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2020.02.12

男性の15%は精子に問題あり!? 不妊を招く「精索静脈瘤」についてお医者さんに聞いてきた

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
医療
不妊
精索静脈瘤

晩婚化や晩産化が進むなか、不妊治療を受ける人が増えています。不妊というと女性がクローズアップされがちですが、実は男性が原因となるケースも多いのだそう。そこで今回は、男性不妊の原因のなかでも特に多い「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」を中心に、「もし、男性不妊かもと思ったらどうすればいい?」「飲酒や喫煙が精子に悪いって本当!?」などなど、気になる疑問について泌尿器科専門医である吉村先生にお聞きしてきました。

近畿大学 大阪狭山キャンパスの前から、こんにちはー!



ライターの社領エミと、その夫です!!!


現在、私たちは結婚2年目。絶賛子作りがんばり中のアツアツ夫婦なんですが、実は、全然、子どもができません!

子作りを開始してから、2019年12月で丸1年。不妊の定義とされている、「1年」という一定期間が経過しました。

※不妊:妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいう。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義している。

2人とも病院へ行っていろいろ調べた結果、不妊の原因はおそらく夫の「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」という病気のせい。

精索静脈瘤は、簡単に言うと、精巣(睾丸)周辺の静脈にコブができてしまう病気のこと。その影響で、血流の悪化や精巣内の温度上昇を招いて、精子の元気がなくなったり、精子の質が悪くなったりしちゃうそうなのですが……。


左右で静脈の構造が違うため、精索静脈瘤のほとんどが左側の精巣に発生する。

なんとその精索静脈瘤、一般男性の15%が持ってる病気らしいんですよ……!

え、多くない!?
じゃあ、男性100人のうち、15人は不妊症ってこと……!?

そういえば、「不妊」って女性が語り手になることが多く、男性目線の話を耳にする機会が少ない気がします。

ましてや精索静脈瘤なんて15%という高確率で起こっているはずなのに、男性である夫は当事者になるまで病気のことを全く知りませんでした……。

うーん。男性不妊で悩む私たち夫婦は、もう少しちゃんと「男性不妊」について知っておいたほうがいいのかもしれない!

というわけで、近畿大学病院で実際に精索静脈瘤の手術も行っている、泌尿器科専門医吉村 一宏先生にお話を伺うことに!



吉村 一宏(よしむら かずひろ)
医師/医学博士/近畿大学医学部泌尿器科教授
1986年和歌山県立医科大学卒業、同年大阪大学医学部泌尿器科入局。2003年大阪大学大学院医学系研究科(泌尿器科)講師、2009年近畿大学医学部泌尿器科准教授を経て、2014年より現職。泌尿器科専門医、内分泌外科専門医。




吉村先生

今日はよろしくお願いします。





社領エミ

よろしくお願いします! 突然ですが先生、「男性のうち15%が精索静脈瘤を持っている」というのは本当ですか? 不妊の原因にもなると聞いたのですが。





吉村先生

本当です。でも、一概に「男性のうち15%が不妊症」とは言えないですね。男性不妊は精索静脈瘤以外にも原因がありますし、まずは「男性不妊全体」についてお話しましょうか。





不妊症の原因は半分が男性に! いろいろある「男性不妊の種類」



吉村先生

まず、普通に生活している夫婦のうち、不妊症の夫婦は約15〜20%います。





社領エミ

そ、そんなにいるんですか!





吉村先生

そうなんです。そしてそのうち、ざっくり半分は男性に不妊の原因があります。男性だけに原因があるのが24%、男性と女性の両方に原因があるのが24%ですね。






社領の夫

健康な夫婦が10組いたら、不妊症は約2組、そのうち男性が原因なのは約1組ってことか。





吉村先生

で、男性不妊にもいろいろあって、一番多いのは造精機能障害。「精子を造る」機能に問題がある状態で、男性不妊のだいたい80%を占めています。
そのほかで最近増えてきているのは、早漏や遅漏、膣内射精障害などの射精障害に、勃起障害などを含む性機能障害。これが15%くらい。
精索静脈瘤は造精機能障害のひとつで、原因が明らかな男性不妊の中で最も多い病気です。男性不妊のうち、約30%は精索静脈瘤が原因なんですよ。






社領の夫

多いなぁ!





吉村先生

統計的には、一般男性の15%が精索静脈瘤を持つと言われていますが、その全員が不妊症というわけではありません。軽い精索静脈瘤で何人も子どもができた方もおられますし。重症度が上がると不妊になる確率も上がると考えられています。





社領エミ

じゃあ、1年間子どもができなかったうちの夫は、重度の精索静脈瘤ってことでしょうか?





吉村先生

そうとも限りません。男性不妊の原因のうち、40%は「特発性」。特発性っていうのは、要するに「原因不明」ってことですね。





社領エミ

男性不妊のうち、40%も原因不明なんですか!





吉村先生

そうなんです。





社領の夫

そういえば僕も、お医者さんから「精索静脈瘤を取り除いても精子の状態がよくならなければ、他に原因があるでしょう」と言われました。男性不妊の原因って、判明させにくいものなんですね。





吉村先生

精子ってデリケートで、生活習慣のような環境因子も質に大きく関わりますからね。男性不妊は、精神面とか、外的要因とか、複合的に起こる場合が多いので、原因を断定しにくいんです。





男性不妊に前兆はない!? 大切なのは「2人とも診察を受けること」





社領の夫

男性不妊って自分で気付けるものなんでしょうか? 僕の場合、見た目や機能的にはなんの異常もなかったんですが……。





吉村先生

造精機能障害は、自覚症状はほとんどないですね。たまに、「精巣が痛い」と泌尿器科を受診をされた方から精索静脈瘤が見つかることはあります。





社領の夫

精巣に痛みが出ることもあるんですね!





吉村先生

少ないですけどね。そのくらいだと重症度は高いです。





社領エミ

うちは、市販のスマホ顕微鏡で精子の状態を見て、はじめて精子に元気がないことに気づいたよね。もしスマホ顕微鏡を使ってなかったら、病院に行くまでにもっと時間がかかってたと思うなぁ。




amazonなどでは、スマホに顕微鏡をつけて精子を観察するキットが販売されています。いろんな種類がありますが、私たちはこのように、濃度や運動率を自動で測定してくれる商品を選びました。
私たちの場合、運動率は9.1%と測定されましたが、病院で検査したときは40%との結果が。環境によって精子のクオリティに差が出るので、結果にブレが生じることもあるんだそう。あくまで簡易測定ですね。



社領の夫

そうそう。病院の検査で出た数値とは違ったけど、精子の運動率が低いのはすぐわかったよね。だから病院に行ったわけだし。





吉村先生

スマホ顕微鏡はわりと正確だと言われていますよ。極端に「運動率が悪い」とか「精子が少ない」、もしくは「精子がない」なら見た目で判断できますから。とはいえ、精子の細かい状態は確認できませんし、たとえば精子の形態不良まではわからないですね。





社領の夫

「形態不良の精子」がいるんですか!





吉村先生

はい、誰の精子にも少しはいます。形態不良の精子は受精能力が低いので、割合が多いと問題になってきます。




全然知らなかった……!


社領エミ

そもそも、子どもがほしい男性はいつ病院に行くのが正解なんでしょう?





吉村先生

もし、精巣に痛みがあるなど自覚症状が出ているなら、病気の可能性があるのでなるべく早く受診してください。そうでなければ、「1年間子どもができない場合は病院に行く」のが一般的です。





社領エミ

1年かあ。私たちは1年経たない段階で病院を受診したよね。





吉村先生

以前は、日本では2年間子どもができなければ不妊とされていたんですが、現在はWHOの提唱に合わせて日本でも1年間となっています。晩婚化も進んでいますしね。気になることがあれば、1年を待たず早めに病院を受診するといいと思いますよ。もちろん、きちんと2人とも診察を受けてくださいね。





どの病院に行けば、男性不妊の専門医がいるの?



社領の夫

そういえば、男性不妊って何科に行くのが正解なんでしょう? うちの場合、妻は行きつけの婦人科に、僕はネットで調べて、とりあえず男性不妊を扱っている近隣のクリニックに行ったんですが。





吉村先生

インターネットなどで調べて、男性不妊を扱う病院へ行くのがいいでしょうね。そのクリニックの先生って、「泌尿器科専門医」かつ「生殖医療専門医」だったりしますか?





社領の夫

はい、そう書いていたはずです。





吉村先生

それがいちばん理想的だと思います。そのパターンの先生って、実は非常に少ないんですよ。





社領エミ

少ない……? どういうことですか?





吉村先生

まず、生殖に関する部分は男女で仕組みがまったく違うので、担当する医師の専門分野も異なるんです。女性の子宮や膣は「婦人科医」が専門だし、男性の精巣や尿道に関しては「泌尿器科医」が専門。もちろん、精索静脈瘤なんかも泌尿器科医が診察します。






吉村先生

なので、男性不妊を診てもらうのであれば「泌尿器科専門医かつ生殖医療専門医」が最適なんですが、全国で63人しかいないんですよ。





社領エミ

す、少な! もし近所にそういったお医者さんがいない場合はどうすればいいんですか?





吉村先生

まずは泌尿器科を受診してください。必要があれば、生殖医療専門医がいる不妊治療のクリニックなどと連携することになると思います。





社領エミ

なるほど。





吉村先生

僕も泌尿器科医なので、男性不妊は入り口だけ診ているんですが、夫婦で不妊治療に臨む――たとえば人工授精まで考えているようであれば、生殖医療専門の大きな病院を紹介しています。





痛い検査はあるの? 男性不妊の病院のようす





社領の夫

僕、病院に行くのにかなり勇気がいったなぁ。繊細な部位だし、じっくり診られたこともないし、検査がものすごく怖かったんです。「痛かったらどうしよう」とか考えたりして。





吉村先生

いや、初回から痛い検査はしないですよ! 初診はだいたい、問診をとって、生活習慣を聞いて、精液検査。あと、精巣の状態と静脈瘤の有無を確認する触診くらいですね。





社領エミ

触診……! 夫、されたって言ってたね!





社領の夫

されたされた。初診のとき、ベッドに寝そべってお医者さんに睾丸を揉んでもらったよ。





社領エミ

なんとも言えない顔で病院から帰ってきたことを覚えてるよ……。実際、検査してみてどうだった?





社領の夫

はじめてだし怖かったけど、痛いことは全然なかったなぁ。でも、精液検査は独特だった! 小部屋でコップに精子を出して提出するんだけど……ある意味ストイックな小部屋で……。




夫の話をもとに小部屋をイラストにしてみました。「DVDプレーヤーの操作感が最悪だった」と言っていたのが忘れられません。


吉村先生

まぁ、だいたいそんな感じでしょうね。家から精液を持参する場合もありますよ。





社領エミ

精液は、どういう観点から検査をするのでしょう? やっぱり、精子の元気さとか形とか?





吉村先生

そうですね。精液の量に濃度、形態、運動率とその質、感染の有無などで、それぞれの基準はこんな感じになります。



精液検査の正常値

(WHOラボマニュアル・5版 翻訳「ヒト精液検査と手技」より)

検査項目下限基準値
精液量1.5ml以上
精子濃度1500万/ml以上
総精子数3900万/射精以上
前進運動率32%以上
総運動率40%以上
正常精子形態率
(厳密な検査法で)
4%以上
白血球数100万/ml未満



社領エミ

せ、精子って1回の射精につき3900万以上もいるのが普通なのか……!





社領の夫

精液の量や、白血球数なんかも確認するんですね。





吉村先生

はい。で、もう少し詳しく診るとなると、精子を造る働きに関わるホルモンを採血で検査します。ここまででなにか異常が見つかるようであれば、少し痛い検査に進みます。





社領エミ

い、痛い検査……?





吉村先生

たとえば、精巣から細胞をとってきて組織を調べたり、造影剤を使った造影検査や、染色体検査など、特殊な検査ですね。





社領の夫

まぁ、1回目の診察は怖くないんですよね?





吉村先生

怖くないですよ。患者さんを怖がらせたい先生もいないと思います(笑)





社領エミ

では、そこでもし精索静脈瘤だとわかったら、どのような治療が待っているんでしょう?






吉村先生

状態に合わせて、必要であれば静脈瘤を取り除く手術に進みます。いろいろ方法はあるんですが、代表的なのは顕微鏡下低位結紮(ていいけっさつ)術です。お腹に小さな穴を開けて手術する方法で、再発率も一番少ないですし、2018年から手術費用が保険適応になっています。





社領の夫

あ、穴を開けるのか……! 痛みはありますか?





吉村先生

必ず麻酔をするので痛くはないですよ。1〜2時間で終わりますし、その日のうちに歩いて帰れます。もともと痛みを伴う静脈瘤であれば、術後は永続的に痛みの改善が期待できるでしょう。精液所見がよくなる確率は4~7割ほどですね。





社領エミ

えー!? そ、それだけなんですか!





吉村先生

はい。手術を受けたあと、夫婦に子どもができる確率は統計的に4割くらいです。さっき言ったように、特発性(原因不明)が絡んでることも多いですからね。





社領の夫

なかなか厳しいなぁ……。





吉村先生

手術しても精液所見がよくならなければ、漢方薬の処方や人工授精、体外受精など、本格的な不妊治療へ進みます。





社領の夫

なるほど。うちは、お医者さんから「1年間子どもができなければ手術をしましょう」と言われているんです。そろそろ手術をするつもりなんですが、ちゃんと精子が回復するのか不安になってきた……。





社領エミ

不安だよね。そもそも、1年間も放っておいてよかったのかな……?





吉村先生

精索静脈瘤の重症度が高いようなら即手術ですが、低いと様子を見ることがあるので、旦那さんは軽症なのかもしれませんね。担当医の考えに合わせるのがいいと思いますよ。





精子を大切にするために、知っておくといいことって?



社領エミ

いやぁ、男性不妊の種類や治療の流れについて知ることができて勉強になりました。直接お医者さんに質問ができてよかったね。





社領の夫

そうだね。ちなみに先生、最後に聞いておきたいんですが、「精子は暖かい場所が苦手」なんて言うじゃないですか。精子を大切にするにあたって、知っておきたいことってありますか?





吉村先生

では、そのあたりをざっと説明しましょうか。




精子を大切にするために、知っておくといいこと



吉村先生

基本的に、精子は温めるとクオリティが下がるという報告があります。



Q.飲酒は?
A.「飲みすぎが精液の質に影響を与えることはない」と言われています。毎日の晩酌などは大丈夫でしょう。
Q.タバコは?
A.「2割ほど精子の濃度や数が落ちる」と言われています。
Q.肥満は?
A.「陰嚢の周りに脂肪がつき、精巣が冷やされないため不妊症になりやすい」という報告も。
Q.ブリーフorトランクス?
A.ブリーフよりも精巣の温度が上がりにくいので、「トランクスのほうが精子の数やクオリティはいい」と言われています。
Q.ストレスは?
A.「ストレスがかかることで精液所見が悪くなる」という報告があります。
Q.自転車は?
A.習慣的に乗ることで慢性の前立腺炎になる可能性があります。
前立腺の炎症によって精液の中に膿(白血球)が混じり、男性不妊の原因になることも。
Q.適度な運動は?
A.おそらくしたほうがよいでしょう。
Q.食生活は?
A.おそらくNG事項はありません。

50年前と比較して、現代人の精子数は減ってきているという統計があるそう。ストレスや生活環境が影響すると考えられているんだとか。


社領の夫

やっぱり温めるとダメなのか。 僕はサウナが大好きでけっこう行くんですが、精子によくないですよね。





吉村先生

そうですね、精巣が温まるし、長時間暑い場所にいるのは精子にとってよくないと言われていますね。





社領の夫

じゃあ、長風呂もダメですよね……? 何時間くらい入るとダメなんでしょうか?





吉村先生

何分以上はダメとか、明確な基準は今のところないです。科学的に調べて検証したわけではないので……。





社領エミ

えっ? じゃあ、妊活する人はなるべく湯船に入らないほうがいいんですか?





吉村先生

そこまで禁止というわけではないと思います……ただ、長風呂しすぎるのもよくないかと。





社領エミ

……あれ……!? なんか、さっきからものすごく曖昧じゃないですか!? さっきの表も「と言われています」ばかりだし、このへんなんて特に!






社領エミ

びっくりするほど曖昧では!?





吉村先生

曖昧ですよね……。実は、精子についてはほとんど科学的に調べられていないんですよ。





社領エミ

えー! ど、どうしてですか?






吉村先生

簡単に言うと、人間を使って「あなたは男性不妊です、でもあなたには治療をしません、このまま5年間観察します」って、倫理的に難しいですよね。





社領の夫

そ、そっか……。





吉村先生

精巣を温めるとダメとか、タバコを吸うとダメとか、そういう「報告」はあります。けれど、報告っていうのは「うちで調べてみたところ、こういう結果が出ましたよ」というだけのことなので、エビデンスレベルはそれほど高くない。
男性不妊でエビデンスレベルの高い試験となると、倫理的に難しいことも出てきてしまう。なので、断言できることがあまりないのが実際のところですね。





社領エミ

はじめて知りました。なんかもう、めちゃめちゃもどかしいですね……! 研究は進んでほしいけれど、確かにそういうわけにもいかないですよね。





社領の夫

うん。でも、自転車とかストレスとかあまり意識してなかったし、参考になりました。精子ってやっぱりデリケートなんですね……。





子どもは授かりもの。子どもができないのは、おかしいことじゃない。



社領の夫

今日いろいろお話をお聞きして、男性不妊の理由って複雑かつあやふやで、ますます「誰でも不妊症になる可能性があるんだな」と感じました。





吉村先生

本当にそうなんですよ。でもやっぱり、奥さんの診察が不妊治療のスタートになるご夫婦がまだまだ多いんです。男性でも、「俺が原因なはずがない」って態度で受診する方もおられますし。





社領エミ

そんなこともあるんですね……。でも、男の人ってそういう部分にプライドを持っていそうというか、言い方によってはすごく傷つけてしまいそうで。女性側から受診をすすめにくい気持ちもわかるなぁ。





社領の夫

僕も、今まで見た目や機能に全く問題がなかったから、絶対に自分の精子は元気だと信じ込んでたもん。スマホ顕微鏡を見て「嘘だ」と思ったよ。「どうせ市販のキットだからなにかバグがあるんだろう」って。





社領エミ

結果見たあと、めちゃくちゃヘコんでたのに!?






社領の夫

病院でちゃんと診察をしてもらうまでは、どうしてもわずかな可能性にすがりたかったんだよね……。これまで性欲には全く問題がなかったし、むしろ自信があっただけに、当然精子も元気いっぱいだとずっと思い込んでたからさ。





吉村先生

まぁでも、生殖医療専門の先生からは、「『結婚して夫婦になったら子どもできるのが当たり前』っていう考えは持たないほうがいい」って話も聞きますよ。実際、子どもができるっていうのはものすごいことですからね。





社領エミ

そうですよねぇ……。私も、子どもができなかった中で今日のお話を聞いてますますそう思いました。まさに「授かりもの」ですよね。





吉村先生

本当に。今の社会、「子どもができない=おかしい」という考え自体がおかしいんじゃないかと思います。ただ、その中で原因がわかる人は治療をして、妊娠に至れるようベストを尽くすのが、我々のやることなのかなと。





社領エミ

ありがとうございます。これから本格的に治療に入るので、そう言っていただけるとすごく心強いです。男性不妊や精索静脈瘤のことを詳しく聞くことができて、何も知らず不安に思うよりずっとよかったと思いました。






吉村先生

それはそれは。男性不妊ってまだまだ知られていない印象があるので、お話ができてよかったです。
不妊症は、誰でもなる可能性があるものです。怖い検査をするわけじゃないですから、「あれ?」と思ったらまずは気軽に病院に行ってみてください。そして、どちらか一方ではなく、きちんと二人とも受診してくださいね。不妊は夫婦二人のどちらにも関わることですから。





社領エミ

先生、本日は興味深いお話をたくさんお聞かせいただきありがとうございました!





不妊は「二人の問題」だ!




というわけで、ここまでにお聞きしたお話を簡単にまとめてみました。


・普通に生活している夫婦のうち、不妊症は15~20%。決して少なくない!
10組いたら1組以上は不妊症。そのうち、男性に原因があるのは48%、女性に原因があるのは65%。誰だって当事者になる可能性がある。

・1年間子どもができなければ病院へ!
女性は婦人科に、男性は泌尿器科に。男性の場合は、できれば男性不妊を専門に扱う病院(泌尿器科専門医かつ生殖医療専門医がいる病院)が◯。初診は怖くない。

・男性不妊の原因で最も多いのは特発性(原因不明)!
男性不妊のうち、約40%が特発性。原因不明なケースが実は多い。

・精索静脈瘤は一般男性の15%が、不妊の男性の30%が持つ!
精索静脈瘤は自覚症状があまりないので、発見されにくい病気のひとつ。顕微鏡下低位結紮術は保険適応で、再発率が低い。

・不妊は夫婦二人で考えるもの。どちらも当事者!
男性だけに原因があったとしても、不妊は夫婦二人で向き合うもの。相手を思いやりつつ、きちんと話し合うことが大切。


今回の取材を通して、精索静脈瘤や男性不妊のことをもっと知ることができて、子どもができるって本当にすごいことなんだなと改めて感じています。

そして、これまで夫婦できちんと話し合ってきたつもりでしたが、夫の気持ちをまだまだ理解できていなかったことに今気付くことができてよかった……。

取材を終えてから、二人でいろいろな話をしました。夫は、ずっと自分の精子に問題がないと思っていたからこそ、「子どもができにくい」という事実に急に向き合うことになり、ショックだったし、余計に悲しかったそう。

いつもは二人で楽しむことができていた行為も、自分が原因だとわかってしまうと、「今回も無駄なのかな」と感じてしまっていた。サイコロをふって、毎回同じ数字を出さなければいけないような、そんな不安な気持ちやプレッシャーを実は抱えていたんだ、と話してくれました。

その中で、「二人で不妊について詳しく知ることで、自分だけが悩むのではなく、二人とも当事者になれたようで心強かった」と言ってくれたのがすごく嬉しかったです。一人でしんどい気持ちにはなってほしくないという私の思いも、これを機に伝えることができました。

私たちの不妊治療は始まったばかりで、これからどんな展開になるのかわからないし、しんどくなることもあるかもしれない。けれど、これからもきちんと気持ちを共有して、二人で一緒に向き合っていこうと思います!

社領エミでした。


(終わり)


この記事を書いた人





社領エミ

1990年生まれのアホなフリーライター。取っつきにくいことをわかりやすく噛み砕いたり、みんなが気になることをインタビューしたり、ジモコロ、マイネ王等で書いてます。本名です。


撮影:西島本元
編集:藤田幸恵
企画・構成:人間編集部

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