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2016.01.31

成功確率10%!ベンチャーの世界で生き抜くため4つのメソッド【後編】

Kindai Picks編集部

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KINDAIサミット

中井清和(学情)×松野真一(アラタナ)×上村一行(アイアンドシー・クルーズ)×森健志郎(スクー)×小澤隆生(ヤフー)
多くの成功と失敗を経験してきた4人から、前編に引き続き、起業の醍醐味、失敗への対応、そして成功のコツを聞いた。

<KINDAIサミット2015第3部分科会A「近大はシリコンバレーになれるのか!?~ベンチャー精神論~」より>

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スピーカー
中井清和(なかいきよかず)
株式会社学情 代表取締役社長
1948年大阪府生まれ。1972年に近畿大学法学部を卒業後、広告会社に入社し1976年には総合広告代理業の実鷹企画を創業して代表取締役社長に就任。2000年に社名を株式会社学情に変更した。2002年ジャスダック、2005年東証二部、2006年東証一部上場。2011年日本経済団体連合会に入会。


松野真一(まつのしんいち)
株式会社アラタナ 取締役CISO(最高情報セキュリティ責任者)/ゲヒルン株式会社 取締役
1978年愛知県生まれ。2001年に近畿大学工学部を卒業。2006年には伊藤忠グループ企業にて海外パートナーと共同で情報セキュリティ事業を立ち上げる。2008年伊藤忠商事の子会社として株式会社サイバーディフェンス研究所を設立し、執行役員開発部長に就任。2013年、株式会社アラタナの取締役CISOとゲヒルン株式会社の取締役にそれぞれ就任。TBSドラマ「ブラッディ・マンデイ」にてハッキングシーンの技術監修を担当。「ハッカージャパン(白夜書房)」をはじめ、セキュリティ関連の書籍を多数執筆。


上村一行(うえむらかずゆき)
株式会社アイアンドシー・クルーズ 代表取締役
1977年福岡県生まれ。2002年近畿大学法学部卒業。在学中に起業してオリジナルパソコンの製造と販売を行う。卒業後は、デロイト・トーマツ・コンサルティング株式会社(現アビームコンサルティング株式会社)に入社。2005年ベンチャー経営者支援を行う株式会社ジェイブレインに役員として参画。2008年株式会社アイアンドシー・クルーズを設立し代表取締役社長に就任。


森健志郎(もりけんしろう)
株式会社スクー 代表取締役社長
1986年大阪府生まれ。2009年に近畿大学経営学部を卒業後、株式会社リクルート・リクルートメディアコミュニケーションズに入社し、不動産関連の広告制作のディレクターを務める。このときeラーニングによる社内教育を受けたが、その内容に不満を感じたという経験から、インターネットを活用した教育サービスを自ら立ち上げることを決意。2011年に株式会社スクーを設立し、代表取締役社長に就任。


モデレーター
小澤隆生(おざわたかお)
ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長
1972年千葉県生まれ。1995年に早稲田大学法学部を卒業し、株式会社CSKに入社。1999年株式会社ビズシークを設立し、代表取締役に就任。2003年、ビズシークの吸収合併により楽天に入社。楽天イーグルスの立ち上げなどに携わった後、2006年に退社して小澤総合研究所を設立。2011年株式会社クロコスを設立、2012年には同社をヤフー株式会社に売却し、ヤフーに入社。2013年に同社執行役員・ショッピングカンパニー長に就任。




10個やるとだいたい9個は失敗。でも1つは当たりますよ(笑)



大学生(農学部、2年生):ベンチャー企業を経営するためには、発想力が必要だと思いますが、発想力を鍛えたり持ち続けたりするために、どのようなことをしていらっしゃいますか?

中井:私は元々そういうことを考えるのが大好きで得意なんです。世の中で何かの流れが起きていて、みんながそっちの方向に行っている時ってあるじゃないですか?そういう時、私は天邪鬼なので逆の方がいいかなって考えるんです。それで随分と成功しましたね。例えば、平成バブルと言われた平成元年からの数年間、みんなが不動産を買っていた時期がある。でも私は、この流れは違うかなと思って全く手出しをしなかったんです。そしたらバブルが弾けて、その後に100億円くらいの土地を10億円で買って本社を建てました。

そういう、「人と違うことをやる」というのは常に心掛けてきました。それに、発想力という点では、いつも今ない新しいものが何かないかなと考えています。そして、思いつくとすごくワクワクして、失敗してもいいからそれをやろうと思う。10個やるとだいたい9個は失敗しますけど、でも1つは当たります。人がやっていないこと、新しいことを常にやってやろうという気持ちを持ち続けることと、失敗してもいいからやってみること、どちらも大事ですね。

小澤:私も一番重要だと思っていて、なかなか世の中の人に理解されないのは「10個やったら9個は失敗する」ってことなんですよ。思いついてやってみて、上手くいかなかった時にくじけている人が多いのですが、新規事業なんてほとんどが上手くいきませんからね。これまでにない新しいことをやろうとしてるんだから、上手くいくわけないんですよ。

松野さんは、職人気質な専門家として、発想力はどう磨いていますか?

松野:情報セキュリティの分野では、明日になると新しい攻撃やハッキングの方法が出てくるとう状況で、イタチごっこなんですね。それに対するあくなき戦い、あくなき挑戦なんです。こういうことに愚直に向き合うというのが、リーダーシップを取る経営者に求められる資質だと思います。

小澤:日々、情報収集。そして分析ということですね。情報セキュリティにおいて、なぜ日本で一番成功しているかと言われたら、それは日本で一番研究しているからなんですよね。そして、それが自分の自信にも繋がっていくのでしょうね。

大学生(経営学部、4年生):就職が決まっていて、今は「やってやるぞ!」と思っているのですが、過去を振り返るとだいたい最初にコケて失敗してきました。みなさんはこれまでに、どのような失敗をして、それをどう乗り越えてきましたか?

小澤:上村さんは結構いっぱい失敗していそうですが(笑)

上村:本当に結構失敗してきていますね(笑)。今3つの事業が並行して走っているのですが、起業してからの8年間で取り組んできた事業は10個か20個くらいありますから。毎年必ず一つは大きな失敗があります。例えば、私たちは在庫を持つような事業はしないことにしているのですが、2年前くらいに「これはいける!」と思った物があって、8,000万円くらいで買ったら一つも売れなかったことがあります。これは大失敗ですね。

ただ、屋台骨を揺るがすような失敗はしないようにしていて、その上での失敗なら、どんどんやろうと思っています。失敗自体は悪いことだと思っていなくて、そこから次どうするかというのを常に心掛けています。



小澤:新しいことは失敗しますが、その失敗の仕方が大事なんですね。小さく産んで大きく育てるなんて言いますが、まずは小さい失敗をして見極めをつけることも大事だと思います。全部突っ込んで失敗したら、立ち直れませんからね。

森さんは、失敗について何かありますか?

森:大前提として、私の会社では「失敗」という言葉を禁止しているんです。「ナイストライ」という言葉を使います。「失敗したね」ではなく、「ナイストライだったね」と。でもそれが結果に繋がらなかった理由は一緒に考えます。そういう意味では、私はチームとしても個人としても、起業してから今まで失敗はなかったと言い切ってやってきていますね。

小澤:さすが、スーパーポジティブですね(笑)

森:とは言え、客観的に見てみて失敗で思いついたのは、創業2年目の時に当時いたアルバイト10人全員に同時に辞められたことです。

小澤:ナイストライ!



森:ナイストライなんですけど(笑)、理由としては立ち上げ時のベンチャーなので、すごく過酷な環境で働いていて…。人はそれぞれ違う、みんなが自分と同じレベルで頑張れるわけじゃないというのを、そのナイストライによって気づくことができました。そして、その経験によって、一人ひとりの想いと会社のビジョンを結びつけて考えらえるようになりましたね。

小澤:失敗はない。つまり心の持ちようということですね。私も楽天にいた時、競合に圧倒的に負けている事業のことで、三木谷社長に「これ負けていますね」と言ったら、「何言ってるんだ!勝つ途中だ」と言われたことがあります。心の持ちようで、失敗も負けも全部ポジティブに転換できます。あとはそれを従業員にどう納得させるかは、コミュニケーション次第ということですね。


「これをやるんだ!」「これをやるんだ!」 すると言霊が仲間が集めてくれるんです 


大学生(経営学部、2年生):私も上村社長と同じように、経営者はかっこいいと思っていて、そういう経営者に近づきたいと思っています。今からでも起業したいと思っているのですが、どうアクションを起こせばいいのでしょうか?

小澤:それではこの質問が最後になりますので、起業することを決めている方だけでなく、就職する方にも将来は起業してもらいたいという気持ちも含めて、全員からメッセージをお願いできますでしょうか。

森:2つ伝えたいことがありまして、まず、ベンチャー起業家の精神というのは、公務員だろうが、会社員だろうが、子育てをしている人であろうが、共通しているものだと思います。それは、つらいことがあっても逃げない、チャレンジを恐れない、怯まない、諦めないといったことです。こういうのは、どこで活躍するにしても必要なものなので、絶対に持っていて欲しいなと思います。 

次に、どう時間を過ごすのが有益か考えていてまだ踏み出していませんという人がいますが、そういう悩んでいる時間はすごく勿体ないと思います。メリットや便益を考えるから選択できないのであって、本当に今自分がやりたいことをやれば、それでいい。あまり打算的に考えず、起業したいならすぐにすればいいと思うし、やりたいことがあるなら、それが周りから見てかっこいいことじゃなくても、やればいいと思います。

上村:私は九州の炭鉱の町で生まれたのですが、日本ってすごく恵まれていてどんなことをしても食いっぱぐれることはないと感じていました。でも、それは私たちが頑張ったからではなく、もっと上の年代の人たちが頑張ったからです。

私も子供がいますが、子供たちの代、次の世代に自分が頑張って何かを残さないと…、かっこいい後ろ姿を見せないと…、と思っているんです。それが起業の原点となっている想いですね。起業がすべてということはありませんが、どんな立場でも、社会を良くする、おかしいんじゃないかと思うことに取り組む、そういうことをしていれば、自分の姿を見てくれている人は絶対にいるものです。

それと、言霊と言いますか、何かをやろうと思ったら、心の中で思っているだけでなく、口に出して「これをやるんだ!」「これをやるんだ!」と言い続ける。そうすることで賛同してくれる仲間や支援してくれる人が集まってきてくれます。

松野:起業はゴールではなく手段だということはきちんと認識していただいた方が良いと思います。「明日から社長だ、やったー!」というのでは、その先がちょっと心配になってしまいます。

社会に出ると、何かしらの形で社会に貢献していくことになりますが、その時に強烈に「自分がこれをやりたい!」という何かを持つと、充実した時間を過ごせると思います。そして、やりたいことをやっていくと、それは社会の中で自分がやるべきことに変わっていきます。その時に、会社という形にするのであれば、その想いが会社の理念となり、最終的には会社が社会の器として雇用を生んだり社会貢献をしたりしていくことになります。

私自身、専門職だったこともあり、できれば経営者もエンジニアの中から生まれて欲しいなと近畿大学に対して思っています。自分はこれがしたい!という熱い想いを持っている人がいましたら、社会に出るプロセスの中で、ぜひ起業家になる将来も描いていっていただければと思います。

中井:私は起業して今日までやってきましたが、その動機となっているのは「人生は一回しかない」ということです。生きていく上で後悔はしたくない。棺桶に入る時、自分の人生は満足だったなと思いたい。そういう想いで起業しました。みなさんも、一回しかない人生ですので、やりたいことにチャレンジしてみてください。



それと、最後に成功するコツについてお伝えしておきます。それは「人に感謝をする」ということです。いろんな人を見てきましたが、成功する人は感謝の気持ちを相手に伝えられる。ダメな人は伝えられていない。起業家としてやっていくにせよ、サラリーマンとしてやっていくにせよ、自分の力だけで成功するわけではありません。いろんな人の支えや応援があって成功するわけですから、周りの人たちに対して「ありがとうございます」という言葉をきちんと伝えてください。思っているだけではダメです。口に出して伝えることで、周りの人はまた必ず力になってくれますから。



前編では、一度は企業に勤めながらも、そこを飛び出し、自らリスクを取って起業した動機と今日までの道のりに迫っています。
<→情熱、憧れ、ひらめき、自負心。ベンチャーのトップたちが起業したそれぞれの理由(近大流ベンチャー精神論・前編)に進む>




▼KINDAIサミットとは
http://www.kindai.ac.jp/kindaisummit/


▼小澤隆生×中井清和×松野真一氏×上村一行×森健志郎 「近大はシリコンバレーになれるのか!? ~ベンチャー精神論~」(YouTube)

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