2019.12.19
TVやYouTubeでも話題! 明治時代に一大ムーブメントを起こした「講談」が今アツイ!
- Kindai Picks編集部
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若手人気講談師で、来年2月に真打ちに昇進する神田松之丞さんをきっかけに、今、明治以来のブームがきているという「講談」。「でも、講談って何?」そんな人も多いのではないでしょうか? 講談にちょっとでも興味を持ってこの記事を開いてくれたあなた。一緒に講談の世界をのぞいてみませんか?
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「ん? そのまたの名って何?」と、思う方もいらっしゃるかと思います。
実は私、近畿大学文化会落語講談研究会(以下、落研)に所属し、「講談」をしておりまして……。先に名乗った「蚊鳴家かごめ」というのは、私の高座名※なのです!
※高座名:落語家や講談師などが高座(ステージ)に上がる際に名乗る名前。
私は近畿大学に入学してから落研に入り、講談を始めたわけなのですが、講談を始めた理由は、メチャクチャ単純なものでした。
それは……
他大学で講談をしている部活はなく、近畿大学の落研でしかできない!
そんな物珍しさに惹かれ、「他の人がなかなかやっていないことをしてみたい!」という単純な興味から足を踏み入れたというわけでして。
ちなみに、近大落研は多くの先輩が講談界へ羽ばたいていった名物研究会でもあるんですよ。プロの講談師の輩出はもちろん、今年、旭日中綬章を受章なされた4代目旭堂南陵さんも近大落研のご出身……と、とにかくスゴいんです。
といった具合にひょいと足を踏み入れた講談の世界ですが、今、空前のブームが訪れているんです!
そのきっかけとなったのが、天才講談師と呼ばれる神田松之丞さんの登場。
寄席を開けば、チケットが10分で完売。今もっともチケットの取れない講談師で、『ENGEIグランドスラム』や『人志松本のすべらない話』など、人気TV番組にも出演。他にも漫画『ONE PIECE』の発売記念でタイアップ講談をするなど、メディアにも引っ張りだこな講談師さんです。
・・・前置きが少し長くなりましたが、ここからは、講談の説明に入らせていただきます。
講談と落語の違いって?
よく比べられる落語家が話芸だとすると、講談師は読芸と言えば分かりやすいでしょうか。今と比べて、識字率も低かった江戸時代の人たちに、分かりやすく、大衆向けに事実を読み伝える存在は必要不可欠だったのです。
ちなみに、講談の起こりは江戸時代。世の中で起こっている事柄、つまり軍記・武勇伝・かたき討ち・侠客伝など歴史の話を、おもしろく独特な調子をつけて読んで聞かせる話芸として日本中に広まりました。そのため、基本的にノンフィクションの作品が多いのが特徴です。ちなみに、講談の起こりは戦国時代の「御伽衆(おとぎしゅう)」と言われています。また、寄席演芸としての講談の原型は、江戸時代の大道芸の一つである、辻講釈※(つじこうしゃく)だとされています。
※辻講釈:軍記物を注釈を加えつつ、付けて語るもの。
その後は、明治から大正にかけては「立川文庫」などの書き講談と呼ばれる講談の本が大ヒットし、当時の小中学生がこぞって読んでいたそうです。打って変わって、明治末には浪花節、昭和に入っての漫才など他の人気大衆芸能の誕生、大衆メディアの発達などに追いつけず、次第に衰微してしまったのだとか。さらに、第二次大戦後はGHQにより、仇討ちや忠考ものが上演を禁止されさらに講談師人口が激減。その後テレビの普及により、さらに衰退を続けることとなったのです。
そんな背景もあり、現状の講談の認知度は落語と比べるとかなり低いのです。例えば、落語の場合は演者が全国で800人以上もいるのに対し、講談はその10分の一程度しかいないのが現状。高座を開くための演芸場の数も落語の方が圧倒的に多いのです。
講談師が高座に上がる際は小道具を使います。左から拍子木※、張り扇※、下の台は釈台※です。
江戸(関東)の講談では張り扇と普通の扇子を使用するのですが、私がやっている上方(関西)の講談では、特に修羅場読み※の時に拍子木と張り扇を使って釈台を叩くという昔ながらの形が残っています。
これらの小道具は話の場面転換や盛り上がりを表すために用いますが、修羅場読みという軍記の際にある激しい戦いの場面の読み方では、だんだん盛り上がっていくので、拍子木と張り扇の音もだんだん大きくなっていきます。
しかし、この音がまぁ大きい。最初に自分で叩いたときは、その大きさにびっくりしすぎて1人で飛び上がってました……。
※拍子木:「拍子」を取るための木の音具。
※張り扇:講談、落語などの芸能において、物を叩いて音を立てるためにつくられた専用の扇子。
※釈台:講談師の前に置く台。
※修羅場読み:激しい戦いの場面を、張り扇を叩きつつリズムよく読み上げる、講談独特の話法。
講談の入門演目は「三方ヶ原戦記」
講談師が最初に覚える講談が武田信玄と徳川家康の戦いを題材にした「三方ヶ原戦記」という講談です。
この「三方ヶ原戦記」には講談の基礎が詰まっている演目。
ちなみに、私も1年生の最初に先輩に教わったネタが三方ヶ原戦記でした。しかし、これ、何を言っているか1発目じゃさっぱり分からない。独特の言い回しなんかが多いため「どういう意味?」と、考えているうちに演目が終わってしまうんです。「そんなん聞いて何が面白いんだ!」という声が聞こえてきそうですが、ご安心下さい。初心者が聞いても面白い講談もございます!
例えば江戸(関東)講談だと、「水戸黄門」や「猿飛佐助」、忠臣蔵で有名な「赤穂義士伝」や、教科書にもよく登場する那須与一の「扇の的」があります。皆さんも聞いたことがあるかもしれない「四谷怪談」なんかもありますよ!
上方(関西)講談だと誰もが知っている「安倍清明」や「一休和尚」。豊臣秀吉の「太閤記」、なんかも有名ですよね。聞いたことがある話なら、初心者の方が聞いてもきっと取っ付きやすいはずです!
もっとフランクなもので言えば、オリンピックの講談から、野球の講談。昭和に起きた事件や地デジ化の講談なんかもあるんです!
こちらはパリーグの公式Youtubeチャンネルの人気コンテンツ「三球勝負の松之丞」
自分の知っている出来事がこんな風に講談になっちゃうなんて、ちょっと面白そうじゃないですか?
講談の魅力は修羅場読みにある!
ここまで、講談について説明させていただきましたが、ここからは私が思う一番の講談の魅力をお伝えしたいと思います。
修羅場読みの臨場感が凄まじい!
特に、2015年に公開された映画『講談・難波戦記 真田幸村 紅蓮の猛将』での修羅場読みが最高なんです。
ちなみに、予告編の冒頭部分が修羅場読みです!
最初は口調も独特で、迫力もあり、拍子木や張り扇も勢いがすごいため、びっくりするかもしれません。しかし、その圧倒される迫力がいいんです! これは他のどの芸とも違う迫力だと思います。
次に、「講談師 見てきたような嘘をつき」「講談師 扇で嘘を叩き出し」という言葉が生まれるほど、話に引き込まれてしまうことです。拍子木と張り扇で調子を取りながら、軽妙な語り口で読まれる講談は、話の世界を一緒に覗いているような感覚に陥るほど、情景が目に浮かんできます。
さらに、個人的に1番演じていて好きな場面は、演目内で馬が走るシーンです。拍子木と張り扇を軽快に打ち鳴らして、鞭や馬の足音を表しているのですが、リズムよく鳴らすのがとても気持ちがいいんですよね。
終盤のシーンで、主人公が勇ましく馬に乗って帰ってくるシーンがあり、拍子木と張り扇の音も相まってめちゃくちゃかっこいいのです! 登場人物になりきっているので、講談師自らが馬に乗って軽快に走っていく爽快感を味わえてしまいます。
講談は、知れば知るほど面白い世界!
講談って「難しそう、近寄りがたいなぁ」。そう敬遠されがちな文化なのかもしれません。しかし、皆さん安心してください。分かりやすく、取っ付きやすいネタもたくさんあります。最近では「端物」と呼ばれる短編のものが多いため、一回の寄席で楽しめる演目も増えつつあります。
さらに、ノンフィクションの話が多いため、知っているお寺や神社が出てくることもあります。知っている場所が物語の中に出てきたらワクワクしませんか? そして講談を通して、すでに知っている場所の、違った面白さを知ることができるかもしれません。
そして、大阪には2019年1月3日に「此花 千鳥亭」という講談の演芸場が誕生しました! 誰でも講談を親しみ、楽しめる場所で、定期寄席も行っているそうです!
まだあまり若い世代には知られていない講談ですが、他の話芸にはない面白さを見てみませんか?
(おわり)
この記事を書いた人
有本 千華
近畿大学文化会落語講談研究会所属。高座名は蚊鳴家かごめ。とにかくやったことないものを、大阪ならではのものを、と思い、大学から講談とお笑いを始める。友達に「かごめ」と呼ばれすぎて、ついに本名より広まる。
企画・編集:人間編集部
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