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産学連携

2018.03.20

産学連携ビジネスに 大学の経営力(近畿大学4)

読売新聞

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大学
産学連携
研究

「実学教育」の本質は、産学連携にある。近畿大学は企業と学生が組む産学連携を成功させることで収益増加を図っています。もはやビジネス?大学の経営力という切り口から、近畿大学の学生と企業との研究開発に迫ります。
*本記事は2018年2月6日から4回にわたり読売新聞に連載された「ビジネス潮流 大学の経営力」をWEB用に編集したものです。

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国の補助減 研究費を自前で


「いつマツタケが出てもおかしくない。成功すれば世界初の快挙だ」。近畿大奈良キャンパス(奈良市)の農学部研究棟で、応用生命化学科教授の白坂憲章(50)は日々、無数のビーカーをのぞきこむ。マツタケの人工栽培を可能にする培地の研究が3年前から続く。
1970年代以降、多くの研究機関がマツタケの人工栽培に挑んだが、いまだ成功していない。実現すれば大きなビジネスにつながるのは間違いない。

私学助成や科学研究費など国の補助金は減る傾向にある。白坂は「自分で研究費を取ってこないと、研究もままならない時代がくる」とみる。この点、近畿大では企業と組む産学連携の果実として収益が上がれば、大半が担当教授や研究者に還元され、研究費に充当できる。
 

商品化

 
「大学のシンボル・近大マグロで全く新しいグミを作ろう」
「農学部が開発した近大マンゴーの方がいい」
2017年11月、東大阪キャンパス(大阪府東大阪市)で、菓子メーカーUHA(ユーハ)味覚糖(大阪市)社長の山田泰正(46)らを前に、6チーム44人の学生が新商品のアイデアを競い合った。
自ら学内で聞き取り調査をし、味や形、包装のデザインも考えた。若い感性を味覚糖の商品開発に生かす産学連携の一環で、近大マグロの眼球を模した「マグロのめだまグミ」の商品化が決まった。両者はこれまで6種類を商品化し、山田は「味覚糖と近大が次に何を仕掛けてくるか注目されている」と話す。

00年設立の「近畿大リエゾンセンター」が、研究者と企業の橋渡しを担う。センター長の宗像恵(めぐむ)(76)は「大学に『稼ぐ力』が求められている」という。センターや学部には工学博士や弁理士、企業OBなど窓口役となる計8人のコーディネーターがいるが、産学連携で先行する大阪大は約60人、立命館大は47人と人数では及ばない。

その分、近畿大は露出度を高めつつ「機動力」で勝負する。例えば、中小企業など約200社・団体が出展して17年11月に大阪市内で開かれた「ビジネスチャンス発掘フェア」の会場に、カップ麺や化粧品など産学連携で生まれた商品を並べた。主任コーディネーターの武田和也(49)は「企業の経営者と直接会い、接点を増やしたい」と新たな提携先の開拓を狙う。
文部科学省の調査では、近畿大は16年度、民間企業からの受託研究の実施件数で全国首位(257件)だった。受託研究費の受け入れ額は6位で、3億2172万円に上った。
 

実学教育


世耕弘一が近畿大を設立した1949年当時、旧帝国大を中心に大学は純粋な学問の場だとされ、実用を重んじる「実学」は軽視されがちだった。
それでも世耕は「社会に出て役に立つ実学が身につく大学をつくる」と意に介さなかった。大学の経営上も「独立独歩の姿勢を貫くため、学問、研究を収益に直結させて、どこが悪いのか」という言葉を残した。
近大マグロは32年間の研究を経て花開き、大学のブランド力や知名度を高めた。宗像は「建学の精神である『実学教育』の本質は、産学連携にある」と強調する。
その精神が今、生き残りを懸けた「近大革命」の原動力になった。目下の経営事情という側面を超えて、社会生活に役立つ研究成果や人材を継続的に世に送り出す近畿大を確立できるか。実学教育の真価が試される。(敬称略)

国際化に力 海外で勝負(塩崎均学長)



18歳人口は今後、ピーク時の半分になる。国立大は赤字でもつぶれないが、このままでは私立大の半分くらいは消えるだろう。ただ、補助金が多いぶん、国立大は国に縛られる。私立大は経営の問題さえクリアできれば自由度が高く、この利点を生かさない手はない。伸びしろは私立大の方が大きい。
4年連続で志願者数で日本一になれたのは、若者の心をつかみ、学びたいと思う大学になったからだ。大学は本来、授業料で運営するので受験生が増えれば経営が安定する。今後も学生が望むことを察知し、どんどん大学を変えていく。また、近大マグロのように研究成果で稼ぎ、研究費に回すサイクルが大切だ。川に浮かぶ舟と同じで、こぎ続けないと評価は下がる。新しいことを次々とやり遂げたい。

大学に対する固定概念は強く、「関関同立」と偏差値を逆転するには時間がかかる。まだ尻尾をつかんだところだ。近畿大は関関同立より創立が遅く、歴史差があるのだから急ぐことはない。
何十年か先に我々がリーダーシップをとれる大学になるには、国際化が欠かせない。2016年に新設した国際学部は全員が1年間海外留学する。海外協定校も5年強で5倍の240校になった。関西や国内だけでなく、海外で勝負できる大学を目指す。
 

企業から資金

 
文部科学省によると、2016年度に大学が企業から受け入れた研究資金(共同研究や受託研究、治験など)は848億円で、14年度の約1.2倍に増えた。ただ、企業からの研究資金は1件あたり300万円程度で、1000万円以上が多い米国とは開きがある。政府は産学連携を進めるため、昨年6月に閣議決定した「未来投資戦略」で、企業から大学への投資を25年までに14年比で3倍に増やす目標を掲げた。

(2018.02.27 読売新聞 大阪朝刊)

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