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非行少年は近代化の証? 中高生がグレる2つの理由

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Kindai Picks編集部

2017.07.03

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コラム
オリジナル記事
犯罪心理学

小学生の時は普通の子どもだった同級生が、中学に入ったら不良に…。なぜ中高生は非行に走るのか。その理由を犯罪心理学の専門家がデータから紐解く。

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●プロフィール
中川知宏(ナカガワトモヒロ)
近畿大学 総合社会学部 心理系専攻 講師
東北大学大学院修了(修士・博士)
専門は犯罪心理学


海外でも、中高生になると非行が増える

中高生になると非行に走る子どもが増えるというイメージをお持ちの方は多いと思います。実際にデータを見てそれを確認してみましょう。



横軸は年齢、縦軸はその年齢の中で犯罪を経験している人の割合を示しています。
12歳から15歳くらいにかけて非行少年の割合が急激に増え、その後減っていますね。アメリカの犯罪学者モフィットは、この年齢的変化を「年齢犯罪曲線」と名付けています。実はこういった現象は近代国家では共通して見られ、アメリカでも同じような曲線を描きます。

さらにモフィットは、なぜこういった曲線を描くのかを、非行少年を2つのタイプに分類することで説明しようとしました。ひとつ目は年齢に関わらず問題行動を起こし、生涯にわたって犯罪に関与している「生涯一貫型」で、もうひとつは中学生くらいになると急に荒れて、高校を卒業する頃には社会生活に戻っていく「青年期限定型」です。


社会システムと心身の成熟のギャップが非行の原因に

それでは、「生涯一貫型」の非行と「青年期限定型」の非行の特徴を、比較してみましょう。



まずは性格について。「生涯一貫型」は攻撃的で、暴力など対人関係に起因する問題行動が多く見られる傾向にあります。一方「青年期限定型」は、攻撃的であったりそうでなかったりとバラツキがあり、一定期間で非行から足を洗うのが特徴です。

行動については、「生涯一貫型」は詐欺や窃盗などあらゆる犯罪に関与し、攻撃的な性格であるため必然的に人間関係は浅くなり、約束を守る、お返しをするといった人間関係のルールに対する意識も希薄です。一方、「青年期限定型」はクラブ活動やサークル、地域の行事といった合法活動にも関与しています。

「生涯一貫型」は絶対数が少ないためはっきりとした原因はわかっていませんが、非行に走る原因として、神経生理学的な要因があるのではないかと考えられています。例えば、周産期(出産前後の期間)に栄養不足やストレス過多などによって脳がダメージを受け、これがその後の発達過程に悪影響を及ぼしている可能性があります。

一方「青年期限定型」は、マチュリティ・ギャップが原因だと言われています。マチュリティというのは”成熟”という意味で、これは身体の成熟も心の成熟も含みます。中学生になると身体は大人になっていくにもかかわらず、例えばバイクも車も運転できず、お酒もタバコも禁止、他にも法律や校則でいろいろなことを制限されています。こういった状況の中で適応するための非行に走っているではないか、そして年齢を重ねていくとそれまではできなかったことが解禁されるため非行をやめていくのではないかと、モフィットは考えています。


2つの非行タイプは、相互に利用する関係にある

「生涯一貫型」は他の子どもたちから無視されたり拒絶されたりして一人でいることが多いのですが、思春期になるとある特定のグループの中でリーダー的なポジションを取ることがあります。これは「青年期限定型」の子どもにとっての非行の役割モデルとなり、どうやって悪さをするかを学習する対象となるためです。こういった関係は社会的擬態と呼ばれています。擬態とは、動物行動学の用語で「周囲の環境や他の動物にあわせて色や形を模倣すること」を意味しています。

また、「生涯一貫型」からすると「青年期限定型」がいることで自分がより中心的な存在になることができ、他の人たちへの影響力を高めることができます。つまり、「生涯一貫型」「青年期限定型」は情緒的な相互関係にあるわけではなく、道具的な関係で一定期間しか繋がってないということです。


青年期限定型の非行は、近代国家の副産物!?

先ほど説明しました通り、「青年期限定型」の非行は心身の成熟と社会システムのギャップに原因があるため、近代化するに従って増えていくと考えられます。実際にデータを見てみましょう。



これはアメリカの年齢犯罪曲線です。たしかに1938年→1961年→1983年と、時間が経つに連れて少年の犯罪率が上昇していることがわかります。つまり「青年期限定型」の非行は、社会が近代化することで生じる”ある種の副産物”であると捉えることができます。


私たち大人にできること

もちろん、社会が近代化したからといって、すべての子どもが「青年期限定型」の非行に走るわけではありません。では、近代国家でも非行に走らない子どもたちには、どういった要因があるのでしょうか。

まずは思春期が遅れることで、心身の成熟と社会システムの間にギャップが生じなくなる子どもが一定数いること。次に、尊敬できる大人が身近にいることや非行を学習するような大人の監視が十分に行き届かない環境(繁華街など)が少ないことが考えられます。そして、そもそも非行するようなグループの仲間になれないような性格、例えば神経質、引きこもり、気難しいといった子どもであること。これらのいずれかに当てはまると、非行に走らなくなるのではないかとモフィットは考えています。
これらの見解の中には環境的側面を強調したものがあり、それらに基づく非行の予防策としては、大人自身が子どもに対して見本となること、そして、学校や地域が子どもを排除せずに受け入れることなどが挙げられます。

まだまだ解明できていないこともありますが、犯罪の発生過程を知り、そうならないための社会的環境を整えたり、支援したりすることが国や政治、大人の役割なのかもしれません。

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