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就職活動

2026.05.25

AI時代、企業が最後に見るのは「人間力」。近大OBでNVIDIA日本代表の大崎真孝氏が語る“就職活動の正解”のつくり方

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事、OB・OG、就活、AI、NVIDIA、大崎真孝、近畿大学

生成AIが文章を書き、AIエージェントが仕事を進め、ロボットが人の暮らしを支える。そんな時代に、企業はどんな人材を求めるのか。近畿大学で5月9日(土)に開催された「令和8年度就職活動決起集会」に、NVIDIA 日本代表兼米国本社副社長の大崎真孝氏が登壇しました。世界的AIカンパニーを牽引する立場から語られたのは、AIの技術論だけではありませんでした。 「企業から選ばれるのではなく、自分から選ぶ」「就職した会社を、後から自分で正解にしていく」「最終的に見るのは、人間性」。これから就職活動に臨む近大生へ、大崎氏が伝えたかった“AI時代のキャリアのつくり方”とは。講演と質疑応答の様子をお届けします。

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大崎真孝(おおさき まさたか)
NVIDIA 日本代表兼米国本社副社⻑
1990年(平成2年)近畿大学理工学部原子炉工学科卒業後、1991年(平成3年)に日本テキサス・インスツルメンツ株式会社に入社。大阪でエンジニアと営業を経験した後、米国本社に異動し、ビジネスディベロップメントを担当。本社勤務を含め20年以上、DSP 、アナログ、DLP製品など幅広い製品に携わりながら、さまざまなマネジメント職に従事。2014年(平成26年)、エヌビディア合同会社の日本代表として入社。パソコン用ゲームのグラフィックス、インダストリアルデザインや科学技術計算用ワークステーション、スーパーコンピューターなど、NVIDIA製品やソリューションの市場およびエコシステムの拡大を牽引し、日本におけるAI コンピューティングの普及に注力している。首都大学東京で経営学修士号(MBA)を取得。
※近畿大学理工学部原子炉工学科は平成14年度(2002年度)の改組にともない募集停止

「毎度、近大に帰ってきました」。母校で語った“覚醒”のタイミング

講演会場に登壇する大崎氏

「皆さん、こんにちは。毎度、近大に帰ってきました」
講演の冒頭、大崎氏は親しみのある関西弁で学生たちに語りかけました。兵庫県尼崎市に生まれ、近畿大学在学中は奈良県生駒市で暮らしていたという大崎氏。「生まれも育ちもずっと関西人です」と笑いを誘いながら、母校での講演をスタートさせました。
この日、大崎氏が繰り返し使った言葉があります。それが「覚醒」です。講演前、大学関係者との昼食の場で「大崎さんはいつ覚醒されたんですか」と尋ねられたという大崎氏。自身のキャリアを振り返れば、米国本社への赴任、社会人になってからの大学院進学、46歳でのNVIDIAへの転職など、いくつもの転機がありました。
しかし大崎氏は、目の前にいる学生たちこそ、すでにそのタイミングにいると語ります。
「土曜日のこの時間に、僕みたいなおじさんの話を聞きに来て、就職活動決起集会に参加している。僕らの時代より、皆さんは全然早く覚醒のタイミングを迎えていると思います」
就職活動は、ただ内定を得るためのイベントではありません。自分がこれからどう生きるのか、どんな場所で成長したいのかを考える、大きな人生の節目です。大崎氏は、その入り口に立つ学生たちに向けて、社会人としてのリアルな経験をもとに語り始めました。

近大卒業後、半導体の世界へ。NVIDIAに入ったのは46歳のときだった

学生時代やキャリアについて語る大崎氏

大崎氏は、1991年に近畿大学を卒業後、半導体メーカーのテキサス・インスツルメンツに入社しました。入社6年目には米国テキサス本社へ赴任。当初はトレーニングの予定だったものの、現地マネージャーとの縁からグローバルの製品担当を任され、世界中の顧客と向き合うことになります。
その後、東京に戻ってからも働きながら大学院に通い、仕事が終わった夜や週末に学び続けました。そして2014年、46歳のときにNVIDIAへ転職します。
現在ではAIカンパニーとして広く知られるNVIDIAですが、大崎氏が入社した当時は、AIはまだ事業の中心ではありませんでした。主軸はゲーム用グラフィックスやスーパーコンピューターなど。それが年々、AIへの期待が高まり、現在のNVIDIAへと変化していったといいます。
「12年前のNVIDIAは、AIがほんの少し見え始めたくらいの時期でした。そこから毎年、毎年、AIの期待値が高まっていって、今のAIカンパニーになったんです」
大崎氏のキャリアは、最初の会社に24年、NVIDIAで12年。外資系企業では転職を重ねる人も多い一方で、大崎氏自身は2社でじっくりキャリアを築いてきました。ただし、それが唯一の正解ではないとも話します。
「どんどん転職して高めていくのも手ですし、私のように1社、2社でじっくりキャリアを高めていく方法もあります。社会人になってから、いろいろ経験する中で自分の道を探っていけばいいと思います」

就職活動は「企業から選ばれる」ものではなく、自身の人生を自身で選択せよ。

スライドを用いて語る大崎氏

就職活動を前にした学生たちに向けて、大崎氏がまず伝えたのは、企業との向き合い方でした。多くの学生は、企業から選ばれることを意識します。エントリーシートを提出し、面接を受け、合否を待つ。その過程で不安になる人も少なくありません。
しかし大崎氏は、少し視点を変えてほしいと話します。
「企業から選ばれるというよりも、自分から企業を選んでいくものだと思います。選ばれなくても、それは縁のもの。だから、どんどん挑戦してほしい」
内定を得た瞬間に、その就職が成功かどうか決まるわけではありません。入社後、3年、5年、10年と働く中で、自分が努力し、挑戦し、やり遂げたと感じられたとき、初めて「あの就職は成功だった」と思えるようになる。大崎氏はそう語ります。
「就職したタイミングで成功ではありません。その企業に入ってから、皆さんが努力して、後から『あの選択は正しかった』と思えるようにしていくものです」
就職活動はゴールではなく、自分の人生を動かすスタート地点。だからこそ、受け身ではなく、自分から仕掛けていく姿勢が大切なのです。

「社会人の方が楽しい!人生のゲームが始まる」。しんどさを乗り越える先にあるもの

学生生活は自由で楽しいもの。そう感じている人も多いはずです。しかし、大崎氏は社会人として35年を過ごしてきた立場から、力強くこう語りました。
「正直に言うと、社会人のほうが全然楽しい。ものすごく楽しいです」
その理由は、自分の知恵や体力を振り絞って取り組んだことが仕事になり、価値になり、次の機会につながっていくから。もちろん、楽しいことばかりではありません。
「しんどいことも、つらいことも、嫌なこともあります。なんでこんな人がいるんだと思うこともあるし、夜眠れなくなることもある。でも、そういうことを繰り返し乗り越えていく喜びを見つけてほしい」
転職のような人生を左右する選択もあれば、「今日、あのお客さんに電話をするかどうか」といった日常の小さな判断もあります。その一つひとつが、自分のキャリアをつくっていく。大崎氏は、これから社会に出る学生たちに「その渦に飲まれず、自分本位で乗り越えていくことが大事」と呼びかけました。

愚痴から離れる、体を大切にする、学び続ける。社会人になってから大切なこと

スライドを用いて語る大崎氏

講演の中で、大崎氏は社会人になってから大切にしてほしいこととして、5つのアドバイスを送りました。
1つ目は、「仕事の愚痴から逃れよ!」。仕事をしていれば、不満や悩みが出るのは当然です。しかし、いつもネガティブな話ばかりをする集団に身を置いていると、自分自身もその空気に引っ張られてしまうといいます。
2つ目は、「心と体を第一に。元気があれば何でもできる!」。仕事で失敗することがあっても、思い通りにいかないことがあっても、元気であればまた挑戦できます。AI時代には、働き方や仕事の選択肢も広がっていく。だからこそ、自分自身の心と体を守ることが何より大切だと話しました。
3つ目は、「自分の時間を大切にする。リスキリングの勧め。」大崎氏自身も、30代後半から40代にかけて大学院に通い、仕事をしながら学び続けました。
「仕事をしてから学ぶと、それが本当の実学になります。現場での経験と、大学の先生方が持つアカデミックな知が結びつくと、仕事に深みが出ます」
4つ目は、「挑戦と失敗を繰り返すこと」。シリコンバレーでは、挑戦と失敗を繰り返す文化があります。やってみて、ダメなら次に行く。就職活動も仕事も同じです。
「挑戦と失敗を繰り返すことで、AIの学習と同じように、皆さん自身もどんどん学習していきます。気づかないうちに、ものすごく強くなる」
5つ目は、「判断の基準は死ぬときに後悔しないか?」。会社にエントリーするかどうか。一本の電話をかけるかどうか。転職するかどうか。人生には大小さまざまな判断があります。そのときに、「これをしなかったら、後から後悔するか」と自分に問いかけるのです。 「この判断の繰り返しが、皆さん自身をつくっていきます。やめておこうという判断もあるかもしれない。でも、自分で考えて決めたことなら、後から後悔することは少ないと思います」

AI時代に必要なのは、世界を見ること。当たり前を疑うこと

講演の後半、大崎氏はAI時代に向けて、これからの社会の変化について語りました。
まず強調したのは、「日本だけで閉じないこと」です。AIの時代には、世界のどこで何が起こるかわかりません。これまで注目されていなかった地域から、世界を変えるような技術やサービスが生まれる可能性もあります。パソコンとAIを使いこなす力があれば、個人や小さなチームが大企業を凌駕するようなものを生み出すこともあり得ます。
大切なのは、世界で何が起きているのかに目を向けること。情報感度を高めること。
そして、今までの当たり前がこれからも続くとは思わないことです。
生成AI、AIエージェント、ロボット、フィジカルAI。技術が進化すれば、働き方も大きく変わります。ルーチンワークはAIに置き換わっていく可能性が高い一方で、AIをどう使いこなすか、どのAIをどの場面で使うかを判断できる人材の価値は高まっていきます。

大企業だけが正解ではない。自分をスケールさせる場所を選ぶ

就職活動では、知名度のある大企業を志望する学生も多いでしょう。しかし大崎氏は、「大企業に入れば安心」という価値観だけで考えないでほしいと語りました。
AI時代には、一人の個人や一つのベンチャーが、世界を変える技術やサービスを生み出す可能性があります。だからこそ、会社の規模や知名度だけではなく、自分自身の可能性を広げられる場所かどうかを見ることが大切です。
「就職活動では、自分自身をスケールさせる場はどこなのか、という尺度で見てほしい」
ここでいう「スケール」とは、自分の可能性をどれだけ広げられるかということ。職種を越えて挑戦できるのか。ひとつの専門性を深く掘り下げられるのか。自分がやりたいことを受け入れてくれる文化があるのか。
そして「皆さんはAIネイティブです。すでにAIを使っている人も多いと思います。これからは、それをいかに使いこなすかという世界になっていきます」そして、常に学び続け、あらゆる可能性を想像して挑戦し続けていくという意識を持って欲しいです。」

企業が最後に見るのは、AIスキルよりも「人間性」

講演後の質疑応答では、学生から多くの質問が寄せられました。その中でも特に印象的だったのが、「大崎様はどのような人材を採用したいと考えていますか」という質問です。
NVIDIAと聞くと、高度なAIスキルや専門知識を持つ人材が求められるイメージがあります。しかし、大崎氏の答えはとてもシンプルでした。
「最終的に見るのは、人間性です」
もちろん、実績やスキルは重要です。エンジニアであれば技術力も求められます。しかし、どれだけ優秀で、どれだけ実績があっても、人として違和感がある人、礼儀を欠く人、面接前に企業のことをきちんと調べてこない人は採用しないと話します。
「準備をしてこなかった人は、誠実さに欠けると思います。そこそこの実績、そこそこの実力であっても、しっかり準備をしてきて、一生懸命な人は伸びる。そういう人を採用します」
AIが進化しても、最後に問われるのは人としての姿勢。誠実さ、準備力、礼儀、困難を乗り越える力。これらはAI時代だからこそ、より大きな価値を持つのかもしれません。

AIで就職活動中の学生は同質化する?差がつくのは、自分だけの経験と言葉

学生からは、「AIによって就職活動中の学生が同質化するのではないか。その中でどう差別化すればよいか」という質問もありました。
エントリーシートの作成や面接対策にAIを活用する学生は、これからさらに増えていくはずです。誰もが整った文章を書けるようになれば、個性が見えにくくなるのではないか。そんな不安に対して、大崎氏はこう答えました。
「でも、会ったらみんな違うじゃないですか」
大崎氏は日々、多くの候補者と面接をしているといいます。AIの専門家であっても、一人ひとりまったく違う。最終的に見るのは、その人が会社のカルチャーに合うか、困難を乗り越えていけるか、人として信頼できるかです。
「同質化していると思われるなら、あえて自分の人間力をアピールしたらいい」
AIを使うことは、これからの時代の前提になるかもしれません。しかし、AIで整えた言葉の奥にある経験や価値観、人柄まで同じになるわけではありません。むしろ、AIを使える時代だからこそ、自分にしか語れない経験、自分の言葉で伝えられる思いが差別化につながります。

資格よりも大切なのは、くじけず経験を積むこと

「新卒の学生に持っておいてほしい資格はありますか」という質問には、「職種による」と答えた大崎氏。エンジニアであれば技術系の資格、経理であれば簿記などの知識が役立つこともあります。ただ、ビジネス職であれば、必ずしも特定の資格が必要というわけではありません。
現在は、AIを使って学ぶ機会が大きく広がっています。だからこそ、「この資格を取らないとダメ」というよりも、大切なのは社会に出てから経験を積むこと。そして、くじけないことだと語ります。
「就職したら、みんなゼロスタートだと思ったらいい。その中でどれだけつまずいて、どれだけ前に進めるかが、皆さんのいい経験になります」
仕事では、思い通りにいかないことが何度も起こります。理不尽に感じることもあるでしょう。それでも逃げず、負けず、乗り越えていく。その連続が人を強くします。

正解は、後から自分でつくるもの

学生に向けて最後のメッセージを送る大崎氏

講演の最後、大崎氏は学生たちに向けて、あらためてメッセージを送りました。
「今、皆さんは人生のターニングポイントにいます。この一瞬を忘れずに、これから就職して、その企業に入った後に努力して、後から『この就職は正しかった』と思えるようにしてほしい」
就職活動に、最初から完全な正解はありません。選んだ会社が正解かどうかは、その時点ではわからない。けれど、その場所で努力し、挑戦し、経験を重ねることで、後から正解にしていくことはできます。
「皆さんの正解、不正解は、その時点で決まるのではありません。後から皆さんが正解、不正解にしていく。それが、今日一番伝えたかったことです」
AI時代には、仕事の形も、求められるスキルも、企業のあり方も変わっていきます。ルーチンワークはAIに置き換わり、個人が世界を変える可能性も広がっていくでしょう。
そんな時代に必要なのは、AIを恐れることではありません。AIを使いこなしながら、自分自身の人間力を磨き続けること。誠実に準備すること。くじけず挑戦すること。学び続けること。視野を広げること。そして、自分で選んだ道を、自分の力で正解にしていくことです。
「近畿大学を誇りに思って、今後の人生を歩んでいただきたい」
大崎氏の言葉に、会場からは大きな拍手が送られました。就職活動は、企業に選ばれるためだけの時間ではありません。自分が何を大切にし、どんな未来をつくりたいのかを考える時間でもあります。AI時代を生きる近大生にとって、この日の講演は、就職活動だけでなく、これからの人生を考えるための力強いメッセージになったはずです。


取材・執筆:近畿大学広報室

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