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もう「すいませーん」で無視されない!音響学と言語心理学の専門家と考えた店員の呼び方3箇条

すいません

2018.03.20

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オリジナル記事
コラム

飲食店などで店員さんを呼ぶとき、何と言って呼び掛けますか?多くの方が「すいません」だと思いますが、なかなか聞き届けてもらえず、何度も呼び掛けるうちに恥ずかしくなって近づくまで待つ……なんてことはないでしょうか。
が、ちょっと待ってください、そもそも呼び掛けって「すいません」でいいんでしょうか!? もっと適切な言葉ってないものなのか。そこで、音響学と心理言語学の専門家から見解を伺って、実際に検証してみました。



「すいません……」



「すいませーん!」



「すいません!! ってばー!!」……



こんにちは、店員に無視されがちなライターのネルソン水嶋です。

お店で店員さんを呼んでも気付かれない! こんな状況、よくありませんか?

声を出せば出すほど「あの人、無視されてる……可哀想……」と周りに思われているんじゃないかと気になって、近づいてくるまで待ってしまうこともしばしば。この気持ち、共感してくれる人も多いはず!

しかし、よく考えてみるとそもそもですよ。

「すいません」じゃなくてもいいんじゃないの……??


呼び掛ける言葉として「すいません」が定番になっているだけで、そうでなければいけない理由はありません。それにほら、「す」って、すきま風みたいで弱々しいじゃないですか! そんな軟弱な字に、声掛けという大役を任せていられるかー!

そこで、「すいません」より気づいてもらえる言葉を専門家に聞いてみました。




音響学の専門家が考える声掛けは……!





まずは、日本音響研究所・所長の鈴木創さんにお答えいただきました。

日本音響研究所は、グリコ森永恐喝事件やウサマ・ビンラディンの公開ビデオの分析といった、重大案件の音響解析などを行なっている、その道の権威です。なお、奇遇なことに、前・所長の鈴木松美さんは近畿大学理工学部の出身。

日本音響研究所では基本的に無償での分析や取材は行っていないそうですが、鈴木さん自身も「すいません」と呼び掛けても店員さんに気づかれなかった経験から考察されたことがあり、今回特別に見解を聞かせていただけることになりました。

専門家も気になっていた話題だったのか……。

まず、『すいません』はローマ字表記だと『SUIMASEN』となり、『S』が2回出てきます。この『S』の成分は、母音に比べて音圧(音による圧力の大気圧からの変動分)が低いのです。



音圧が低いと聞き取りづらいのですね!



はい。さらに飲食店内のノイズ源と同じ周波数帯に分布するものなので、聴き手側とすると刺激が少なく聞き取りづらいことになります。ノイズ源には、客の話し声や、有線のBGMなどがあります。




「すみません」という言葉は、ノイズ源に覆われる格好の餌食だったのか……!

では……「すいません」よりも気づいてもらえやすい呼び掛けはあるのでしょうか。



『母音ではじまる』『店内ノイズとは特徴の異なる子音を使う』ということから考えた結果、私は「お願いします」を多用しています。母音の『お』ではじまるために音圧が稼げること、途中の『が』では『G』の子音にノイズとは異なる刺激があり、「すいません」よりも格段に気づいてもらえるようになりました。

「お願いします」ですか、確かにそれは気づきそう!




日本音響研究所・所長、鈴木さんの見解:「お願いします」


お願いします、思いつきそうで思いつかなかった……。ひとつの結論が出ましたが、ここでさらに別の視点からも意見を聞きたい! ということで、近畿大学の准教授からも見解を聞かせていただくことにしました。



心理言語学の専門家が考える呼び掛けは……!




続いて、近畿大学経済学部・准教授の菅井先生にお答えいただきました。

菅井先生は、人が言語をどのように知覚しているか、音声学や記憶の関連から探る『言語学関連分野』を研究されている方。『飲食店における客と店員』という状況を踏まえて、より気づかれやすい言葉を教えていただきます。

「すいません」のままでは目的や対象者が明らかではないため、反応を得づらいと考えられます。店員に対して、『自分が話しかけられている』と思わせることが重要です。


確かに、聴こえていたとしても、忙しい状況だと無意識に流してしまう可能性だってありますよね。



そうです。そこで、「店員さん」「マスター」「お兄さん」「お姉さん」といった言葉を使うことで、対象者を絞り込む呼び掛けが有効だと言えるでしょう。


なるほど!男性ばかりの中で店員だけが女性だったり、またその逆だったりしたら、「お姉さん」「お兄さん」はひとりだけになりますね。


あとは「注文」などと頭に付けることで、焦点を絞り込むという方法もあります。



年配の方でたまに「注文!」とだけ言う人もいますが、理に適っていたのですね。




近畿大学経済学部・准教授、菅井先生の見解:目的と対象者を絞り込む



仮説を引っさげ、近大の近くにある食堂『タコシュー』で検証!



・お願いします
・目的と対象者を絞り込む


二人の専門家からお聞きしたこの言葉から、実際に検証したいと思います!



検証場所は、近大東大阪キャンパスのクラブセンター近くにある、体育会系男子に人気のガッツリ系食堂『タコシュー』へ。

店内のノイズ音が多く、常に賑わっているため「すみません」がなかなか通らない店として知られているようです。



検証のために、現役近大生の小泉さん(左)と谷本くん(右)にご協力いただきました!


検証1. ふつうに「すいません」と呼んでみる

まずは普段通り、「すいません」と呼んでみてもらいましょう。



すいませーん





……反応なし。

うん、まぁ、これは想定通りだ。


検証2.「お願いします」と呼んでみる

ではここで早速、「お願いします」で臨んでみたい!

お願いしまーす





……これも反応なし……って、あれ?

いきなり仮説にストップを掛けられてしまったぞ! ……どないしよ。


検証3. 店員さんを見て「すいません」と呼んでみる

マズイ、いきなりどん詰まったよ。



もう一度呼んでみましょうか?



うーん、結局結果は同じなんじゃ……



すいませーん



(!)はーい




気づいとるやんけ!!?


え、なに!さっきと違うやん!なんか違った??



あぁ、そういえば、1、2回目と違って、店員さんと目が合いましたね。



それやー!





このあと「(店員さんの目を見て)お願いします」でも気づいてもらえた。

そうか、呼び掛けの言葉ばかり気にしていたけど、『視線』も大事ってことか……!



ちなみに、「4番テーブルオーダーお願いします」というトリッキーな呼び掛けも、目が合ってさえいれば気づいてもらえることが判明。

そこで調子に乗って、たまたま知っていたベトナム語のすみません「チオイ!」でも試してみましたが、それは気づかれないというか……伝わりませんでした。


このあとも検証をつづけ、下記のことが分かりました!

・「すいません」と「お願いします」は同程度の反応、「店員さん」は効果あり。
・「お姉さん」より「店員さん」の方が反応を得やすい、やはり対象者が絞られるから?
・「店員さーん」と、音を伸ばした方が効果的。
・「すいません」も、「すいませーん」と伸ばしたら気づいてもらいやすかった。


呼び掛けられた当事者である店員さんにも話を聞いてみましょう!


タコシューのベテラン店員、西前さん。

西前さん自身は、呼び掛けで気づくものと気づかないものって何が違いますか?



私は、お客さんがこちらを見ているかどうかで判断してますね。声が聞こえて振り向いても、誰もこちらを見ていなければ誰が言ったのか分からないため、「気のせいかな?」と思ってしまうこともあります。


ということは、やはり『視線』は大事な要素だったんですね……!



ご協力、ありがとうございました! 何度も呼んですみません!



店員さんに気づいてもらいやすい3箇条は、これだ!


検証後、日本音響研究所の鈴木さんから再び見解をいただきました。

店員さんが発声者の方を向いているということは、耳の指向性がよいということになります。耳介(耳の頭から飛び出ている部分)が前方からの音をより拾うために存在しているので、これが後ろ向きだと届く音圧は激減してしまいます。あと、「さーん」と伸ばすことは、「あ」の口の形が最も声の放射状態が良いので、その母音を伸ばせばより効果的だと言えるでしょう。


この結果と見解から我々が導き出した最強の呼び掛けは……

1.店員さんがこちらを向いているときに
2.発声者が自分だと気づいてもらえるように手を上げて
3.店員さーん、お願いしまーす!(相手を絞り込む、「あ」の母音を伸ばす)



(終わり)


<取材協力>
日本音響研究所
タコシュー

ライタープロフィール
ネルソン水嶋
ベトナムに住むライター。ドリアンを装備したりダチョウに乗ったり札束で風呂を満たしたりしている。写真の装備はドリアンと見せかけてドリアンです。
http://www.vietmaru.com/


編集:人間編集部



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