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2017.03.07

どうなる『Uber』、『Airbnb』。日本的シェア文化創造への挑戦

Kindai Picks編集部

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オリジナル記事
KINDAIサミット
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Uber
Airbnb

【高島宗一郎/福岡市長×重松大輔/スペースマーケットCEO×山下智弘/リノべる代表取締役×寺川政司/建築学部准教授】
世界では『Uber』や『Airbnb』をはじめとするシェアリングエコノミーの時代が到来しているが、日本ではまだまだ浸透していない。その理由と解決策は? 産官学それぞれのトップランナーが、日本におけるシェアリングエコノミー普及への挑戦について語った。

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●スピーカー
重松大輔/株式会社スペースマーケット 代表取締役CEO
早稲田大学法学部を卒業。2000年、NTT東日本に入社。2006年、株式会社フォトクリエイトに参画。2014年、全国の貸しスペースをマッチングする株式会社スペースマーケットを創業。また、一般社団法人シェアリングエコノミー協会の代表理事も務める。

山下智弘/リノべる株式会社 代表取締役
1997年、近畿大学理工学部卒業。2003年にデザイン事務所field、翌年には株式会社esを設立。2010年、中古住宅のリノベーションに特化した「ノベる株式会社」設立し、代表取締役に。一般社団法人リノベーション住宅推進協議会の理事も務める。

寺川政司/近畿大学建築学部 准教授
近畿大学理工学部を卒業。神戸大学大学院博士課程を修了。1998年、CASEまちづくり研究所を設立。コミュニティアーキテクトとして、新たなハウジングやまちづくりに従事。専門はハウジング、まちづくり、都市・地域計画。2004年「現代長屋TEN」で大阪市ハウジングデザイン賞を受賞。

●モデレーター
高島宗一郎/福岡県福岡市 市長
獨協大学法学部卒業。アナウンサーを経て、2010年に福岡市長に就任。2014年、史上最多得票で再選。国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」を活用し、スタートアップを牽引。また、2019年ラグビーワールドカップ及び2021年世界水泳選手権の開催誘致に成功。

*肩書きはセッション開催当時のものです


<KINDAIサミット2016 第3部分科会F「遊休資産等積極的活用~シェアリングエコノミーの攻め方と課題~」より>


●『Uber』『Airbnb』そして『メルカリ』。広がるシェアリングエコノミー



高島:まずは「シェアリングエコノミー」というのが何なのかを教えていただけますか?

重松:その名の通り、モノや空間をシェアするサービスですね。有名なのは自家用車をタクシーとして配車できる『Uber』と、家をホテルとして貸し出せる『Airbnb』。ものすごい勢いで成長していて、時価総額はそれぞれ7兆円と3兆円です。

他にも、個人が自由にフリーマーケットに出店できる『メルカリ』ですとか、個人からお金を集めるクラウドファンディングも、シェアリングエコノミーと言えますね。

高島:どれくらい普及しているんですか?

重松:日本ではまだ利用率5%ですが、中国では50%くらいいってますね。中国には、1,500万人くらい車の相乗りサービスのドライバーがいますから。北京だともう手を挙げてもタクシーは止まってくれません。配車アプリで呼ばないと。

寺川:日本の場合、過疎化した地域をどう活性化していくのかという課題があります。今、空き家が820万もあるんです。これをシェアサービスでどう機能させていくのかがテーマですね。

高島:建物については、今あるものを新しくリノベーションしようという発想もありますね。山下さんは、まさにそういった会社をされていると。

山下:そうですね。古くてそのままでは住めないような家はたくさんあるので、それをこれから住む人に合わせて作り直すのがリノベーションです。今は、東急電鉄さんと一緒にビルを丸ごとリノベーションするのもやっています。小さくて古いビルはたくさんあるのですが、ただ取り壊して新しく建てるのではなく、あるものを活かしながら「そこで何をするのか」「どう使うのか」も含めて考えていくんです。



高島:シェアリングエコノミーができるようになったのは、SNSの存在が非常に大きいですよね。個人と個人が繋がることができる。

重松:誰でも使えるというのがポイントですね。当社では、セミナースペースや会議室はもちろん、お寺、野球場、飲食店、家庭の庭など、あいてる場所は何でも貸し出すサービスをやっています。

例えば、東京の町田にある古民家では、月に50万くらい稼いでいるんですよ。コスプレの撮影会で使われているんです。『刀剣乱舞』というゲームのキャラクターが流行っていて。奈良にある廃校もコスプレーヤーの撮影会で土日は予約が殺到していますね。

高島:なぜコスプレは古民家や廃校なんですか?

重松:やっぱり写真映えするんですよ。インスタ映えするというか。あと、町田については首都圏から1時間半くらいで行けるところにあるのも成功要因でしょうね。

高島:使わない建物は、マイナスの資産だし取り壊すのも大変だと思ってしまいがちだけど、それで月に50万円稼ぐこともできるということですね。


●規制緩和している間に、海外にやられていく。

高島:シェアリングエコノミーをやろうとすると、例えば既存のタクシー会社の人たちからは「今まで自分たちは二種免許を取ってやってきたのに!」という反発が出ますよね。あるいは、家の隣にコスプレの人がいっぱい来ると、おばあちゃんが怖がって買い物に出られないとか。

寺川:大阪でも空き家に関する条例ができましたけど、1週間以上泊まらないといけないとか、いろいろな制約をつけていますね。既存の制度とどう結び付けていくのかは、大きな課題だと思います。

重松:そういった問題を解決するために立ち上げたのが、シェアリングエコノミー協会です。現在120社くらい登録していて、弁護士なども一緒になって様々な問題を話し合っているところです。例えば「安全性は大丈夫か」とか「税金はどうやって徴収するのか」とか。

高島:法的な整備が遅いのは、要するに過去との整合性を取らないといけないからなんです。これまで規制してきたことを急に緩和するためには、それなりの理由が必要になる。

本当は理屈でこじつけるのではなく飛躍させる必要があるんですけど、国→都道府県→市町村区と下にいけばいくほど、利害関係者と近くなっていくので説得するのが難しくなります。例えば『Uber』にはタクシー協会が、『Airbnb』には旅館組合が反対するわけです。

旅館業法施行令が改正されましたが、そこには具体的なことは何も書いてありません。結局は各自治体の条例に任せている。だから、地方の議員が反対派の圧力を受けたら骨抜きになってしまうんです。先ほどお伝えしました通り、地方の方が現場との利害関係が強いので、本当は国がやらないとダメなんです。

寺川:今の社会ですと、飛び越えるのはかなり難しいですよね。私は事例を積み重ねていけば、結果的に政治や行政が動くのではないかと考えています。

高島:飛び越えるためには「社会課題を解決する」という大義名分を作る必要があります。『Uber』や『Airbnb』を都市部でやろうとすると、タクシー協会や旅館組合と競合しますが、地方には駅に着いてもタクシーがいないようなところがありますし、空き家もたくさんあります。そういった地域の課題を解決するという大義名分で、飛躍していくというのが大事かなと思います。

寺川:行政から言うだけだと賛同を得られないので、本当に地域に貢献してくれていると、そこにいる人たちに気づかせる必要がありそうですね。

重松:一方で、『Uber』も『Airbnb』も既に巨大なマーケットを作っているわけで、うだうだとやっている間に外資にごっそり持ってかれているという事実もあります。あまり悠長にやっている場合ではないかなと思いますね。

山下:私たちのようなベンチャー企業は、そういった焦りがものすごくあるんですよ。「外資に持っていかれてるけどいいの?」って。


●日本には昔からシェアの文化があった!?

高島:会場にいる方から質問はありますか?

質問者:シェアリングエコノミーについては、国はどこの省庁が管轄しているのでしょうか?

重松:国交省の中にある観光庁は「どんどん民泊やりましょう」という感じですが、厚労省は「そんな余計なことはしてくれるな」と。経産省は新しいビジネスで税収が増えるので推進していますね。バラバラなので、やっぱりリーダーシップを持っている政治家が必要ですね。

高島:それができるのは唯一、首相官邸しかありませんね。

山下:私はリノベーション推進社団法人というのをやっていて、住まいをリノベーションされた人たちの声を集めて、去年やっと国交省の認定団体になったんですよ。やっとこじ開けたという感じです。

高島:業界や分野ごとに攻め方は違うのかもしれませんね。

寺川:政治家がメッセージを出すというのは最終的には大事なことですが、いろいろな協会やコミュニティの人の話を聞くと、実は求めていることは一緒だったということがあります。今までケンカしていた人たちが「これなら一緒にできる」というのを見つけて繋がると、政治も動くんですよ。そういう動かし方もあるかなと思います。



質問者:そもそも日本人は閉鎖的な社会で、シェアリングエコノミーは馴染まないという可能性はありますか?

高島:たしかに、地方でも人口減少を食い止めようとしているのに、いざ規制緩和しようとすると「ちょっと待った!」ということになりますね。自分たちのコミュニティにいきなり知らない人が来られたら困るということで。

重松:世代によってかなり差がありますよね。35歳くらいまでのインターネットネイティブな世代は、シェアすることに積極的なんですよ。シェアハウスに住んでる人も結構いますし、車も買わないし、当たり前のようにメルカリでモノを売り買いする。そういう意味では、シェアに対するハードルは下がってきていると思います。

高島:一回やってみて便利だとわかったら、気にしなくなるのかもしれませんね。ネットで買い物する時、最初はクレジットカードの番号を入力するのに抵抗していた人が、一度使ったら全く気にしなくなるみたいな。

寺川:私は、日本は歴史的にシェアをしてきた文化だと思っているんです。ご近所さんと醤油の貸し借りをしたり、お風呂屋さんがあったりしますからね。これから新しいシェアサービスがどのように日本の文化に溶け込んでいくのかは、注目したいですね。


●善し悪しではなく、どう活用するか



重松:3年前くらい前に起業のアイデアをずっと考えていたのですが、その時参考にしていたのが、アメリカにある『Yコンビネータ』というベンチャーキャピタルの投資先リストです。そこにトピックとして出ていたのがシェアリングだったんです。

ちなみに『Airbnb』もYコンビネータが出資しているのですが、当初は「自分の部屋を他人に貸すなんて流行るわけないだろ!」と思っていたらしいです。ビジネスのアイデアって最初はクレイジーに思えますが、時代の潮流をつかむと一気に広がるんですよね。

シェアリングエコノミーのビジネスはまだまだこれからも出てきて、個人と個人が繋がって、お互いの信頼が可視化されて、一般の人でも会社や専門家に勝てるようになっていきます。そういったサービスは、ある意味、今後の生活のインフラになっていくと思いますので、例えば鉛筆1本をメルカリで売ってみるとか、空いている家をスペースマーケットで貸し出してみるとか、何でもいいのでまずやってみて欲しいなと思います。

寺川:私は「まちづくり」を専門的に研究しているのですが、今日お話をしていて、地域の社会問題、例えば防災や子育てにおいても、シェアリングエコノミーの可能性があるのかなと思いました。

そこからまた新しい事業を起こせたり、雇用に繋がったりするといいですね。みなさんもぜひ「自分には何ができるかな」と考えてみてください。

山下:不動産の世界では、昔から「買うべきか借りるべきか」というテーマがあるのですが、私はそれはどうでもいいと思っているんです。なぜかと言いますと、買ったとしても固定資産税を払って国から借りているようなものですし、もっと言うと、もともとは地球のものですから。単に「それをどう活かしていくか」という話なんです。

新築の家を建てている会社から見ると、リノベーションをしている私たちはあまりいい存在ではないでしょうね。でも本当は、私たちは古い住宅を活かしているので、新しい建物も作ってもらわないと今後困ることになるんです。リノベーションする対象がなくなりますから。でも、今はさすがに新築が建ち過ぎていておかしいと思っているので、そういうメッセージを出している。結局は、適正な状態にしましょうということです。

シェアリングエコノミーが出てきたということで、賛成派と反対派が敵・味方みたいになってしまっていますが、もう少し俯瞰して見ることが大切なのかなと思います。

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