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雑学・コラム

2016.07.13

梅雨だけじゃない。気を付けたい夏のカビ。

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
梅雨
カビ
生活
農学部

カビというと、ジメジメした梅雨の時期を思い浮かべるかもしれませんが、高温多湿な日本の夏。細菌性の食中毒が増える時期であるとともに、ジメジメした室内のあちらこちらにカビが発生してくる時期である。
アレルギー疾患の原因にもなりうる嫌なカビを防いで、快適に夏を乗り切る方法を、カビのプロフェッショナル、近畿大学農学部の白坂教授に聞いた。

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監修者
白坂 憲章(しらさか のりふみ)
近畿大学農学部 応用生命化学科 教授、農学博士
専門:応用微生物学、酵素利用学、食品機能学
最新の科学的手法を駆使して、マツタケの人工栽培法の開発や麹菌、酵母、きのこ、乳酸菌などの食品微生物が生産する酵素を利用した機能性食品素材の開発について研究する。


良いカビ?悪いカビ?

カビが嫌われるのは、ジメジメとしたところに生える姿が汚らしく、またその匂いに由来するところが大きい。よって「カビ」というと、風呂場や流しの隅にみられる黒カビを連想される方も多いのではないでしょうか。しかし、そのほかにもカビはカビ毒やアレルギー、真菌症の原因となり健康被害をもたらすことも知られています。

有史以来、我々に最も身近なカビというと、水虫を引き起こす白癬菌でしょう。白癬菌は我々が普段目にするようなカビの形はしていませんが、れっきとしたカビの仲間であり、人に取り付いてかゆみの原因となってきた最も有名な真菌の一つ。そのため、水虫の治療は細菌の感染症のように抗生物質は効かないため、抗真菌剤と呼ばれる薬剤を使用しなければなりません。



夏場は、カビが生えた食品は食中毒の原因となるのではないかということを疑いがちになりますが、夏の微生物性の食中毒の多くは細菌感染によるものがほとんどを占めており、カビを原因とする例は少ないです。
たしかに、カビの一部にはこれまでに数々の中毒事件を引き起こしてきている“アフラトキシン”と呼ばれるカビ毒を作るものが存在しますが、高温多湿の条件では食品中での増殖が速い細菌類のほうがカビよりも早く増殖することや、カビ汚染は見た目にもすぐ判別ができるので、返って誤って食べることは少ないのです

一方で、味噌や醤油、チーズ、日本酒などの発酵食品の製造にはカビは欠かせない微生物となっており、これらの製造に用いる麹菌(アスペルギルス属)などはいわゆる“良いカビ”であるといえます。
こういった発酵微生物は、厄介者扱いをされるカビとは異なり、長い間発酵食品の製造のために選抜・利用されてきており、安全性は確認されています。


洗濯機にひそむカビ

2002年に新聞記事となり話題になったのが、洗濯槽のカビです。今でこそ、多くの洗濯機には洗濯槽洗浄の機能がついていたり、洗濯槽洗浄用の洗剤が売られていますが、当時はアトピー性皮膚炎とのかかわりが示唆されたこともあり、かなりの衝撃でした。

洗濯機の内部のカビは、洗濯槽と脱水層の間に残った水分と洗剤成分を利用して生育することが分かっており、種類は少ないながらも合成洗剤でも生育できるカビが存在します。
また、汚染しているカビの数は、洗濯回数に比例しており、洗濯回数が多い、すなわち“きれい好き”ほどカビの汚染が多く、単身赴任や一人暮らしの学生など、週に1、2回しか洗濯機を使用しないケースのほうがかえってカビの汚染は少なかったりします



現在では、先に述べたように洗濯槽のカビ汚染は広く認知されるようになってきているため、その対策は容易になってきていますが、見えないところで起こっているカビ汚染を防ぐためには、定期的に洗濯槽の洗浄やカビ対策をするとともに、無用な洗濯をせず、なるべく洗濯槽を乾燥させるように心がけることが必要です


エアコンのカビ

夏の始めに部屋や車のエアコンをつけた際、カビ臭いにおいがした経験ってありますよね。カビ臭のするエアコンの内部にはカビが繁殖していると考えて間違いありません。
このカビ臭はしばらくエアコンを運転していると次第に薄れ、放出されるカビの胞子の量も減少します。そのため、エアコンの運転開始直後10分程度はできるだけ換気をすることが効果的です。



このエアコンのカビはどうやって繁殖するのでしょうか。

エアコンの冷却機構は室内空気の水分を結露させて冷却することによるため、エアコン内部は湿り、室内空気は乾燥します。よって、乾燥した室内ではカビの生育に必要な湿度が足りないため胞子が放出されたとしても発芽することなく死滅します。
一方、エアコン内部は温度が低くカビの生育は抑制されていますが、外出時や寝る前などにエアコンを切ってしまうと、内部で結露した水分が室温に戻りカビはエアコン内部で増殖します。帰宅直後や朝起きたときにエアコンをつけるとカビ臭が強く感じるのはこれが原因です。

カビを防ぐには...

このように、カビの発生・増殖のキーワードは水分と栄養です。私たちの住環境はカビの生育に必要な栄養分にあふれており、それらを完全に取り除くことは不可能です。
一方、洗濯機やエアコンなど特に発生しやすい場所は、一般的にも認知されるようになり、洗浄剤やクリーニングなど対策も容易になってきました。

高温多湿の日本の夏は、カビにとってのパラダイスであるといえますが、ぜひ湿気のたまりやすいところを意識して掃除し、健康で快適な毎日を送りましょう。

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