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2024.10.08

起業は一人ではできない。大型ルアーを作り、KINCUBAで切磋琢磨しながら夢を形にする魅力

Kindai Picks編集部

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2022年4月に始動した近畿大学発ベンチャー起業支援プログラム「KINCUBA(キンキュバ)」は、約2年で100社の大学発ベンチャー企業創出を達成しました。今回は、趣味の釣りがきっかけで大型ルアーを製造・販売するBoo Boo Factoryを立ち上げた大学院生の東徳人さんと、KINCUBAのメンターを務める文芸学部OBの芝先恵介さんに「近大生の特権を最大限活用して起業する道のり」と「メンターを通じて得た学び」について対談していただきました。

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芝先恵介(しばさき けいすけ)
株式会社01START 代表取締役
1996年、近畿大学文芸学部文学科卒業。経営学修士(MBA)。外資系業務ソフト会社を経て2002年にスタートアップを起業し、代表に就任。2013年に同社を売却。翌年からスタートアップや大企業の新規事業立ち上げ支援に尽力。2022年に01STARTを創業し、新規事業開発や営業DXのコンサルティング、生成AIに関するセミナーに多数登壇。大学や公的機関での非常勤講師、DXアドバイザー、中小企業アドバイザーとしても活躍中。



東徳人(あずま かつひと)
2023年、近畿大学工学部ロボティクス学科卒業。近畿大学大学院 実学社会起業イノベーション学位プログラム2年生。ビッグベイト・ジャイアントベイトなどのオリジナルルアー製作・販売。Boo Boo Factory株式会社にて、3Dプリンタによる大型ルアーの受注生産サービスを展開している。



大好きな「釣り」で起業。自分の趣味から起業のタネを見つける




KINCUBAとは
KINDAIとINCUBATIONを組み合わせた造語。近畿大学生や大学院生、研究者による大学発ベンチャーの創出を目指す起業支援プログラムです。学生のレベルに応じた3段階のプログラム提供、24時間利用可能なBasecamp、学生向けのビジネスプランコンテストなどを開催しています。近畿大学創立100周年の2025年までに「100社の大学発ベンチャー企業創出」を目指していましたが、2024年5月に1年10カ月前倒しで目標を達成しました。
KINCUBA公式サイト


芝先恵介
私はKINCUBAの前身であるOKonomiに立ち上げ当初から関わっており、起業家の先輩としてメンターを務めています。新規事業立ち上げを支援してきたキャリアもあり、これまで多くの学生たちの起業をサポートしてきました。

東徳人
僕は近畿大学大学院の実学社会起業イノベーション学位プログラムに在籍しながら、Boo Boo Factoryという会社を立ち上げ、オリジナルのジャイアントベイト(大型ルアー)を製造し、販売しています。

芝先恵介
東さんはもともと広島キャンパス(工学部)に通っていたんですよね。

東徳人
はい。工学部ロボティクス学科を2023年3月に卒業し、4月から東大阪キャンパスの大学院(実学社会起業イノベーション学位プログラム)に入学し、8月に起業しました。工学部ではロボットの研究開発、それを生かすためのプログラミングを勉強していましたが、大学院では多種多様な業界の社会課題を発見し、起業を通してどう解決していくか実践しながら学んでいます。

Boo Boo Factory株式会社 - YouTube

YouTubeでジャイアントベイト・ビッグベイトをはじめ、釣りに関するさまざまな情報を発信している。



芝先恵介
いつごろから起業を視野に入れはじめたのでしょうか?

東徳人
高校生のころから起業を考えていました。釣具メーカーを立ち上げたいという思いがあり、会社を作って経営していくのにかかる費用や必要な準備を調べていました。工学部に進学したのも、起業のための知識を深めたいという考えからです。

芝先恵介
高校生のころから! すごい。

東徳人
大学2年生のときに、近大に学生起業支援プログラムがあることを知り、起業への決意を固めました。でも、そのときは応募しなかったんです。というのも、起業に挑戦するにも、事業のアイデアや釣具の製造方法もまだ形になっていなかったので。その後、4年生のときに応募して、選考の結果、僕の事業を支援してもらえることになったんです。

芝先恵介
東さんのように、自分の興味や趣味から起業のタネを見つけるのは、とても自然な流れですよね。

東徳人
そうですね。釣りが好きなので、釣具に対するこだわりが強く、自分で作りたいという思いがありました。KINCUBAで芝先さんをはじめ、メンターの方々にアドバイスをもらうことで、より具体的な事業計画を立てて、プロトタイプを作ることができました。



「事業はやる気と地味な努力の積み重ね」自分の体験を製品に生かす




芝先恵介
学生起業では、ノウハウよりも「やる気・元気・勇気」が大切だといつも話しています。自分自身の課題や興味関心を事業にすることが強みになる一方で、事業は「地味な努力」の積み重ねでもあります。東さんのメンターをしていた際にも、そのことを強調していました。自分の体験や感じたことを事業にどう生かすか考えることが特に重要ですよね。

東徳人
僕の中では当たり前のことが、他の人からすると課題に見えてくることもあります。そして客観的なアドバイスをいただいて、自分だけでは気付けない学びを得ています。

芝先恵介
起業のヒントは、メンターや起業仲間とたくさん話し合うことで浮かび上がってくるはずです。

東徳人
メンタリングの中で一番印象に残っているのは、「自分が釣りに行ったときの気持ちを事細かく覚えておくこと」です。「釣れた!」という瞬間の感動や、釣り中に不便に感じたことなど、そのときの心の動きが必ず課題につながってくるよと、芝先さんにアドバイスをもらったんです。これが、事業を前進させる大きな一歩となりました。製品化に向けて試行錯誤を繰り返し、ジャイアントベイトが完成したときの喜びはひとしおでした。

芝先恵介
東さんの事業で強い部分は、自分の体験を基にしている点です。工学部のロボティクス学科の教授が制作した動画と自分のアイデアを組み合わせることで、商品化に向けた試行錯誤をしていましたよね。まずは市販の釣具のことを知るために自宅近くの川で使って試してみたり。

東徳人
市販の釣具を参考に大きさや角度を研究して制作して、自宅前の川で使用し、魚の反応を見ていました。こだわったのはいかにリアルな魚に見せるかということです。


東さんが製作したジャイアントベイト。継ぎ目を入れることで見た目も動きもリアルな魚を再現している

芝先恵介
ジャイアントベイトでどんな魚が釣れますか?

東徳人
スズキやマグロなど、比較的大きめの魚を釣ることができます。もともと淡水魚のブラックバス用に作っていましたが、お客さまから「海でも使いたい」と要望があり、海でも使用できるものを開発しました。


自作のジャイアントベイトでシーバスを釣り上げた東さん

芝先恵介
ジャイアントベイトの需要は増えているのでしょうか?

東徳人
沖縄にロウニンアジをメインに釣る遊漁船※があるんですけど、その船長さんにX(旧Twiiter)で「使ってほしい」とDM(ダイレクトメッセージ)を送ったんです。すると、とても気に入ってくれて。沖縄でジャイアントベイトを使ってロウニンアジを釣るというジャンル自体、過去になかったんです。船長さんと一緒にそのジャンルを開拓中で、お客さまも順調に増えています。

芝先恵介
残念ながら、実物が完成する前にメンタリング期間が終了してしまいましたが、東さんはその後も大学院に進学しながら事業にコミットしています。商品化が進むにつれて、品質の安定や製造の効率化が直近の課題になりそうですね。

東徳人
はい。今後は製造のIoT化やセンサー技術の導入も検討していて、海外発送にも挑戦したいと思っています。世界には優勝賞金10億円規模の釣り大会があることを知り、特に可能性を感じました。日本だけでなく、世界中の釣りファンに向けて、自分の製品を届けたいという思いが強まっています。

芝先恵介
米アマゾンを利用して商品をアメリカに送り、現地での対応を進める計画も立てていましたよね。

東徳人
そうですね。あとは、海や水辺の環境に配慮した製品を作りたいです。水中で分解されるような環境にやさしい素材を使用することで、より持続可能な釣具を提供できるのではないかと考えています。工学部化学生命工学科の教授とコラボレーションして、植物由来プラスチック※や生分解性プラスチック※を使用したものを今製作しているところです。

※遊漁船:釣りや娯楽のために客を乗せて航行する船
※植物由来プラスチック: 植物から作られており、石油を使わないプラスチック
※生分解性プラスチック:微生物のはたらきで水や二酸化炭素にまで分解されるプラスチックで環境にやさしい素材でできている



主役は自分。「わくわく」したら、起業してみよう!



芝先恵介
最後に、起業を目指す学生にメッセージをお願いします!

東徳人
少しでもわくわくしたら、とにかく挑戦してほしいです。正直、不安はありますが、釣具が完成して使ってくれる人たちの姿を想像しながら、目の前のことに打ち込んでいます。

芝先恵介
やってみないとなにもはじまらないですからね。

東徳人
それと、起業は自分だけの力ではなく、多くの人に支えてもらって成り立っています。大学院の同級生から、とある企業の社長を紹介してもらったんです。釣り好きで船を持っているから僕と相性が良いんじゃないかと。「僕(社長)の船で(ジャイアントベイトを)投げてテストしたら」とまで言ってくれて、仕事、プライベート関係なく良くしてもらっています。起業がきっかけで人とのつながりも広がりました。

芝先恵介
年齢関係なく交流の輪が広がるのは起業ならではですよね。東大阪は「モノづくりのまち」といわれており、学生と企業が交流できる、近大のモノづくりスペース「THE GARAGE」で展示を行う法人会員の企業もたくさんあります。「THE GARAGE」で刺激を受けることも多いと思います。

東徳人
授業の一環で企業にインタビューさせていただくこともあるのですが、どのようにお客さまとやり取りをして製品化するのか、製造ラインを確保する方法などを教えていただき、とても勉強になりますね。

芝先恵介
東さんの原動力はなんでしょうか?

東徳人
事業を進めていく中で、お客さまから「こんな魚が釣れたよ」というメッセージをもらえる瞬間が本当にうれしいんです。それと、僕には起業家仲間が3〜4人ほどいて、仲間の存在が励みになっています。同じ志を持つ者同士、一緒に成長していける環境はありがたいですね。




芝先恵介
「自分がやりたい」という強い思いに、お客さまや仲間の存在が合わされば、きっと形にすることができます。どんなことでも、わくわくするような情熱を持った人はぜひKINCUBAに参加してもらいたいですね。

東徳人
起業は一人ではできません。たくさんの仲間がいるKINCUBAで、切磋琢磨しながら夢を形にしていきましょう!


取材:トミモトリエ
文:オカジマアヤノ
写真:安田 新之助
編集:人間編集部プレスラボ

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