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2018.08.31

「コーヒーを通じてミャンマーに貢献したい!」海外で起業した学生の熱い思い

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
在学生
インタビュー

中学生のころはアイドル活動、高校生活は柔道ひと筋、そして大学入学後はMBA取得(※)を目指して猛勉強の日々。「目標ができたらとことん打ち込むタイプ」の宮辻詩音さんは、2年生の終わりに突如休学を決意、単身ミャンマーに渡ってコーヒーブランドを立ち上げました。オーガニックにこだわった宮辻さんの製品は現地でも評判だそうですが、なぜミャンマーでコーヒー? 奮闘中の宮辻さんは9月2日、読売テレビ『グッと!地球便』に出演されます。放送に先駆け、Kindai Picksのインタビューに答えていただきました。

※MBA
Master of Business Administrationの略称。日本語では経営学修士、または経営管理修士と呼ばれる学位であり、経営学の大学院修士課程を修了すると授与される

(プロフィール)
宮辻 詩音(みやつじ しおん)
近畿大学経済学部2年生/アイ・トレード・カンパニーCEO
1997年大阪生まれ。2015年近畿大学経済学部に入学。2017年、休学してミャンマーへ。IT企業でのインターンを経て2017年9月に起業、コーヒー豆ブランド『アイ・スター・コーヒー』を立ち上げる。

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ミャンマーってどんな国?




最初に、ミャンマーについて簡単にご紹介します。東南アジア・インドシナ半島西部に位置するミャンマーは、人口の6割をビルマ族が占める多民族国家。ミャンマーと聞いて私たち日本人が思い浮かべるのは、非暴力民主化運動を進めたアウンサンスーチー氏や竹山道雄の小説『ビルマの竪琴』でしょうか。古くからお茶の栽培が盛んで、特に紅茶は広く親しまれているそうですが、現地のコーヒー文化はどのようなものでしょうか? 宮辻さんにお聞きしてみましょう。


独自のコーヒー文化を持つミャンマーに、多様な好みに対応できるコーヒー豆を




――まずは、宮辻さんが立ち上げたコーヒー豆のブランドについて教えてください。ミャンマーにコーヒーのイメージって、あまりないですよね。

そうですよね。ミャンマーのコーヒーは、品質は高いんですが飲み方が独特です。パウダー状になるまで挽いたコーヒー豆にお湯を入れて、その上澄みを飲むのが主流で。ブラックで飲む習慣が少なく、オーダーすると必ず砂糖が入って出てきますね。

――うーん、ミャンマーの人以外には馴染みにくいかもしれませんね。

でも、ミャンマーコーヒーは世界で注目され始めているんですよ。海外の品評会で評価されたり、広い国土があったりと、発展していける土壌があります。だから「今、伸びつつあるコーヒーを広めることでミャンマーに貢献したい」という思いから『アイ・スター・コーヒー』というブランドを作りました。ヤンゴンで一番有名な『ボージョー・アウンサン・マーケット』や土産物店で販売中です。最近では、日本人オーナーが経営する焼肉店との契約も決まりました。

――『アイ・スター・コーヒー』ではどんなコーヒーを揃えているんですか。

100%オーガニックのアラビカコーヒー(※)で、ミディアムロースト、ローミディアムロースト、ライトローストの3種を用意しています。僕は1年生の時にバリスタのアルバイトをしていたんですが、苦めのエスプレッソがいいとか、浅めの焙煎が好きとか、お客さまのニーズはいろいろでした。3種から選んでもらうことで、さまざまな好みや気分に対応できます。また、ブラックで飲んでおいしいかどうかにもこだわっています。日本の方には好評ですが、甘いコーヒーに慣れたミャンマーの方には「初めての味だ」「これがコーヒーなの?」と言われることもありますが……。ブランドと一緒に、ブラックで飲むコーヒーのおいしさも広めていきたいですね。

※アラビカコーヒー
風味豊かで高品質といわれ、日本でもよく飲まれている品種


ブランド名には「世界のスターになれるように」との思いを込めた


発展途上のミャンマーに衝撃を受けて休学へ


――起業に至るまでのこともお聞きしたいと思います。近畿大学に入学して、休学するまでの大学生活はいかがでしたか?

金融に興味を持っていたことから経済学部を選び、入学当初はMBA取得を目指していたので勉強漬けでした。さっきお話したとおりバリスタのアルバイトもしていたので、朝6時から昼まで働いて、大学で授業を受けて、夕方からは予備校に行って……と、忙しい毎日を送っていましたね。

――分刻みのスケジュールですね。学内での思い出は少ないですか?

図書館は思い出深いですよ。僕は形から入るタイプなので、集中しやすい環境が整った図書館にいると、モチベーションが上がって勉強がはかどりました(笑)集中したいときは静かな自習室、テスト前に友だちと一緒に勉強する時はまた別のところでなど、とにかく入り浸ってました。

――そこまで勉強に打ち込めるのはすごいですね。

昔から目標を立てて努力して、もし達成できなかったとしてもすぐ切り替えられる性格で。僕は子どものころからずっと柔道をしていて、中学3年生の時はジャニーズJr.として活動もしました。姉が応募したオーディションに行ったら受かってしまったからです(笑)でも高校入学とともにジャニーズを卒業して。柔道も「府大会で優勝できなかったらきっぱり諦める」と決めて、3年生の時に決勝戦で負けたのを機に辞めました。一生懸命やって「この世界で自分の実力はこのくらいだ」と実感したら、別の道で頑張るために決断をするんです。

――なるほど。その後もMBA取得という明確な目標を見つけた宮辻さんが、休学を考え始めたのはなぜでしょうか。

「このまま卒業して就職していいのか」という思いはずっと持っていました。休学して世界を見に行きたいなと漠然と考えていたんですよね。最初は正直どこでもいいから、とにかく海外という気持ちでした。ある時ミャンマーを旅行することになり、現地の人のあたたかさに触れて、一方で世界で最も貧困といわれる現状も見て「一度、ここで働いてみよう」と思ったんです。2年生の終わりに休学を決めました。



――魅力があり、一方で問題も抱えるミャンマーに惹かれたんですね。

タイやマレーシアにも行ったことがありますが、ミャンマーが一番衝撃的でした。豪華なショッピングモールの裏手にはスラムのような貧しい地域があるんですよ。イギリスから独立したばかりの若い国で、教育もあまり整っていないんですよね。「これから発展していかなければいけないこの国を自分の目で見たい、できれば何かの形で貢献したい」と思いました。


自分の手で作ったコーヒーを国内外の人に届けたい




――ミャンマーコーヒーと出会ったきっかけについて教えてください。

ミャンマーに渡った当初は日系のIT会社で半年間インターンをしながらマネージメントを学んでいました。バリスタのアルバイトをする前からコーヒー好きだったので、ミャンマーのコーヒーにも関心が芽生えて調べるようになって。そのうち「これを仕事にしよう」という思いがふくらみました。成長しつつあるミャンマーコーヒーを広めることで、発展に少しでも貢献できるんじゃないかと考えました。

――何から始めていきましたか。

まずは自分の目で農園を見てみようと約1か月間、国内を旅してさまざまな地方を巡りました。そこで出会ったのが、最初にお話した100%オーガニックでコーヒー豆を栽培している農園です。オーナーは最初、若い日本人が突然やってきたことにびっくりしていましたが、ミャンマーコーヒーへの熱意を語り合ううちに意気投合して契約することができました。その後、会社を立ち上げてライセンスの取得などに時間を費やし、今年1月からやっと販売をスタートさせることができたんです。


何か所も見てまわり、高品質なコーヒー豆を安定的に栽培できる農園と契約

――海外で起業するうえで苦労した点はありますか。

今まさに、コミュニケーション面で苦労しています。現地の社員を3人雇用しているのですが、ミャンマー人の国民性なのか、自主的に仕事を見つけるような応用力がなかったり、仕事のアピールが下手だったり……(笑)僕は目標に向かって突き進むタイプなので、なかなか分かり合えない点もあります。商品のことだけでなく、社員のマネジメントにも力を入れなければと考えているところです。

――今後はずっとミャンマーで経営を続けるのですか?

そうですね、来年には自社農園の運営も始める予定ですし、今のところはこちらで仕事を続ける予定です。同時に、大学卒業を目指して来年の4月からは近畿大学通信教育部に編入しようと思っています。休学の時は両親に心配をかけたので、きちんと卒業して安心してもらいたいですね。僕の最終的な目標は「ミャンマーコーヒーを変えた人物」として歴史の教科書に載ること(笑)まずは近い将来、日本でもミャンマーコーヒーを販売したいです。一人でも多くの人がミャンマーに興味を持ったり、行ってみたいと思ってもらえるとうれしいですね。

――ありがとうございました。

「自分たちで作り上げたコーヒーをおいしいと言ってもらえるのが幸せ」と、ミャンマーでの生活をいきいきと語ってくれた宮辻さん。ミャンマーコーヒーが日本でも身近に親しまれる日が楽しみですね。

インタビューを通してミャンマーに興味を持った方はぜひ、宮辻さんが出演される『グッと!地球便』もチェックしてみてはいかがでしょうか。

▼参考リンク
アイ・トレード・カンパニー

(おわり)

取材・文:山森 佳奈子
写真:黒川 直樹
編集:人間編集部

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