2023.04.10
四つ葉のクローバーは、どうして四つ葉なの?小学生の疑問に先生が答えます【それってなんなん?相談所】
- Kindai Picks編集部
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小学3年生から近大に届いた「四つ葉のクローバーはどうして四つ葉なの?」という疑問を、草花に詳しい先生が解説! 大人も知らない植物の不思議が満載。ラストシーン「見つけるといいことがあるって本当?」への回答は必読です。
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どうして、タコは8本足なんだろう。
どうして、年度のはじめは4月なんだろう。
「どうして」を考えることが生きがいのしまだあやです。こんにちは。
みなさんは日頃、どんなことを疑問に思っていますか? 本を読んだりインターネットでとことん調べるのもいいけれど、「それってなんなん?相談所」では、近畿大学にいる、さまざまな専門分野の先生たちに、みなさんの疑問をぶつけることができます。
今日は、その相談所に届いた依頼を解決するべく、依頼者である小学生と共に、近畿大学 農学部に来ています。
依頼者の名前は「ことね」ちゃん。小学3年生。
質問が書かれたメモと共に、相談所に届いた依頼は……
これ、私も知りたい。とっても気になるよ。
ということで、ことねちゃんを誘って、こうしてキャンパスにやってきた……のですが。
ことねちゃん、めちゃくちゃ固まってます。
それもそのはず。私たち、会ってまだ5分経ってないし、彼女は大学という場所に来るのも、こういうプロジェクトに参加するのも、はじめてのことだそうで。
はじめまして。今日はよろしくね。
(こくっ)
笑ってくれたけど、ギュッと肩をすくめることねちゃん。
ごめんごめん、いきなり近づかれたらもっと緊張するよね。
えっと……ちがう、きんちょうじゃない……さむいの……
そうか。そうだよね、寒いし早く中に入ろうな。
風邪をひかないうちに、いざ研究室へ。
ことねちゃんの疑問に答えてくれるのは、農業生産科学科 教授の細川宗孝先生です。
細川 宗孝(ほそかわ むねたか)先生
近畿大学 農学部 農業生産科学科 教授、研究科長。専門は蔬菜花卉(そさいかき)園芸学。園芸作物の育種・生産および病気の予防や治療に関する研究を行っている。また、花の色や模様の機能解明を遺伝子レベルで行う。
教員情報詳細
コンコン! 失礼しまーす!
クローバー……うーん……小学3年生……どう説明すれば……ボソボソ……
まじで、入った瞬間このポーズで悩んでいた細川先生。
先生、大丈夫ですか?(笑)
ああ、ごめんごめん。どうぞ、お座りください。きみがことねちゃんだね? よろしくね。
よろしくおねがいします。
……いや、実は、今の今まで悩んでてね。専門とはいえ、小学生に説明するのははじめてで、うまく伝わるかどうか……。
ことねちゃん、先生のほうが緊張してたわ。
ふふ。
実は一面でひとつの生き物。土の中でつながっているクローバーの仕組み
じゃあ、改めて。ことねちゃんが質問したいことを教えてください。
「四つ葉のクローバーは、なぜ四つ葉なの?」です。
ことねちゃんは、四つ葉のクローバーを見つけたことがあるの?
うん。しおりにしてる。
どこで見つけたの?
学校からの帰り道にある、ちょっと草が生えてるところ。
探すの、大変だったでしょう。
3分で見つけた。
3分?!!
いや、それはだいぶすごいですよ!!
(誇らしげな微笑み)
私も小さい頃、四つ葉を見つけたことがあるんだけど、学校の先生に見せたら「これはクローバーじゃないよ、カタバミだよ」って言われたなあ。
その2つはよく間違われますよね。カタバミはカタバミ科カタバミ属。クローバーはマメ科シャジクソウ属の総称、全くの別物なんです。
シロツメクサ、アカツメクサなど、約260種類あるクローバー。日本ではシロツメクサのことを指す場合が多い。
基礎情報をお伝えしたところで、ここから疑問に答えていくんですけど、まずはクローバーの構造を知る必要があります。ことねちゃん、この絵に描かれたクローバーの数を数えてみてください。
1、2、3……8つ?
ありがとう、そうだよね。でも実はこれ、ぜーんぶで「ひとつ」でもあるんです。
えっ、どういうことですか??
クローバーが1本だけ生えてるところって、見たことあるかな?
(首をふる)
だよね。たくさん集まって、じゅうたんみたいに広がってる。あれらは土の中で同じ茎につながっていて、そこから伸びた細い茎と葉っぱが、地上に出ている。あれでひとつの生き物なんだよ。
????
木に例えるとわかりやすいかも。
1本の木って、太い幹があって、枝がたくさん伸びて、さらに小枝に分かれて、葉っぱがたくさんついてるよね。クローバーは、木で言うところの幹や枝が土の中に、小枝と葉っぱが地上にある、っていう感じだね。
クローバーの葉っぱは、どうやって生まれるの?
じゃあ、クローバーの葉っぱたちは、どうやって生まれていくのか。ここからは、実際の植物を使いましょう。これはキクの葉っぱなんですが、この中で一番年上の葉っぱはどれだと思う?
……これ?
おっ。どうしてそう思ったの?
子葉だと思った。子葉が一番に生えてくるから……。
そうですね、最初に生えてくる葉っぱの名前は子葉。すごいね、ことねちゃん。でもね、「一番年上の葉っぱ」は、この一番大きい葉っぱなんだ。
他の葉っぱも、年齢順にちぎって、紙の上に並べてみましょうか。
じゃあ私、長男、次男……って書いていこーっと。
……葉っぱ、なくなっちゃった。
って思うでしょ。これはね、もう指でちぎれなくなっただけで、実はここに、ぴょっぴょって出てるのも葉っぱなんだよね。葉っぱの赤ちゃん。
ってことは、「九男」まで並べたけど、まだまだいるんだ。もう「n男」って書いとこ。
「n男」……
「n男」をメモることねちゃん。
で、最後にどういうものが現れるかというと……ここからは顕微鏡の世界、画像を見せますね。
おおお、なんじゃこりゃ!!
つぶつぶ。
このつぶつぶは「茎頂分裂組織」といって、先ほどちぎった葉っぱたちを生み出す力のある部分です。字の通り、茎のてっぺん、つまり先端にある組織ですね。
図ではわかりやすいよう1箇所だけにマルしてるけど、枝分かれしている茎の各先端にあります。
けいちょう……? ぶんれつ……??
土の中にある茎の一番先っぽに、クローバーの兄弟をつくるパワーちゃんがいるんだって。
パワーちゃん……。
パワーちゃんを切っちゃうと、どうなるの?
わー、どうなるんだろ。死んじゃうのかな……。
死にませんよ。切ったところから、また新しい茎が枝分かれに生えて、パワーちゃんも増えます。
それも切ったら?
またまた増えます。どんどん増えます。やられればやられるほど広がっていくのが、彼らの生き方です。
じゃあもう「えいえいえーーーい!」って、すんごいスピードで全部切って燃やしたら?!!
まあ、そこまですれば、死んでしまいますけれど(笑)、土の中でそういうことって、なかなか起きないですよね。それに、土の中は地上よりも、湿度や温度などの環境が変わりにくい。そういう意味でも、地中にいるパワーちゃんは強いんですよ。
そうか。クローバーは、安全なおうちで生きてるんだね。
それにしても、クローバーって、なんでそんなに生命力が強いんだろう。
それはね、クローバーに住む微生物のおかげなんです。ことねちゃんは、チッ素って聞いたことあるかな?
ちょっと聞いたことある。
うんうん。普通の植物は、土の中にあるチッ素を養分にして育ちます。でも、クローバーのようなマメ科の植物は、共生する微生物が、空気中のチッ素も吸ってくれる。栄養のもとをたくさん取り入れられるから、生命力も繁殖力も強いんです。
ちなみにマメ科の植物は、その微生物にチッ素を吸ってもらうお礼に、光合成でできた糖などを分けてあげるらしい。いいシェアメイト見つけたね。
いざ本題! 四つ葉のクローバーはどうして四つ葉なの?
※「茎頂分裂組織」という言葉が難しいので、引き続き「パワーちゃん」でお送りします。※
クローバーの構造がわかったところで、いざ本題。ことねちゃんの疑問「四つ葉のクローバーはどうして四つ葉なの?」についてお話しましょう。
まず、クローバーは遺伝子……つまり、クローバーの設計図で「三つ葉になる」ということが決まっています。そして、この「三つ葉になる」というのは、「パワーちゃんが生んだ1枚の葉の土台が、3枚の小さな葉に分かれる」と考えてください。
ふむふむ。
で、これが稀に、4枚に分かれるわけですが、考えられる理由はいくつかあります。一つ目。パワーちゃんの栄養が多すぎて、いつもより大きい葉っぱの土台ができたパターン。
……???
ことねちゃん、私わかった。ピザだわ。
ピザ??
Mサイズだと8枚に切るけど、Lサイズのときは10枚になったりするやん? そんな感じで、土台が大きいと枚数が増えることがある、ってことだ。先生、合ってますか?
まあ、そんな感じかな(笑)
二つ目。パワーちゃんが刺激を受けることで、「3枚に分かれる」という指示にエラーが起きるパターン。
ネットで下調べをしたときに、「動物に踏まれて傷つくと四つ葉が生えやすい」という見解を見つけたけど、刺激っていうのはそういうのも当てはまりますか?
うーんと……パワーちゃんがどこにあるのかを思い出してみてください。
土の中……。
そうか! 踏まれて傷つくのは枝葉の部分だ。じゃあどうやって……土の中で石にぶつかるとか、虫にかじられるとか……もぐらがパワーちゃんにパンチしてるとか!(笑)
ふふ、もぐら。
しまだのしょーもない発言も、もれなくメモってくれることねちゃん。すきだ。
虫の仕業はあるでしょうね。あとは、化学物質にも影響を受けます。石については、クローバーの茎は通常、「あ、何かに当たったな」と思ったら、それを避けて伸びていくんですけど……まあ、そんなこともあるんじゃないですかね!
いきなりふわっとした回答になった!!(笑)
その可能性もゼロではないからです。実は、クローバーが四つ葉になる理由は、明らかになっていない部分もまだまだあるんですよ。それに、この「ふわっとしてる」という側面こそ、植物が生き抜く上で大切なことで。
どういうことだろう?
遺伝子で決まっていても、エラーが起きる。原因がはっきりわからないこともある。そういうふわっとしてる部分に、植物たちが厳しい環境にも適応していける力が詰まっています。間違いを起こすことは、柔軟性があるとも言えるんですよ。
ちょっと今、クローバーに生き方を諭された気がする。
もうひとつ、四つ葉になるパターンをお話します。エラーではなく、遺伝子に突然変異が起きた場合です。
んんん?? 待って。エラーと突然変異の違いがわからぬ!(笑)
「エラー」というのは、設計図は「3枚に分ける」だったけど、パワーちゃんの指示にエラーが起きて「4枚に分ける」と伝わったパターン。「うっかりパワーちゃん」と考えてください。
うっかりパワーちゃん……
対して、「遺伝子の突然変異」は、クローバーの設計図に書かれた「3枚に分ける」という指示自体が、「4枚に分ける」という内容に変わるということです。
ことねちゃんが「ピザ3枚食べたい」って書いたメモを見て、私が「ピザ4枚お願いします」って伝えちゃうパターンと、ことねちゃんが「ピザ4枚食べたい」って書いちゃうパターンの違いね。
(うなずく)
五つ葉とか、六つ葉のクローバーはありますか。
ありますよ! ちなみにギネス世界記録のクローバーは56葉。でもこれは野生ではなく、交配によってクローバーの葉を増やす研究の結果、生まれたものです。
56!? 光合成が捗りそう。
枚数が多ければいい、ということでもないんです。植物たちは合理主義。長い歴史の中で、生き抜くためのベストな形に進化しています。クローバーが三つ葉なのもその結果。単純に枚数が増えるだけでは、お互いが重なって、日光を浴びられない部分ができてしまう。効率よく光合成をするためには、葉っぱの形を細くする必要があるでしょうね。
確かに、ひとつの茎に葉っぱがいっぱい付いてる植物って、細長い葉っぱのイメージがある。
それに、はじめに話した通り、クローバーはじゅうたんのように一帯に広がるひとつの生き物。たくさんの葉っぱを太陽に向けて、とても上手に生きているんですよ。
四つ葉のクローバーは、どんなふうに探せば見つけやすいの?
四つ葉のクローバーを見つけた場所で、もう一度さがしたら、また見つかりますか。
はい、可能性はありますね。栄養分の具合なのか、土の中の石ころや生物なのか、パワーちゃんがエラーを起こしやすい環境がある、ということなので。
じゃあ、見つかりやすい時間帯はありますか?
探しやすさで言えば、日中でしょうね。夜は少しだけ葉っぱが閉じるので、昼よりは見つけにくいと思います。まあ、単純に、暗いより明るいほうが見やすいですし。
季節は……?
やっぱりクローバーが元気な季節がいいのかな? っていうか、そもそもクローバーって、いつが一番元気なんだろう。
春〜夏前ですかね。
冬はしんじゃう?
いいえ。クローバーは多年草といって、年中生きている植物です。冬や夏に、土の上に出ている葉っぱが枯れることもありますが、地中にある根っこは生きているので、時期が来たらまた芽が出てきますよ。成長や繁殖を休眠してるだけなんです。
パワーちゃん、寝てるだけか。
「冬も生きている。パワーちゃん ねているだけ」……(メモをしている)
あ。私今、賢いことに気づきましたよ。一見 「春はクローバーがいっぱい! きっと四つ葉も多いぞ!」ってなりそうだけど、モサモサ重なったりして、逆に見つけにくい可能性もあるのでは! それに、母数が増えてるだけであって「=見つかりやすい」ではないのでは!!
ええ、そうだと思います。
(誇らしげな微笑み)
ふふ。
四つ葉のクローバーを見つけると、いいことがある。
ことねちゃん、最後にもうひとつ、質問あるんだよね。
(こくり)
なんだろう。
「四つ葉のクローバーを見つけるといいことがある」って、本当ですか。
……まず、今日のお話で、四つ葉のクローバーを見つけるのは、本当に難しいということが、伝わったと思う。その奇遇さから「しあわせ」や「いいことがある」っていうイメージが付いてる。で、「それは本当ですか?」っていう質問だよね。僕が答えられることを、伝えるね。
(こくり)
ことねちゃんは今回、四つ葉のクローバーを探したけれど、僕もね、ずっと「探す」をしてるんです。
大学生のとき、学校の授業で、お花がいっぱい入ったトレーを渡されたの。「この中から雄花を見つけなさい」っていう内容でね。しかも、毎回。来る日も来る日も、雄花を探す作業。「こんなことして、何になるんだろう」って思いながらやってたの(笑)
でもある日、「あれ?」って。雄花を見つけるスピードが、すごく早くなってた。「何かを見つける目」が、すごく養われていることに気づいた。すると、今まで見えていなかったもの、気づかなかったものが、たくさん見えてきたの。
見つける力がたくさん育つってことは、いろんなことにたくさん感動しながら、生きていけるってことだ、ことねちゃん。
そう。だから、四つ葉のクローバーを見つけると、いいことがある。僕は、そう思っていますよ。
まとめ
後日、ことねちゃんから感想が届きました。「いろんなことが知れて、くわしくなれたから、うれしかったです!あれからも四つ葉のクローバーをさがしています。まだ見つかってないです。でも、これからもっとさがしたいと思いました!!」
ことねちゃんの「どうして?」という気持ちから生まれた、今回の企画。めずらしい四つ葉のクローバーを見つけたことも、もちろんすごいんだけど、不思議に感じたことを「聞きに行ってみよう」と思った、その行動力も素敵だな。
みなさんには、どんな「どうして?」がありますか。
その疑問、一緒に専門分野の先生に聞いてみませんか。
15学部49学科を擁する近畿大学には、医学から芸術まで、さまざまな分野のスペシャリストが集まっています。素朴な疑問でも、お願いごとや相談でも。あなたの疑問をぶつけてください。
いつでも、待ってます。
近大それってなんなん? 相談所
おまけ
最後に、先生・ことねちゃん・私の3人で、クローバーの絵を描いて遊びました。………できた。
僕もできました。
せーの、どん!
ことねちゃんうまいなあ。塗り方もいい!!
いやあ、四つ葉を見つけるだけありますね。観察する目が本当に素晴らしい。
(誇らしげな微笑み)
それに比べて、僕のは……あっ!?!?
どうしたんですか?
なんで僕、三つ葉にしちゃったんだ……こんだけ四つ葉の話をしたのに……いいことないのかなあ(しょんぼり)
ことねちゃん。次、四つ葉のクローバー見つけたら、先生にあげよっか。
うん。
この記事を書いた人
しまだあや
ソーシャルデザインに10年携わったのち、独立し作家に。エッセイを執筆しつつ、企画やMC、教育プログラム作りなども。また、自宅の94%を10〜20代に開放しながら暮らしている。得意技は愛すること、感受性が爆発しすぎて取材時にすぐ泣く。
写真:大越はじめ
編集:人間編集部
近大が誇るその道のプロがあなたの悩み・疑問を解決!
あなたの悩み、疑問、お願いごとを解決します!
「外来種って悪者なの?」「お餅ってどうして伸びるの?」そんな「?」を大募集。素朴な疑問も、思わず頭をひねってしまう難題も、近大の先生や学生が一緒になって考えます。「子どもの自由研究に役立てたい」「あの研究室に潜入したい!」「◯◯について、専門家の意見を聞きたい」などなど、スタイルは不問。まずは一度、私たちに託してみてください。その道を究めたプロが、真剣かつ丁寧にお答えします。
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