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2019.07.01

手足口病、ヘルパンギーナが急増中! 夏の疲れが招く大人の夏風邪にご注意を

Kindai Picks編集部

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健康
医療
夏風邪
オリジナル記事

うだるような暑い日が続く夏は、なにかと体調をくずしやすいもの。特に夏に流行する「手足口病」「ヘルパンギーナ」「プール熱」などの夏風邪は、大人がかかると長引いたり、ときには重症化したりすることもあるようです。そこで今回は、近畿大学医学部の宮崎紘平先生に、夏風邪に多い症状や意識したい予防法などについて詳しくお伺いしました。

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宮崎紘平(みやざき こうへい)
医師/医学博士/近畿大学医学部講師
2005年近畿大学医学部卒業、2012年近畿大学大学院医学研究科発達小児医学コース過程修了。国立機構南大阪医療センター勤務後、現在に至る。日本小児科学会専門医、指導医、日本腎臓病学会専門医、日本小児腎臓病学会元代議員大阪小児感染症研究会世話人、大阪小児感染免疫カンファレンス世話人、2020年度日本小児感染症学会プログラム委員。所属学会は小児科学会、日本小児腎臓病学会、日本腎臓病学会、国際小児腎臓病学会(IPNA)、日本小児感染症学会、大阪小児科学会など。


夏風邪ってどんな病気? どんな症状が出る?



©ぱくたそ / photo by つるたま

――そもそも、風邪って何なのでしょう?

風邪はひとつの病気を指すのではなく、主に上気道(鼻やのどなど)の急性炎症の総称みたいなものです。急性上気道炎とか、風邪症候群ともいいます。ほとんどはウイルス感染が原因で、咳や鼻水、くしゃみ、発熱、のどの痛みなどの症状が出ますが、基本的には自然に治っていきます。

――冬に流行する風邪と夏風邪に違いはあるのでしょうか?

原因となるウイルスに違いがあります。冬のウイルスは冷たくて乾燥した場所が好きなんですが、夏のウイルスはその逆で高温多湿な環境を好みます。夏は海に行ったりバーベキューをしたりと屋外で遊ぶ機会が多くなりがちで、そうすると疲れて抵抗力が落ちるんですよね。そんなときに特に夏風邪にかかりやすくなります。




――夏風邪にはどんなものがありますか?

代表的なのは、ヘルパンギーナ手足口病プール熱(咽頭結膜熱)ですね。「三大夏風邪」といわれるくらい、夏に多くなります。子どもがかかるイメージがあるかもしれませんが、大人にも感染することがあります。



病名ヘルパンギーナ手足口病プール熱
主な症状急な発熱、のどの痛み、口の中にできる小さな水ぶくれ状の発疹手や足、口の中などにできる水ぶくれ状の発疹、発熱発熱、のどの痛み、結膜炎、頭痛、体のだるさ
感染経路接触感染を含む糞口感染、飛沫感染接触感染を含む糞口感染、飛沫感染接触感染、飛沫感染、残留塩素濃度が管理できていないプールの水などを介する感染
潜伏期間2~4日3~5日5~7日


子どもより大人のほうが夏風邪が長引きやすい?



©ぱくたそ / photo by ジユン / model by あんじゅ

――大人と子どもでは、症状の重さに違いはありますか?

大人はなかなか病院に行かなかったり、無理して外出したりしがちなので、もともと長引きやすいのはあると思います。手足口病やヘルパンギーナで口の中に水ぶくれができて破れてしまうと、痛みが強くて食べられなかったり飲み込めなかったりして脱水症状を起こすこともあります。

――手足口病になると、大人でも手や足に水ぶくれができるんですか?

もちろんできます。ヘルパンギーナと違って、手足口病は手のひらや足の裏にも水ぶくれができるんですが、子どもより大人のほうが体重が重いぶん足の裏に負担がかかるんですよね。一歩ずつ歩くたびに激痛が走るので、1週間くらい辛そうにしている人もいますし、その点では子どもより辛いかもしれません。手のひらだとドアノブを握ったり、ペンやパソコンのマウスをつかんだりするときもかなり痛みます。

――重症化することはありますか?

抵抗力が落ちているときに感染すると、重症化するおそれはあります。稀ではあるものの、ヘルパンギーナでは無菌性髄膜炎や急性心筋炎を、手足口病では急性髄膜炎や急性脳炎を、プール熱では肺炎や胃腸炎などを引き起こす可能性も考えられます。


いろんな人が出入りする場所で感染リスクが高まる



©ぱくたそ / photo by すしぱく

――感染しやすい場所や時期はありますか?

患者さんは5月くらいから増えてきて、7月の終わり頃が感染のピーク。8月に入ってくるとだんだん減ってきます。感染しやすいのは、たくさんの人が出入りする場所ですね。学校や会社、ショッピングモール、飲食店、夏祭り、花火大会、夏フェスとか。大人は子どもからうつる場合が多いので、きょうだいがまだ小さい場合や、子どもがよく出入りする家庭では注意が必要です。トイレやタオルの共有のほか、ドアノブなど同じものを触ることでも感染します。

――プール熱はプールでうつるんですか?

よく勘違いされるんですが、いまの日本ではほとんどのプールで塩素を使っているので、残留塩素濃度が基準をクリアしているプールで水を介して感染することはまずありません。それよりも、目をこすった手でドアや手すりを触ったり、同じタオルを使ったりして感染が広がっていきます。なので、プール以外の場所で感染する可能性も十分考えられますね。


夏風邪の治療に特効薬はない!?


――病院ではどんな治療が行われるのでしょうか?

脱水症状を起こしている場合は点滴が必要になりますが、基本的には辛い症状をおさえる「対症療法」が中心で、いわゆる特効薬のようなものはありません。熱やのどの痛みに対して解熱鎮痛薬を処方したり、口内炎の対策で痛み止めやうがい薬を出したり。これを飲んだから早くよくなるとかではないんですが、痛くて食べたり飲んだりできないと栄養が不足してしまいますし、患者さんの状態に合わせて痛みなどの症状をおさえる治療を行っていきます。

――早く病院に行ったほうがいいと思われる症状はありますか?

プール熱だと発熱が5日くらい続くこともあるんですが、基本的に次のような症状がある場合は注意が必要です。

<こんな症状があれば早めの受診を>
・発熱が4~5日続いている。
・頭痛や嘔吐などの症状がある。
・脱水症状がある(尿が出ない、舌や唇が乾燥してカサカサしているなど)。

――受診するなら内科でしょうか?

基本的には内科ですね。目の症状が強い場合は、眼科も受診するといいと思います。


水分だけだと逆効果!? 食事を含めたセルフケアと予防法




――自分でできるケアはありますか?

のどが痛くなったり口内炎ができたりすることが多いので、食事面での配慮が必要です。痛みがあるときは、冷やしたおかゆや冷たいうどん、豆腐など、のどごしがよくて冷たい食べ物を選ぶといいですね。ゼリータイプの栄養補助食品もいいと思います。かゆみがある場合は、保冷剤を清潔なガーゼにくるんで当てるなどして冷やすとかゆみが和らぎます。また、患部をつい手で触ってしまうことがあるので、手を洗って清潔を保つことも大切です。あとは、脱水症状を防ぐことですね。

――脱水を防ぐためには、お茶や水をたくさん飲んだほうがいいのでしょうか?

実は、お茶や水だけだと逆効果になることがあって。脱水を起こしているときは体の中の塩分が不足しているので、お茶や水を大量に飲むと体内の塩分が薄まってしまうんですよね。経口補水液やスポーツドリンク、塩分が強めの野菜スープを飲むなど、水分だけでなく塩分の摂取も意識する必要があります。

――症状が出ている間は外出を控えたほうがいいですか?

できれば家で安静を保つほうがいいですね。夏は紫外線の影響が強いですし、手足口病だとただれたところが日焼けするので、やけどがもっとひどくなる感じになりますし。感染の広がりを防ぐためにも長引かせないためにも、外出はなるべく控えたほうがいいでしょう。

――最後に、夏風邪の予防法について教えてください。

基本的には手洗いうがい、そして流行時期に人が多い場所にむやみに近づかないことが大切です。あとは、抵抗力を保つこと。夜遅くまで出かけたり深夜まで働いたりして疲れがたまると、抵抗力が落ちて夏風邪にかかりやすくなります。休日も決まった時間に寝起きするなど生活リズムを整えて、十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事、適度な運動を取り入れましょう。体だけでなく室内も清潔に保つことで、感染しにくい環境を上手に整えたいですね。


(終わり)


取材・文:藤田幸恵
企画・編集:人間編集部

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