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型破り広報 魅力発信 大学の経営力(近畿大学2)

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読売新聞

2018.03.15

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大学

衝撃度は抜群。「固定概念を、ぶっ壊す。」や「早慶近」のキャッチフレーズなど、型破りな広報で知名度を上げてきた近畿大学のブランド強化への挑戦とは。
*本記事は2018年2月6日から4回にわたり読売新聞に連載された「ビジネス潮流 大学の経営力」をWEB用に編集したものです。

TOP写真=近大グラフィティ「近大人SNAP」

ブランド強化へ「さらに挑戦」


大学内で見つけた「近大美少女・近大美男子」の企画や、学生のかばんの中身を紹介する記事。近畿大の大学案内「近大グラフィティ」は、ファッション誌か情報誌にしか見えない。
1月30日、東大阪キャンパス(大阪府東大阪市)では、広報室のメンバーらによる2019年度版の作成が大詰めを迎えていた。3月のオープンキャンパスで配る予定で、編集リーダーの坂本由佳(38)は「今回も衝撃度は抜群」と自信をみせる。

 

仕掛け人


若者向け雑誌「東京グラフィティ」と連携し、16年度版から発行している。学部のカリキュラムや研究内容など通常の要素をばっさり削り、大半を学生のスナップ写真で埋めた。受験生への配布を拒む高校もあったほどで、賛否両論が沸き起こり、ネットニュースで拡散した。
山の頂から巨大マグロが顔をのぞかせて「固定概念を、ぶっ壊す。」と挑発する広告や、卒業生でミュージシャンの「つんく♂」が監修した“ド派手”な入学式など、近畿大は常に「大学らしくない」PR策を繰り出し、知名度向上につなげてきた。

その仕掛け人が、広報室などを統括する総務部長の世耕石弘(いしひろ)(48)だ。初代総長・世耕弘一の孫で、1992年に近畿日本鉄道に入社、日本一の高層ビル「あべのハルカス」画の発表など7年半の広報経験を積んだ。
2007年、近畿大に転じた世耕に、理事長だった父の弘昭は「志願者を減らしたらクビや」と言い放つ。世耕は「高等教育機関という枠に縛られたらあかん。とんがった広告で、いかに目立たせるか」と知恵を絞った。


マグロ


目を付けたのが、発表から5年以上が過ぎ、学内では過去の成果物になっていた「近大マグロ」だった。02年に世界初の完全養殖に成功し、建学の精神でもある「実学教育」を伝える「最強のコンテンツ」に映った。
「校舎の前に学生が座ったような、つまらない中身」(世耕)だった大学パンフレットに08年、巨大なマグロの顔を載せるなど前面に打ち出し、近大マグロは一躍ブームになった。

企業と同様、情報を発信する広報部門はブランド力や知名度向上に重要な役割を担う。近畿大広報室は14人体制で、17年度の報道発表は1月末までに前年度を上回る508件に上る。世耕は「関西大や立命館大は年間50〜80件で、広報力では『関関同立』とレベルの違うところまできた」と自負する。
 

就職に課題


「ガンバロー、ガンバロー、ガンバロー」。1月20日、東大阪キャンパスで、ハチマキ姿の学生らが拳を突き上げた。
19年春に卒業する学生の就職活動が3月に解禁されるのを前に、大学が開いた決起大会。3年生ら約2000人が参加し、経済学部3年の学生(21)が「近大生の誇りをもって就職活動を!」と宣誓した。

14年度以降、志願者数が4年連続で全国首位となり、「入り口」では成果を出した近畿大。だが、「出口」である学生の就職は課題として残る。
就職率は97%を超えている。ただ、教育情報会社・大学通信が著名企業400社を対象にした17年の大学就職ランキングで、関西の私大では首位の同志社大が18位、関西学院大が26位、立命館大が38位、関西大が51位だった。これに対し、近畿大は113位と今なお開きがある。

世耕は固定化した大学の序列を「入れ替え戦のないリーグ戦」と呼ぶ。「ブランド力を上げていくしかない。まだまだ新しいことに挑戦していく」
年明けの1月3日、「謹んで新年のお詫(わ)びを申し上げます」との近畿大の広告が新聞紙上に載った。書類での出願を受け付けないことや派手な入学式などを自虐的にPRする内容で、こんな一文で締めくくった。
「今年も盛大にやらかすんで、先にお詫びしときます」(敬称略)



*2018年1月3日、近畿圏の新聞に掲載
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取材依頼 断らず

 
近畿大の広報室は総務部の傘下にあり、広報や宣伝を手がける。露出を高めるため、原則、外部からの取材依頼は全て受ける。担当者が集まる会議は月1回だけで、普段はスマートフォンの通信アプリで打ち合わせをしている。「全教職員が広報員」との全学方針があり、広報室以外に各学部などにも広報担当者計約140人を置き、学内の研究成果などの情報を収集している。年間を通して大学のブランド向上に最も貢献した教員の研究費を増やす制度もある。
 
(2018.02.13 読売新聞 大阪朝刊)



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