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2026.05.07

五月病って本当にあるの?精神科医に聞く正体と、無理しないための対処法

Kindai Picks編集部

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五月病
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楽しみにしていたゴールデンウィークが終わり、「もしかして五月病かも?」と不調を抱えている方はいませんか。近畿大学医学部精神神経科学教室の柳雅也に五月病とは何なのか、その原因と対処法について聞いてみました。新しい環境に慣れなくてなんだか気分がゆううつ……そんな方は必見です!

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柳 雅也 (やなぎ まさや)の写真
柳 雅也 (やなぎ まさや)

近畿大学 医学部 精神神経科学教室 准教授
専門は生物精神医学。

≫教員情報詳細



そもそも、「五月病」は正式な病名ではない?

インタビューを受ける柳先生の写真

——柳先生、こんにちは。今日はよろしくお願いします。さっそくですが、この時期よく耳にする「五月病」について詳しくお聞きしたいです。

柳先生
精神神経医・柳
まず始めに、精神科で「五月病」という病名があるわけではないのです。世間一般でなんとなく言われているだけで、「適応障害」の一種だと認識しています。


——なるほど、新入社員や新入生などがゴールデンウィーク明け頃にちょっと不調になる「五月病」。これは医学的な用語ではないんですね。

柳先生
精神神経医・柳
歴史を調べると1960年代後半、昭和40年代からこう呼ばれるようになったようです。ちょうど高度経済成長期、いろいろな意味で世の中が「頑張り始めた」時代ですよね。確かに、4月から新しい学校、あるいは新しい職場に入り、環境になじめず、問題が顕在化する。明確にストレスとして、なにかしら症状が出てくるのがちょうど5月くらいですね。


——「適応障害」も最近よく聞きますが、ストレスが原因でしょうか?

柳先生
精神神経医・柳
そもそもストレス因があって、それに対して反応する精神症状=軽い不安や抑うつが見られる状態が、適応障害です。では、どんなタイミングで適応障害になりやすいのか?やっぱりストレス因が多い時ということになります。その代表格のひとつとして、環境の大きな変化に伴う、いわゆる「五月病」が挙げられるのでしょう。


五月病の具体的な症状や傾向は?



——症状としてはやはり、うつに似ていますか?人によって、出方が違うんでしょうか?

柳先生
精神神経医・柳
いわゆる「五月病」を「五月に起こってくる適応障害」という捉え方をするなら、ストレスに対する反応は人によってさまざまです。典型的に多いのは、不安や抑うつ、あとは不眠、食欲不振ですね。あるいは他の体の不調が出やすいということです。ただ、症状の程度があくまで「そこまで強くない」ということがポイントです。


——症状が強く出てくると、どうなるんでしょうか?

柳先生
精神神経医・柳
例えばうつ状態がひどくなれば、「うつ病」と診断されますし、あるいは不安が強かったら「不安障害」という病名に変わっていきます。そこまで症状が強くはないけれど、ちょっとなんとなくゆううつで調子が悪い……というのが適応障害という位置づけです。五月病というのは、その「なんとなく」というところが大きな特徴です。


——なるほど、人によっては精神的な症状だけでなく、体の症状として現れる場合もありますか?

柳先生
精神神経医・柳
そうですね、適応障害は必ずしも不安や抑うつなどの心の不調だけに限定されるものではなく、ストレスの現れ方として、頭が痛いとかお腹の調子が悪いとか、身体症状として出てくることもあります。ですから、総合病院で診てもらいたいという方は多いと思います。患者さんにとっては最初の入り口として、受診しやすいのでしょうね。


——時期で言うと、やはり五月が多いと感じられますか?

柳先生
精神神経医・柳
突出してこの時期に多いということはありません。人がストレスを感じる状況は、あらゆるタイミングで起こりうるので。一つの例として、確かに入学した後、あるいは新しい仕事が始まったり、環境が変わった後があります。最近は転職される機会も増え、そのタイミングも様々ですので、より多様になっているかもしれません。


——気候的に、不調に陥りやすいということもありますか?

柳先生
精神神経医・柳
春先はなんとなく、ちょっと調子を崩しやすい人が多かったりしますね。精神疾患一般においてですが、はっきりとした因果関係は明らかになっていません。気温が上昇するからという説もありますが、逆に冬になるとうつ症状が現れるというパターンもあります。必ずしも一つの原因だけで判断できない、そこが複合要因を含む精神疾患そのものの難しさかもしれません。特に、適応障害はいろいろな要因が絡んでいると思いますね。


受診のタイミング~一人で判断しないことが重要!

熱心にインタビューを受ける柳先生の様子

——なんとなく不安で……といった感じで、皆さん最初は受診されるのでしょうか?

柳先生
精神神経医・柳
そうですね。今は学校にも「相談室」があったりするので、まず始めにそこに行かれる方も多いです。企業でも上司や同僚と相談する以外にも、メンタルの不調を伝えられるところがありますよね。


——社内で、産業医の先生に相談するケースですね。

柳先生
精神神経医・柳
大きな企業が中心ですが、社内で相談できるルートは整ってきていると思います。安心できる場で話を聞いてもらうことで気持ちが落ち着き、解決策を考えてうまくいったらそれで十分なんですが。そうではなく、症状がどうしても強く出てしまう場合は要注意です。例えば夜眠れないとか、食事も取れないというふうになってしまうと薬物療法が必要になってくる場合もありますね。


——症状がおさまらず、続いてしまう…それが受診のタイミングですね?

柳先生
精神神経医・柳
そうですね。おそらく相談室で受診をすすめられるでしょう。相談室で話を聞いてもらってスッキリしました、という方も一定数はいらっしゃいます。ただ、それだけでは十分ではなく、抑うつが続いているとか、不安が強くて夜ずっと眠れていないとか、そういったケースは、やはり専門医との連携が必要ですね。


——あまり、自分で何とかしようとか「大丈夫!」と思いすぎないほうがよいのでしょうか?

柳先生
精神神経医・柳
そうですね。自分で解決できる範疇であれば症状は出ていないと思うんですよ。ご自身でちょっと心配になったら、職場の同僚や家族、友人など、身近な人に相談することが大切です。周りの人も耳を傾けて、これはちょっと大変そうだなと感じたら、受診をすすめてくれるでしょう。一人で抱え込みすぎず、周りの客観的な意見も大事にする。自分で「これくらい大丈夫!」と決めつけてしまわないことが大事ですね。


——新しい環境で頑張りたいけど、うまくいかず難しい場合ってありますものね。

柳先生
精神神経医・柳
最初は、誰しもが与えられたフィールドに適応しようと頑張ると思うんです。それがうまくいかなくなって破綻した形が「適応障害」で、症状となって現れるということです。では、うまくいかなかった時にどうすればいいのか?おそらく一人だけでは解決しなかったであろう問題なので、そこを周りと相談しながら、どうやりくりできるかを考えていく必要があります。ただ、考えるにはエネルギーがいるので、まずは休養ですね。ちょっとひと休みしてから始めることが多いですね。


——ちなみに、外来で患者さんが来られたとき、先生は具体的にどんな対応をなさるんですか?

柳先生
精神神経医・柳
例えば「ちょっとしんどいんです」と言われた場合に、どういったことがどんなふうにしんどいのか、丁寧に聞いていきます。問題が一体どこにあるのかを一緒に考えていくというのが最初のステップですね。そこで明らかなストレス因が見えてきたら、じゃあどうしたらいいのかというところを考えていきます。あるいは、症状が強い場合は薬も当然考えます。大きな会社であれば産業医の先生がいらっしゃるので、「こういう形(配置換えなど)をお願いできないか」といった、ひとつの提案として診断書を出すこともあります。


社会の概念も大きく変化~受診の一歩が踏み出しやすく

受診のイメージ写真

——先生は、適応障害に対して社会の捉え方が変わってきたと感じますか?

柳先生
精神神経医・柳
そうですね。適応障害=あくまで適応がうまくいっていないということで、時間が経てば解決していく場合も多いんです。周りもそれなりに気遣って、なにかしら対策を考えるでしょうし……。そういう意味では、昔は時間とともに自然に消えていた類のものが多かったのだろうと思います。ここ最近感じる変化のひとつとして、精神科のクリニックが増えてきたこともあり、ごく初期の段階で「ちょっと精神科で診てもらおう」と来られるケースが多くなったかと思います。


——精神科の敷居が低くなったということですね。それは患者さんにとって、よい傾向なのですね。

柳先生
精神神経医・柳
ご本人にとってアプローチしやすい場所が増えた、いろいろ選択肢があるというのはプラスじゃないかなと思います。ずっと思い詰めて、症状をさらに悪化させてしまうよりも早めの段階でスッと元へ戻れる形を探していけますから。患者さんはもちろん、社会全体で見てもその方が生きやすい世の中じゃないかなと、私は思っています。


——確かに、昔は精神科=特別なところ、というイメージがありました。

柳先生
精神神経医・柳
そうですよね。ここ10年、20年の動きは明らかに変わってきたと思いますね。適応障害に関しても、時代とともに社会の受け入れ方が大きく変化しました。むしろ、最近は一度診断書を出すと職場で過剰に扱われすぎた……というケースも耳にします。そこまで気になさらなくていいんですよと、上司の方によくお伝えしています。病気と捉えて周りがあまりに過剰に反応しすぎる必要はないと思います。周囲に相談できる環境があれば、自然と補正されていくものです。深刻になりすぎず、ほどよいバランスが大切ですね。


誰もがなる可能性がある五月病~一人で抱えこまず、周りを頼って



——「一人で抱え込まない」ということが大切だと理解しました!

柳先生
精神神経医・柳
周りと相談することで、客観的な意見をもらうというのが一番大切ですね。学生相談室や職場相談室というところにプロの心理士がいらっしゃいますので、身近で安心できる相談場所として活用していただきたいです。


——ちなみに、五月病や適応障害になりやすいタイプ、というのはありますか?

柳先生
精神神経医・柳
うーん、難しいですね。例えばうつ病でしたら、やっぱり生真面目な方、几帳面な性格の方がなりやすいというのはご存じかと思いますが……。


——逆に言うと、誰でもなる可能性がある?

柳先生
精神神経医・柳
状況に適応できない場面は、誰でも遭遇するわけですから、誰でもなる可能性があります。もともとの性格のせいでといったことは、さほど気にされる必要はないかなと考えています。


——どの年齢層が多いのでしょうか?

柳先生
精神神経医・柳
若い方が多い傾向です。学生が社会に出るタイミングで、生活スタイルや環境がガラッと変わり、うまく適応できなくなるケースですね。最初の職場でうまくいかなくなって、次のところも難しくて……そんなケースもあります。しかし、決して若い人だけではなく、ある程度年配の方でも、立場上いろいろなプレッシャーがかかってストレス因が増加することもあります。管理職になられたタイミングで、処理しきれなくなったというケースもありますね。


「眠れない」は大きなめやす

「眠れない」場合は早めの受診を。

——では、「こういう症状が出たら相談や受診を検討したほうがいい」という先生からの“めやす”があれば、ぜひ教えてください!

柳先生
精神神経医・柳
やはり一番は、「眠れない」ということです。夜眠れず、食欲も落ちてきた……となると、しっかり受診するべきタイミングですね。眠れない、食べられないとなると私たちも薬を出そうかなと検討します。


——薬というのは、いわゆる向精神薬ですか?

柳先生
精神神経医・柳
はい。最初は軽い睡眠薬ぐらいから出すことが多いですね。癖になりにくいものが10年ほど前から出始めて、最近は種類も増えました。


——常習化しないのは、飲む方も安心ですし、ずっと眠れないままより「受診してみようかな?」と思えますね。

柳先生
精神神経医・柳
その通りです。注意していただきたいのは、眠れないからといってアルコールで紛らわそうとすること。お酒って確かに寝つきは良くなりますが、夜中に目が覚めてそこから眠れなくなったり、眠りが浅くなったりします。受診して薬をもらう方が、はるかに体に安全ですね。


——ついやってしまいがちですが、気をつけます!

柳先生
精神神経医・柳
やっぱり精神疾患というのは、きちんと夜眠れることが重要です。逆にお酒で眠れなくなってしまう、睡眠時間が短くなってしまうと、かえって症状が悪化するという結果を起こしかねないですから。お酒はあくまで楽しく、「寝酒」は控えましょう。


——何気なく捉えていましたが、睡眠って本当に大事だということがわかりました。

柳先生
精神神経医・柳
最近は睡眠外来を設置する病院もあり、睡眠の重要性が認知されるようになりました。「絶対に何時間眠らなければならない」とか、睡眠アプリで細かく管理したりだとか神経質になりすぎる必要はないんですが、「だいたいよく眠れたな」という感覚を続けていけることは重要かなと思います。


——「ちゃんと休めている」という実感ですね。最後に、この時期「五月病かも?」と感じる人も多いかと思いますので、読者にメッセージをいただけますか?

柳先生
精神神経医・柳
正式な病名でないとお伝えした「五月病」ですが、「ちょっとしんどいな」くらいが世間一般の定義なのでしょうね。むしろ「5月ごろにはみんなしんどくなるんだよ」「だから大丈夫!」という優しさが込められている気もしています。何か困った時は、周りに相談するということが大前提です。ちゃんと眠れてるかな?食事とれてるかな?というところをひとつのバロメーターとしてご自身で見てあげてください。まずは、自分を大切に過ごしてくださいね。


取材を終えて

存在は知りつつ、自分には関係がないかも?とスルーしていた五月病。適応障害のひとつであり、誰でもなりうる可能性があるのだということがわかりました。一人で抱えこみ過ぎず、周りを頼る……これは日々のあらゆるシーンで肝に銘じておきたいです。終始穏やかなトーンで話してくださる柳准教授に癒やされたひとときでした。


この記事を書いた人
外園 佳代子(ほかぞの かよこ)
ライター&絵手紙作家・書写教室指導者・カウンセラーと、気づけば数足のわらじを履きこなしながら、取材を通じての出会いに心ときめく日々。約20年のライター人生で書きためた取材ノートを読み返すことが、ひそかな老後の楽しみです。


取材・執筆:外園佳代子
編集:アール・プランニング


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