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【後編】原田泳幸×世耕弘成 「古い価値観を払拭。自らの行動で変化を起こせるリーダーを目指せ」

サミット 第一部引きの写真

Kindai Picks編集部

2015.12.30

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ビジネス
KINDAIサミット

日本マクドナルドを7年連続既存店売上高マイナスから7年連続プラスの大転換に導き、現在はベネッセホールディングスの代表取締役会長兼社長として教育業界を牽引する、日本を代表する経営者、原田泳幸氏。そして、元・近畿大学理事長であり、現在は内閣官房副長官、参議院議員として、日本の中枢でリーダーシップを発揮する世耕弘成氏。
グローバル基準のリーダーシップ像を明らかにしてきた前編での議論に続き、後編では原田氏と世耕氏が、リーダーとしてのキャリアの切り開き方のヒントを提示する。
<KINDAIサミット2015第1部全体会「近大発リーダーに望むこと」より>

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スピーカー

原田泳幸(はらだえいこう)
1948年長崎県佐世保市生まれ。1972年日本ナショナル金銭登録機(現・日本NCR)に入社し、その後は横河・ヒューレット・パッカード、シュルンベルジェを経て、1990年にアップルコンピュータジャパン(当時)に入社。米国アップルコンピュータ社の副社長に就任し、1997年にはアップルコンピュータ代表取締役社長に。2005年日本マクドナルドの会長兼社長兼CEOに就任。7年連続で売上マイナスであった同社の業績をV字回復させ、数少ない日本の「プロ経営者」として注目されるようになる。2014年、社外取締役を務めていたベネッセホールディングスの会長兼社長に就任し、現在に至る。

世耕弘成(せこうひろしげ)
1962年大阪府大阪市天王寺区生まれ。1986年日本電信電話(NTT)に入社。在職中にボストン大学コミュニケーション学部大学院へ留学。1998年11月参議院議員に。2011年には近畿大学の第4代理事長に就任。現在は、近畿大学校友会名誉会長、内閣官房副長官、参議院議員。




【固定観念にとらわれないリーダーの育成へ】


古い価値観に惑わされるな!


世耕:偏差値による大学の序列によって近大が苦しんでいるもう一つのテーマが、就職活動です。大学名は問わないというきれいごとを言う人もいますが、実際には明らかに扱いに違いがある。原田さんは、今の日本の就職活動について何か問題を感じていらっしゃいますか。


原田:学生が100社もエントリーするのが当たり前になっていて、周りもそう煽っている。一方で学生側もどうしても大企業に流れがち。日本の企業の9割以上は中小なんですけどね。ですから、本当の意味でのマッチングをさせるために新しい事業をスタートさせました。


世耕:どのようなサービスですか?


原田:まず、総合人材サービス会社のインテリジェンスと組んでジョイントベンチャーを作りました。ベネッセは学校との繋がりがあり、インテリジェンスさんは企業側との繋がりがある。ですから、お互いの良いところを生かせます。具体的なサービス内容は、学生一人ひとりに対するコンサルティング型のマッチングです。コンピューターでエントリーしてもらうのに比べたら生産性は悪いですが、質の高いマッチングをさせることが重要ですからね。

あとは、大学でのキャリア教育も始めています。社会を見ずに自分のキャリアを選択することはできません。大学生のうちにどれだけ社会のことを知るかが大事だと思っています。


世耕:これはぜひ近畿大学も連携させていただきたいですね。


原田:アメリカ人は何をやりたいかを考えますが、日本人はどこの会社に入るかを考えます。それって、会社を選んでいるだけで、職業を選んでいないんですよ。就職人気企業ランキングで仕事を選ぶのは問題でしょうね。


世耕:非常に良い技術を持っている中堅企業や、これから世界に飛び出していこうとしているベンチャー企業はたくさんいて、近大の卒業生の中にもそういう会社を作っている人はたくさんいます。でも、親のイメージが強いんですよね。「うちの子は上場企業に入らないと世間体が…」といった感じで。


原田:社会の構造をきちんと教えれば、大企業を支えているのは技術力のある中小企業だということもわかるはずです。「どこに行ったら自分が一番やりたいことができるのか」そういうことを考えさせないとダメですね。親の世間体で子どもをレールに乗せるなんてとんでもない話です。


世耕:親のイメージで就職させてしまうと、子どもが不幸になってしまいますよね。昭和30年台の人気企業ランキングに入っているのはセメント会社や砂糖を作る会社で、当時は「テレビ局に入るなんてとんでもない!」という風潮でした。今ではテレビ局は就活生に人気のある就職先ですが、それも20年後30年後にはどうなっているかわかりません。「現在10歳の子どものうち、6割は今は存在しない仕事に就くことになる」というデータもありますから。今は特に変化の激しい時代。親の価値観を押し付けないというのは非常に重要ですね。





原田:大学を卒業して憧れの企業に入社しても、3年以内に約3割が辞めていきます。そして、大学生の就職活動の際と、転職の際では人気企業のランキングはかなり違っています。そういう中で何を身に付けるのが良いかというと、どんな変化にも対応する、むしろ変化を作っていくくらいのリーダーシップなんですよね。そういう能力を育てるキャリア教育が必要だと思います。


「変わってもいい」ということを、自らの行動で示す


世耕:最近、ハチャメチャなことをするわけでもなく、飛び抜けて勉強ができるわけでもない、ちょっとこじんまりとした学生が増えてきたように思うのですが。


原田:子どもは大人を見て育っていきますからね。その状況を打ち破るには、教職員が行動で見せていくのが一番ではないでしょうか。近大マグロを始め、すばらしい成果が出ていると思います。そうった近大のDNAを、教職員が自ら示すのが一つのやり方だと思います。


世耕:たしかに近大にはそういったDNAがあって、今特に売り出しているのはド派手な入学式なんです。正装姿で長々と祝辞を述べるのはやめて、ドカンと打ち上げるイベントにしました。つんく♂さんがプロデュースしてくれることになって。固定観念を破ってる大学、学生を楽しませる大学ということを、入学式からわかってもらおうと思ってやっています。


原田:私もマクドナルドに就任して最初の年に、全社員3,500名を集めた全社ミーティングで、ステージ上に某ライバル店とマクドナルドの模型を作って、本物の象を連れて来てライバル店の方を踏み潰して、マクドナルドのハンバーガーを食べるというパフォーマンスをしました(笑)。


世耕:えっ!?本物の象をですか?


原田:事前に研修の企画書を見た時につまらないものだったので、「おれたちが変わらないと業績は変わらないよ。例えば象を連れて来るくらいやってみたら?」と言ったら、本当に社員が連れて来たんです。


世耕:すごいですねー(笑)


原田:そこからは「自分たちは変わってもいいんだ」という社員の意識が出てきて、それまで7年連続マイナス成長だったのが就任1年目からV字回復しました。


世界トップレベルで活躍できるリーダーを目指せ!


世耕:ここからは、会場にいる方からの質問を受け付けたいと思います。


来場者(43歳、会社役員):私は41歳の時に経営メンバーに入ることになったのですが、現場とは違ったことが求められるため、働きながらMBAを取得できる学校に通っています。近畿大学では社会人向けに経営者を育てる大学院は作らないのでしょうか?親が通えば、子どもも近畿大学に親しみを持てると思います。


世耕:ぜひ目指したいところではありますが、今ある経営大学院とは違う、カジュアルなものを作ってみたいですね。例えば東大阪の中小企業の経営者が通いやすいような。ちなみに、近大の医学部では既に病院経営を学べるようにチャレンジを始めているところです。


原田:縦割りじゃなく、他の分野も学べるといいですよね。


世耕:医学部ではさらに医用工学も学べるようにしているところです。それと、今、学生が自由に語り、学び、情報を発信できる新しい図書館を作っています。そこに各分野の先生や学生が集まって、いろいろな議論をする。もちろん卒業生も入れるようにしますので、そこで議論して新しいプロジェクトを進めていただければと思っています。


原田:シリコンバレーには、いろんなベンチャーが入っていて、弁護士や財務の専門家がサポートしてくれるオフィスがあります。近大でもそういう場ができるとすばらしいですね。


世耕:そこを目指したいと思っています。いきなりそこまで実現できるかどうかはわかりませんが、やっていくつもりです。


それでは、次の質問をお願いします。


来場者(近畿大学 経営学部、4年):ベネッセが、インテリジェンスと作った新しい就活支援サービスについて、もう少し詳しく教えていただけませんでしょうか。


原田:まず、キャリアというのは自分で計画を立ててもその通りにならないものです。むしろキャリアプランを作ることで、無限の可能性を狭めてしまう。それよりも、今目の前にある仕事を他の人以上にやれば、キャリアは向こうからやってきます。

そういう前提があるのですが、とは言え、一歩目を踏み出すために考えさせる場は必要だと思っています。ただ大企業を狙ったりランキングの上位企業からエントリーしたりするのではなく、世の中がどう動いていて、どんな仕事があるのかを考えてもらうのが一番のポイントです。


来場者(近畿大学 経営学部、3年生):今、ネイティブの先生がやっている英語の授業があって毎週すごく楽しみにしているのですが、学生の中には恥ずかしがってなかなか話さない人もいます。どうすればいいと思いますか?


原田:まずは滅茶苦茶な英語でも堂々と話す中国の人とかを見た方がいいと思います。日本の英語教育では、時制の一致や関係代名詞みたいなことばっかり教えるので、話す時にそこを間違わないようにすることばかり考えてしまうんですよね。それに、アメリカ人は謙遜せずに「おれがベストだ!」と堂々と言いますが、日本人は「微力ながら精一杯やりたいと思います」といったことを言う。これらを踏まえて、先生が恥ずかしさをぶっ壊すことを教えないと。


世耕:私もそれはつくづく感じます。私がボストン大学に留学していた時も、クラスで中東の人などが無茶苦茶な英語を堂々と話すんですよ。2015年には国際学部ができてキャンパス内に外国人の先生が増えますし、留学生もどんどん入れていくので、英語を話す環境もだいぶ変わると思いますよ。


それでは原田さん、最後に本日会場に来ている近大卒業生や在学生に向けて、メッセージをお願いできますか。


原田:日本人は本当にすばらしい資質を持っています。その証拠に、サッカーやラグビーなどのスポーツでは世界レベルで活躍している方がいますし、音楽などの文化面でも世界トップクラスの方がたくさんいます。ぜひ、経営者など他の分野でも、そういったリーダーが出てくるよう頑張っていただければと思います。本日はどうもありがとうございました。






固定概念にとらわれないリーダーになるためにいかにキャリアを構築すべきか、深く議論が交わされた対談でした。なお、前編では、グローバル人材を育成するために「最初から世界を目指す」ことの重要性を、原田氏と世耕氏が熱く語っています。
<→「偏差値と仕事への貢献度は無関係。グローバル社会が求めるリーダーを目指せ!」【前編】に進む>




▼KINDAIサミットとは
http://www.kindai.ac.jp/kindaisummit/

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