2023.09.21
4年間で2102冊!近大の読書王を取材したらいろいろすごかった
- Kindai Picks編集部
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近畿大学が誇る、アカデミックシアター。7万冊を超える本が並び、マンガも読める、新たな学びの空間。ここで、いちばん本を借りている近大生はいったいどんな人なんだろう?そんな「本の虫」を探してみました。そしたら意外にも◯◯だった……!?
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こんにちは。近畿大学 文芸学部 文学科3年生の市園 結梨(いちぞの ゆり)です。入学してからずっと図書館ボランティアをしています。
アカデミックシアターでは「学生とともにつくる棚」に携わっています。ミステリー小説が好きです。
わたしは本が大好きなのですが、忙しくて読めないときもあって、まだまだ読み足りません。そこでふと、近大でいちばん本を読んでいる学生はどんな生活をしてるんだろう? と気になりました。
気になりすぎてて本も読めなくなっていたところ、たくさんの方のご協力のもと「近大でいちばんの本の虫」に取材をさせていただくことに。
取材対象の待つアカデミックシアターにやってきました! いったいどんな人なんだろう? 緊張しています。
この人こそ、近大でいちばん本を読んでいる方です!
福永 涼太(ふくなが りょうた)さん
総合理工学研究科 メカニックス系工学専攻 博士前期課程1年。理工学部在籍時に4年間で2102冊、読みました。
2102冊!? ほんとうですか!?
その数字への驚きに、緊張がぶっ飛びました。
読んだ本はぜんぶ記録しているので、間違いないですよ。
4年で2102冊読破!?
すさまじい読書家ということで寡黙な方をイメージしていたのですが、実際にお会いしてみるとエネルギーに溢れつつも物腰の柔らかい好青年。
えっと…… いきなりですがいくつか質問を考えてきたので、お聞きしていっても大丈夫ですか?
はい、何でもどうぞ!
いつもはどんな本を読んでいるんですか?
機械系の技術書が多いですね。ぼくはものづくりが好きで、ロボットコンテストとかにも参加しているんですけど。そのきっかけになったのはこの『Making Things Move』という本です。機械に関する知識がほとんどない読者に向けて、ネジや歯車などの基本的なパーツから丁寧に説明してくれていて、書かれてある通りに手を動かせば「ネズミ捕り自動車」などが作れるようになるんです。
大学1年生の頃にこの本を読んでから、ものづくりって面白いなと思いまして。日本橋の電気街に部品を買いに行ったりとか。そしたらどんどんハマっていって、他の技術書も読むようになりました。
ものづくりの本から始まったんですね……! ちなみに今はどんなものを作っているんですか?
家に3Dプリンタが5台あって、機械の部品を3Dプリントしています。今この瞬間も稼働してます。
す……3Dプリンタが5台!?
お話が始まって5分も経たないうちに、4年で2102冊読破という衝撃に値する話題がぶっ飛んできました。
3Dプリンタの音ってけっこう、うるさくて。みんなが想像するようなロボットの効果音ってあるじゃないですか。ウィーン、ガガガ、ウィーン、ガガガって。そのまんまの音なんですよ。それが5台も同時に動いてたら、家では本なんてとても読めないですよ(笑)
紙のプリンタでも、5台同時に動いてる部屋を想像すると、確かに集中なんかできたものじゃないですね。
だから本を買ったとしても、家に置いておくのは意味がないんですよ。なので本は図書館で借りるようにしています。
3Dプリンタは、全てご自身で用意されたんですか?
そうです。バイトを5件、掛け持ちして買いました。授業の合間とか早朝にも働いて。
ご…… 5バイト!?
5ギガバイトみたいに言わないでくださいよ(笑)
あれ? ちょっと待ってください。そんなにバイトしていたら、本を読む時間はどうやって確保していたんですか?
ぼくはショートスリーパーなので、1日に3時間も寝れば事足ります。バイトだけじゃなくてキャンプとかもよく行きますし、ジムにも通ってランニングもします。
もうマネしようと思っても到底できないレベルの話になってきました。
もしわたしがそんな生活したら体がぶっ壊れそうです…… 。しんどくならないんですか?
はい。大学4年間で一度も体調を崩したことがないので、無理はしてないと思います。
参考にするのは諦めて、もっと深堀りすることに
機械系の専門書をよく読むとのことですが、小説とかは読んだりしますか?
小説も読みますよ。司馬遼太郎とか、歴史小説が多いですね。徳川家康の伝記物語だったり。
歴史小説ですか! きっかけは何だったんですか?
お父さんが司馬遼太郎の大ファンで、昔から読めって言われ続けてました。今ではぼくも日本史が大好きです。
なるほど。ご家族の影響が大きいんですね。
そうそう、家族の話で言うと、ぼくは3人きょうだいの2人目なんですよ。兄と妹がいて、妹なんかぼくよりもっと本を読んでますよ。
え…… 4年で2102冊を上回る…… ?
はい。きょうだいのデキが良すぎるのもあって、自分も負けじと本を読みはじめたっていう部分もあります。
なんか、マンガみたいな話ですね…… 。
それにぼくは、高校生のときは文系だったんですよ。
そうなんですか!?
高校生のときは、ほんとに日本史に夢中だったんです。理系になったのは大学からです。
興味の幅がすごいですね。圧倒的な読書量を支えるのは、分野を問わない好奇心......。
そうですね。他大学の知り合いの中には、ぼくと同じくらい本を読む人もけっこういますよ。
そ……そうなんですね。読む人はとことん読むのですね。その人たちもみんなショートスリーパーなのか、気になってきました。ちなみにマンガは読んだりするんですか?
めっちゃ読みますよ! 今は『チェンソーマン』にハマってます。マイナーなマンガとかも好きです。ぼくは今まで読んだ本やマンガを全て「Notion」というアプリに記録してるんですけど、これはすごくおすすめですよ。
見せてもらっていいですか?
本来は業務効率化を目的とした情報管理ツールなのですが、ぼくは読んだ本のwikiを作成するのに使っています。データベース化することで、クラウド上に本棚を作るイメージですね。近大生であんまりNotionを使ってる人はいないから、おすすめしたいです。
これは便利ですね!
やっぱり読んだ本は記録していかないと。あとから見返して「そういえばこんな本も読んだな」とか「もう一回読みたいな」と思うことは大事です。要約や感想を読み返すだけでも、知識は深まりますね!
今まで読んだ本の中でどんなジャンルが多いのか、とかもすぐにわかりますね!
そうですね。ちなみにジャンルでいうと1位が機械系、2位が電気系、3位が情報系、4位が語学系、5位が資格系になってますね。
資格系の本も読むんですか?
はい! ぼくは資格マニアでもあるんです。
(またぶっ飛んだ話が…… )ち、ちなみにどんな資格を?
漢検準1級・数検1級・基本情報技術者試験・応用情報技術者試験・統計検定2級・半導体技術者検定2級・機械設計検定・電気工事士ですね。
ひ…… ひえ〜! まさに勉強の鬼!!
ぼくは今、就活でインターンシップ中なのですが、半導体メーカーで働きたいと考えてます。なので半導体に関する機械・電気・情報の分野を猛勉強しています!
それで電気工事士の資格まで取ってしまうとは......。
電気工事士は、自分でちょっとした工事がしたかったので取りました。「ラズベリー・パイ」という変わった名前の電子基板があるんですけど。あっ、この本です!
遠くから見ると、料理の本だと思ってしまいそうですね。
確かに(笑)。お菓子作りの本で「入門」なんて書いてたら身構えてしまいますね。......それはさておき、ラズベリー・パイというのは、カードサイズの小さなコンピュータです。ロボットの制御はもちろん、照明やセンサーの制御もできる優れものなんですよ。もともとは教育用の簡単なコンピュータとして生まれたので、ものづくりの入門編として最適です。
なるほど! 3Dプリンタと組み合わせれば、何でも作れてしまいそうですね!
その通りです! 3Dプリンタで造形したパーツを組み合わせて、この電子基板で制御すれば「機械ができた!」と言えます。何でも、とは言いませんが、ある程度のものはラズベリー・パイと3Dプリンタを基本として作れると思います。例えば、人が歩いてきたらセンサーで感知して、光ったり音を出したりして歓迎するインテリアとか。3Dプリンタでかわいいキャラクター、例えば「招き猫」とかを造形すれば「光ってしゃべる招き猫」の完成です。モーターを使えば、手招きするような動きも再現できますよ。
す、すごい!
ぼくはラズベリー・パイの勉強をしつつ、自分でもゼロから電子基板を作ることにチャレンジしています。
だから電気工事士の資格を取ったのですね。
資格マニアとは言いましたが、資格を取れれば何でもいいというわけではなく、きっちり目的を決めて勉強していますね。
なるほど、目的を持つことが読書の秘訣だということですね。ただ本を読むのではなく。
その結果として、特定のジャンルに偏ってますけどね(笑)。もちろん小説とかだったら、マンガを読むのと同じように、ただ楽しむために読むのがいちばんだと思います。
そうですね。ただ福永さんのお話を聞いていると、目的を決めた上で勉強を思いっきり楽しんでいるように思います。
そうですね。そもそも好きなことや興味のあることじゃないと、目的も生まれないですね。
まだまだネットには出せない図書館の深み
すさまじい読書量の秘訣がわかりました。最後に改めて質問なのですが、福永さんはなぜ本を読むのでしょうか。
なぜ本を読むのか、ですか?
ネットに情報が溢れている今の時代に、Web記事やYouTube動画ではなく本にこだわる理由が知りたいです。
やはり、本に書かれている内容は深いですよ。ネットの情報は浅い。もちろん深いものが良いとか、浅いものが悪いと言っているわけではありません。
なるほど。深さの理由は何なのでしょうか。
本は出版社を通して世に出るので、ある程度ちゃんとした根拠や出典が示されていて信憑性が高いです。一方でネットは情報源が示されていないことがよくありますし、示されていてもURLの有効期限が切れているなんてこともあります。
Web記事は消えてしまうことがあるけど、図書館の本がパッと消えることはないですね。
そうですね。それにネットの情報は、ボリューム的にもパソコンやスマホでサッと読める程度の文章量ですよね。本はそもそも文章量が多いので、ひとつのテーマをとことん深堀りしています。だから質が良くて価値の高い情報に出合えるのは、ネットよりも本なんだと思います。
なるほど。言われてみれば私も、出版社を通して作られた小説の方が内容が濃いように感じます。
図書館に置いてある本は、作家さんや編集者さんをはじめとして、色んな人が関わっていますからね。さらに司書さんをはじめ図書館の運営に関わってくださる方々のおかげで、ぼくが読みたいと思ったときにすぐ本を借りられるわけです。図書館のみなさんにはいつも感謝しています。
おお! うまくまとめていただきました! それでは本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございました!
ありがとうございました!
近大でいちばんの本の虫だーれだ? 訪ねてみたら超人だった!
わたしは文系なので、普段あまり読まない本の紹介をしていただけて楽しかったです。大学に入ってから興味の湧いたことを、全力で楽しむ姿に刺激を受けました!
楽しんで本を読むこと、その気持ちが読書量を限界まで押し上げるのだと思いました。福永さん、ありがとうございました!
近大でいちばんの本の虫を訪ねてみたら、その読書量のすごさをはるかに上回るエピソードがぽんぽん飛び出してくる「超人」でした。ぜひあなたも、興味のあることにまつわる知識を深めるため、アカデミックシアターをご利用ください!
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写真:大越はじめ
文:岡本てるき
編集:人間編集部
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