2016.01.22
食品安全のエキスパートが解説。廃棄食品の転売問題から見る消費者が備えるべき視点とは
- Kindai Picks編集部
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カレーチェーンを運営する「株式会社壱番屋」をはじめとする飲食店や小売店が廃棄処分した冷凍食品などが、産業廃棄物処理業者によって転売されていたことが明らかになり、食品に対する安全について物議を醸している。
本件について、「うなぎ味のナマズ」を開発し内閣府食品安全委員会の委員でもある、近畿大学農学部水産学科 有路昌彦准教授の食品安全の専門家としての見解を聞いた。
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PROFILE
有路昌彦(ありじまさひこ)
近畿大学農学部水産経済学研究室准教授 ㈱食縁代表取締役社長 ㈱自然産業研究所取締役
1975年福岡県生まれ。京都大学農学部卒、京都大学大学院博士課程修了後、大手銀行系シンクタンク研究員、民間経済研究所役員を経て現職。京都大学博士 (農学:生物資源経済学)。専門は食料経済、事業化、リスクコミュニケーション。OECD水産委員会政府代表団員など各種国際会議委員、政府各種委員、自治体各種委員を歴任。現在、内閣府食品安全委員会企画等専門調査会委員、日本学術会議連携会員(食の安全部会幹事)、日本水産学会編集委員、国際漁業学会事務局長理事等を兼務。食品に関する事業、経営再建や事業化を手掛ける。各種学会賞受賞。論文、連載、著書多数。著書に「無添加はかえって危ない」(日経BP)、「水産業者のための会計・経営技術」(緑書房)、「誤解だらけの「食の安全」」(日経プレミア新書)などがある。
ー今回の一連の問題をどう見られていますか?
世界的に見るとこれは氷山の一角だと思います。賞味期限切れや異物混入で廃棄処分になった食材の転売は、先進国である日本では少なくなったのでしょうが、多くの国でサブマーケットとして存在してきたと思います。
ー今回の問題は、すごく極端な話をすれば、廃棄業者の倫理観による部分が大きいとも言えますが
今回の報道を見ていると「CoCo壱番屋」はある意味、被害者と言えます。ココイチが悪いことをしているわけではないのに批判されている。その風評被害はかなりのものです。
同社が再発防止策として廃棄現場の立ち会いを決定したことにより、他社も対策に動きを出すとみられます。
ーそもそも食べ物を無駄にしているのではないかとの指摘もあります
これだけの経済規模を誇る日本で食品廃棄物が一定量出るのは安全性の維持のため必然的なこと思います。むしろ全ての食べ物が製造工程から全くロスなく消費されるということは本来不可能なことであるという認識は必要です。
ー一連の問題を受けて今後の食品流通はどのように変わっていくのでしょうか
小売店、飲食業は廃棄業者との契約書の中に転売の禁止、廃棄現場の立ち会いを条件にするのがスタンダードになると思います。そして、今まで存在していた転売によるサブマーケットが縮小することで、その分の需要を正規品需要として各社が取り返すことができると思います。結果として、廃棄処理にも誠実に向き合う会社が市場を獲得していくことになるでしょう。
ー新たな市場の獲得もあれば、健全なビジネスになりそうですね
はい。それは消費者にとってもとてもいいことだと思います。我々消費者も今回の問題を「問題だ。問題だ。」と騒ぎ立てるのではなく、過剰に安価な商材を疑う目も大事だと教えてもらったと思いましょう。手元に届く商品には、原価に加えて加工、流通、卸などにかかる費用が追加されているはず。逆算して原価がつかないような商品にはわけがあると考えられます。すべての値段には意味があるということです。
また、私たち消費者が、問題に誠実に向き合う企業を選択することも大切です。その意味では「CoCo壱番屋」の対応はとても迅速で模範的といえるでしょう。
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