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始まるスポーツ産業大改革。ファンを魅了し稼げるビジネスへ

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Kindai Picks編集部

2017.02.06

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【三沢英生/ドーム取締役 兼 執行役員CFO×藤井純一/北海道日本ハムファイターズ 元代表取締役社長×山本貴司/水上競技部監督、アテネオリンピック銀メダリスト×小澤隆生/ヤフー執行役員】
近づく東京オリンピック・パラリンピック。一方で日本のスポーツ産業は世界の潮流から遅れをとっている。近大を代表するスポーツビジネスのプロたちが、これから日本が目指すべきスポーツのあり方について語った。

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●スピーカー
三沢英生/株式会社ドーム 取締役 兼 執行役員CFO
東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修了。1998年、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社し、モルガン・スタンレー証券株式会社、メリルリンチ日本証券株式会社を経て、2013年株式会社三沢総合研究所を設立。

藤井純一/株式会社北海道日本ハムファイターズ 元代表取締役社長、池坊短期大学 学長
1973年、近畿大学農学部を卒業し、日本ハムに入社。1997年『セレッソ大阪』取締役事業本部長に、2000年同社代表取締役社長に就任。2005年『北海道日本ハムファイターズ』常務執行役員事業本部長に、翌年代表取締役社長に就任。2011年より近畿大学経営学部経営学科特任教授。

山本貴司/近畿大学水上競技部 監督、アテネオリンピック水上競技 銀メダリスト
2001年、近畿大学商経学部を卒業。アトランタ・シドニー・アテネとオリンピック3大会連続出場し、アテネオリンピックでは200mバタフライ銀メダル、400mメドレーリレー銅メダルを獲得。2008年に現役を引退し、2013年近畿大学水上競技部監督に就任。

●モデレーター
小澤隆生/ヤフー株式会社 執行役員 ショッピングカンパニー長
1995年、早稲田大学法学部を卒業し、株式会社CSKに入社。1999年株式会社ビズシークを設立し、2003年吸収合併により楽天に入社。楽天イーグルスの立ち上げなどに携わった後、2006年に小澤総合研究所を設立。2013年より現職。

*肩書きはセッション開催当時のものです

<KINDAIサミット2016 第3部分科会E「近大発スポーツ産業が目指すもの~日本スポーツ収益性向上~」より>

●スポーツはめちゃくちゃ儲かる。

小澤:スポーツビジネスって本当に儲かるのでしょうか?。

三沢:アメリカですと、スポーツビジネスは3位グループの一角を成して、伸び率はトップクラスなんです。一方、日本はまだまだ小さい。安倍総理が閣議決定で掲げた大きな2本の柱が「観光」と「スポーツ」。20年遅れていますが、日本の政府もやっと気づいたのだと思います。



小澤:日本のスポーツ産業の規模は、どのくらいですか?

三沢:5兆円くらいですね。アメリカは60兆円で、すぐに100兆円はいくと言われています。20年前は、日本が5兆円に対してアメリカが15兆円で、ちょど人口比と同じくらいだったのに、一気に差をつけられてしまったんです。

小澤:それはなぜですか?

三沢:それまでアメリカで優秀な人はみんなITに行っていたのですが、「スポーツは儲かる」と気づいてそっちに人が流れた。その後、ヨーロッパ、中国、シンガポールなども同じようなことが起きていますが、どこも失敗していません。日本も同じことをすれば必ず成功しますよ。

小澤:藤井さんは北海道日本ハムファイターズの社長をされていましたが、以前とは変わってきたことなどありますでしょうか?

藤井:今年は集客数が200万人を突破して、北海道のみなさんにかなり愛されるチームになったかなと思います。



小澤:その秘訣は?

藤井:ファイターズの経営理念は「チャレンジングドリーム」。野球界の既成概念に縛らずに新しい挑戦をしよう!というのを掲げています。活動指針としては「ファンサービスファースト」で、とにかくスタジアムに一度足を運んでいただくために、ベタベタの営業活動をやってます。例えば、道内12箇所に選手が2人ずつ行って、200人のお客さん相手にサイン会をするんです。大谷もダルビッシュも中田翔も。

小澤:試合はいつも勝てるわけではないので、勝敗だけでファンを楽しませようとすると不満を持つようになる。ですから、球場に来た「体験」を売りにすることが大事ですね。ディズニーやUSJは、勝ち負けはありませんけど人は来ていますから。エンターテイメントはそういうものだと思います。

山本:あとはスーパープレーでファンを魅力して、試合会場に足を運んでみようと思わせるのも大事ですね。


●エンターテイメントを売る。

小澤:アスリートの育成という点で、山本さんが感じられている問題意識はありますか?

山本:トップアスリートを育てるための施設「ナショナルトレーニングセンター」は、日本では東京にしかありません。でも、他の国だといろんな都市にあるんですよ。そういう拠点というか環境をもっと変えないといけないなと思っています。



三沢:環境整備が必要なのはその通りだと思います。そのためにはやっぱりお金なんですよね。日本の場合はすべて税金でやっていますが、アメリカのオリンピック委員会は税金使ってないんですよ。自分たちでお金を稼いで組織を運営している。

小澤:例えばどんなことをしたら良さそうですか?

三沢:水泳なら、光や音楽で演出して「入江選手と誰々が戦う!」みたいなことをしたら、みんな興味持つと思うんですよ。女子レスリングも全然儲からないとよく言われていますが、吉田沙保里と伊調馨を戦わせたら絶対見たいでしょ。そういう楽しい話題が必要ですよね。

小澤:それは見たいですね。アメリカは進んでいると?

三沢:例えば、先日アメリカンフットボールリーグの優勝決定戦を見に行ってきたのですが、まずスマホでチケットが買えるわけです。日本じゃできません。

そして「あなたの座席の位置はここだからこの駐車場を使うといいですよ」というのがスマホの画面に出てくる。さらに家からスタジアムまでの道順が出てきて、スタジアムに入るとWi-Fiが繋がって、今日の試合のスタメンが出てきて、どこのホットドックが美味しいとか、どこのトイレが空いてるかとか、そういうのも全部見れるわけですよ。そういうレベルのカスタマイズサービスを徹底してやっているんです。

3時間の試合を見せるのではなく、3時間のエンターテイメントを見せるということです。そういうことを続けてきたから60兆円のビジネスになったんですよ。しかも、儲かったお金はスポーツ振興だけでなく、健康や教育にも回している。

小澤:日本は、良くも悪くもスポーツの競技性に異常に力が入っていますね。運営サイドもその競技の出身者の方だけで構成されているケースがすごく多い。

山本:水泳はだいぶ変わってきて、ライトや音響のようなエンターテイメント性は少し入ってはきてますけど、入江と誰かが勝負するとか、そういう要素はまだ全然ないですね。


●大学スポーツを改革する。

小澤:Jリーグについてはいかがでしょうか?

三沢:Jリーグが開幕した1993年と比べると、イングランドのプレミアリーグは10倍の規模に伸びています。Jリーグは、ほぼ横ばい。これはどう考えても努力不足ですよ。

小澤:そこにはどういった違いが?

三沢:日本やアメリカの場合、大学や高校でスポーツをして、それとは別のところにプロスポーツがあります。一方ヨーロッパは、学校でのスポーツはなくて、基本的にはクラブチームだけ。全然モデルが違います。「サッカーと言えばヨーロッパ」ということで、Jリーグはヨーロッパのやり方を取り入れてしまった。だから上手くいってないんです。

藤井:その通りだと思います。学校でサッカーをしている子もいれば、ユースチームでサッカーをしている子もいるので、教え方はそれぞれ違うし、取り合いになっちゃうし…。野球は「育成は学校に任せよう」となっているので上手く回っていますよね。

小澤:2016年に開幕したBリーグ(日本のプロバスケットボールリーグ)は、学校型を取り込んでいくかどうかが成功の鍵になるのかもしれませんね。



山本:それでもボールを使ったスポーツは、楽しみやすいと思います。水泳は、見て楽しめるのかと言われると、すごい難しいというのが正直ところだと思うんですよ。そういう意味では、水球はもっと盛り上げていける要素がある。ヨーロッパでも水球はすごく人気のあるプロのスポーツになっていたりしますので。

小澤:アメリカは学校でのスポーツも上手くいっているのですか?

三沢:はい。アメリカでは、大学のスポーツでもとてつもない収益が生み出されていて、そのお金はスタジアムやアリーナを作るために使われているのはもちろん、研究室や実験施設、教授の給与などにも還元されています。すると、いい学生やいい研究者が来ますし、いいスポーツができるようになるので、またお金を生むことになる。この循環ができているんです。日本もスポーツを軸に、グローバルスタンダードな大学を作っていかないとダメですね。

でも、日本人は「スポーツで本当に儲かるのか?」と懐疑的になっているので、最初の投資ができないんです。ですから我々が投資しますよ。社長には許可取ってませんけど(笑)

小澤:スポーツの産業を推進していくためには、とにかくまずは一回、信じて本気で組めということですね。

三沢:ちゃんとやれば世界トップ10の大学になれますから。絶対に。日本は基本的に天然資源がない国ですから、人材が資源です。人材が大学を通じて生まれてくるようになれば、日本はもう一度世界でトップの国になれます。大学改革こそ日本の改革です。それを、スポーツでやろうということです。

藤井:日本の大学のスポーツは、まずビジョンがないんですね。だから、今の三沢さんのお話みたいに「こうなりましょう」というビジョンを持つのが大事なんじゃないかなと思います。

三沢:競技でトップを目指すのはほんの一握りだと思いますが、大学卒業してからのことを考えるとかね。スポーツで挫折をたくさん経験するって、すごく大事だと思うんです。そういった経験で、人間的にものすごく成長しているはずなんです。


●アスリートも稼げる仕組みをつくる。

小澤:会場にいる方からの質問を受け付けます。

質問者:三沢さんの会社(株式会社ドーム)は関東学院大学と提携されていると思いますが、どのような取り組みをされているのでしょうか?

三沢:まだ始まったばかりですが、今はガバナンスと言って組織をどう取りまとめていくかの準備をしています。例えば財務にしても、部活で何千万というお金を使ってるにもかかわらず、その管理が曖昧だったりするわけです。

あとは、何かあった時にどうするかという話。特にラグビーやアメフトって大怪我することもあるんですよ。今までは何かあったら監督がクビになって終わり。それじゃあ原因解明や解決になりませんからね。

まずはそういうことをきちんとやった上で、スポーツでどうやって収益を出すのかプランニングしていきます。

質問者:スポーツ観戦の仕方と言いますか、どうやって試合を見たらいいのかを教えていただけますか?

藤井:まずは、勝ち負けを見るというのがありますよね。それから選手がどのくらい頑張ってるかを見るとか。

いかにスタジアムでいろんな人と友達になるかというのも大事です。日本ハムファイターズがなぜ成功したかと言いますと、スタジアムが社交場になったからというのも大きな要因なんです。

あとは、精神的な部分を見る。どうして選手はあれだけヒットを打てなくても次また頑張れるのかな、とか。心についても感じてもらえるんじゃないかなと思います。

三沢:スポーツは身体にも心にもいいんですよね。そして経済にもいい!

産業革命以降は、繊維、鉄鋼、自動車、ITが経済を引っ張ってきましたが、次は確実にスポーツが来ます。日本がこれからも先進国でいるためには、スポーツビジネスは絶対必要です。

そして最後に大事なことを一つ。

「アスリートファースト」という言葉がありますが、本当のアスリートファーストとは、アスリートもちゃんとお金をもらえるようにするということです。オリンピックで「感動をありがとう!」とか言うじゃないですか。でも、お金払えよって感じですよね。

これから日本がスポーツを盛り上げていくにあたって、お金をちゃんとアスリートに届ける仕組みも一緒に作るということを忘れないようにしたいですね。

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