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雑学・コラム

2019.07.17

異例の大ヒット続出!「ゾンビ」はなぜ人気なのか?多様化するコンテンツの魅力と、現代人が抱える恐怖を探る

Kindai Picks編集部

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ゾンビ
総合社会学部
岡本健
インタビュー
オリジナル記事

『ウォーキング・デッド』をはじめ、『カメラを止めるな!』『ゾンビランドサガ』など、ゾンビコンテンツはなぜここまでの人気を獲得し、人々に愛されているのでしょうか?そして、多様化するゾンビコンテンツの傾向から推測する「現代人が抱える恐怖」とは?学術的にゾンビを研究する『ゾンビ学』の著者である岡本健准教授と株式会社闇の頓花聖太郎さんのゾンビ対談をお届けします。

アメリカで高視聴率を獲得し続けているドラマ『ウォーキング・デッド』をはじめ、ハリウッドリメイクが発表された韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』など、近年ゾンビコンテンツの爆発的ヒットが後を絶ちません。

日本においても、昨年は制作費300万のインディーズ映画『カメラを止めるな!』が興行収入30億円超えを記録し大ブームに。更に、佐賀県を舞台にしたアニメ『ゾンビランドサガ』がアニメ年間大賞に選ばれるなど、社会現象になるほどゾンビ旋風が巻き起こりました。

※株式会社ドワンゴが運営する動画サービス「niconico」の「ネットユーザーが本気で選ぶ!アニメ総選挙2018年間大賞」

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンやサンリオピューロランドなど、テーマパーク主催のゾンビイベントも年々盛り上がりを増し、ハロウィンのゾンビコスプレもすっかり定番化。

ゾンビコンテンツはなぜここまでの人気を獲得し、世界中で愛されているのでしょうか?

近畿大学でも「ゾンビ」の学術的研究がアツい!



岡本健著『ゾンビ学』(人文書院)

今、近畿大学でも「ゾンビ」が盛り上がっています!

ゾンビを学術的視点から研究した『ゾンビ学』の著者である岡本健先生が、今年から近畿大学 総合社会学部 総合社会学科の准教授として着任。岡本先生のゾンビをテーマにした授業には、初回に400人近くの履修希望者が殺到し、急遽追加開講する事態が発生。

更に、7月、8月、9月に開催される2019年度近畿大学オープンキャンパスでは「ゾンビ」をテーマにした謎解きイベントが実施されます。

▼イベント特設サイト
近大謎解きキャンパス|ゾンビだらけのサイエンスパニック

今回は、テクノロジーを駆使した新しい恐怖コンテンツを制作する株式会社闇の頓花聖太郎さんをゲストにお呼びし、岡本健先生との「ゾンビ対談」をお届けします。


色違いの『カメ止め』のTシャツを着て、早速意気投合していた株式会社闇の頓花聖太郎さん(左)と近畿大学総合社会学部 総合社会学科の岡本健准教授(右)

ーー今回は「ゾンビ対談」ということで、ホラーマニアの頓花さんにお越しいただきました。

岡本先生:株式会社闇は夏が忙しいんですよね。

頓花:そうですね。今年は、ひらかたパークで寝た状態で体験するホラーVRとか、MBSで野性爆弾くっきーさんプロデュースのホラーVRとか……合計5つのコンテンツ制作をしてます。今えらいことになってて人生で一番忙しい。

岡本先生:そんな中、本日はお越しいただきまして。

頓花:いやもう何を差し置いても行きたいなと思いまして。先生の著書『ゾンビ学』も持ってます。

岡本先生:ありがとうございます(笑)。嬉しいです。

ーーまず、岡本先生はどうしてゾンビを研究されるようになったのでしょうか?

岡本先生:昔はゾンビとか全然興味なくて……むしろ怖い映画とか苦手やったんです。ところが、大学生の時、国語の教員免許を取るために、「中国文化概論」という講義を受けたんですね。その担当教員が「この授業は中国文化概論ですけど、僕の専門の香港武侠(ぶきょう)映画の話をします」と言い出しまして。

※武侠映画:武術や刀剣の達人が活躍する時代ものアクション映画

頓花:色々間違ってますね(笑)。

岡本先生:実際、先生の解説を挟みながら延々と香港武侠映画を流し続ける講義だったんですけど、その授業の最終課題レポートが「香港武侠映画を1本観て自分なりに分析しなさい」というもので、レンタルビデオ屋に行ったら、横にゾンビの棚があって。

頓花:えっっ!?

岡本先生:大抵、B級アクション映画の横にはB級ホラーやゾンビものが置いてあるんですよ。

頓花:確かに(笑)

岡本先生:香港武侠映画を選んでる合間に、横目にゾンビ映画がチラつくわけです(笑)。しかも、やたらと数が多い。こんなにたくさんあるってことは、ゾンビ映画って面白いのかな……?と思い、パッケージを見て良さそうだったゾンビ映画を1本借りて観たんですよ。

頓花:はいはい。

岡本先生:それが、クッッッソしょーもない映画で(笑)。もうね、タイトルも覚えてないくらいのクソ映画やったんです!

頓花:めちゃくちゃ面白くてハマったという流れと思いきや……

岡本先生:でも、こんなクソ映画でも誰かに需要があるってことやし、そんなに売れてないとしても監督は撮りたかったんやろうし……と、逆にものすごく興味を惹かれまして(笑)。そこから色々観ていったんです。で、たまにスゴイ面白いのがあるんですよ。その宝探し感が楽しくて。

頓花:なるほど、その感覚はわかります。

岡本先生:ゾンビ映画って、パッケージから想像つかないものが多いんです。だいたいパッケージ詐欺なんで(笑)。まさか、それを学問にしようなんて全然思ってなかったですけどね。当時はロメロ監督のことも知らなかったし。

※ジョージ・A・ロメロ:ゾンビ映画の巨匠。ゾンビ3部作として知られる『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 』(1968年)『ゾンビ』(1978年)『死霊のえじき』(1985年)で、ゾンビ映画を一つのジャンルとして確立させた



ーー学問として研究し始めたのはいつからなんでしょうか?

岡本先生:大学院で観光学の博士号を取るために「アニメ聖地巡礼」の博士論文を書いていたんですけど、そのことばかり考えていたら途中で辛くなってきて。一旦別の文章を書こうと「ツアー・オブ・ザ・リビングデッド」という論文を書いたのがきっかけです。

頓花:息抜きだったんですね。

岡本先生:そうなんです。その後、コンテンツツーリズムをテーマにした『n次創作観光』という本を出したんですが、その本の対談記事の中で「次はゾンビの本を出したい」と書いたところ、人文書院の編集者から「この本の企画は進んでるのでしょうか?」って連絡が来まして……。

頓花:人文書院の人よく見てはったな。

岡本先生:それで、ゾンビの本を出そうというお話をいただきまして。そこから本格的にゾンビの研究をすることになったんです。

頓花:ネタのような話ですね。

岡本先生:人生何が起こるかわかりません(笑)。なんでも言ってみるもんですね。

ーー頓花さんがホラーにハマったきっかけは?

頓花:僕は、子どものころから遊園地が大好きで。高1の時に、エキスポランドで「バイオハザード」をテーマにしたお化け屋敷に入ったんですよ。それが、めちゃくちゃ怖かったけどめちゃくちゃ楽しかったんです。

岡本先生:私、同世代ですが、知りませんでした。

頓花:その後、お化け屋敷プロデューサーとして有名な五味弘文さんのミッション型お化け屋敷にハマって。例えば、櫛を渡されて「お化けの髪をといてこい」とか「赤ん坊を抱いて届ける」とか。それがちゃんとストーリーに紐づいていて、臨場感がハンパない。それで、お化け屋敷が革命的に面白い!と思って。

岡本先生:将来的にそういう仕事をするというのは……

頓花:全然、全く想像してなかったです(笑)。芸術系の大学でデザインの勉強をして、卒業後は7年間くらいグラフィックデザイナー、さらにその後5年くらいWebデザインの仕事をして……2015年から急にこの仕事を始めました。

岡本先生:いきなりどうしたんですか。やっぱり俺はお化け屋敷をやるんだ!……みたいな。

頓花:前職がテクノロジーに強いデザイン系の会社だったんですが、かっこいいものとかシュッとしたものを作るのに飽きてしまって。もっとドロドロした、リアクションがギャーギャー返ってくるようなものが性に合ってたのではないかと。テクノロジーとホラーを掛け合わせて「魔法のような体験」をつくりたくて、一念発起しました。


めちゃくちゃなアイディアも通る「ゾンビ万能説」




ーーさて、本題の「ゾンビはなぜ愛されているのか」を解明したいと思うんですが、コンテンツ制作者側から見て、ゾンビとはどういった存在なんでしょうか?

頓花:これは長くなりますよ!!今日の話の主軸です!!

岡本先生:僕は「ゾンビ万能説」を唱えたいです。ゾンビ映画っていうのは、なんていうか……厳しくないんですよ(笑)。予算の都合とか、監督の思いつきとか、めちゃくちゃなアイディアも通っちゃう。ゆるゆるです。言い換えれば「使い勝手が良い」んです。

頓花:監督の情熱で成り立つやつですね。

岡本先生:お客さんのほうも「しゃーないな」と思いながら受容する文化があって(笑)。だから、ゾンビ像が多様化して何でもアリになってる。みんながなんとなくイメージを共有しているんだけど、厳密には設定が固まっていなくて。非常に自由なんです。

頓花:『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年公開)とか、ロメロ監督の作品を完全にいじり倒してますもんね。

※日本では劇場未公開だったが、2019年3〜5月にTOHOシネマズで限定上映された

岡本先生:そうですね。ギャグとかメタ的な作品も多い。その自由さがゾンビの魅力であり可能性であり、今日まで多くのクソ映画や名作たちが築いてきた今のゾンビ像の面白さなんですよ。



ーーエンタメ全般で考えても、ゾンビコンテンツの爆発的ヒットが目立ちますよね。日本では、上田慎一郎監督の『カメラを止めるな』に、アニメの『ゾンビランドサガ』も昨年大きな話題となりましたが……

頓花:『カメ止め』は最高でしたね。『ゾンビランドサガ』も、第1話の衝撃がすごくて、最後まで一気に見ちゃいました。あまりゾンビゾンビした作品じゃないですよね。

岡本先生:話の類型としては幽霊譚ぽいとこがあって、そこも面白いところだと思います。生前心残りだったこととか、あるいは他の人があの子どうなったんだろう?と思ってることを解決してあげる……みたいな。ゾンビなので成仏はせず、残り続けますけども(笑)。

ーーちなみに、歴史的に一番売れたゾンビ作品は何になるんでしょうか?

岡本先生:過去一番のヒット作は、やはり『バイオハザードシリーズ』。元は大阪のゲーム会社CAPCOMさんの作品ですが、2002年の実写映画化で大成功して、その後世界的にゾンビ映画が増えました。映画単体での興行収入でいうと、ブラッド・ピット主演の『ワールド・ウォーZ』(2013年公開)が大きいと思います。

頓花:ウィルス系が多いですよね。僕、先生に聞きたいことがあるんですよ!ウィルス系ゾンビについて、どうしても解せないことがあって。なんであいつら死なないんですかね?感染率がすごいのはわかります。ただ、そのうちゾンビの栄養源も尽きるやろ!と思って。仮に人間を食べるとしても、感染しきったら……

岡本先生:人間もいなくなっちゃいますもんね。

頓花:そう。そもそも人間を食べる描写もあんまりないんですよ。襲って噛みつくんですけど、最後までは食べない。納得できる説明になるような作品ってないんですか?

岡本先生:この問題を詳しく描いてる作品があります。ネタバレになるので作品名は伏せますが、その物語の世界では、ゾンビになってしばらくしたら木になるんです。そして、その木に実がなって、実が割れると胞子を散布し、よりゾンビウィルスが拡散されていく……。ゾンビの原因が菌類だったんですよ。タイワンアリタケっていう、本当に実在するアリを操る菌類をモデルに描かれました。

頓花:なるほど!菌類!

岡本先生:人間を宿主にしてばくばく食べてると。

頓花:カロリー問題はクリアしてるんですね。

岡本先生:ゾンビではないですが、ヴァンパイア映画の『デイブレーカー』では、吸血鬼の方が増えてしまって、吸血鬼が困っちゃうんです。「食うもんないぞ」「人間このままやったら絶滅する」って言って、吸血鬼の研究者が人工血液を作ろうと頑張るのですがどうもうまくいかない。なんなら人間に戻った方がいいんじゃないかって話にもなってきて……。

頓花:食料問題切実やな(笑)。


最後は絶対グダグダになる説




ーーゾンビ作品の結末についてはどう思われますか?

頓花:ゾンビものって、特に漫画とか「最後は絶対グダグダになる説」があるじゃないですか。

岡本先生:ほんとにね。

頓花:ゾンビって、発生してから拡散するまでが一番面白くて、そこから人間劇になり、サバイバルになり、よくわからない状態になる……という型があって。どうあがいてもたどり着くのはゾンビが増殖しきってどうしようもない世界

岡本先生:作品としてはゾンビ発生については解決せずに途中で終わる方が良いのかもしれません。その点では『アイアムアヒーロー』の実写映画はうまく物語が終わっていました。

頓花:増殖するだけなら吸血鬼でも成り立ちますよね。その中でもゾンビが愛されてる理由って何なんでしょうか。

岡本先生:ゾンビは知能が低くて、特別な能力がないところが特徴だと思います。どちらかというと人間が劣化したイメージで、単体では弱い存在。吸血鬼は強いんですよ。知能も高いし、空飛んだりするし。エイリアンもプレデターもジェイソンも、それぞれ何かしら人間より強いですよね。

頓花:ゾンビも身体能力が高まる場合もありますよね。

岡本先生:昔の映画のゾンビってまどろっこしいんです。勝てそうだし逃げられそうだし。今の映画は、全体的にカット割がすごく増えていてテンポが速い。そういう中で「遅いゾンビ」を描くのに限界がでてきていたというのもあると思います。

頓花:普通に逃げられそうですもんね。

岡本先生:そんな中、『28日後…』(2002年公開)という映画で「走るゾンビ」というパターンが発明された。その時に、だったらあれもできる……これもできる……っていう、発想のボトルネックになっていた部分が外れたんじゃないかなと思うんですよね。


ビーバーにラッパー!? 超多様化するゾンビ




ーー今や「何でもアリ」で多様化しているゾンビですが、個性的な設定ではどんなものがありますか?

岡本先生:ロシアのゾンビドラマ『デイ・アフターZ』(2013年〜)は、美女だけがゾンビになるんです。ゾンビになったら目が真っ黒になるんですけど、恋愛要素もあって……。

頓花:美女かそうでないか、どこで線引きされるんだ……。

岡本先生:ドイツの映画『ゾンビーバー』(2014年公開)もすごいですよ。ビーバーがゾンビになって、人間がゾンビーバーに噛まれたら、ゾンビじゃなくてゾンビーバー人間になる。

頓花:ゾンビーバー人間(笑)。

岡本先生:あと、ラッパーに噛まれたらラッパーになるとか。小芝風花さん主演でドラマにもなりました。『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』。ラップバトルでゾンビと戦うという(笑)。

頓花:それはゾンビなんですか(笑)。

岡本先生:一応。感染すると韻踏むようになります。

頓花:範囲が広いな!!そろそろ飽きられないんですかね?

岡本先生:飽きられると思いますが、飽きられた時がまたポイントです。きっとまた、わけわかんないのが出てきて復活します。まさにゾンビのように(笑)。

頓花:ギャグとかポップ路線が多くなって、間口が広くなってますよね。

岡本先生:だからこそいろんな世代へ伝わるし、共有できるコンテンツなんですよ。ちゃんとゾンビ映画を見たことない人もたくさんいます。それでも、きゃりーぱみゅぱみゅの歌とか、USJで見たとか、そういう断片的なものでみんなイメージが共有できます。

頓花:ハロウィンも盛り上がってますよね。ゾンビがキャラクターとして強いと思う理由はゾンビはメイクさえすれば服装は自由だし、動きも非常にやりやすい。

岡本先生:ちょっと傷つけるだけでもいいし、コスプレのハードル低いんですよね。


ゾンビとは一体何なのか?現代人が抱える根源的な恐怖




ーー先生は著書内で「ゾンビは自分たちの写し鏡」と仰っていましたが、今の時代の傾向などはありますか?

岡本先生人間とゾンビの価値観の違いをどうやって調停していくのか?という話が多くなっています。『アイアムアヒーロー』もそうですが、「人間とゾンビのハイブリット」のような存在が出てくるパターンが多い。

頓花:『SIREN』の屍人もそれに近いような気がします。「こっちの世界にきた方が幸せだ」みたいなストーリーはありますよね。

岡本先生:ゾンビって「異人間」なんです。元の人間とは違っているけど、魂だけになった幽霊とは違って、価値観の違った人間として存在している。じゃあ、どちらかがどちらかを駆逐するのか?それとも仲良く暮らすのか?それともそれ以外の方法が?という「共存」をテーマにした作品が最近本当に多いです。

頓花:そうかもしれない。

岡本先生:『ウォーム・ボディーズ』(2013年公開)も、ゾンビと人間が敵対する世界なのですが、そこでゾンビの男の子と人間の女の子が恋をする。ゾンビ版ロミオとジュリエットみたいな感じですが、この映画は珍しくゾンビが主人公で、ゾンビの一人称で語られているんです。

ーー日本と他の国で、ゾンビのイメージの差というのはありますか?

頓花:日本人よりアメリカ人……というか、キリスト教徒、特にプロテスタントの方が一番ゾンビ映画に恐怖を感じるんじゃないか?と思っていて。プロテスタントの方は、死んだら「最後の審判」の日まで待つわけじゃないですか。でも、その間に生き返っちゃうと、審判に呼ばれなくなるらしいんです。なので、なによりもそのことが恐怖だと。

※最後の審判:世界の終焉後に人間が生前の行いを審判され、天国か地獄行きかを決められるという信仰

岡本先生:文化差はありますよね。「ピエロが怖い」とか、僕ら日本人からしたらわけわかんないですもんね。身近にいるけど正体がわからない人の怖さみたいなのがあるらしいんですよ。現在の日本社会でも、さまざまな「価値観の違い」に起因した排他性が見られますよね。ヘイトスピーチなどはまさにそうです。

頓花異なる価値観に対する恐怖ですね。

岡本先生:今の学生で言うと「パリピ」と「陰キャラ」とか。私はこれはかなり興味深い現象だと思っていて、パリピって実際いないんじゃないかと考えています。というのも、ある人からパリピと言われている人も揶揄する感じで他の人を「パリピ」って言うんです。さらに上位の「パリピ」を想像しているわけですね。最強の「パリピ」が存在するのかどうか(笑)。

頓花:仮想のパリピ(笑)。確かに、言葉の通じない相手として「相対的」な概念なのかもしれない。


岡本先生の研究室にあるゾンビDVDコレクション。

ーー哲学的な概念としても「ゾンビ」という言葉が広がっていますよね。

岡本先生:ゾンビのような存在って、身近にあるんですよ。例えば「鬱病」。今まで明るかった人が、無気力になって塞ぎこんでしまう。僕も鬱になったことがあるんですが、実際に人と喋れなくなりました。それって、今までと見た目は同じ人なのに変わってしまったように見える現象です。そういう状況とどう付き合っていくのか、現代社会の切実な問題です。

頓花:スマホ依存症の一つですけど、最近日本でよく見かける歩きスマホのことを海外では「スマートフォンゾンビ」っていうんですよね。的を得た表現ですよね。まさしくゾンビになってる感覚があります。

岡本先生:技術の発達により「考えなくなっちゃう」「感動しなくなっちゃう」っていうのも怖いですよね。AI技術が発達したら、悩む間もなく食べたいものが勝手に目の前にでてきて……「あーおいしー」ってなると、ちょっとディストピアですよね。

頓花:情報化社会が作ったゾンビ……。

岡本先生:ゾンビには、自分がそうなってしまったり、他者がそうなってしまう恐怖が反映されていると思うんです。感情がなくなり「生きてるのに死んでる」みたいな状態を、根源的な恐怖として現代人は抱えている。

ーー中国では学歴至上主義の詰め込み教育なども問題となっていますが、就職活動も含め、「型にハマることが正義」とされる教育の中でもゾンビは生まれやすいのかなと。

岡本先生:大枠はその通りかなと思います。一方で、知識の詰め込み以前に、物事に関心を示さない人が増えているという問題もありまして。要は、モチベーションなんです。例えば、今流行りのスマホゲームには教科書には出てこないような神様や過去の偉人、英雄などがモチーフになっているものは多いですよね。そこで、興味を持って調べるかどうか。

頓花:好きなキャラクターだったら調べたくなりますよね。Wikiとかもあるし。

岡本先生:そうなんです。きっかけは何でもいいので、好きになって、面白がって、調べてくれると良いなと思います。深く広く掘っていけば、他の様々な事象とつながっていきます。「これは面白い!」と思えれば、どんどん知識を覚えていけますし、そうやって自主的に得た知識は、有機的に結びついています。こうなると応用がききますから、すごく強いです。

頓花:僕も3年ほど大学でデザインを教えてたんですが、今の子は諦めが早くて達観してるな……と。そういう意味での「ゾンビ感」も感じています。でも、その気持ちもわかるんですよ。頑張ろうと思っても、ググったら未来が見えちゃうんで。

岡本先生:なるほど。そういう側面もあるかもしれません。

頓花:何か頑張っても、その世界のすごい人が簡単に見つけられちゃう。じゃあこの人には一生勝てないんだ、じゃあこれもダメ、あれもダメ……って。諦めが早い。知らないからこそ持てる自信ってあったりするじゃないですか。

岡本先生:「知らないからこそ持てる自信」名言ですね(笑)。一方で、様々な情報がすでに提示されているからこそ、今、ここで起こっていることを研究できる、という面も出てきていると思います。しかし、あれですね。お化け屋敷は、むしろそういった「無感動なゾンビになってしまう人」こそ行くべきなんじゃないですか?

頓花:そうなんですよ。お化け屋敷は、「感情を無理やり揺り動かす」っていうのが魅力のひとつ。冷静でいさせない。思考停止や日常をどう壊していくか……というのが僕がつくるお化け屋敷のテーマです!

岡本先生:お化けがゾンビを救ってるわけですよね。

頓花:そうなんですよ、実は。オチましたね(笑)。




2019年度近畿大学オープンキャンパスで、岡本先生が監修する謎解きイベント「ゾンビだらけのサイエンスパニック」が開催されます。
ゾンビに興味がある方、是非ご参加ください!

<イベント概要>
近大謎解きキャンパス「ゾンビだらけのサイエンスパニック」
開催日:7月21日・8月24日・8月25日・9月22日
開催場所:近畿大学東大阪キャンパス(受付:アカデミックシアター入口)
参加費:無料

▼イベント特設サイト
近大謎解きキャンパス|ゾンビだらけのサイエンスパニック


(終わり)


取材・文・写真:トミモトリエ
企画・編集:人間編集部


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