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雑学・コラム

2026.07.09

食料品の消費税が1%になる!?手放しで喜べない?私たちの暮らしはどう変わるのか

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
消費税

食料品の消費税を1%に減税する案が、政府・与党を中心として議論されています。現在の案が実現すれば、2027年4月から2年間の期限付きで実施される予定です。物価高が続くいま、家計にとってはありがたく感じるものの、私たちの暮らしはどれくらい楽になるのでしょうか?減税が終了した後は、どうなるの?国の財源は大丈夫なの?さまざまな疑問について、近畿大学 短期大学部 商経科 教授 鈴木善充が解説します。

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鈴木 善充(すずき よしみつ)の写真
鈴木 善充(すずき よしみつ)
近畿大学短期大学部 商経科 教授
専門:財政学、公共経済学
日本が直面している少子高齢化経済における公共政策について研究しています。特に、税制と社会保障制度についてです。近年は医療経済についても研究をすすめています。
教員情報詳細

「食料品消費税1%」ってどういうこと?「実質ゼロ」ってほんと?

鈴木善充

——食料品の消費税が1%に減税されるというニュースが出ていて、気になっています!いつからどんな風にはじまるんですか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
現在議論されている案が、社会保障国民会議が提示した「中間とりまとめ案」に明記されています。とりまとめ案によると、物価高における生活者支援として2027年4月から2年間、食料品の消費税が1%に引き下げられる予定です。ただし、外食や酒類のほか、軽減税率8%に含まれている新聞の定期購読は対象になりません。


——衆議院議員選挙の公約で政権与党の自民党は、「食料品の消費税をゼロにする」と言っていましたが、なぜゼロではなく1%なのですか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
消費税をゼロに設定するためのレジシステムの改修に時間がかかるためです。「消費税ゼロ」はシステム上入力できず、「0%」へ対応するためのレジ改修は1年ほどかかります。「1%」であれば半年ほどの時間でできることから、より早く実現できる案として政府・与党が打ち出しました。ただし、残りの1%分を現金給付でまかなうことで、「実質ゼロ」にするとしています。


——「実質ゼロ」!現金給付とはどういったものですか?誰でももらえるのでしょうか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
今回は、中低所得者、つまり収入が少ない働き手への支援策ですので、国民全員が対象ではありません。また、コロナ禍の「10万円給付」のように、一律の金額でもありません。収入に応じて給付額が決まり、高所得者は給付の対象外となる場合もあります。また、子どもの人数に応じて、給付の上乗せも行われる見込みです。


——なぜ2年間の期限付きなのでしょうか?その間に食料品がまた安くなるとは思えないのですが……

鈴木善充
短期大学部・鈴木
1%の減税措置が終了した後の2029年度から、所得に応じた現金給付を本格導入し毎年継続するとしています。働き手が支払う所得税を減らした上で、さらに現金給付と組み合わせる「給付付き税額控除」も検討されています。これが支援策の「本丸」で、食料品消費税1%と先行導入される1%分の現金給付は、それまでの「つなぎ」なんです。

食料品消費税

——どれくらいの収入の人に、いくらの現金給付があるのでしょう?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
制度設計はこれからで、細かいことはまだ決まっていません。今回の現金給付は収入に応じて増えたり減ったりします。サラリーマンの給与所得は比較的把握しやすいのですが、それ以外の収入を正確に把握するのは大変むずかしい作業です。制度がスタートするまでにどうするのか、国は答えを出さなくてはいけません。


減税で、家計はどれくらい助かる?

家計

——食料品の値上げラッシュが家計を圧迫している実感があります。食料品消費税が1%になると、暮らしはどれくらい楽になるのでしょうか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
総務省の家計調査をもとに試算すると、単身世帯で年間約3万4,000円の負担が減ることになります。月々にすると、2,800円ほどですね。 総世帯で平均すると、1世帯あたり月々で約3,700円、年間で約4万4,000円の負担減となります。


——あれ、思ったほど多くないんですね……

家計への恩恵

鈴木善充
短期大学部・鈴木
そう感じるかもしれませんね。EUでは、食料品以外の品目の税率が15%〜20%台と高く、逆に食料品は0%〜数%に抑えられていて、その差が大きいです。日本は、消費税10%と軽減税率8%で差が小さく、全体としてEU諸国より低く設定されているため、それほど大きな負担とは言えないのかもしれません。


——でも、家族が多いと恩恵も増えますから、減税効果は少なくはなさそうです。


家計は助かるが、国の収入は減る!社会保障に影響は?

鈴木善充

——家計の負担が減るのはうれしいですが、気になるのは財源です。食料品の消費税が7%分なくなると、国の税収はどれくらい減るのでしょうか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
7%分の減税で、年間約4.4兆円の税収が減る見込みです。「実質ゼロ」の8%分とすると5兆円程度です。5兆円というと、国民全員の医療費の自己負担をゼロにできるくらいの金額ですね。


——それは、相当な金額ですね。税収が減る分の財源は、何をあてるのですか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
政府・与党が示している案では、財源の詳細は年末の予算編成の際に決めるとして明確化されていないんです。赤字国債(国の借金)は発行せずに、補助金などを削減した上、税外収入(※)で予算を捻出するとしています。

※税外収入・・国や自治体などの歳入のうち、「租税(税金)」と「公債金(借金や国債など)」を除いたすべての収入。国の場合、主なものは国有地の売却益、日銀や日本中央競馬会(JRA)の納付金、印紙収入やパスポートの手数料など

——これほどの大きな予算が必要な政策で、なぜ財源が明らかにされていないのでしょうか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
物価高の影響もあって、ここ数年、国の税収は毎年増加しています。円安の影響で大企業の業績も好調で、法人税収も増えています。内閣府の試算では、名目経済成長率が1%程度の現状維持のままでも、来年度の税収は10兆円〜13兆円ほど増える見込みです。これが、財源を明確化しなくてもなんとかなるだろうと政権が考える理由かもしれません。ただ、経済状況は何が起きるかわからないので、財源として明確に打ち出せないのでしょう。


——財源が確保できるのか、心配です。そもそも消費税の税収は、何に使われているのでしょうか。

鈴木善充
短期大学部・鈴木
消費税は、社会保障と地方自治体への地方交付税交付金の財源とされています。ですから、それらを使った行政サービスに影響が出る可能性はあるでしょう。


——具体的には、どんな行政サービスでしょう?年金が減ってしまったりするのでしょうか。

鈴木善充
短期大学部・鈴木
おそらく、社会保障にはあまり影響は出ないと思います。年金を下げたり、医療保険の自己負担を増やしたりといったことは急にはできませんから。影響が出るとすれば、地方自治体の行政サービスでしょうね。東京のような税収に恵まれた都市部では影響は出ませんが、もともと税収が少ない自治体では、地域の福祉や保育、ごみ処理などの身近なサービスが低下するおそれがあります。
総務省は、食料品消費税1%導入によって、地方の税収が年間1.6兆円減るとしています。ただ、先ほど述べたように、その分も国が他の収入で補填できるのであれば、問題はないでしょう。

減税でどう行動する?家計の防衛策は

買い物

——現行案の通り、2027年4月から食料品消費税1%が実施されたとして、私たちはどう行動すればよいのでしょう?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
例えば、いま大学2、3年生の方などは、減税措置が終わる2029年4月には社会人になっていて収入や生活環境が大きくかわります。できることとしては、8%に戻る2年後に備えておくことです。


——一旦、減税されますが、2年後に元に戻るんですもんね!7%増税になると考えると怖い気もします。どう備えればよいのでしょうか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
2年間の減税期間のうちに、その恩恵を存分に受ける生活に慣れておく。消費税が10%かかる外食ではなく、1%が適用される中食や自炊で乗り切り、浮いた分を貯めておく。できるのはそれぐらいじゃないでしょうかね。


——浮いた分を貯めておく、という人は多そうです。それによって、景気が悪くなることはないですか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
基本的には減税されるわけですから、浮いた分を消費に回すことも考えられます。マクロ経済の視点で見ると、わずかではありますが景気は良い方向へ向かうのではないでしょうか。マイナス成長になることはないと見ています。


——専門家として、鈴木教授は他にどんなことが起きると予想していますか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
個々の行動としては、まだ予想できません。日本では1989年の消費税導入以来、税率が引き下げられるのは初めてです。さらに、その後、元の税率へ戻す措置も前例がありません。これまでにないことですから、経済学者としては個人がどう行動するのか、大変興味深いです。おそらく、世代によって違いも出てくるでしょう。


——鈴木教授は、今回の支援策の案をどのように評価されているのでしょう?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
経済学の対象として興味深いのはたしかですが、根本的にこんなややこしいことはやらなくてよいのでは、と思っています。食料品消費税8%にあたる分を最初から全て現金給付にすれば、シンプルですからね。
新聞社によるアンケートでも、多くの経済学者が今回の案に反対しています。ただ、各メディアの世論調査ではおおむね半数以上の国民が歓迎しています。正論だけでは進まないのが、政治ですね。


食料品消費税1%は本当に実施されるの?今後のスケジュールは

——いま議論されている途中で、まだ決定したわけではないのですね?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
財源への懸念や、「消費税ゼロ」ではないことから野党は反発しています。減税で影響を受ける外食産業や農業団体も懸念を示しています。ただ、今回の支援策は、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」の一環で、食料品消費税ゼロは高市首相が「悲願」として選挙で掲げましたから、実施の方向へ進むでしょう。


——今後、どんなスケジュールで進んでいくのでしょうか?

鈴木善充
短期大学部・鈴木
秋の臨時国会(10月〜12月頃)で議論して決めるでしょう。翌年度以降の税金のルールをまとめる「税制改正大綱」が毎年12月に公表されますから、2027年4月から減税を実施するためには、これに間に合わせないといけません。レジのシステム改修にも半年ほどかかるとのことですから、税制改正が本決まりする前に方針を示して、先行して進めないと間に合わないでしょうね。

食品消費税1%スケジュール

——いま議論していてもギリギリなのですね。本当に実施されるのか、これからも関心を持って見ておこうと思います。

鈴木善充
短期大学部・鈴木
実施の中身やスケジュールは、まだ変わる可能性もあります。日本の税制の歴史的な転換点となるかもしれませんから、注目しておきたいですね。


取材・執筆 Kindai Picks編集部
編集 アール・プランニング

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