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2023.02.24

朝ドラ舞台になった90年代の東大阪 「舞いあがれ!」のあの頃を、近大生がインスタレーション作品に

Kindai Picks編集部

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東大阪が舞台になったNHK朝ドラ『舞いあがれ!』応援企画レポートの第2弾。第1弾では、総合社会学部 社会・マスメディア系専攻の村松秀教授のゼミ生が協力した生中継の凧揚げ企画や、福原 遥さんへの独占インタビューについてお伝えしました。今回は、小学校の教室を使った、同ゼミによる「90年代の東大阪を体感する」企画展示のレポートです。

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こんにちは、近畿大学 総合社会学部 社会・マスメディア系専攻3年生の水谷 鈴(みずたに りん)です。東大阪が舞台になったNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』応援企画レポートの第2弾をお届けします!

第1弾はこちら

NHKの『舞いあがれ!』応援特番で、凧揚げ中継が行われた旧東大阪市立三ノ瀬小学校は、番組のパブリックビューイングの会場でもありました。

来場するみなさんや地元の方々にさらに楽しんでほしい、東大阪の人たちに、もっと『舞いあがれ!』に親しんでもらいたい……というNHKの方々の思いから、教室を一室丸ごと村松ゼミに託していただきました。そして! 私の後輩である2年ゼミ生たちが「1990年代の東大阪」をテーマにしたインスタレーション作品を展示することになったのです。

『舞いあがれ!』の10月放送分の舞台は、主人公が小学生時代を過ごした90年代の東大阪。そこで「90年代の東大阪を体感できる空間」を作ろうという企画でした。


ドラマの舞台、東大阪をテーマにしたインスタレーション!


東大阪市はその名の通り大阪市の東に位置し、約50万人の人口を抱える都市です。「モノづくりのまち」と呼ばれるのは、全国でも指折りの製造業の事業所数がある上、その密度が日本一(平成28年経済センサス活動調査)だから。製造業の事業所の約9割は従業員20人未満という町工場ひしめく街です。

展示で取り上げた1990年代は、大阪で「国際花と緑の博覧会(花博)」が開催されたり、関西国際空港が開港したり、長野で冬季オリンピックが開かれたりと明るい話題があった一方、バブルの崩壊や、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件など悲しい出来事も多くありました。

また「エコロジー」が大事にされ、新聞でも3Rやリサイクルといった言葉が見られるようになったのも90年代。今の「SDGs」につながっていますね。震災を機に「ボランティア」が注目されるようになったのも、この時代です。文化的な側面では映画『もののけ姫』や“安室ちゃん”や“モーニング娘。”が流行しました。


東大阪から生まれた製品や町工場の写真を展示

そんな時代の東大阪をテーマにした今回の展示。タイトルは「モノクロアノコロ ~90’s HIGASHI-OSAKA」。90年代の新聞や広報誌の白黒コピーや、東大阪の町工場で作られた製品、写真などで、当時の東大阪を体感できる空間を創出。さらに、ゼミ生たちが撮影した東大阪の写真やおすすめスポットで、現在の東大阪も体感することができるインスタレーション作品です。


これが「モノクロアノコロ ~90’s HIGASHI-OSAKA」の世界!

①廊下には今回の作品のタイトルを掲示。窓ガラスはステンドグラス風のデザインで、東大阪とともに『舞いあがれ!』の舞台になっている長崎のイメージも取り入れています。


学校が会場なので学園祭の雰囲気に

②会場である2年1組の教室の前には、ほうきにバケツ、机、椅子、バスケットボールのゴールなどなど。よく見ると、どれもモノクロの紙にくるまれています。


モノクロの世界が少しずつ見えてきます

③教室に入ると、床も壁も天井も一面が白黒の紙。圧倒されるモノクロの世界が続きます。


2年ゼミ生たちが一枚ずつ貼っていきました!

④空間全体を覆い尽くすおよそ5000枚の紙は、1990年代当時の新聞や市の広報誌、地元のコミュニティ誌をコピーしたもので、その頃の東大阪に関する出来事が空間の至るところで踊っています。


近大についての記事もありました!

⑤モノクロの紙で覆われた空間を進むと、その先にはカラフルなネジや電車の掲示板、校庭に白い線を引く道具、蛍光灯のパネルなどが置かれています。これらはすべて、当時から東大阪の町工場で作られていた製品。壁には、かつて存在していた町工場の様子を捉えた写真が貼られています。これは、ご自身も東大阪で町工場を経営されている写真家・川勝 親(かわかつ ちかし)さんによるものです。


90年代から東大阪の町工場で作られてきた製品が並んでいます

⑥さらに進むと、一気にカラーの世界へ! ここからは現在の東大阪を体感してもらう空間です。壁一面を天井までギッシリ埋めつくした写真は、2年ゼミ生たちが撮影した、今の東大阪の24時間。右側から左側に行くに従い、朝8時から昼間、夜を経て、翌朝の8時へと至ります。朝ドラが始まり、また翌日の朝ドラまでの丸一日のリアルな東大阪です。


現在の東大阪はカラーで表現しています

⑦黒板には、東大阪を15ブロックに区切りおすすめポイントを記した「近大生によるイチオシ東大阪!!2022」。15名のゼミ生たちが手分けをして調査したものです。


多くの方に鑑賞していただきました!

展示が始まると、想像を超える大勢の方々が訪れてくださいました。そして、ゼミ生たちで来場者の方をご案内しました。なかには自分の生まれ年の記事を探す人や、年号や新聞の記事、地域の写真を見て、ゼミ生に当時の思い出を話してくださる方もいました。

展示は一方通行のはずなのに自然と会話が生まれ、ゼミ生が地域の人から教わる立場にもなり、双方向の交流にシフトして、お互いに影響を与え合う関係へと変化していたのが印象的でした。私たちの世代にとっては、コロナ禍で何かと制約の多かった学校の教室。そこから大学生になったゼミ生たちが世の中に情報を発信し、人々をつなげることができたこの展示こそ、村松ゼミが探究している人の心を動かす「コトづくり」が実現した現場なのだと気付かされました。


東大阪市からは野田義和市長(写真左/右は村松教授)や副市長、NHK大阪からは局長にご来場いただきました


本番まで20日しかない! からのスタート

90年代の東大阪をモノクロ、現在の東大阪をカラーで表現することで、それぞれの世界を体感できるインスタレーション作品となった「モノクロアノコロ ~90’s HIGASHI-OSAKA」。制作にあたった2年ゼミ生たちは、企画から制作のすべてを自分たちでやり遂げました。

実は、教室を使った企画のお話をいただいたのは本番20日前のこと。それからみんなでアイデアを出し合い、各所への交渉や実制作をし、当日も開場ぎりぎりまで作品の展示にとりかかっていました。その努力の甲斐あって、すばらしい作品ができたと思います。


2年ゼミ生たちのがんばりには頭が下がります!

2年ゼミ生たちに話を聞くと、今回の作品制作で特に苦労したのは「町工場の方々への協力のお願い」だったそうです。ゼミ生の戸田優花さんは「電話口では無愛想で、会いに行くと強面のおじさんが出てきて、初めは怖くて戸惑いました……」と言います。でも話をするとみなさん、熱心に聞いてくれて、自分たちの製品と東大阪への愛を感じることができたそう。

次々に商品を引っ張り出してきてくれた方、大きな荷物を何度も往復して大学まで運搬してくれた方、たくさんの人との出会いが、何より心に響いたということも聞かせてくれました。人々のあふれる人情も東大阪の大きな特色かもしれないですね。東大阪の人たちのエネルギッシュさや愛にたくさん触れて、2年生たちはいい経験をしたんだなぁと感じました。


作品の展示が完成したのは、市長が視察に訪れる10分前のことでした!


まとめ

このところ私のいる3年ゼミでは、企画を考えることばかりに必死になってしまい、参加する人に何を感じとってほしいのか、意図を込めることや、当たり前を疑う楽しさを求めることを難しく感じていました。そんな、なんだか曇っていた気持ちが、今回の取材を通じて晴れた気がします。

また、東大阪と朝ドラに関わるたくさんの人たちの「愛」を知り、愛こそがすべての原動力になることを実感しました。この先も、たくさんの人の愛の詰まった『舞いあがれ!』から、元気をいっぱい受け取りたいと思います!

最後に、今回の『舞いあがれ!』応援企画ができたのは、2年ゼミ生たちのがんばりとともに、NHKや東大阪市役所、町工場、河内新聞社、コミュニティ誌「ふれあい東大阪」編集部のみなさんなど、たくさんの方々のご厚意のおかげです。ありがとうございました。

文:藤原武志
編集:人間編集部

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