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雑学・コラム

2023.12.19

金属を燃やすと炎に色がつく!?リチウムから赤い炎が出るのはなぜ?【それってなんなん?相談所】

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
近大相談所
理工学部

金属を燃やすと炎に色がつく!?リチウムを燃やすと赤い炎が出るって本当?小学生から寄せられた疑問に、光と金属の専門家が答えます。

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さまざまな専門分野の先生たちが、相談者の悩みや疑問に答えてくれる「近大それってなんなん?相談所」。今回のお題はこちらです。



化学に興味のある10歳の小学生から、「リチウムを燃やすと赤色の炎が出るのはなぜですか?なぜ赤色に見えるのですか?」という質問です。
10歳でリチウムが燃えるところをいつ見たのかも気になりますが、確かになぜ赤色になるでしょうか。それに、ほかの金属を燃やすと違う色になるって聞いたことも……?
小学生からの素朴な疑問に、光と金属を専門に研究している理工学部応用化学科の副島哲朗先生がお答えします。

副島 哲朗(そえじま てつろう)先生

近畿大学理工学部 応用化学科 准教授
専門:無機化学、固体化学、ナノ材料、光触媒
生活の快適性と環境浄化をコンセプトに、ナノテクノロジーを基盤とする、無機化合物の新しい合成法の開発および各種材料に新しい機能を発現させる研究を行っています。
教員情報詳細



そもそも、色ってなんだっけ?

今回の質問は色に着目した内容ということで、そもそもの「色」について考えてみましょう。「色」はなぜ見えるか知っていますか?
私たち人間は真っ暗闇では目を開いていても何も見えません。しかし、光がある場所では物を見ることができます。つまり、光が目に入るから、人は物を見ることができるんです。
では、色が見える仕組みは、というと……
太陽や蛍光灯の光は白色に見えますが、実はさまざまな色の光が混ざって白く見えているのです。その光が物に当たると、さまざまある色の光は反射するものや吸収されるものがあり、反射した光が私たちの目に入ってきます。この光をその物の「色」と感じます。



たとえば、光がりんごに当たると、赤色の光だけが反射され、他の色の光は吸収されます。そして、赤色の光が目の中に入ってくることで「赤色のりんごだ!」と感じます。


普段見ている炎の色は?



たとえば、ろうそくの火は赤や黄色に見えて、ガスバーナーからでる火は青く見えませんか? どうして同じ炎なのに違う色になるのでしょうか。
それは、火の中に「すす」という炭素の粒がどれだけ交ざっているか、が関係しています。ろうそくの炎が赤いのは、すすがたくさん交ざっていているからです。キッチンのガスの火には空気がたくさん供給されているので、すすがほとんど交ざらず青く見えるのです。
ですが、リチウムの炎が赤色になる理由は、このすす(炭素)ではありません。


では、なぜリチウムを炎に入れると赤色に??

スマートフォンにはリチウムイオン電池が使われている

まず、リチウムとは……?
リチウムは金属の一つで、銀白色で柔らかく、最も軽い金属元素※です。みなさんの身の回りでは、スマートフォンやノートパソコンなどの電池に使われていて、近年開発が進んでいる電気自動車でもリチウムが使われています。
※元素とは物質のもとになっている、最も基本となる成分

さて、ここからが本題です。リチウムを燃やすとの炎が赤色に見えるのはなぜでしょうか? これは、「炎色反応(えんしょくはんのう)」が関係しています。炎色反応とは、ガスバーナーなどの炎の中に金属が溶けている液体を入れるときに見られる、炎が赤色や黄色などいろんな色になるというものです。リチウムの場合は赤色に見えますが、これは、リチウムが炎の中に入れられると、リチウムから赤色の光が出てきて、その光が目の中に入ってくるからです。



このように、光が出てくる現象を発光といいます。つまり、「リチウム自体が燃えて赤色の炎が出ている」のではなく、「炎の中にいるリチウムが赤色の光を出している」のです。


金属が光を出す、とはどういうこと?

炎色反応に関係するのは金属ですが、もっとくわしくいうと、金属の中には電子というごく小さなものがたくさんあり、これが関係しています。



金属の中の電子は、室温にいるような状態では、おとなしく金属の中にいます。しかし、ここで金属を炎の中に入れると、電子が炎のパワーを吸って、室温のときより興奮した状態になります(科学の言葉では「励起(れいき)」といいます)。ただ、このような興奮している状態は電子にとって不安定で、元のおとなしい状態に戻ろうとします。このときに、電子は興奮する“もと”になっているパワーを「光の形」で外に放り出します。リチウムの場合、この光が赤色なのです。


金属によって色が違うのはなぜ?

どの金属でも、興奮した電子が光を放出することは同じです。ただ、金属の種類によってその興奮の「度合い」が異なります。



リチウムの中では赤色の光を発する電子ができますが、銅の中では青色の光を発する電子ができます。このように異なった電子ができるのは、それぞれの金属が人の性格のような、異なった性質を持っているからです。例えば、金は水には溶けませんが、ナトリウムは水に入れるとはげしく反応して溶けます。このように、金属によって様々な性格があります。このような金属の持つ性格の違いが、金属の中に住んでいる電子にも作用するのです。


リチウムは赤色、銅は青色といったように、ほかの金属ではこんなにもさまざまな色が見られるんです。この色の違いは花火にも使われているんですよ。




結論!リチウムの炎が赤くなるのは、金属特有の炎色反応が関係しているから

リチウムの炎が赤くなるのは、金属特有の炎色反応が関係しているからでした!金属の中の電子が興奮して光を発していて、金属の種類によってその光の色が異なることがわかりました。
みなさんも、ふと気になったことがあれば、「近大それってなんなん?相談所」までご相談ください。さまざまな分野のスペシャリストが、あなたの疑問や相談、お願いごとを解決します。


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