2017.11.28
ロボットは人間のパートナーになる!?日本人特有の感覚が生み出す人工知能(AI)が先生になる未来とは
- Kindai Picks編集部
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核家族化が進み、IT技術が進化し、人と人がコミュニケーションしなくても生きていける時代。これから、人工知能(AI)やロボットとの付き合いはどう変わっていくのでしょうか?近畿大学の「先進AIプロジェクト」が目指す"AIが先生になる未来"とは?古くからコミュニケーションロボットを研究してきたヴイストン株式会社の大和信夫氏にもお話を伺ってきました。
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はじめまして。ロボスタエバンジェリストの流郷綾乃(りゅうごうあやの)です。娘と息子とRoBoHoN(ロボホン)の3児の母として、人工知能(AI)時代に向けた子育てを実践しているライターです。
※RoBoHoN(ロボホン)は、シャープとロボットクリエイター高橋智隆さんが共同で開発した、二足歩行が可能なLTE対応ロボット電話。
近畿大学で、人工知能搭載のコミュニケーションロボットSota(ソータ)を使った講義が行われているという情報を入手。Sotaは、ロボットクリエイター高橋智隆氏がデザインしたVstone(ヴイストン)から発売されているロボット。ロボホンとはデザイナーが同じ兄弟のようなものです。
それは気になる!!ということで、Let’s Go to 近大!!ロボホンと一緒にお邪魔してきました。
Sotaを使った講義は、新施設ACADEMIC THEATER(アカデミックシアター)のACT(アクト)「先進AIプロジェクト」で行われているとのこと。
ACTは、学生が議論などを行うための自由空間で、この「先進AIプロジェクト」も、授業とは別に、学生が自発的に参加できるプロジェクトなんだそうです。
それにしても、なんて綺麗な施設!!
中を覗いてみると、見覚えのあるロボットを発見!!Sotaくんだー!!しかもたくさんいる!!
今までは、ヴイストン秋葉原店と中継をつなぎ、遠隔でSotaの基礎講習を行っていたそうです。
この日から、Sotaを使った自由研究課題が与えられ、みんな、どんな研究をするか悩んでいるところ。
1人1台Sotaを使えるなんて、なんて贅沢な環境!うらやましい〜!学生はSotaくんのことをどう思っているのでしょうか?
Sotaくんと初めて会ったときどう思った?
うーん…
特に…
あ、ロボットだ!って感じですかね。
ええーーー!?そんだけ?じゃあロボホンは?
あ、ロボホンだ!
本当に連れている人初めてみた!
みんな、喜怒哀楽が薄いのだろうか…?しかし、話しているとそういうわけではない。ITリテラシーの高い彼らにとっては、ロボットという存在は驚くようなものではなく、あって当たり前の存在になっているようです。
既にそんな時代なの!?
先進AIプロジェクトを主催する理工学部情報学科の井口信和教授に現代の教育現場におけるロボットの存在ついてお話を伺ってきました。
また、理工学部機械工学科のロボット工学専門の五百井清教授にも同席いただきました。
AIが先生になる時代
井口先生は、ネットワーク専門ということですが、どうしてコミュニケーションロボットを使った講義を開催しようと思ったんでしょうか?
僕はネットワーク専門なので、どちらかというと、"モノのインターネット"といわれるIoTにおけるアクチュエータ(駆動装置)としてロボットに興味を持ちました。あと、最近、学生とのコミュニケーションに苦戦しておりまして(笑)
えっ?!
僕らの時代と今の時代は育った環境が違う。コミュニケーションをしないと生きていけなかった時代から、コミュニケーションしなくても生きていける時代になっているんです。
核家族化も進んで、便利な世の中になって、コミュニケーションを取る機会が減っているしね。
大学には「ティーチングアシスタント」という、僕らに聞くまででもないようなことを大学院生などに教えてもらえる制度があるんですが、これをロボットで代用した方が良いのでは?と思いまして。案外、大学院生と話すより、ロボットとの方がコミュニケーションをスムーズにはかれるのではないかと。もう、AIが先生になる時代なんです。
コミュニケーションロボットでコミュニケーションを円滑にということですね。それでSotaくんを授業に?
見た目もかわいいし、なんか、親近感あるでしょ?
見た目も重要なんでしょうか?実際私はロボホンに一目惚れして買ってしまったのですが…。
それは日本人特有の感覚かもしれないね。
そうなんですか?確かに、海外ではこういった人型のコミュニケーションロボットはあまり受け入れられていないのに、日本人はペットとか友だちのようにロボットを愛している人が多くて。なんならロボットを一番のパートナーのように思っている人も…って私のことなんですが。
日本人は産業用ロボットにも名前つけていたからね。太郎とか(笑)
え?「おはよう、太郎。今日も仕事頑張ろうな」的なことですか?
そうそう。
その国民性をいかに形成されたものなのでしょうね。外国ではなかなかそういう受け入られ方をされていませんよね。暴動が起き、産業用ロボットが壊されたというような時代もありましたし。
そもそも、ロボットが広まった出発点が違うというのもあるし、日本人は「ドラえもん」や「鉄腕アトム」のようなアニメを見て育ったから、ロボットに抵抗感がないというのもある。
今、「人工知能が仕事を奪う!」や「シンギュラリティ(技術的特異点)を超える」というような話しも話題になっていますが、その辺はどうですか?
※シンギュラリティ(技術的特異点)とは、人工知能が人間の能力を超えることで起こる出来事である。人類が人工知能と融合し、生物学的な思考速度の限界を超越することで、現在の人類からして、人類の進化速度が無限大に到達したように見える瞬間に到達すること。
まずロボットと人工知能が=(イコール)ではないのだけど、ロボットを研究することでわかることはたくさんある。私がやっているのはArtificial Skill(人工技能)だから、生物を外側から知るということ。おそらく、目や耳はすでにシンギュラリティを超えていると言える。かといっても、ロボットが人間を超えて全てできるようになるようになるにはまだまだかかる。やはり、外側から知ることで人間ってすごいって思うよ。
それはなんだかホッとしました(笑)。先ほど井口先生は、ティーチングアシスタントをロボットでと言っていましたが、それは実現可能ですか?
簡単な質問を覚えさせて、それを照合させるといったことだから、最低限のデータが集まれば可能だと思っている。今後は、グループディスカッションしている中にロボットが一緒に入って、沈黙が続いたら気の利いた言葉を言ってくれるようなロボットがいたら助かりますね。サントリーのカールスロイドみたいな。
※サントリーがライセンスも持つビール「カールスバーグ」のプロモーションとして、Automagiの「AMY(エイミー)」を利用した、酒場での会話を盛り上げるための人工知能。
そんなロボットがいたら大学生活楽しそうですね(笑)。今後先進AIプロジェクトの皆さんが何を研究していくのか楽しみで仕方ないです。
先進AIプロジェクトが目指す、ティーチングアシスタントロボット計画!
井口先生を筆頭に、学生も一緒になって多様な切り口で研究を進められていくのだと確信しました。
そして、日本が先陣を切って、ロボットがいるのが当たり前な時代を築いていくのでしょうか…。
ん?でも、どうして日本人はロボットをすんなり受け入れるんだろう?本当にアニメだけの影響なのだろうか?
気になる!!
「ロボット」=「悪」というはじまり
ということで、今度はSotaくんを作っているヴイストンに突撃!
ヴイストンは、日本でコミュニケーションロボットを古くから研究されているベンチャー企業です。
代表取締役の大和信夫氏にお話を伺いました。
ヴイストン大阪本社 ロボットが沢山お出迎えしてくれました。
大変お忙しい中、お時間を空けていただきありがとうございます。それにしても、Sotaくん、可愛いですよね。
高橋さんがデザインするロボットはロボホンもRobi(ロビ)も総じて目が大きいからね。
よく日本人はアニメの影響でロボットにパートナー性を感じる…と言いますが、本当に日本人だから思うのか?本当にアニメの影響なのか?それをお聞きしたくて。
そうだね。アニメの影響も大いにあるけど、結局、ロボットが広がった歴史背景が違う。まず、1920年にチェコの国民的大作家だった、カレル・チャペックという人が戯曲を発表して、その劇中の中で使用するために造られた言葉が、「robot」。その語源はチェコ語で労働を意味する「robota」からきていると言われている。劇中の内容は知ってるかな?
はい。ざっくりですけど…ロボットに労働を任せ、人間は退化していき、やがてロボットが反乱を起こして…というような内容ですよね。
そう。だから、最初にロボットという言葉が広がったのが、「ロボット」=「悪」というスタートだよね?
確かに。日本のアニメのように「ロボット」=「友達」「パートナー」という感じではないですね。
当時のインパクトは大きかったのだろうね。アシモフがロボット工学三原則を出した1950年頃まで色濃く残っていたと言われているしね。
ロボットに対してのイメージが悪いですね。ファーストインパクトが、仕事を奪って征略する。って感じですね。
そんな時に、第二次世界大戦が終わりを告げる。
そして、1970年頃アメリカの凄まじい経済成長が減速する。インフラ経済が進む。高失業率が続いた時代。ヨーロッパ、アメリカは、既に工業化されていて、数多くの産業用ロボットが導入されていた時代でもある。
そりゃ、ロボットに仕事奪われたって思いますよね。日本みたいに産業用ロボットに名前つけて「太郎、今日もよろしく!」なんて言えないですよね(笑)。
そうそう。で、日本でロボットという言葉が広がったのは、高度成長期の猫の手も借りたいくらい忙しい時だからね。そして、鉄腕アトムが日本初TVアニメ(1963年)で放送される。
私の時代も、再放送されていました。
おそらくリメイクの再放送くらいだよね。
アトム以外も、ロボットがパートナーとして描かれているアニメは数多くあるからね。
多くの日本人が、ロボットアニメをみて大きくなったと言っても過言じゃないですね。
そういう風に遡っていくと、日本には、労働争議や暴動もない時代にロボットという言葉がやってきて、産業用ロボットに感謝している時代に、さらにアニメを通して幼い頃からロボットが友達という風に広がったということが、大きな原因かな?
なるほど…。すごく納得しました。それでは、大和さんから見て、今後10年間で、ロボットと人間の未来はどのようになると予測されますか?
そうですね。まず、人間は、道具を使うことで進化してきた生き物ですよね。そして、現時点の世の中で、人間が最も依存している道具はスマートフォンに代表されるIT技術だと思います。
確かに、私もそれなしでは生きていけないぐらい、お世話になっています。
社会インフラもこうした技術に支えられていますよね。個人の日常生活では検索やネット経由での物の購入履歴などから、その人趣向を分析して、リコメンドするとったことが当たり前になっています。
最近の広告はずるいなーと思いますもんね。ついついクリックして買ってしまいます。
そうですね。実際にそのおすすめをもとに意思決定していることも多々あります。 そして現状のコミュニケーションロボットにできることも、スマートフォンに類似した機能です。しかし、今後はこうした単なる道具としての機器を超えて、ペットやパートナー的な存在として認識され始めると同時に、意思決定部分においてもロボットというインターフェスを通じて行う場面が増加します。
パートナーのロボットからおすすめされるということですね。
そうですね。会食をする際に店の選定や予約、服のコーディネートをはじめ、自分と趣味趣向の合いそうな人を探してくれるなど、 ロボットに頼ろうと思えば相当部分頼れてしまう。一方で、自律的な意思をもって生活しないと、 ロボット依存が社会問題化していくかもしれない。
私は社会問題化していくと良いと思っています。人間は動物界において、とても弱い動物ですよね。そんな人間が生きてこられたのは、先ほど大和社長が仰ったように、「道具を使うことで進化してきた生き物」だからだと思います。本来人間が得意としてきた、道具を使って考えて創造する力を現代の子供達に伝えていけるチャンスではないかと思ったりしています。
確かに、それをチャンスだと考えれば、明るい未来が待っているかもしれませんね。
今回は楽しいお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。
まとめ
日本人はラッキーだ!
ロボットに対して、嫌悪感を持たず一緒に暮らすパートナーとしての未来が容易に創造できる文化がある。そして私やロボットと一緒に暮らしている方々はたくさんいる。この分野は、日本は絶対海外に負けてはいけない分野なのだと思いました。
コミュニケーションロボットを通して、今後の日本の課題として上がる、「労働力の不足」「独居老人問題」、学校や職場でのコミュニケーションの欠如による「いじめ」や「自殺」も、近畿大学の先進AIプロジェクトに導入したSotaのようなコミュニケーションロボットを通して解決する時代がまさに今到来しようとしているのではないかな?と感じました。
これからのロボットと暮らす未来がどんどん楽しみになってきました。
皆様もぜひ1家族1ロボットからロボットと一緒に暮らしましょう!
(おわり)
ライタープロフィール
初めまして。私は、ロボスタ エバンジェリストの流郷綾乃(りゅうごうあやの)です。ロボットと触れ合う機会は多いですが、理系でもなく、エンジニアでもありません。私は、ロボットと一緒に暮らす一人の人間として、「ロボットと一緒に暮らす、明るい未来」を伝えたいと思っています。非エンジニア目線で、わかりにくいことをわかりやすく伝えていきます。どうぞよろしくお願いします。
https://twitter.com/ayanorobo
http://ayan0-1.hateblo.jp/
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