もともと年間を通して9月はふるさと納税の利用が多いんですよ。あとは、12月ですね。9月は世帯の収入が大まかに決定する月ですし、単純に農作物の収穫の時期というのも大きいかもしれませんね。フルーツを推している自治体も多いです。あと、課税は1月から12月が対象ですから、まさに駆け込みという意味での12月。12月に入ったとたん、ふるさと納税がらみのCMが多くなることはお気付きでしょう。

返礼品選びですが、「いつ届くかわからない」という大前提を念頭においておきましょう。「いま、高級牛肉!?」というタイミングだったり、次々に届く返礼品が収まりきらず、2台目の冷蔵庫を新調したという高額納税者ならではのうらやましいエピソードも(笑)。
一般的に人気が高いのは、保存がきくお酒(清酒や焼酎)、加工品(ハム・ソーセージ)ですが、さくらんぼ、ウニ・イクラなども好まれるようです。例えば、大阪府池田市は地元の日清食品が返礼品用のスペシャルパックを企画していたり、過去には北海道の夕張市が満を持して夕張メロンを登場させたことも注目されていました。メロンは秀品、優品とありますが、少し安い優品でも十分においしいと聞きます。
あと、ここ最近はやはりお米!令和の米騒動をきっかけに、ふるさと納税を始めた方も多いかもしれないですね。とはいえ、あくまで返礼品選びに情熱を注ぐのは、ほどほどに。


がんばっている自治体を応援!!

ふるさと納税の本質は「地方創生」


――先生にお話をうかがい、ふるさと納税デビューをしたくなってきました。

鈴木先生
くり返しになりますが、ふるさと納税はあくまでも「寄付金」ということをお忘れなく。返礼品だけに注目するのではなく、「がんばっている自治体を応援したい」という、ピュアな思いを何より大切にしてくださいね。

寄付先を選ぶにあたっては、「自分の寄付金がどのように使われているか」という視点が不可欠です。これに関しては自治体HPで確認できるようにはなっているものの、実際はほとんどの人がチェックしていないのではないでしょうか。
ポータルサイトにも、「寄付金の用途から選ぶ」「使い道を探す」といった項目がありますので、ぜひのぞいてみてください。「いま自分が子育て真っ最中で日々てんやわんや……だからこそ、 “子育て支援”という切り口で選びました」など、ご自身にとって身近なところからのスタートでOKですよ。

また、ふるさと納税が災害支援につながることも知っておいてほしいです。この場合、返礼品はありませんが、寄付金としての意味を再確認できるのではないでしょうか。
2016年、熊本県が地震に見舞われたとき、熊本県としてはふるさと納税というシステムが大変ありがたい一方で、事務的な対応がとてもできる状況ではありませんでした。代わりにその受け皿を一手に引き受けたのが福井県で、「集まった寄付金を熊本県の被災地へ届けます!」と打ち出して。地震や台風・集中豪雨など、いつ起こるかわからない自然災害と常に隣り合わせの私たちだからこその、心温まる事例でした。

――自分が寄付したお金が、どういったところに・どんな用途で使われていくのか。その視点を大切にすることで、今後ふるさと納税との関わり方が変わりそうですね。

鈴木先生
はい、私もまさにそう思います。2025年10月からのポイント付与廃止については、ポータルサイトを通じての特典が対象。これは、とめどなくヒートアップしてしまった返礼品競争を「抑制」し、制度がもつ本来の理念に立ち返ってほしい、という切実なメッセージが込められた決断でした。
9月末をもってポイント付与が廃止となることで、「私たちにとって、お得度が軽減する?」「なにかデメリットが発生するのかな?」と、ここ最近はモヤモヤしている方が多いかもしれませんが、単純にこれまで付与されていたポイントがもらえなくなるだけのこと。ふるさと納税そのものの仕組みは、何ら変わりません。

最後に、ふるさと納税の市場は現在約1兆1,000億円で、潜在的には3兆円まで拡大していく可能性があると言われています。ポイントが廃止になった後も、制度自体は続いていくと予想されていますが、今後は地方創生寄付文化が育まれることが期待されています。
各自治体とっては今このタイミングこそ、ひとつの転機・チャンスとして捉えていただければ。豪華さ・めずらしさを打ち出す返礼品ではなく、それぞれの地域ならではの特性をいかした「政策」をもって自治体同士が真摯に競い合い、切磋琢磨することができれば、それこそが魅力あふれる「地方創生」へとつながっていく。そう、心から願っています。



(左上)赤ワイン梅酒(右上・左下)近大クエ鍋セット(右下)近大キャビア

取材を終えて

ずっと気になっているものの、なんだか面倒くさそう。ふるさと納税について長らくお尻が重かった方にとって、制度が始まったきっかけ、その根底に息づく理念や思いを知ることは、目からウロコのお話だったのではないでしょうか。知らずに始めていたら、きっとウキウキとショッピング感覚で返礼品選びに時間を費やしていたかも。
先生が最後におっしゃっていた「寄付金の使いみち」についても気になった筆者は、さっそく自分が住むまち(尼崎市)のHPを見てみました。ふるさと納税のページに、きちんと「いただいた寄付金の使いみち」という項目があり、一つひとつわかりやすく書いてありました!阪神タイガースファーム施設周辺の活性化……にも活用されているなんて、虎ファンとしては誇らしい限りです(今回のインタビューがなければ、このページに出会うこともなかったでしょう)。
そして、いろんな自治体のサイトを見ていたら、和歌山県のいくつかの町の返礼品に、「近大マグロのお食事券」「近大生まれマダイ焼味4種食べ比べセット」「近大クエ鍋セット」などを発見!普段なかなか目にしない「クエ」があるなんて……。かなり、そそられています。


幻の最高級魚 近大クエ鍋セット

これから新しいステージへ向かう=本来のカタチに立ち返ることが期待されるふるさと納税。まずは、自身の限度額をシミュレーションするところから始めてみましょう。


この記事を書いた人
外園 佳代子(ホカゾノ カヨコ)



写真・取材 外園 佳代子
編集 ウエストプラン

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