2025.10.07
トルクメニスタンってどんな国? 犬や馬の祝日がある!? 入国困難な神秘の国を留学生と徹底解剖
- Kindai Picks編集部
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世界で“最強クラスのパスポート”を持つと言われる日本人でも、ビザ取得の難易度が高い国「トルクメニスタン」。大阪・関西万博を通してSNSで話題に。いったいトルクメニスタンってどんな国? そんな疑問にトルクメニスタンからの留学生・アヤさんが答えてくれました。
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中央アジアの南西部に位置するトルクメニスタン。国の85%をカラクム砂漠が占め、メルブ遺跡などシルクロードの歴史が残る永世中立国です。
1991年に旧ソ連から独立した比較的歴史の短い国で、人口は660万人ほど。普段、外国人の入国が厳しく制限されている本国が大阪・関西万博に参加したところ、大統領の存在感や馬と犬を愛でる国の様子が、SNSで話題になりました。
実際の国の様子は、どのような感じなのか? 留学生のアヤさんに、知られざるトルクメニスタンの暮らしについて聞いてみました。

エルゲショヴァ アイラル
通称・アヤさん
トルクメニスタン出身
2022年6月に来日。2025年4月 近畿大学3年次編入
近畿大学 経営学部 商学科 3年生
近畿大学で初めてのトルクメニスタン人留学生
ハチ公がきっかけ!? アニメ好きな姉の後を追いかけて、日本へ留学
ーーまずは、日本へ留学しようと思ったきっかけを教えてください。最初のきっかけは、日本のアニメが大好きな姉が、両親に内緒で奨学金を獲得する試験を受けて、日本への留学を決めたこと。両親はびっくりしたものの、最終的には快く送り出していましたが(笑)
その後、日本で暮らす姉を訪ねて、家族旅行で初めて日本に来ました。私、映画の『HACHI 約束の犬』が大好きで、渋谷のハチ公に行けたことがすごく嬉しかった。日本の人も優しかったです。トルクメニスタンは家族との絆がすごく強いので、私も留学するなら姉と一緒の国がいいなと思って、日本に行きたいと思うようになりました。

ーー留学が、もともと視野にあったんですね。
トルクメニスタンの大学よりも、もっと教育レベルが高い海外の大学に行きたかったんです。それにトルクメニスタン人は、海外へ出ることが結構難しく、留学は安全に国から出る一つの方法でもあって。だから、留学を目指す人が多いんですね。みんながよく選ぶのは、言葉が通じやすいトルコやロシアですね。ロシア語は現在も使われていますし、トルコ語はトルクメン語と似ているんです。
ーーアヤさんも、奨学金を得て?
そうです。2度不合格になり、3度目の試験でやっと国費留学生になれました。最初は日本語学校に1年間通い、次に国際ビジネス専門学校へ2年間、その後近畿大学へ。近大は他の大学に比べて留学生へのサポートが手厚かったことが、選ぶ決め手になりました。今は私費留学生として、マーケティングの勉強をしています。
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ーートルクメニスタンではどんな生活をしていましたか?
私は首都のアシガバートに住んでいました。トルクメニスタンは世界で4位の天然ガス埋蔵量を有し、2018年末までは水道もガスも電気も全て無料でした。今は有料だけど、日本と比べたら大した金額ではないかな。
夏は気温が50度ぐらいまで上がり、冬は寒い地域ではマイナス30度になることも。でも家にエアコンが4台あったとして、全部つけてもそんなに高くない。タクシーもすごく安いです。日本で5キロ1500円ぐらいのところ、トルクメニスタンでは300円ぐらい。だからタクシーでよく移動してました。地下鉄はなくて、タクシー、バス、自家用車で移動する人が多いです。

ーーさすが天然ガス埋蔵量4位の国ですね。言語は何を話しますか?
独立後、第一言語がロシア語からトルクメン語になりましたが、どちらの言語を学ぶかは自由に選べます。私は普段の生活もロシア語がメインで、学校の授業もロシア語で受けていました。日本に来てからトルクメン語を使うことがほとんどないので、もう忘れてきたかも(笑)
日本と違って学校は、小学校から高校まで一貫で、同じメンバーで12年間学ぶので、クラスメイトはもはや家族のような存在。学校は国立しかなく、No.1、No.2という風に学校名の代わりに創立順に番号が振られていて、たぶん100以上あるかな。私の学校はNo.16なので結構古い学校でした。
ーー中央アジアということは、イスラム教の人が多いんですか?
イスラム教の人は多いけど、宗教は特に国から指定されていません。もともと旧ソ連の一部だったのでキリスト教の人もいるし、自由な感じ。私の親戚にも、どちらの宗教の人もいて、みんなお互いの祝日をお祝いします。
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ーー先日パビリオンを訪問したのですが、パビリオンに入るとまず最初に、大統領の写真が飾られていますね。
トルクメニスタンでは結構普通のことで、街の至る所に大統領の肖像画があります。首都のアシガバートには、2代目のグルバングルイ・ベルドイムハメドフ大統領の騎馬像も建てられているんです。

ーー中に進むと、砂漠を駆け抜ける馬、そして犬……など、大きなスクリーンに次々と繰り広げられる映像が興味深かったです。
犬は、アラバイといってトルクメニスタンの国犬なんですよ。馬はアハルテケという馬種。どちらも国として大事にしている動物で、それぞれにちなんだ祝日もあります。中国でいうパンダみたいな感じかな……?
首都には、黄金の犬の像も建てられているんです! 以前、2代目の大統領がロシアのプーチン大統領の誕生日に、アラバイをプレゼントした映像がニュースで流れ、話題になりました。

ーーアラバイ、めちゃくちゃかわいいです! トルクメニスタンの人にとって、アラバイやアハルテケは身近な動物なんですか?
アラバイは国犬、国民の宝。結構高くて50万円〜100万円ぐらいする。広い一軒家に住み、生活に余裕のある世帯で飼われていることが多いです。アハルテケは、スピードと持久力を持つ馬として知られていて、世界中に愛好家がいます。金色のような光沢のある毛並みで「黄金の馬」と呼ばれることも。国章にも描かれています。
ーー祝日があったり国章に描かれていたり、動物に誇りを持っている国なんですね。パビリオンの映像で見ましたが、真っ白な街並みもすごいですね。
白い大理石でできた建物が首都に集中していて、「世界で最も大理石が使われている場所」としてギネスブックにも認定されています。あれは1991年以降、初代サパルムラト・ニヤゾフ大統領が、建物も車も全て白くするように決定して……。私の父は、紫の車を持っていたんですが白くしました。それまではもっといろいろな色がある街並みだったので、全然今とは違いますね。日本に来て、さまざまな色合いの建物や看板があり、おもしろいです。
ーーあの街並みの背景には、そのような出来事があったんですね。
現在のセルダル・ベルディムハメドフ大統領はまだ40代。2代目大統領の息子なんですが……今の大統領になって少しずつ自由になってきたし、外交的になってきたように感じています。前はとってもクローズでしたね(笑)。ちなみに初代大統領は20年も務めました。
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ーートルクメニスタン料理も気になります。国民食と言える人気のメニューは、プロフですね。パビリオン内のレストランでも、食べられるみたいですよ!羊の肉、人参、お米で作る料理で、日本の食事で例えるとチャーハンに少し似てるかも。一番よく食べるのは、スープとサラダ、牛肉、パン。特にチョレクというパンが、すごくおいしい。豚肉はそんなに食べません。

ーーチョレクは、お家で作ったりも?
チョレクを焼くには特別な焼窯がいるんです。田舎にある祖父母の家に大きい焼窯があるので、そこでは母がよく作ってくれました。毎年夏休みは祖父母の家で過ごしていたので、毎日チョレクを食べていました。ああ、食べたくなってきたな(笑)
日本にあってトルクメニスタンにないものと言えば、お弁当です。日本ではお腹が減ったら、コンビニですぐに食事を買えますが、トルクメニスタンではできあがったものが販売されていることはほとんどないかな。日本に来たばかりの頃は、食事が合わなくて体調を崩したこともありました。日本の料理はトルクメニスタン料理より油が多くて……。
ーー好きになった日本の料理はありますか?
お刺身が大好きになりました。トルクメニスタンでは生魚は食べないので、最初はおいしさがよくわからなかったけど、それぞれの魚の味わいがわかるようになってきました! 最近トルクメニスタンでも日本食レストランができて流行っていると聞いたので、今度帰国したら行ってみたいです。

ーー日本の生活に、だいぶ慣れてきたんですね。授業などは、どうですか?
今は宮本多幸先生のゼミに入っていて、キャンパス内にある「THE GARAGE」で、子どもたちに近大を紹介するプロジェクトの企画にグループワークで取り組んでいます。今はちょうど、リサーチとアイデア出しを進めて、子どもたちと何ができるか検討をしているところ。参加した子どもたちには、英語ができることで広がる世界やメリットについても、紹介したいなと思っています。
ーー将来の夢は?
将来は、トルクメニスタンのものや日本のものを輸出入する仕事をしてみたいです。トルクメニスタンでは綿花の栽培が盛んで、手織りのカーペットが有名なんです。高価なものですが、結婚したらプレゼントとしてカーペットを贈る習慣があるので、私と姉にも、将来結婚する時のために母がカーペットを購入してくれています。カーペットは年月が経つにつれ価値が上がっていくので、財産として所有する人が多いんですよ。あと、料理上手な母にならって、いつかトルクメニスタンのパンが楽しめるコーヒーショップを開いてみたいなとも思います。
ーーそれはいいですね、ぜひ食べてみたいです! アヤさん、今日はどうもありがとうございました。

まとめ
聞けば聞くほど、謎が深まるトルクメニスタン。キャンパス内でアヤさんを見かけたら、ぜひトルクメニスタンについて聞いてみよう! 日本との共通点や違い、人々の暮らしに触れる体験は、その国の人と交流することから始まるのだから。取材・執筆:小島知世
企画・編集:人間編集舎
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