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よしもと×近大 大阪発、「笑い」で世界を救う

近大サミット第一部全体会

Kindai Picks編集部

2018.05.21

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オリジナル記事
ビジネス
KINDAIサミット
地域連携
産学連携

お笑いの代名詞でもある吉本興業が、大学業界の価値観をぶっ壊してきた近畿大学とタッグを組んだ。お笑いをどう活用し、そのことで大阪をどう世界に発信していくのか。吉本の大﨑社長と近畿大学の学長・総務部長が、ホンネで語り合う。

<KINDAIサミット2017 第1部全体会「Crazy makes the KINDAI!~近大×よしもとの独創的未来像とは?~」より>

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スピーカー
大﨑洋
吉本興業株式会社 代表取締役社長
1978年、吉本興業株式会社に入社。数々のタレントのマネージャーを担当し、1986年にはプロデューサーとして「心斎橋筋2丁目劇場」を立ち上げた。その後も数々の新規事業を立ち上げ、2009年に代表取締役社⻑に就任。


塩﨑均
近畿大学 学長
1970年、大阪大学医学部卒業。1978年からハイデルベルグ大学に留学し、病理学を学ぶ。帰国後、大阪大学、近畿大学の勤務を経て、2012年より近畿大学学⻑に。食道がん患者の声帯にダメージを与えない新しい手術方法の開発で、世界的な評価を得る。



モデレーター
世耕石弘
学校法人近畿大学 総務部長
1992年、近畿日本鉄道に入社。 ホテル事業、海外派遣、広報担当を経て2007年に近畿大学に奉職。2013年より広報部部⻑代理、2017年より総務部⻑。水上競技部⻑も兼任。


*肩書きはセッション開催当時のものです

<KINDAIサミット2017 第1部全体会『Crazy makes the KINDAI!~近大×よしもとの独創的未来像とは?~』より>



笑いが健康にいいことを、医学的に証明する


世耕:吉本興業さんは「笑い」を中心としたエンターテイメント、我々は実学教育や人格形成と、一見逆に思えるテーマに取り組んでいます。でも実は、一緒に何かできないかなとずっと考えていたんです。それが今回実現しました。そのひとつが「笑いと健康」の研究です。


大﨑:これは人から聞いた話なんですけど、炭鉱で働いている10人の中に1人だけあまり穴を掘ってない労働者がいて、クビにしたらしいんですよ。そうしたら、他の9人の仕事効率がすごく下がった。放り出された人は、一生懸命働いてる9人の汗を拭いたり水を飲ましたりしつつ、横でギャグを言って笑わせたり励ましたりしてたそうなんです。吉本興業も、そういうピエロのような存在になれたらいいなと思っていまして。


世耕:近畿大学は関西の私立総合大学として唯一医学部を持っていますので、何となく世間で言われている「笑いは健康にいい」ということを、ぜひ医学的な実証を積みながら研究していきたい。吉本興業さんが持っている最強のコンテンツ「お笑い」が、本当に世界を救うんだということを証明していきます。





大﨑:昔から「病は気から」と言われていますけど、近畿大学さんと一緒にそれを科学的に実証していけたらいいですね。以前は勉強ができない子どもが「吉本に行って芸人になりな!」と言われてたことがあるんですけど、今後はもしかしたら病気の人に「体調悪いなら吉本の劇場に行って笑ってきな!」と言うようになるかもしれない。保険診療で吉本の劇場に行けるようになるといいですね。


塩﨑:私は医学部の卒業式や入学式で挨拶をすることが多いのですが、その時も笑うことの大切さについて話しています。特に末期の癌患者さんにとっては、笑いは力を与えてくれるもの。それをなんとか科学的に証明できないかという思いがずっとあったので、今回の取り組みはとても嬉しいことです。


世耕:塩﨑先生は消化器内科の外科医であり、ご自身も食道癌のステージ4になって手術を受けられました。一度は死も覚悟されたのだとか。


塩﨑:私は医者ですから、自分の状態はよくわかっているつもりで、家族にも「自分は助からない」という話をしました。でも妻から「絶対にあなたは死なない」と言われて、車を新しく買い換えたり、庭に花をきれいに植えたりして、「死なない」という暗示をかけられたんです。そして、とにかく明るく振る舞ってくれた。だから私も、まだ誰も成功していない新しい治療法だったのですが「チャレンジしてみよう」という気持ちになれました。


大﨑:私の妻も癌で、放射線治療や外科手術を繰り返していました。でも、私の顔を見た時はいつもニコニコして「はよ仕事行き!」と言ってくれて、みんなで明るく過ごしていました。先ほどの塩﨑学長の話を聞いて、改めてどんな時も明るくニコニコできたらないいなと強く思いました。 


世耕:吉本興業さんと近畿大学の共同研究では、まず笑いが鬱をはじめとする精神疾患にどれほど力を発揮するかを検証していきますので、みなさん研究結果が出るのをご期待ください。



お笑いは、グローバル人材の必須要件


世耕:続いては、お笑いとコミュニケーションの関係について。以前、山﨑邦正さんに「すべらない話」の作り方を講演いただきました。学生はコミュニケーションによほど強い関心があるのか、受講生の応募が殺到して急遽会場を変更したほどです。


塩﨑:今、吉本興業の芸人さんは何人くらいいらっしゃいますか?


大﨑:約6,000人ですね。半分くらいは犯罪予備軍ですけど(笑)


世耕:私は、お笑いを目指す人たちにすごく興味があります。お笑いをやっている裏で泣いていることもいっぱいあると思いますし。一人の人間としての「芸人さん」に興味がある。あとはやっぱりコミュニケーションという側面。グローバル化という言葉が叫ばれていますが、一番の問題はコミュニケーションが取れない学生がいることです。ですので、吉本の芸人さんにコミュニケーションを教えていただくことは、学生にとってかなり価値があることだと思っています。


塩﨑:以前の大阪の風土は変わってきているように思います。例えば、東京で子どもにギャグを言っても無視されますが、大阪の子どもにギャグを言うとギャグを返してくる。良い悪いではなく、以前はそういう風土でした。それがなくなりつつある。でも、ギャグや冗談を言えるのは、グローバルに通用できる人間の大事な要素のひとつだと思うのです。


大﨑:仕事をしていて結局大事だなと思うのは、嘘をつかないとか、人間力や総合力というものです。私は勉強ができなかったし嫌いだったので、特にそう思うのかもしれませんが。もちろん、東大に行ったり、ハーバードビジネススクールを出たりするのも凄いことですが、最後は人ですよ。 






世耕:「企業が採用選考時に重視すること」というデータを見ても、トップ3はコミュニケーション能力、主体性、そしてチャレンジ精神となっています。大学で教えている専門性や教養、語学力ではない。特に近畿大学は「人に愛され、信頼され、尊敬される」といった人格形成にも力を入れていますので、お笑いを通じてこれを養えるようにしたいですね。


大﨑:私たちは大阪のごちゃごちゃでしたところで育っていますからね。大阪だと街中でおばちゃんから「給料なんぼ貰てんねん」とか「あんた吉本の偉いさんやろ?花月の入場券ちょうだいやー」と言われたりする(笑)


世耕:日本はバブルが崩壊して、リーマンショックあり、何回もしんどい目に遭ってきたので、「知識だけではなくコミュニケーション能力やチャレンジ精神が必要不可欠なんだ」ということが経営者の心に刻まれたのだと思います。ちなみに、近畿大学は学生を募集する時に京都エリアや神戸エリアとの戦いがあります。京都の大学は寺の前で学生が本を持っている写真をパンフレットに載せる。神戸は山も海も建物もオシャレでセンスがいいみたいな写真。じゃあ大阪はどうしようと。なかなか答えが見つからなかったのですが、大阪城でも通天閣でもなく「やっぱお笑いや!」ということで、パンフレットに吉本のお笑いのことを入れたら、さらに人が集まるようになりました。



大阪をお笑いブロードウェイに


世耕:最近MasterCardが発表した『2017年度世界渡航先ランキング』によりますと、渡航者数の成長率を比較する「急成長渡航先ランキング」では大阪が1位になっています。先ほどの学生向けPRと同じで、京都と神戸と比べて大阪は外国人にPRするのが難しいと思っていたのですが、今では道頓堀に行くと外国人だらけです。大阪も、東京や京都に負けないくらい世界に発信していけるエリアになってきたんじゃないかなと思っています。


大﨑:吉本興業は、台湾やタイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシアに芸人を行かせています。行く時は現地の言葉を全くしゃべれなくても、道端で子どもたち相手に昔の紙芝居みたいなことやコントみたいなのことをすると、最初は3人くらいしかいなかった子どもたちが、次の日は5人、その次は10人と増えていくんです。今では言葉もそれなりに覚えて、テレビのレギュラーやラジオの仕事もしているほど。地元の政治家にも可愛がってもらっているようで。これって大阪のパワーですよね。よくわからない新しい環境でも、とりあえず行ってやってみる。


塩﨑:先日星野リゾートの社長とお会いしたのですが、新今宮の駅前に新しくきれいなホテルを作るそうです。地元の人からしたらびっくりしますよね。「あそこにホテル建てるのか!?」って。でも、外国人からすると梅田のビルってあんまり興味なくて、それよりももっとディープな大阪らしいところに行ってみたいのだとか。我々が持っている大阪のイメージで考えるのではなく、外から見た大阪らしい独自のものを見つけていくことの大切さを感じました。


世耕:そんな中でも、難波などがあるミナミは「近大の夜のキャンパス」とも言われていて、私たちはちょっと縄張り意識を持っているんです。ただ、ミナミにある吉本さんの本拠地『なんばグランド花月』は一旦閉められて、今は梅田があるキタの方に劇場を作られていますよね。


大﨑:『なんばグランド花月』は老朽化が激しいので、耐震補強などの工事をしているところですが、2017年の12月には再開しています。一方で梅田があるキタも使っていこうと思っているところです。でも、多くの人から「いや吉本はミナミやからキタは合わんやろ」って言われるんです。これはカチンとくる(笑)


世耕:あ、私もそう思っていたところです(笑)


大﨑:昔は道頓堀に「五座」と言って5つの劇場があったんですけど、今後「大阪ミナミ五座」を作るのが我々の夢の一つなんです。その周辺に飲食店なども増えていったらいいなと。


世耕:ミナミがブロードウェイのようになって、いいですね。


大﨑:ブロードウェイって綺麗なところではなく、もっとごちゃごちゃしたところ、例えば劇場の横に酔っ払いが寝てるようなところで作られていくものなんです。それってやっぱりミナミだと思うんですよね。


世耕:大阪は2025年の万博招致もしていますが、そちらも吉本さんが関わっているのだとか?


大﨑:大阪には美味しい食べ物がいっぱいあることを歌にした吉本の芸人がいまして、それを松井知事も巻き込んで一緒に歌ってもらって、YouTubeにアップしようとしているところです。


世耕:万博テーマとしては「いのち輝く未来社会のデザイン」というのを掲げていて、最初の話にあった医療や健康とも関係してきますね。


塩﨑:そうなんです。近畿大学としては全学を上げてバックアップしていきます。その時に、吉本さんとの「笑い」の共同研究も活かせればいいなと思っています。


世耕:学校としては外国人留学生をもっと集めたいという気持ちもありますので、そのためにも大阪万博への協力は惜しみません。みなさんも一緒に、大阪を世界へ発信していってもらえればなと思います。

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