2019.05.24
腎臓病の“最後の砦”、人工透析を正しく理解しよう
- Kindai Picks編集部
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2018年8月、東京の病院で40代の女性が人工透析治療をやめた後に死亡したことを受け、透析中止の判断を巡って議論を呼んでいます。しかし、そもそも人工透析についてきちんと理解していない人も多いのではないでしょうか。
近畿大学医学部で腎臓内科が専門の谷山佳弘先生に人工透析とその治療が必要になる病気やその対策について聞いてみました。
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谷山佳弘(医学部医学科)
専門:腎臓内科学、高血圧学、血液透析、腹膜透析
腎臓内科学、高血圧学について診療、研究、教育を行う
人工透析を知る際に欠かせない腎臓とは?
まずは人工透析なんですが、どういった治療になるんでしょうか。
人工透析というのは腎不全といって腎臓が悪くなった患者さんに対する治療です。詳細を説明する前に、そもそも腎臓というのがどういうものなのかお話ししたいと思います。ちなみに腎臓ってどこにあるかご存知ですか。
腎臓は・・・確かお腹の両脇の下の方にあるんですよね?
腎臓は、背中の肋骨のちょっと下辺りにあって、大きさはだいたい握りこぶし位と言われています。
思っているより大きいですね。腎臓はどんな役割を果たしているのでしょうか?
腎臓はいわゆる尿、おしっこを作る臓器です。血液の中に含まれている毒素、老廃物あるいは余分な塩分、ミネラル分、そして水分。それらのを調節し、血液をろ過することによって、人間の体の中の環境が一定になるようにはたらいている重要な臓器になります。
そもそも尿って血液からできているんですか?
はい。血液のいろんな成分から、体にとって必要のないものを腎臓が選び出し、尿として体の外に捨ててくれます。もし腎臓がうまく働かないとおしっこが作れなくなり、体内に毒素が溜まって尿毒症という怖い病気になります。尿毒症になると全身のむくみやかゆみ、そして肺に水が溜まって呼吸困難に陥ることもあります。
ひー、怖いですね。
そこで、起きてくるいろんな不具合を是正しようということで行う治療が透析ということになります。
人工透析ってどんな治療法?
人工透析とはどのような治療法なのでしょうか?
現在日本で人工透析を受けている人はおよそ32万人います。その多くが一回およそ4時間、週に3日という治療を受け続けています。腎臓は一旦悪くなると再生、回復しない臓器です。人工透析とはいわば機能を失った腎臓の代わりをする人工腎臓なのです。
なるほど。
透析治療には血液透析という方法と腹膜透析という方法があるのですが、日本の場合圧倒的に血液透析をされている患者さんが多く、大体97%ぐらいで、腹膜透析が残りの3%ぐらいだと聞いています。
どのような違いがあるのでしょうか?
血液透析とは血液を一旦取り出して、機械で浄化して体に戻すという方法で、腹膜透析はおなかの中に透析液を入れると腹膜がフィルターとなって血液中の老廃物が染み出すので、それを体から取り出して血液をきれいにするという方法です。
腹膜透析の場合は、基本的に透析の方法を患者さん自身に覚えてもらい、自宅あるいは職場などで継続的に行っていただきます。血液透析と違って毎日行う治療で、どちらかといえばマイルドな治療になるかと思います。
では、なぜ腹膜透析の割合が少ないのでしょうか?
腹膜透析が普及していない理由は、まず自分でやるのに不安がある。そして一般的に血液透析を行う方が多いので自分も、ということがあるようです。
たしかに。
ただ腹膜透析はわずかながらでも残っているご自分の腎臓の働きを長く保つという有利な面がありますので、我々としては腹膜透析の普及に取り組んでいるところです。
では、実際の血液透析のしくみを教えてください。
上の図が血液透析のしくみになります。まず血液透析を始める前には大量の血液を処理する必要がありますので、患者さんには「シャント」と言って特別な血管を作るための手術を事前に受けていただきます。そこに針を二本刺して、一本の針から血液を抜いて、綺麗になった血液をまた体に戻す、という作業になります。
そして透析装置のメインになるのが、このダイアライザーと呼ばれるろ過装置です。
この中にはおよそ1万本のファイバーがあって、そこを血液が通る過程で老廃物が透析液側に移動します。そして浄化された血液をおよそ4時間かけて体に戻します。
人工透析が必要になる原因と対策は?
人口透析が必要となる原因は何が多いのですか?
人工透析が必要になる原因は三番目が高血圧による腎硬化症。二番目が腎臓のろ過機能が低下する慢性糸球体腎炎。そして一番多いのが糖尿病性腎症です。透析に至る原因の四割は糖尿病と言われていて、1型という特殊なケースもありますが、多くを占める2型糖尿病は甘いものや脂ものの摂り過ぎという食習慣が主な原因です。
特に何に気をつければいいのでしょうか?
腎臓そのものに良くないといえば塩分です。
塩分をたくさんとると腎臓の負担がそれだけ大きくなりますので、腎不全の進行が早くなってしまいます。それ以外にも、透析を検討する必要があるような状態の悪い患者さんの場合は、もっといろんな制限がかかり、例えばカリウムの制限なども必要です。
それはなぜでしょうか?
カリウムは塩分を体の外に出してくれる良い働きをするもので、果物や野菜に含まれていますが、腎不全の患者さんの場合は、食べたり飲んだりして入ってきたカリウムが尿に十分出ていかず、体に蓄積することになってしまいます。カリウムが蓄積すると重症の不整脈、最悪命に関わるような状態にもなりかねません。
私の患者さんで体に良かれと思って飲んでいた青汁が原因でカリウムが異常に蓄積していたという例がありました。もちろん腎臓が健康なら良い物なんですが、腎臓に不安がある方はお医者さんに相談しましょう。
何でも取りすぎはよくないってことなんですね。
そうですね。特定のものを取り続けるのではなく、バランスを考えて普段の食事を考えることが大事だと思います。
その上で日頃から血圧や血糖値をチェックし、軽い運動を心がけることなどが大切です。
腎臓病の多くは尿の異常、例えば尿蛋白が出るとか、血尿が出るとか、そういったもので発見されますので、尿検査を定期的に行うというのが早期発見につながります。日頃から定期的な検診を受けるようにしましょう。
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