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2026.10.03

「挑戦」が未来をつくる。 KINCUBA Basecampで育つ近大発アントレプレナー

Kindai Picks編集部

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近畿大学発ベンチャー起業支援プログラム「KINCUBA」の活動拠点「KINCUBA Basecamp」(キンキュバ ベースキャンプ)では、多くの学生起業家が未来のビジネスアイデアを育んでいます。近大出身の起業家でKINCUBAメンターを務める180株式会社(ワンエイティー)代表取締役の上仲昌吾さんと、学生起業家の加嶋壮研さん(経営学部2年)による対談が実現。近大が取り組んでいる起業家育成の「今」を聞きました。

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上仲 昌吾(うえなか しょうご)
2013年 近畿大学経営学部卒
1990年 兵庫県生まれ。
180株式会社(ワンエイティー)代表取締役
KINCUBAメンターを務めている。
2018年に180株式会社を設立。
事業内容:ブランド公式二次流通支援サービス−サーキュラーコマース「180°」の開発・運営。UIデザイン/UXデザイン事業。日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社【2026年版】」に選出された。
大学卒業後の2013年、アメリカ・サンディエゴへ留学しビジネスとプライベートを含め各国のデザインに刺激を受ける。一方で戦争体験や亡命者の人々との出会い、アウトドアブランドPatagoniaの活動などを知ることを契機に過剰に進んだ資本主義経済へ疑問を抱く。帰国後「デザインが生み出した課題を、デザインで解決する」ソーシャルビジネスへ繋がる事業を起こすことをミッションに起業。
趣味はサーフィン、格闘技、ランニング。

加嶋 壮研(かしま そうけん)
近畿大学経営学部 2年生
2006年 滋賀県生まれ。
学生起業家
近江兄弟社高校から入学し、現在は経営学部2年。
近大ビジコン2025で起業前の学生が対象のチャレンジ部門で2つの企業賞受賞(常石商事賞・東京海上日動賞)
プラン名:賞状文化を社会に/日本独自の「賞状」が持つ価値を再定義し、新たなコミュニケーションを創造するユニークな視点が評価されました。 現在は個人事業主として活動し近々、株式会社設立を予定。事業は生成AI研修事業。当初は賞状文化普及事業を計画しつつ、法人登記・開業支援プログラムを受講する中で、生成AIの研修事業にピボットしている。

起業を志した、それぞれの原点




——まずは、近大に入学した経緯から教えて下さい。

上仲
もともとは大学に進むつもりがなく、高校を卒業したら就職をしようと考えていました。母子家庭だったので、早く働いて収入を得なければいけない理由があったのです。親戚から「大学くらいは行ったほうがいいんじゃないか」と言われたこともあり、高校の先生に言われるがまま、奨学金を借りて神戸の自宅から通えるところを選びました。 近大に入って良かったですね。ネットワークの広さがあるので、いろんな方とのご縁が繋がって、今があると思っています。

加嶋
僕は高校の頃から起業したいと決めていました。大学では実践的な起業については学べないだろうと思っていたので、ワーキングホリデーで身に付く言葉や行動力、メンタル面を起業に生かそうという考えがあったんです。高校2年の冬までは、卒業後は海外に行こうとしていましたが、近大が起業に力を入れていることを知って、オープンキャンパスに行ったことがきっかけです。成績はギリギリだったので、近大を受けて落ちたらワーキングホリデーにしよう。そう考えて近大しか受けませんでした。オーストラリアかカナダに行こうとしていましたが、合格したので大学に進学することになりました。ただ、実際に見た「KINCUBA Basecamp」は、起業している先輩の話が聞けたり、とても刺激的でした。

——上仲さんは卒業後はどのような道に進まれたのですか。

上仲
2013年に卒業して、その年の9月にサンディエゴ大学に留学しました。学生ビザで4年間、そこで物販事業を始めることになったんです。今ほど円安ではなく、1ドルが100円ちょっとだった時代。アメリカの商品を買って日本に届けるということを、見よう見まねでやるようになりました。それが面白かったんですね。




上仲
学生ビザでしたが、申請をすればアメリカ国内で働くことが可能なOPTビザを取得することができました。たまたま留学前に日本で出会った社長さんがいて、アメリカに渡ってから「お前、今は何してんねん」と連絡を頂いたんです。「物販をしています」と話したことがきっかけで、その社長さんの協力もあって、楽天USAを立ち上げることになりました。 その社長さんは、留学の斡旋とスポーツマネジメントをしている方でした。たまたま留学の相談で大阪のホテルでコーヒーを飲んだご縁から、アメリカに現地法人を立ち上げるということでしたので、そこに関わらせてもらえることになりました。スポーツブランドを中心にアメリカのものを日本に送るような流れを作ったんです。 ECでやっているとサイトを作らないといけないので、バナーやデザインは必須になります。影響を受けたのと、やらざるを得ない状況だったので勉強をしました。母子家庭で仕送りもなかったので、生きていくために必死でした。



アメリカで大学生活を送りながら物販事業を立ち上げた上仲さん。自宅兼作業場の家具などはすべて友人などからの貰い物で揃えたそうです。もう1枚の写真は発送していたパッケージ。

実践の場「KINCUBA Basecamp」で磨かれる起業家精神

——それが起業家としての第一歩だったのですね。加嶋さんは今、どのようなことを学んでいますか。

加嶋
大学では経営の勉強をしています。経営戦略本部長の世耕石弘さんと、高校時代に僕が教わっていた先生が学生の頃からの幼なじみだったそうです。世耕さんが「KINCUBA Basecamp」にいらっしゃった際に、僕が自己紹介をして高校名を伝えたところ「あいつ知ってる? 同級生やねん」と声をかけて頂きました。 大学に入って改めて感じるのは実践あるのみ、ということです。挑戦をして、失敗をする。その連続だと思っています。座学もありますけど、それほど生かしきれていないですし、熱も入りにくい。それなら「KINCUBA Basecamp」で実践的なことをやったほうが、自分の身につく。
24時間空いているので、近大は起業を学ぶ環境が整っています。 アイデアを考えてプレゼンをする。リーンローンチパット(新規事業開発プログラム)をチームとしてやっています。お客さんにヒアリングをしていくプログラムや、上仲さんがメンターをしている法人登記・開業支援プログラムはリーンローンチパットより難易度が高く、審査が通れば会社登記の費用を大学が負担してくれます。
いろんなメンターさんのお話を聞くことができますし、有名な社長さんが来て質問ができる日もあったり、そこが「KINCUBA Basecamp」のいいところだと思います。

——メンターとして、上仲さんは学生にどんなアドバイスをしているのですか。

上仲
法人登記・開業支援プログラムが前期、後期と組まれていて、基本的に2週間に1回ペースでオンラインなどでやり取りをしています。彼は「賞状文化」のアイデアを持っていました。具体的に説明すると、営業マンは数字で評価されることがありますが、研究者のように数字だけでは評価できない職業もある。彼のお父さんが研究者なので、「どんな仕事をしているのか知りたい」というのが始まりでした。介護職など、数字だけでは評価しにくい職業を「賞状」を通じて評価できないか。お父さんが「賞状」をもらってきたら、家族の仲がより濃くなるのではないかという思惑が根底にありました。 でもまだ、突き詰められない部分があったんでしょうね。「やっぱり、しっくりこないのでピボット(ビジネス戦略の方向転換)します!」と言うので、無理にやってもアイデアは伸びない。僕としては全否定はせずに、可能性を軌道修正させることが大切だと考えています。
「他社さんはこれをやっているけど、どうだろう?」 そのような声かけをすることで、軌道修正しながら前へ進めてあげる。誰だって「無理」だとか「ダメ」と言われたら嫌じゃないですか。そういう否定的なアドバイスではなく、やり方やターゲットを変えることで前へ進むことができますし、可能性は広がると思っています。 彼は「近大通り」にある飲食店にChatGPTの使い方を教えたら喜ばれた。そこからビジネスの発想を得たんです。

アイデアを磨き、失敗を恐れず挑戦する

——それは具体的にはどのようなアイデアだったのですか。

加嶋
大学のすぐ近くにある「てっぱん部」という焼きそば屋に通っていたんです。
「AIを使ったら、このお店はもっと良くなるんじゃないか?」 そう考えたのがきっかけです。そこから僕がChatGPTの使い方を教えたら、新しい商品が2つくらい生まれたんです。AIに「てっぱん部」の経営状況を伝えて、壁打ちをしていく。お店の人に他の商品を考える時間的な余裕がない中で、新たな商品が誕生しました。結果が伴っているのが嬉しかったですし、AIを使いこなすことで人を感動させることに興味が芽生えました。
BtoC(一般消費者向け取引)でいろんな発想を考えていましたが、BtoB(企業間取引)のほうがいろんな人に影響を与えられる可能性が広がる。ぶどう農園をやっている人にも有償で入らせてもらう経験もしました。
近大通りにある焼きそば屋「てっぱん部」の前で。経営者向けAI教育事業へとつながるアイデアは、ここから広がりました。 ——当初のアイデアである「賞状文化」もビジネスコンテストで表彰されていますよね。

加嶋
近大ビジコンのチャレンジ部門で賞を頂きました。数字では表すことができない評価を「賞状」で残る文化を作れば、もらった従業員は転職の際にも役立つのではないか。人間性の証明になると考えていました。僕のお父さんも仕事のことを家庭で話すタイプではなかったので、賞状をもらうことで子ども目線で親を尊敬できるようになりますし、家族が幸せになると思っていました。 ただ、解決策と課題が擦り合わない問題も出てきました。賞状を渡されたとして、普段、家族に自分の頑張りを伝えない人は、賞状をもらっても家族に見せないだろう。発想することは好きですが、ずれていた部分も見えてきました。ビジネスとしての根本的な「儲かるかどうか」の部分でも、まだ難しい。現在はAIを使った取り組みに変わりましたが、実現可能になったら「賞状文化」についても、またやってみたいと思っています。

——現在、上仲さんはどのような事業を展開しているのですか。

上仲
2017年に帰国してからは業務委託契約でコワーキングスペースの運営に携わりつつ、翌2018年に180株式会社(ワンエイティー)を設立しました。挑戦と失敗を繰り返して、右往左往しながら、現在はブランドのリユース事業を行っています。昨年11月にシステムをローンチ(スタート)したのですが、ECのお客様に対して「ここからどうやって売れるんだろう」と言う現場の声を集めながら、今に至っています。 結局はアメリカにいた頃にやっていた「物販」から「EC」、「リユース」へと点と点がつながったと考えています。 「どうやったら売れるだろうか」「もっと何かできないだろうか」 ビジネスで大切なことは、失敗を重ねながら後付けで分かってきた感じです。


経験が未来のビジネスを生み出す



——今後の展望についてお聞かせください。

加嶋
昨年の10月から個人事業主として事業を始めています。WEB制作として、まずは知り合いの経営者のホームページを作って、継続的にお金が入ってくる仕組みを整えています。僕が育った滋賀県では近江商人の「三方よし」が広く知られていて、その考え方は「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のことで、社会に貢献できてこそ良い商売」と言う発想があります。 現在は「Kash Works」と言う屋号でやっているのですが、経営者向けAI教育事業を展開していこうと考えています。 今年1年間はAI事業を頑張りつつ、そこで稼いだお金で大学を休学して世界を旅したい。世界のいろんな景色を見ながら、AIはオンラインでも教えることができるので事業は継続しつつ、海外で新しいアイデアを磨きながら新規事業を立ち上げたいと思っています。 ビジネスは失敗や経験をしないと分からないこともあるので、できるだけたくさん動くことが大切。行動することでアイデアが生まれる。

上仲
今やっているブランドの公式リユースは、ただのリユースではなくて、お客さんの「ありがとう」が詰まっている事業です。皆さんが使っていたものには何かしらの「思い」があって、その思いを可視化していく。「物」と「思い」が循環するということは、「ありがとう」の循環を作ることです。

——その事業は、日経クロストレンド「未来の市場をつくる100社」(2026年版)に選出されていましたね。

上仲
たまたまX(旧Twitter)にDMが届いたんです。最初は絶対に詐欺だろうと思って無視をしていたら、今度は電話がかかってきました。「御社のサービスが、これからの未来を作っていく可能性がある」という内容で、突然のことでした。すごいことが起きたと、ネットで調べたら「これは本当だ」となりました。ローンチしてから1ヶ月後のことでしたね。

——最後に、お2人から起業を目指している学生へメッセージをお願いします。

加嶋
僕から言えることは起業に興味があるなら大学1、2年のうちからやっておくべきだと思います。3年になると就活も始まるので、どうやって起業をするか、やりたい事業を何にするか、本気で考える時間があるのは1、2年のうちです。環境はとっても大事で、近大にいればその環境は与えられています。

上仲
私も留学をしていたので、世界は見たほうがいいですね。文化やサービスが違うので、若い人たちには世界に出て欲しい。自分の経験から生まれるサービスは、ChatGPTが出した答えとは違うんです。本当のサービスは熱さが伝わってこないといけないですし、自分が経験したことには、その熱さがあります。生活の中から生まれたアイデアや、お客さんの課題を解決する方法など、自分の体験の中にビジネスのヒントがあります。 彼の「賞状文化」のアイデアは自分の言葉で熱がこもっていて、AIが出した答えではなかった。そういう経験や熱さがビジネスのスタートとして大切だということは伝えていきたいです。



近畿大学発ベンチャー起業支援プログラム「KINCUBA」公式サイトはこちら

取材:西尾彰彦
文:益子浩一(株式会社SUN LOGUE)
写真:栗山朋久
編集:株式会社アド・ダイセン

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