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2017.12.01

ハンググライダー学生ナンバーワンの名草慧さん“飛びたい欲求”が世界頂点への上昇気流となるか

Kindai Picks編集部

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スポーツ
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オリジナル記事

ハンググライダーの全国学生選手権で優勝を重ねる、近畿大学経営学部4年生の名草慧(なぐさ あきら)さん。幼少時代から持っている“空を飛びたい欲求”に従ってハンググライダーを始めると瞬く間に学生トップ選手に。2016年2月、そして2017年3月に行われた全日本学生選手権でそれぞれ優勝。もはや“学生では敵なし”の彼にとって、目指す日本人初の世界チャンピオンは決して手の届かないものではなくなっている。そして2年生の時に自ら復活させたハンググライダーサークル「リッジライダーズ」も学生団体1位を記録。彼の周囲では今、熱い上昇気流が沸き立っている。

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【プロフィール】
名草 慧(なぐさ あきら) 近畿大学経営学部4年生
近畿大学に入学するとともに、和歌山県にあるトノエアーハンググライダースクールに入る。2年生時に、かつて近畿大学にあったハンググライダーサークル「リッジライダーズ」を復活させる。2016年の2月に行われた「全日本ハンググライダー学生選手権2016 in 紀の川」で優勝。「2015年度ハンググライディングリーグ」でも優勝を収める。さらに2017年3月に行われた全日本ハンググライダー学生選手権 in 耳納(かっぱかっぷ)」においても最上級エキスパートクラスで1位に。


【ハングライダーの基礎知識】
25~35kg程度のグライダーによって滑空するスカイスポーツ。スピードはグライダーによって違うが、30km~120km程度まで出る。高度2000m以上、距離としては何百kmも飛ぶことができる。方向転換やスピードコントロールは体重移動によって行う。A・B・C級練習生、パイロット、クロスカントリーパイロットという5段階のライセンスがあり、インストラクターの無線誘導に従いながら単独フライトできるのはB級練習生から。パイロットになれば、飛距離の制限などはあるが単独で自由に飛ぶことができる。クロスカントリーになれば距離制限もほとんどない。一見危険なスポーツに思えるが、死亡事故の発生率は交通事故より低いといわれている。始める際の初期費用は「初級機のグライダーなどの装備購入費、スクール費などもろもろ含めて60万ぐらいだと思います」(名草)
大会ではその日の気象条件に合わせて、いつくか定められたGPS上のターンポイントを通過し、いかに速くゴール出来るかを競う。
レースは当日に1000点満点で得点化され、日本の大会であれば50~70kmのレースを4日間、世界選手権であれば100~200kmレースを10日間行い、その総合得点で順位をつける。
例えば途中で降りてしまった場合などは、タイム得点はつかず、そこまで飛んだ距離得点のみがつく。




ただただ空を飛びたかった。飛んでみたら想像以上の世界だった。

ハンググライダーシーンで日本全国から注目を集めている名草さん。学生リーグではナンバーワンの揺るがぬ地位を確立し、全日本トップ、そして世界チャンピオンへの階段も確実に上っている彼の第一印象は、爽やかで優しそうな好青年。しかしハンググライダーについて語りだすと、彼の中にある空への熱い欲求、そして世界頂点に向けての揺るぎない信念がにじみ出てくる。トップ選手ならではのオーラが上昇気流として立ち上ってくる。

「子供の頃から、ただただ空を飛びたいという欲求が強い子でした。なぜそう思うようになったのかはよく分からないのですが、睡眠欲や食欲と並ぶぐらい、その欲求が強かったですね。そして中学生の時には、将来ハンググライダーをやると心に決めていました。中学生当時、20歳の自分に向けての手紙を書いたのですが、ちょうど20歳ごろにそれを偶然見つけて読み返してみると『もう俺は空を飛んだかい?』と書いていましたね(笑)」

そして近畿大学に入学と同時に、和歌山県にあるトノエアーハンググライダースクールに入る。そしてついにハンググライダーで空を飛ぶことができた。

「始めて飛んだ時は、僕が求めてたんはこれや!と思いました。そしてさらに、1000m以上も高く飛べたり、何十kmも遠くに飛べたりすることは想像以上の世界でしたね。1000m以上高く飛ぶと、もう地表はリアルgoogleマップみたいですよ(笑) 」



ハンググライダーからの景色というのは、普段の生活では決して見ることができないもの。空を飛びたいという強い願いを持ち続けていた彼にとってはなおさらの絶景だろう。

「特に印象に残っている景色としては、初めて一人で飛んだ時の夕景ですね。夕焼けに包み込まれるような感覚は忘れられません。もう1つは、初の海外戦で出場した2016年のプレ世界選手権 in ブラジリアでゴール出来たときの景色です。そこでは湖に囲まれたブラジルの首都のど真ん中にある公園がゴールだったのですが、美しい湖を超えて高層ビルが立ち並ぶ都市に滑り込んでいく景色には本当にシビれました・・」



名草さんのフライト|絶景のブラジリアゴール!


学生トップとしての確固たる自信で社会人トップ選手との差を埋められるか

名草さんは、4年生に上がった時に2年間休学をしている。もちろん、より多く飛ぶためだ。そして、2016年の2月に行われた「全日本ハンググライダー学生選手権2016 in 紀の川」で優勝し、「2015年度ハンググライディングリーグ」でも優勝を収めた。さらに2017年3月に行われた「全日本ハンググライダー学生選手権 in 耳納(かっぱかっぷ)」においても最上級エキスパートクラスで1位。まさに全国の学生リーグにおいては敵なしの強さを示した。しかし社会人も含めてのランキングでいえば、2016年度で19位。彼自身もまだトップクラスの選手とは差があると感じている。

「実際、僕は今、全国の学生のなかでも1番だという自信がありますが、2年間も休学して普通の学生よりも多くの時間を飛んでいるんですから当たり前だと思っています。そして、やはり社会人トップの選手に比べるとまだ技術に差がありますね。気象条件における判断のよさ、うまく強い上昇気流をとらえて素早く高い位置に持っていくスキル。そういった部分がまだまだです。ハンググライダーというのは滑空して進むもの。つまり、まず上昇気流で高い位置に付けてから滑空して進む、また高い位置に上がって進む、ということの繰り返しなのです。なのでどれだけ素早く高い位置に行けるかが重要なんですよ。当然、気象に関することも勉強していますが、まだトップの選手の動きを見てから判断してしまっている。後手に回ってしまっているんです」

こういった知識や経験が必要なスポーツであることから、選手のピークは30~40代。名草さんもまだまだこれからということだ。

「日本人初の世界チャンピオンになることが僕の目標です。2017年の8月に行われたブラジルの世界選手権の本選にオープン選手(国別の団体戦には参加しない選手)として初出場し、世界のトップ選手との差を肌で感じてきました。そこで得た経験をもとに、これから自分の足りていないスキルを磨いていきたいと思います」

彼が所属するトノエアーハンググライダースクールのインストラクターは、外村仁克(とのむら よしかつ)氏。飛行時間3000時間、世界戦でも活躍したハンググライダー界の重鎮だ。彼に名草さんについて聞いてみた。

「ナグは、僕みたいなヤツですね。とにかく飛んでいるのが楽しくて仕方がない感じがね。親戚に“鳥”がおるんとちゃうか、と思うぐらい(笑)。それと、単に空を飛べたらいい、というのではなく上を目指してやるべきことをどんどんやっていくところ。2年後の世界選手権には、オープン選手ではなく正式選手として出られるようになるのではないかと思います。まあ本当に世界でトップを狙うにあたっては、まだまだ気象のことや戦術のことを研究せなあかんと思いますが。うちのスクールには女子世界選手権で日本人で初めて優勝した礒本容子というヤツもおるし、その姿を見て今後も彼は成長していくと思いますよ」


トノエアーハングライダースクールのインストラクターで、日本選手権優勝経験もある外村氏


自ら復活させたサークルが団体としても活躍
メンバーそれぞれの上昇志向が結果を生んだ


名草さんは、10年前にはあった、近大ハンググライダーサークル「リッジライダーズ」を2年生の時に復活させた。このサークル自体の活躍にも目を見張るものがある。名草さんは設立の経緯を語った。
「僕が近畿大学に入ってハンググライダーをやろうと思った時、近畿大学にサークルがありませんでした。実は大阪大学にもハンググライダーのサークルがあって、インカレで他大学でも参加できたのですが、このサークルは毎週末鳥取砂丘まで通っていたんです。これは遠いなぁと。やっぱり自分自身で近大のハンググライダーサークル「リッジライダーズ」を復活させようと心に決めました。そして2013年、2年生の時にサークルを復活させました。最初はたった一人という状況だったのですが、友人に手伝ってもらってビラ配りから始めました。そして2014年になって、クロスカントリーパイロットのライセンスを持っている中井雅典くんなどが加わってくれて、そこから加入者が広がっていったという流れで、今は11人が在籍しています」

先述した「全日本ハンググライダー学生選手権 in 耳納(かっぱかっぷ)」においては、リッジライダーズの中西亮太さんも1st(中級者)クラスにて1位。さらに1st(中級者)クラス年間も1位を獲得。2nd(初級者)クラスでは塚崎圭一さんが4位。サークルとして団体1位も獲得。近大リッジライダーズが圧倒的な成績を収めて全国制覇した。今後は、まだ達成できていない年間のサークル1位を目指す。なぜ活動開始から間もないサークルが、ここまで活躍できるのか。名草さんはその理由をこう語る。

「サークルメンバーは、皆でうまくなろうという意識を常に持っています。失敗したら原因をしっかり検討する。次の大会までには何をしなければならないかの目的意識をしっかり持つ。それが結果につながっていると思います。現在年間1位は九州のサークルなのですが、、僕らの方が練習環境は整っていると思うので次は勝てると思っています。なぜなら僕らエリアは紀の川フライトパークというフライトエリアで、関西圏では最もフライト条件がよいとされており、日本一を決めるような大きな大会もここで行われています。日本海側にもフライトエリアがありますが、冬は雪もよく降りますので条件が悪くなるのです。この紀の川では冬でも飛べますからね。100m上昇するごとに0.6度下がるといわれていて、上空はめちゃめちゃ寒いですけど(笑)。完全防寒で飛んでいます」




世界チャンピオンへの道
残された現実的な課題とは


名草さんが今後も世界に向けて活躍するためには、もう一つ重要な課題が残っている。彼は4年生。本来なら就職活動で内定のひとつでももらっている段階だ。

「なかなかスポンサーが付きにくいスポーツですが、冬の間だけ働ける職を見つけたり、スポンサードしていただけるように、地道に自分を売り込んでいくなどして、自分の目標のためにこの問題を何としてもクリアしていきたいと思います。」

大会においても大勢の観客が押し寄せることはないため、企業としても資金援助がしづらいスポーツ。何とかこの課題をクリアして、世界チャンピオンへの歩みを確実に進めてほしいところだ。

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