2017.10.31
公立大学の広報が近畿大学で職業体験!たった1週間でぶっ壊された大学広報の常識
- Kindai Picks編集部
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はじめまして。大阪府立大学理事長室広報課の西野です。このたび、研修生として、近畿大学広報課で1週間の職業体験をさせていただきましたので、そこで感じたことをご報告させていただきたいと思います。
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私が働く大阪府立大学は設立団体が大阪府の公立大学です。創基134年の総合大学ですが、広報課ができたのは5年前。
より積極的に広報活動に取り組んでいくため、広報に対する根本的な姿勢や組織体制を変えなければならない…という課題を抱えています。
そんな中、"日本で最も広報活動に積極的な大学"として有名な、近畿大学の広報室部長である世耕石弘氏の講演に感銘を受けた私の上司。
広報に対する姿勢やそのノウハウをご教授いただきたい!と、近畿大学広報室を訪れた日、横にいる私に何の相談もなく、上司の口をついて出たのが冒頭の発言でした。
学生のインターンならまだしも、他企業で働く社会人を研修生として預かる!?
近畿大学にとっては何のメリットもないであろう厚かましすぎるお願いに、言葉を失う私。
しかし、近畿大学からの返答は、まさかの「OK」。そして数ヵ月後、私は近畿大学広報室の扉を叩くこととなったのです。
すべてに圧倒された研修初日
4月に新設した建物に移転した近畿大学広報室。
フリーアドレスで毎日座る席がかわり、オフィスのいたるところで打ち合わせが行われています。
話題のアカデミックシアターの中にも会議スペースがあり、職員のITインフラが完備。会議には全員がノートPC持参で参加します。
大学の広報室というよりは、IT系のベンチャー企業のよう…。
自発的な発言・質問がバンバン出てくる自由な雰囲気で、案件相談の風景からも、組織の風通しの良さが伝わってきます。
また、無駄という無駄が省かれており、社内用のコミュニケーションツールを使って、資料の事前共有は当たり前。
私が参加させていただいたすべての会議の所要時間は30分前後でした。
10,000人の広報担当者
年間474本のプレスリリース、1,426件の取材対応を行っているという近畿大学。
いったい何人で対応しているのでしょうか?
答えは10.000人!!
「10.000人の教職員全員が広報担当者」だと言います。
例えば、私が研修生として、校正から配信までを担当した近畿大学附属福岡高校のプレスリリースがコチラ。
事務室の方が書いたとは思えない初稿のレベルの高さにまず驚いたのですが、もう一つ驚いたのが発信までの「スピード感」。
「この取り組みっていつごろ始まったか分りますか?」という質問に対して、事務室担当者から「担当の先生に確認します!」と、すぐに返答が。
火曜日に原稿を受取り、水曜日に校正・追加情報の確認、木曜に世耕部長にチェックいただき、その日の夕方に近畿大学附属福岡高校から福岡県飯塚市記者クラブに報道提供。
このようなやりとりが毎日途切れることなく行われることで、年間約500件のプレスリリースが近大から世の中に送り出されているのです。
後日、読売新聞と毎日新聞から取材があったと、連絡を戴きました!
▽毎日新聞 「文化祭収益金を寄託 近大福岡高生徒会、飯塚市に義援金14万3558円/福岡」
100人のメディア関係者が集まる記者懇談会
近畿大学以外にも、メディア関係者に対して定期的に記者懇談会を行っている大学は多く、私が働く大阪府立大学でも半年に1回行っています。
では、それぞれの記者懇談会に何人の記者が集まっているのでしょうか?
研修3日目に参加させていただいた近畿大学の記者懇談会には、なんと100人のメディア関係者が集まっていました。
塩﨑学長が大学全体の教育・研究の動きについて、また世耕部長が日本の大学業界における「今の近大とこれからの近大」について話されたのですが、紹介されるすべてが、これまで世の中になかった独創的な研究や学生支援に挑む「チャレンジ精神」と、研究成果を社会に活かし且つ収益をあげる「社会貢献」に直結する取り組みばかり。
顔見知りの記者がいたので、聞いてみました。
西野「どうしてこんなにたくさんの記者が近大には集まるのでしょうか」
記者「みんな純粋に近大に興味があるんじゃないかな。近大は日本の大学の最先端を突っ走っている。記者としては最先端を見逃すわけにはいかないからね」
腹落ちした。たしかに記者は最先端を見逃すわけにはいかない。
「近大は日本の大学の最先端だ」ということを多くの人が認めているのだ。
何年も何年も前から、日本の、いや世界の中で「どんな大学になりたいか」を描き、そこに目がけて最短のルートを見出し、広報ファーストの精神で走り続けている近畿大学。
とっくの昔に近大は「大学」というカテゴリーの枠さえとっぱらった、その先を見据えていたのかもしれない。だからこそ、世間の人々は近大の一挙一動に目が離せないのですね。
イノベーション=常識をぶっ壊す
読売広告大賞を受賞し、話題になった「早慶近」の広告をテーマに行われたとある講演会で、広告代理店の方やコピーライターとのパネルディスカッションでの一コマ。
司会「広告代理店でもコピーライターでもない、当事者だからこそ持ち合わせているものは?」
世耕部長「長年の執念と怨念がこもってますからね(笑)。そこから生み出される何かはあると思います」
「関関同立」。受験生なら誰しもが聞いたことがある言葉だが、もともとはとある予備校が昭和40年代に作ったキャッチコピー。
偏差値、大学ランキング、志願者数などの現在の指標は何も反映されていないこの言葉のイメージに、近畿大学は幾度もぶつかることがあったそうです。
世耕部長「不可抗力でつけられた何の根拠もないイメージですが、高校や予備校を訪問する中で、すでに根付いてしまっているイメージを変える難しさに何度もぶつかってきました」
他社に作られたイメージではなく本当に伝えたいことは近畿大学の建学の精神のひとつ「実学教育」という理念。
それまでにない独創的な研究に挑み、その研究成果を社会に活かし、収益をあげ、その利益を次の研究に投入するという考えを持った大学であるということをいかに社会に対して伝えていくかに注力してきたのだという。
その結果が私立大学 志願者ランキング4年連続志願者数日本一という実績ではないでしょうか。
印象的だったのが「イノベーション=常識をぶっ壊す」という世耕部長のお言葉。
社会の常識をぶっ壊し、イノベーションを起こした者にしか得られない強い何かが、今の近大を形作っているのだと強く感じました。
最後に
近畿大学広報室の皆さま、何の得にもならず、十分にお役に立つこともできない私たちの厚かましいお願いを温かく受け入れてくださり、本当にありがとうございました。
広報課の方はもちろん、大学内で働く多くの方が大学の中の人材、研究、取り組みなどすべてにアンテナを張り、どのように見せれば一番輝くのか、誰に伝えるべき情報なのかを考え、生き生き働かれている姿に刺激を受けました。
そして、皆さまの発言、自発的な行動、そして心遣いのひとつひとつに多くの気づきを得ることができました。
何より、同じ業界にこんなにも前向きで、ハングリーで、エネルギッシュな広報パーソンがたくさんいることがうれしく、私も自分の持ち場でがんばりたいと思いました。
私がぶっ壊すべき目の前の壁は何か。きちんと見据え、立ち向かっていきます!
ライタープロフィール
西野 寛子(にしの ひろこ)
大阪府立大学 理事長室 広報課 主事
2016年4月民間企業から転職し、現職に至る。主な業務は報道提供資料の作成、取材対応。今夏、高校生向け“やりたいこと”探索サイト「Find Out!!」がオープン。キーワード増殖中!
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