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2016.07.08

川遊びにBBQ。出かける前にチェックしたい虫刺されのキホンと対策

Kindai Picks編集部

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農学部

今年5月アメリカ・アリゾナ州において、朝のハイキングを楽しんでいた23歳の男性がハチの大群に突然襲われ、搬送先の病院で死亡するという痛ましい事件がありました。
行楽シーズンですので、みなさんも屋外に出かける機会が増えるのではないかと思います。
そこで気になる野山でのハチや草むらなどでの虫刺されなどへの対策について、害虫の生態に詳しい近畿大学農学部の矢野教授に聞きました。

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監修者:
矢野 栄二(やの えいじ)
近畿大学農学部農業生産科学科昆虫生態制御学研究室教授
1976年名古屋大学大学院農学研究科修士課程修了
1976年農林水産省入省
1988年京都大学農学博士
野菜試験場研究員、農業環境技術研究所天敵生物研究室長、中央農業研究センター生物防除研究室長を経て2006年から現職。
害虫の生態学と防除、特に天敵を利用した害虫防除の研究が専門。
農業環境技術研究所に在職中の1987年、1995年、1997年にオランダ王国ワーニンゲン農科大学で客員研究員を経験。


一口に虫刺されと言っても、蚊のように人に近づいて吸血する場合と、スズメバチのように人が巣に近づいたため攻撃し毒針で刺す場合とがあります。吸血昆虫と毒のある虫について、それぞれお話しします。


こんな場所に潜んでる。日本の蚊の傾向と対策


人を吸血する昆虫としては、カ類、アブ類、ブユ類、ヌカカ類などが知られていますが、特にカ類による虫刺されが最も多いようです。

【カ類】
蚊はおおまかに、イエカ類、ヤブカ類、ハマダラカ類に分けられ、コガタアカイエカは日本脳炎ウイルス、ヤブカ類のヒトスジシマカはデング熱ウイルスおよびジカ熱ウイルス、シナハマダラカはマラリア原虫の媒介者になることが知られていますが、国内では通常はこれらの病原体を保持している個体はめったにいませんので恐れることはありません。日本脳炎発生地域では念のため予防接種をするようにしましょう。



蚊で吸血するのは雌成虫だけで、針状の口で吸血する際に注入する唾液状物質に対して人体がアレルギー反応を起こしてかゆみを感じ赤く腫れます。蚊の幼虫はいわゆるボウフラで、たまった水に発生します。尾端に呼吸管があり、体をさかさまにして水面に斜めに静止して呼吸管から空気を取り入れます。



上の表のように、種類により活動場所や時間が異なります。例えば、昼間屋外で刺される可能性が高いのは、ヤブカ類と思われます。

<対策>
幼虫は放置した缶やビン、墓地の花立のような小規模な水たまりで発生し、成虫は草むらで花の蜜、果実の汁などを吸っています。こうした場所では刺される可能性が高いので注意しましょう。
一般の人ができる対策としては近づかないのが一番ですが、ジエチルトルアミドのような忌避剤を含む虫除けスプレーを皮膚や衣服に散布しておくのがよいと思います。

カ類に対してはボウフラを捕食するボウフラ(オオカ類やカクイカ類の幼虫)やボウフラを捕食する魚(メダカの仲間でカダヤシと呼ばれます)をボウフラの発生する水域に放して利用する方法があります。その他ゲンゴロウやトンボの幼虫(ヤゴ)もボウフラを捕食します。
蚊は雌の羽音に雄が誘引されて交尾し、その時の雌の羽音は約350~600Hzです。この波長の音をスピーカーで発生させて雄を大量に誘引して殺せば雌の受精率を下げ、結果的に蚊を防除することができます。


侮るなかれ、ブユやアブのしつこいかゆみ




吸血性昆虫としてはブユ類やアブ類への対策も重要です。

【ブユ類】
ハネの大きな小型のハエのような外観ですが、昔から農作業をする人を悩ませてきました。顔面や手足の露出部分が刺されるため、昔農作業で使用していた手甲(てっこう)、脚(きゃ)絆(はん)は元来ブユ対策であったと言われています。成虫は早朝や夕方の薄暮時に活動します。

<症状>
雌成虫は口で人の皮膚を切って吸血させますが、痛みはそれほど強くありません。しばらくして激しいかゆみがおこり、赤くはれた患部の中心に出血が見つかります。かゆみは1~2週間続きます。かきむしると細菌感染を引き起こすこともあるので注意しましょう。



【アブ類】
アブ類も吸血性の種が多く知られています。アブも外観はハエと似ていますが、やや大型でハネや複眼の模様が目立つ種が多いのが特徴です。アブはまた家畜からも吸血するのでどちらかというと牧場や山地などで問題となります。
吸血する時期は種により異なり、日中に活動する種も夕方や明け方中心に活動する種もあります。

<症状>
アブも雌成虫のみ産卵のため吸血します。アブに刺されると激痛をともなうのが特徴で、刺した跡に出血が見られます。やがて赤くはれて、激しいかゆみがおこり2~3週間続くことがあります。

<対策>
ブユ類もアブ類もカ類と同じく虫除けスプレーが効果的です。
これらの吸血性昆虫に刺されたとき、症状が改善しなければかゆみ止めとして抗ヒスタミン軟膏、炎症止めとしてステロイド軟膏を利用します。症状が重いときは内服薬もあります。



いざという時慌てない、ハチに出会った際の対処法


積極的に攻撃することは少ないですが、人があやまって巣に接近したり、触れてしまったりした時、防御のため攻撃し毒を注入する昆虫も色々な種類が知られています。代表的なものはアシナガバチ、スズメバチなどのハチ類、アリ類、ゴミムシ、ハンミョウなどの甲虫類、有毒のケムシ類などです。



【ハチ類】
ハチ類の中で毒針を持ち人を刺すのは、アシナガバチ、スズメバチ、ミツバチ、マルハナバチの仲間だけです。特にアシナガバチとスズメバチは屋外に巣を作り、しばしば人を刺して問題となります。アシナガバチ類は木の枝、人家の軒先、岩陰などに巣を作ります。草刈や樹木の剪定、通行などで巣を刺激すると働きバチに刺されることがあります。
スズメバチ類はもっとも大型で攻撃性も強く恐れられています。人が巣に近づくだけで、巣を離れて人の周辺を飛び回り警戒行動を示し、カチカチという威嚇音を発する威嚇行動をすることもあります。さらに巣を刺激すると攻撃し毒針を刺します。また一度刺激すると攻撃性が強まります。

<症状>
刺されると激しい痛みと腫れをともないますが普通は数日で回復します。これらのハチ類の毒にアレルギー体質の人は注意が必要で、同じ種のハチに何度も刺されるとアレルギー症状が発生し、特にアナフィラキシーショックが起こると死亡する人も出ています。

<対策>
巣は土中、樹枝や人家の軒先、天井裏にまでおよびます。人家内に巣を作った場合は専門業者に取り除いてもらう必要があります。
刺されないためには、巣に近づかないこと、巣を刺激しないこと、ハチが近くに寄ってきても手で払ったりして刺激しないことが大事です。万が一刺された場合、通常の治療方法は吸血昆虫と同様に、抗ヒスタミン軟膏やステロイド軟こうなどを使用しましょう。

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