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2019.02.19

堀ちえみさんが公表した舌がん。その症状や口内炎との見分け方、セルフチェックの方法は?

Kindai Picks編集部

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タレントの堀ちえみさんが2月19日、ステージ4の舌がんと診断されたことを公表しました。
舌がんとはどんな病気なのか?その原因と病状について、近畿大学医学部附属病院歯科口腔外科の榎本明史准教授に聞きました。

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PROFILE
榎本明史(えのもとあきふみ)
近畿大学医学部 附属病院歯科口腔外科 准教授/歯学博士
専門:口腔外科
・日本口腔外科専門医・指導医、国際口腔顎顔面外科専門医
・日本顎関節学会専門医、日本口腔感染症学会認定医:顎関節疾患、口腔粘膜疾患等
・小児の口腔外傷、口腔腫瘍治療の咀嚼機能の回復のためのインプラント補綴




舌がんとは?

舌がんはどんな病気ですか?



舌がんとは、舌にできるがんで、口腔がん(舌がん、歯肉がん、頬粘膜がん、口蓋がん、口腔底がんなど)の一つです。体にできる全部のがんの約1-2%の割合で発症します。舌がん発症における男女比は約2:1で、男性に多くみられます。好発年齢は50歳代後半ですが、50歳未満が約1/4を占め、20、30歳代の若年者にも時々みられます。咽頭がんや喉頭がんは60歳以上の男性に多いのと比べると、やや年齢層が若いのがひとつの特徴です。
舌がんの原因はまだ明らかではありませんが、歯並びの悪い歯が常に舌にこすれるという機械的な慢性刺激や飲酒・喫煙などが環境因子として病変の進行のリスクファクターと考えられています。





舌がんになるとどのような症状がでますか?初期症状はどのようなものでしょうか?



舌がんは口内炎に比べてしこりがあるのが特徴です(図1,2)。非常に初期のものでは、痛くもなく、シコリもない場合も多く見られます(図3)。舌の粘膜が白くなる場合もあります。また、口内炎と判別が困難な小さな潰瘍の場合もあります(図4)。
なかなか治らない口内炎の場合は注意が必要です。病変が進行すれば、硬いシコリが触れてきます。また、舌の表面の潰瘍も大きくなり、出血を認めることもあります。舌が動かしにくくなり、会話に障害が出るなどの症状も出現します。舌がんは頸部のリンパ節転移が多いのも特徴です。舌の病変が小さくても20-30%に頸部リンパ節転移が認められます。舌がんは、一般に舌の両脇、舌縁部に生じることが多いです。

図1 潰瘍形成を認める舌がん
図2 隆起型の舌がん
図3 口内炎と区別がつきにくいT1症例
図4 口内炎と区別がつきにくいT1症例





堀ちえみさんはステージ4で発見されましたが、早期発見は難しいのでしょうか?



多くの舌がんは、早期発見は可能と考えます。しかしながら病変によっては、表面潰瘍などが小さく、深在性に進むものもあるため、早期発見が困難なものもあります。舌がんを含めた口腔がんは、肺がんや胃がんなどと違い、口の中を直接見ることで発見できます。先に述べたように初期の舌がんは口内炎との鑑別が困難な場合が多いですが、なかなか治らないような症状の場合は、大きな病院施設での専門医による精査を受けることが勧められます。







舌がんになったら?

堀さんは舌の半分以上を切除し、首のリンパに転移した腫瘍も同時に切除、切除した舌には、自分の皮膚の一部を、移植するとのことですが、主な治療方法は?



早期の舌がんは、舌のがんの部分を切除することで治療します。つまり舌の一部をがん組織を含めて切除するということです。
 進行がんの場合(図5)、外科手術ができる場合は、手術による治療がもっとも治療成績がよいとされています。手術には舌とその周囲組織を切除した後に、手術により欠損した部分を再建する方法がとられます。この再建には、腕や胸、腹などの組織を使って再建する場合がとられます。また、外科手術後に術後の補助療法として、放射線治療や化学療法を選択される場合があります。
 舌がんの手術を行った後は、創部の治癒を待ち、術後の会話や食事ができるようにリハビリが必要になります。この期間は、手術の侵襲の度合いなどにより大きく変わります。

図5 進行がんT3


転移の可能性は高いのでしょうか?



舌がんは、その大きさが大きいほど頸部リンパ節転移を伴う場合が多くなります。つまり、早期に発見できた舌がんの多くは、頸部リンパ節転移をしていません。一方、大きさが小さい舌がん(腫瘍最大径が2㎝以下で、かつ腫瘍の深さが5㎜以下のものをT1といいます。)のものであっても、1-2割程度でリンパ節転移を認めます。


舌がんのステージ分類の基準・予後について教えてください。



舌がんを含む口腔がんのステージは、TNM分類(原発巣の大きさ、頸部リンパ節転移の状態、遠隔転移の有無)にて決定されます。このTNM分類はがんの進行度を示します。この分類は年々少しずつ変更があります(現在は第8版TNM分類)。口腔がんのTNM分類は表1に示す通りです。また表2に示すようにステージが決定されます。
がんの治療の予後評価に、5年生存率というものが知られています。舌がんの場合の5年生存率は、ステージ1が92-93%、ステージ2が80-85%、ステージ3が65%、ステージ4が45-50%程度となっています。

表1 口腔癌におけるTNM分類


表2 ステージ分類




舌がんの予防やセルフチェック、口内炎との見分け方は?

舌がんにならないように、未然に予防はできるのでしょうか?



現時点で予防方法はありません。しかしながら、飲酒・喫煙がリスクファクターと考えられていることから、これらの摂取を控えることは重要となります。


セルフチェックはできますか?



舌や頬粘膜、歯肉など口腔内はいつでも自分で鏡を使って見ることができます。口の中に気になることがあれば、医療機関を受診してください。
口腔内の粘膜はピンク色が正常ですが、この正常粘膜が白く変化していくことがあります(病理学的に角化する)。こういった粘膜の病態を「白板症」といい、前癌病変と言われています(図6)。口の粘膜が白くなっている部分があれば、医療機関を受診し、専門医の診察を受けることが勧められます。

図6 舌の白板症

舌がんと口内炎との違い、見分け方はありますか?



初期の舌がんは、しこりのない場合もあり、口内炎と鑑別が困難なものもあります。しかしながら、ほとんどの口内炎は、ステロイド剤の使用や含嗽などで早期に治癒します。舌がんは、軟膏塗布や含嗽で治癒することはありませんので、なかなか治癒しない(2週間程度)口内炎であれば、医療機関を受診し、専門医による診察を受けることが勧められます。


今回、堀さんはリウマチの治療中でもあったようですが、抗リウマチ薬が舌がんの発症の原因となることはあるのでしょうか?



リウマチの治療薬には多くの種類の薬剤があります。近年は炎症を抑える生物学的製剤が使われることもあります。現時点では、生物学的製剤であるTNF拮抗薬の使用と悪性腫瘍の発症との関連性は明らかでないとされています。

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