2019.04.18
カラス対策にタカを放つ!害鳥駆除で話題の「鷹匠」を呼んでみた
- Kindai Picks編集部
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皆さん、鷹匠ってご存知ですか?テレビなどで鷹を腕に乗せて自由自在に飛ばしている姿を見たことがある人も多いかもしれません。江戸時代では天皇家や大名に仕えて鷹を調教し、狩りに同行していたそうです。 そんな鷹匠、最近では「害鳥駆除」という仕事で引っ張りだこなのだとか。近大でもカラス対策を鷹匠の方々に依頼したと聞き、そのお仕事を間近で見させてもらいました!
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こんにちは、地下アイドル兼ライターのふくもりみほです。
この張り紙を見てください! ここ数年、近畿大学東大阪キャンパスではカラスの被害に悩まされているそうです。食べ物を狙ってきたり、春から夏にかけての繁殖期は、カラスはより神経質になっていて人間を攻撃してくるなんてことも……。
実際に頭をつつかれた人や食べ物をとられた人もいるとのことで、このまま放置するのは危険! ということで、そんなカラスたちを追い払うためにやってきたのは……
鷹!!
そして鷹を従えた、株式会社オオヨドコーポレーション Pテックス社鷹事業部の皆さんです!
オオヨドコーポレーションさんは害虫駆除などを行う会社で、2017年から鷹を使ってカラスなどの害鳥の追い払いをする「鷹事業部」を設立されたそうです。
今回、来ていただいたのは3名の鷹匠のみなさん。
鷹事業部主任の若山明由さんと、入社2年目の若い女性社員のお2人です。
生野千裕さん(左)とパートナーの鷹の千(セン)くん、清水千奈さん(右)と日向(ヒュウガ)くん。
え?こんな若い女の子が鷹匠なの!?
「鷹匠」と聞いて、勝手に「髭を生やしたワイルドなおじいさん」を想像していたのですが、めちゃくちゃ若くて可愛い女の子じゃないですか。
鷹匠の皆さんがカラスに対して鷹を放ってくれるそうなのですが、そもそも鷹匠って!? そして具体的にどうやってカラスを追い払ってくれるのでしょうか?
カラス対策になぜ鷹なのか
主任の若山明由さんとパートナーの鷹の怜鷹(レオ)くん。
鷹匠って普段接することのない職業だと思っていたので、こんな風に街中でカラスの追い払いをすると聞いて驚きました。
弊社は、ネズミ・ゴキブリ・鳩などを中心に、害虫駆除・有害鳥獣駆除を請け負う会社なんですが、私が趣味で鷹を飼っていたこともあり、2017年11月から鷹と一緒に害鳥の追い払いを行う「鷹事業部」を立ち上げました。
元々趣味で鷹を飼っていた……!? それってなかなか難しそうですが、どうして鷹を飼おうと思ったんですか?
「江戸の鷹」っていう、侍が鷹と一緒に悪党をやっつける時代劇があるんですが、それに憧れて……
時代劇への憧れを実現させたんですね。ちなみに鷹のお値段ってどれくらいなんですか?
30〜50万くらいですかね。
そこそこしますね! 高級なワンちゃんと同じくらいかぁ……。
でも寿命は人間の飼育下では25年から30年なので、犬より長生きですよ。害鳥駆除の追い払いも20年は活躍します。しかも餌代も犬より安くすみますし。
害鳥駆除って他にも方法がありそうなのですが、なぜ鷹を使うんですか?
害鳥とされるカラスや鳩も「鳥獣保護法」で守られているので、許可なく補獲することができないんですよ。もちろん殺してもいけない。だから捕まえるのではなく追い払うのですが、それができるのが鷹なんです。猛禽類は鳥類の中で最も強い生態系の頂点にいるので、カラスや鳩が恐れるのを利用するわけです。
なるほど〜! 迷惑だからって簡単に捕まえたりはできないんですね。じゃあ鷹を仕掛けたら一発で撃退できるんですか?
1回で追い払える場合もありますが、餌場が近かったり巣を作ってしまった後だとその場所への執着度が高いので、10回くらい繰り返し鷹を放って、ここは危険だということを覚えさせなければいけません。
巣を作る時期って決まっているんですか?
カラスは、3月〜7月が繁殖時期で、3月〜4月に巣作りをして、4月~5月に産卵、5月~6月に孵化するので、7月までヒナを育てます。卵を産んでしまうとその場所への執着度が高くなり攻撃的になるので、巣を作って卵を産む前に追い払います。
間近で見る鷹は怖そうだけど可愛い!
女性のお二人は鷹事業部に入社して丸1年だそうですが、1年でそんなに鷹を扱えるようになるんですか?
まだ一人前になれたとは言えないですね。
そもそもどうして鷹匠になろうと思ったんですか?
元々動物が好きで、専門学校に通っていたんですが、猛禽類のトレーニングができるところを探していたら鷹匠の募集を見つけて。そのために奈良から愛知に就職しました。
輸送用の箱にはそれぞれの鷹の名前が
近くで見たらめっちゃ美しい!! かっこいい!!
ビェーッ! ビェーッ!
ひぃっ! めちゃくちゃ鳴いてますね……! 襲ってこないのは分かるのですが、至近距離にいると猛禽類のオーラに圧倒されるというか……やっぱりちょっとビビっちゃいますね。
餌が欲しくて怒っています。触っても大丈夫ですよ。
え、怒ってるのに触って大丈夫ですか!? えっ……
あっ……やわらか~い!!! お二人のパートナーの2羽は若いんですか?
今月でようやく1歳になるんですよ。この子たちは私たちが雛から育てて訓練しています。
やっぱり雛の時から面倒みないと懐かないんですか?
懐くというか、人間に慣れてもらうのが一緒に仕事する上で大切なんですけど、そのためにはやっぱり雛の時から育てないとですね。
鷹匠ならパートナー以外の命令も聞きますか?
鷹は人間の顔を認識するので、鷹事業部のメンバーなら言うことを聞いてくれると思います。
私が命令してもダメなんですね。
餌を持ってたら言うこと聞いちゃうかもしれません。
餌を入れているのは、餌合子(えごし)という日本伝統の道具
餌は何ですか?
ウズラです。
うわぁーお……! 血も滴るめちゃくちゃ生肉。やっぱり新鮮じゃないとダメなんですね。
この餌合子は、ただの餌の入れ物ではなく、蓋と本体で音を鳴らして、私たちの姿が見えなくても音で鷹匠を認識させる役割もあります。
あ! 鷹に発信機がついてる!
どこかに行っても大丈夫なようにつけています。
息ぴったり! 鷹を操るところを見せてもらう
それでは、実際に鷹を飛ばすところを見せていただきましょう!
腕に止まらせた状態で、ポールや電線など飛ばす先を見せて認識させます。
鷹匠が腕を押し出すと……
バサバサバサッ!!
おぉぉぉぉ~!!
かっこいいいいいいい!!!!
そして再び合図をすると……
戻ってきた~!!!
真横で見ると大迫力!! 羽を広げるとさっきと比べてめちゃくちゃデカい!!
カラスと直接対決!効果てきめんの秘策
さて、いよいよ鷹によるカラスの追い払いを見せていただきます!
まずは、我々の上空を飛び回るカラスたちを確認。
自分たちのテリトリー内に鷹がやってきていることを察知しているのでしょうか。
ぐるぐると飛びまわり、鳴き声もカァカァと騒がしく聞こえます。
それもそのはず、東正門近くの鉄塔にカラスが巣を作ってしまっているのです。
巣を持ったカラスは執着心も強く、攻撃性も高いとのことで、早く追い払って出ていってもらわないといけません。
狙いを定めて、カラスがうろうろしている電線付近に鷹を飛ばす若山さん。
鷹とカラス、イメージでは鷹がとても強そうなのですが、並んでみるとカラスも大きくて威圧感があります。
しかし、そこは猛禽類である鷹。めちゃくちゃにカラスを威嚇してコテンパンにしてくれるのかと思いきや……
なんかちょっと押されてない……!?
そう、カラスだってもう巣を作ってここを自分のテリトリーに決めてしまっているわけです。簡単には引き下がってはくれません。
そこで主任が取りだしたのがこちら!
ニセカラスです。
本物のカラスの羽に、鷹の餌であるお肉がくっついている代物でございます。
これを、ぐーるぐーると回して……
合図をして投げると見事、鷹がキャッチ!
タイミングばっちり! すごい!
そして鷹は羽を広げてお肉をむしり始め……完全に捕食モード。パッと見、本当にカラスが食べられているように見えます。
直接対峙した時は、全くひるんでいなかったように見えたカラスですが、これを見せつけられて仲間がやられたと思い……
逃げたー!!
カラスは目も頭もいいので、自分たちと同じカラスが鷹に食べられたと認識し、このままここにいてはマズイと判断して逃げていったようです。
ただ、このように一度追い払えばもうやって来ないというわけではないそうです。今回のような追い払いを繰り返し行い「ここに来れば鷹に追い払われる」「しかも人間とチームを組んでいて危険である」ということをカラスが覚えて、やっとこの場所から完全に追い払うことができるそうです。
現場のハシゴにトレーニング、日々の鷹匠のお仕事
お仕事のスケジュールってどんな感じなんですか?
カラスの繁殖期である今の時期は依頼が多く、1週間毎日同じ現場に行って追い払いをしたりします。
じゃあ、現場をハシゴすることも?
あります。午前は愛知、午後は岐阜とか。
結構ハードですね! 依頼主は?
普段は競技場とか工場からの依頼が多いですね。大学からの依頼は今回が初めてです。
どんな場所に行っても鷹は問題なく仕事できるんですか?
基本は大丈夫ですが、工場とかで初めてみる機械があったりするとびっくりしちゃったりはしますね。
現場がない時はお休みってわけじゃないですよね?
そうですね。現場がない時も訓練は欠かせません。鷹本来の習性を引き出すため、野鳥の疑似餌などを使ったり、色んな訓練をします。
人を襲ったりはしないんですか?
もちろん、しないように訓練しています。
人の多い場所で飛ばすこともあるので、色んなものに慣れるために街中を歩く訓練もします。
じゃあ今日みたいに人やカメラが沢山いる場所でも気が散ることはないんですか?
それも慣れですかね。この子は雛の時にテレビの取材を受けたのですが、初めて見るレンズに対して「ビェェェェェ!!」ってめちゃくちゃ怒っちゃって。
じゃあ今は取材慣れしてるんだ! すごい!
鷹匠って、免許皆伝みたいなのあるんですか?
法律的な免許というものはありません。鷹匠には流派があって、その中で試験を受けて師匠に認めてもらう……というものはあります。私たちは流派に属していないので、色んな流派を渡り歩いた師匠に主任が弟子入りして、主任が得たその技術を私たちに教えてもらっています。
なんか山奥で修業を積んでやっと鷹匠になれる! みたいなのかと思ったら違うんですね~!鷹小屋は主任のお家にあると言っていましたが、お二人は鷹と一緒に住んだりはしないんですか?
住んでるところはペット禁止なので。
残念! 飼えたらセキュリティすごそうですけどね。
最後に
迫力満点の鷹たちや、鷹匠のお仕事を間近で見ることができて興奮しました。
「鷹によるカラスの追い払い」と聞いて、鷹がカラスを直接つついたり威嚇したりして追い払うのかとイメージしていたのですが、実際一番効果があったのはニセカラスを捕えて食べてみせることでした。
確かにお互い傷つかずに済むし、カラスの性質と鷹の特性を活かしたパーフェクトな方法です。
若山さんの鷹への愛、そして入社2年目で前線で活躍する鷹匠ガールのお二人、すてきだったなぁ。人と動物のタッグってめちゃくちゃロマン感じるし、憧れる!
これからも需要が多そうな鷹匠のお仕事、注目です。
▼公式Twitter
オオヨドコーポレーション Pテックス社豊橋支店鷹事業部
(終わり)
ライタープロフィール
ふくもりみほ
通称「みほたん」。婚活パーティーやナンパスポットなど男女の出会いの現場を日々研究し、レポートや恋愛コラムを各種ウェブメディアで連載中。趣味はネットサーフィン、特技はネットストーキング。難ありアイドル『オタフクガールズ』の貧乏担当としても活動中。
Twitter:@fukumoco
写真:げん
企画・編集:人間編集部
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