2018.10.09
卒業式になぜ袴?「はいからさん」からギャル系など移り変わる袴スタイルを調査
- Kindai Picks編集部
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卒業式といえば「袴(はかま)」。でも、これっていつから定着したのでしょうか? 袴レンタルのプロに、袴が定番化したきっかけやこれまでの流行の移り変わりについて聞いてきました。さらに、学内で開催されたイベントで最新の人気の柄や着こなしについてもチェックしてきましたよ!
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こんにちは、地下アイドル兼ライターのふくもりみほです。
今回は、大学の卒業式に関するお話を伺うべく、近畿大学にやってきました。
卒業式の話なんてまだ早いとお思いですか? いやいやそんなことはないですよ! 私は大学生の頃、絶対単位が足りないだろうと思っていたら、うっかり卒業できることになっちゃって大慌てした経験がありますからね……。計画的に単位を取る、ちゃんと卒業式の準備をする、なんでも早めが肝心です。
さて、卒業式といえば……
袴(はかま)ですよね。
私も大学の卒業式には振袖とレンタル袴で臨みました。
気合いが入りすぎている
でも、漠然と「卒業式のために袴予約しなきゃ」「袴姿で前撮りしなきゃ」って思っていましたが、卒業式で女性が袴を着るのは何故なんでしょうか。
確かに袴といえば「女学生」のイメージ。調べてみたところ、女子学生が袴をはくようになったのは明治初期。女学校が設立されて女の子も学校で学べるようになった頃からだそうです。
それまでは男性のものだった袴ですが、運動をしたり椅子に座ったり、学校で学ぶ上で着物より動きやすいため女子学生の制服になりました。
とは言っても、今は袴が制服というわけでもないし、学校から決められてるわけでもないですよね。
気になることはプロに聞いてみよう! ということで、近大で袴レンタル『京ろまん』の袴の展示と試着ができるイベントがあると聞いてやってきました。
袴スタイル定番化のきっかけは憧れのアイドル
近大で袴の展示会をされている『京ろまん』の村田さんにお話を伺いました。
卒業式にはほとんどの女子生徒が袴で出席していますが、「卒業式といえば袴」というのはいつ頃定着したんですか?
実は90年代からなんです。
えっ! 意外に歴史が浅い!
きっかけは南野陽子さんなんです。1987年に南野陽子さん主演の『はいからさんが通る※』の実写映画が公開されて、主題歌も大ヒットしたんですが……歌番組などで南野さんが袴を颯爽と着ていたんです。その翌年、とある大学の卒業式に3、4人がはいからさん風の袴姿で出席したそうです。さらに翌年には200人くらい着ていて、そこから全国に広まったと聞いています。
※『はいからさんが通る』大和和紀さん作、1977年に『週刊少女フレンド』にて連載開始した大正時代を舞台にしたラブコメ漫画作品。連載中からアニメ化、ドラマ化など大ブームに。1987年に南野陽子さん主演の実写映画公開。南野陽子さんが歌う主題歌は27万枚のヒット曲となった。
「はいからさんが通る」2,800円(税抜)発売中
発売元:東映ビデオ/販売元:東映
大正時代を舞台に、南野陽子さん演じるおてんば少女が繰り広げる花の大正ロマン。袴で自転車にまたがる姿や、洋装もレトロで今見てもおしゃれ。なんと阿部寛さん俳優デビュー作でもあります。長身の軍服姿がまぶしい!
うわ~! 可愛い! これは確かにコスプレしたくなる気持ちめっちゃわかります。
当時のトップアイドルですからね。その後、90年代後半には「卒業式で袴」が定着したみたいです。私は当時も貸衣装屋で働いていましたが、その頃は貸衣装といえば結婚式か成人式くらいで。そこに袴レンタルが加わって、関西で本格的に展示会などが行なわれるようになったのは2001年、2002年頃ではないかと思います。今では卒業式に出席される9割近くの方が袴なんじゃないでしょうか。
今の人気はレトロモダン! 人気の柄の移り変わり
色や柄の流行ってあるんですか?
10年くらい前までは黒ありきだったんですよ。景気が悪いと黒が流行るとも言われていますが、2005年頃に深田恭子さんがあるカタログで着た黒い着物がびっくりするくらい人気になって黒が流行しましたね。
2005年頃のカタログ
意外ですね! 確かに最新のカタログには黒はあまりありませんね。
柄の流行としては、桜などの和柄から始まり、カサブランカやカトレアなどの洋花を経て、今はまた和花に戻ってきています。
ザ・はいからさんって感じのものも人気ですか?
矢羽根柄ですね。これは卒業式だけではなく、コスプレとしてレンタルされる方も多いです。実は矢羽根柄を推奨していない大学もあるんですよ。女性の地位向上を建学の精神にしている大学では「仲居さんの制服的な矢羽根柄は勧めないでくれ」って注意されたことがあります。
2018年度のパンフレット
最近の流行はどんな感じですか?
レトロモダンが人気ですね。特に表紙に出ている着物はよくレンタルされます。昔は「椿は縁起が悪いからダメ」「白袴は時代劇の切腹のイメージだからダメ」など色々タブーがありましたが、今は気にしない人が多いのでバリエーションも増えています。
わぁ! レトロモダンの中に紛れて結構ギラギラした着物があるんですけど……
この左と右の袴や、中央の着物は地紋と言って、僕の好みです(笑)。でもカタログではこれだけギラギラして見えても、式典会場では埋もれるくらい。学生さんには、展示会のような狭い会場で見るのと、卒業式の大きなホールで見る印象は違うということも教えています。
学生さんから「目立ちたい!」って要望もあるんですか?
めちゃくちゃあります。そんな時に提案するのは、大きなストライプとか、風車ですね。「お花嫌いシリーズ」って呼んでるんですけど(笑)
お花嫌いシリーズ! でもわかるかも。
この柄が風車です。値段も手ごろですし、去年一番レンタルされました。少し前までは「お花嫌いシリーズ」で人気だったのは矢羽根柄でしたが、今は風車に人気が移っていますね。
あと、今の主流の柄は「ねじり梅」という大きな梅の柄ですね。ちょうど今のお母さん世代が、第一期の袴レンタル世代なんですよ。「自分の時には無かった柄を娘に着て欲しい」って気持ちがあるんじゃないでしょうか。
袴にチェーンベルト!? 小物と髪型の流行
2006年頃のカタログがギャルギャルしくて衝撃です!
時代ですね。こういうチェーンや飾りは今もありますけど、ほとんど売れないです。あとは親御さんが止めたりしますね。髪型も全部アップにして盛り髪でしょ。
流行ってましたもんね~! 今の流行はどんな感じですか?
謝恩会にもそのまま行けるとか、合理的なメリットもあって今はハーフアップとか、ほとんど触らないくらいナチュラルなセットですね。あとは編み込みが流行っていて、前髪はおでこを出さない人が多いみたい。
かなり清楚めですが、髪飾りは大きいですね。
デカ花の時代です。髪飾りは生花でやりたいという人も増えていますから、次の展示会では生花の予約も始めますよ。
1987年 「はいからさんが通る」映画化
1988年 某大学の卒業式に数名が袴姿で出席
1989年 同じ大学で200名程度が袴姿で出席
1990年代後半 「卒業式=袴」が定着
2001年頃 関西でも袴レンタルが本格化
2005年頃 着物のカタログで深田恭子さんが黒い着物を着用し、黒が流行
2006年頃 盛り髪、チェーンベルト、パーティバッグを合わせるなど、袴にもギャル系ブーム到来
2018年 レトロモダン柄、ハーフアップに大きな髪飾り、生花などが流行
足元は草履かブーツというのは90年代から定番なんですね。
はいからさんはブーツを履いてますが、もともと袴にブーツというのは上流ではない人のスタイルです。昔は道路事情が整っていませんから、ブーツは足場の悪いところに住んでいる人が履くものと言われていました。
へぇー! 足元以外にも、小物や襟も選べるんですよね。
うちはししゅう襟は原則やっていないんですよ。フォーマルな席ではししゅう襟はしないものなので、それに沿ってやっています。ブーツに関しても、ヒールがないとか、先が丸いとか、履いちゃいけないものもあるんです。卒業式って結婚式と同じくらいフォーマルな場でしょ。結婚式に運動靴を履いて行かないのと同じことです。高いブーツじゃなくていいけど、落ち着いたフォーマルなものを、と伝えていますね。
「個性を出したい!」という方にはどんなスタイルをおすすめしますか?
髪飾りや柄足袋も個性を出すアイテムのひとつですね。ただ、うちは基本的にはクラシックをお勧めしています。なんぼ時代が変わっても基本のルールだけは守っていかないと。かたいようですけど、ルールを知っている人が崩した着方と、何も知らないで崩してるのは違いますから。もちろん、その範疇で色々な提案をさせてもらいます。
プロに和装のルールを教えてもらいつつ、自分好みの着こなしを楽しめたらベストですね。ありがとうございました!
はかまde映えるOne pointレッスン」に参加
袴スタイルの歴史や知識を蓄えたところで、実際の着こなしを体験しに行ってみましょう。
学内で開催された「はかまde映えるOne pointレッスン」は、袴を着付けてもらったあと綺麗に見える立ち方や歩き方を講師の方に教えてもらい、最後はプロカメラマンが撮影してくれるという本気プラン!
会場に入ると、参加者に用意された着物と袴セットが一式ずらり。
参加者からは事前にサイズと、どのような色や柄がいいか希望を出してもらい、それに沿ったものが用意されているみたいです。
着てきた服をぽいぽい脱いでいくと、着付けの方が2人がかりでサクサクと装備を整えていってくれます。
着付けは10分程度で終了~! そしてお次はヘアメイクへ。
希望の髪型があれば写真などで伝えますが、何も持ってきていなかったので「今風であまり派手にせず」というイメージでお願いしました。
セット中に髪飾りを選び、化粧もお直ししてもらって完成!
元々がっつり化粧をしてきたつもりでしたが、プロの手をちょっと加えるだけで顔が各段に濃くなった!!
30分とかからず全ての準備が整ってしまいました~。
着物の柄は、先ほど京ろまんさんから聞いた「お花嫌いシリーズ」なストライプ柄。自分の時は赤い古典柄の着物に紺色の袴という超定番スタイルだったので、色も柄もめっちゃ新鮮! かわいい!髪型も流行りの編み込み&ハーフアップです。
自撮りはかどる~!!
続いて、袴姿が綺麗に見えるウォーキングとポージングを教えてくださる講師のSHIZUKA先生から、レッスン前に今日のポイントを教えて頂きました。
今日は自分の立ち方や歩き方がどんな感じなのかを客観的にチェックしたり、どうやったら和装が綺麗に写真に写るかなどをお教えします。普通の人は自分の姿を360度見たことってないと思うんですよ。あ、ちょっと座る位置逆にしてもらっていいですか?
ほら、これで2人とも髪飾りが綺麗に見えるでしょ? こういうことをやります!
なるほど~!!
自分の歩く姿に愕然! 少しの意識で「できる女」にレベルアップ
それでは、さっそく学生の皆さんに混じってレッスンスタート!
まずはかかとを揃えて立って、膝、お尻という風にだんだん意識を上に持っていきまーす。最後に肩を落として!
プルプルする私たちに「綺麗な立ち方はしんどいです! 写真を撮る時、人前で歩く時、その時だけでもいいからスイッチ入れて頑張って!」と一喝。
さて、立ち方がわかったら今度は歩き方。自分の歩く姿をスマホで撮影してもらい、チェックすると素人感丸だしでショック! こちらもパッと改善できるポイントを教えて頂きました。
そして総仕上げとして、外に出て撮影へ!
プロのカメラマンさんに撮影して頂きます。
すごい! みなさん着付けが終わった直後はなんとなくそわそわしていましたが、今レンズの前に立つ姿はめちゃくちゃキマってます!
背筋まっすぐ。指先ぴーん。モデルさんみたい~!!
一方でSHIZUKA先生にも列が……
正しいカメラの位置や、後ろ姿が美しく見えるポーズなど、色々指導しながら撮影されていました。
最後はみんなで記念撮影!
ずらっと並んで、指先までばっちり決まってます。あでやかで映えますね~!
参加者のみなさんのコーディネート
今回、皆さんが着用された袴コーディネートについて、京ろまんさんから着こなしの解説をいただきました!
理工学部4年 王子田さん
レッド、イエロー、ブルー3色のストライプと、落ち着きあるブラックがアクセントになったはっきりした配色のきもの。大きな梅の花がふんわり調和させてくれます。袴のカラシ色は明るい印象を持ちキリッとさせてくれます。
理工学部4年 仲上さん
古典的な落ち着きある柄行き。暖色系オレンジ色のきものはお顔うつりがパッと華やかな印象になります。抹茶色の袴はレトロ感を出したい方へおすすめ! 袴の合わせる色で、きものの表情が変わりますよ。
薬学部3年 河村さん
やさしい雰囲気の上品な小花柄の黄色きもの。エンジ色の刺繍袴を合わせ、女性らしく凛としたコーディネートです。お草履を合わせ、とても春らしく大人っぽいイメージに仕上げました。
グリーンストライプに同系抹茶色の袴を合わせてコーディネート。同系色を合わせることでストライプの縦ラインイメージをさらに印象付けることができます。袴のブーツスタイルも人気です。
バッチリ私もカメラの前でキメ顔してしまいました。
参加された学生の方々に感想を聞いてみると「前撮りの参考になった」「普段自分ではできない和装で楽しかった」など、皆さん袴スタイルを楽しめたようです。
中には「既に別の袴を予約してたけど、今日着た柄の方が可愛いので予約しなおすかも!」という方も。自分に合った着物と袴を見つけるのは時間がかかるけど、あれこれ考えるのも楽しいですよね~!
次回の袴イベント
今回のように、袴の着こなしを間近で体感できるイベントが今月も開催されます!
「“優しいはかま”SHOW」
10月15日(月)実学ホール 12:20~13:00
近大生でありモデルの松本優さんがMCとして登場。インスタグラマーとして人気を集める撮影術や自撮りテクニックなどを紹介してくれます。そしてショーには今回レッスンに参加した学生の皆さんがモデルとして登場しますよ!
最後に
一口に「袴」と言っても、定番スタイルはもちろん、時代によってギャルっぽくなったり、レトロモダンになったり……。小物や着こなしによって全然違う印象になることもわかって面白かったです。
そしてレッスンでは今後にも役立ちそうなことがザクザクだったし、自分好みのスタイルで颯爽と卒業式に出席できたら楽しいだろうな~!
試着できる機会には、いつもは選ばない色や柄を着てみるのもいいかも。
袴レンタルを検討している人はぜひ10月15日のイベントに参加してみてくださいね!
(終わり)
ライタープロフィール
ふくもりみほ
通称「みほたん」。婚活パーティーやナンパスポットなど男女の出会いの現場を日々研究し、レポートや恋愛コラムを各種ウェブメディアで連載中。趣味はネットサーフィン、特技はネットストーキング。難ありアイドル『オタフクガールズ』の貧乏担当としても活動中。 Twitter:@fukumoco
企画・編集:人間編集部
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