2022.03.22
4月から18歳で成人に!高校生でカードやローン契約できるの!?当事者の認識は……?
- Kindai Picks編集部
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2022年4月1日から、民法改正によって「成年年齢」が18歳になります。成年年齢の引き下げによって、クレジットカードやローンの契約など、18歳からできることが増えます。一方で、これまで通り20歳からできるようになることも。当事者である高校生・大学生は「18歳の成人」について、どこまで知っているのか、クイズとインタビューをしてみました。さらに、民法の専門家である近大・松久先生に、年齢引き下げの背景や、トラブル対策も伺ってきました!
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もうすぐ春がやってきますね!
2022年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられることを、みなさん知っていましたか?
私は今回の取材依頼を受けて、初めて知りました! すみません!
10年以上前に成人式を終えた私は、この先もずっと「成人=ハタチ」だと思っていたので、正直なかなかピンときていません。
成人したら、法律的にできることが一気に増えるイメージ。でも、今回の改正では「18歳からできること」と「20歳からできること」に線引きがあるようです。
18歳になったらできること | 20歳にならないとできないこと |
---|---|
親の同意がなくてもできる ・携帯電話の契約 ・ローンを組む ・クレジットカードをつくる ・1人暮らしの部屋を借りる 10年有効のパスポートを取得する 国家資格(公認会計士、司法書士、医師免許、薬剤師免許など)を取得する 結婚(男女とも) | 飲酒をする 喫煙をする 公営ギャンブル(競馬、競輪など) 養子を迎える 大型・中型自動車運転免許の取得 |
ローンは18歳から契約できるけど、飲酒・喫煙は変わらず20歳から。成年年齢は引き下がったけど、女性が婚姻できる年齢は16歳から引き上げられて、10年有効のパスポートは18歳から取得できるけど大型・中型の自動車運転免許は20歳から……って、なんだか結構複雑!!
新成人を迎える学生たちは、全部把握できているのでしょうか!?
高校生と大学生の4人にクイズとインタビューをしました。
あらゆる契約が自分でできる!? 高校生が「成人」になることについて18歳に聞いてみた
まずは近畿大学附属高校に通う18歳の2人に集まってもらいました。
左…大橋 日翔さん、右…池田 陽菜さん(ともに近畿大学附属高校3年生)

今日はよろしくお願いします!

よろしくお願いします!

ちょっと緊張しています。


2人にとって、成人ってどんなイメージですか?

お酒が飲めて、タバコも吸えて「パリピ」なイメージでした(笑)。でも、18歳成人になっても、どちらもダメですよね。

最初に18歳成人の話を知った時は、「お酒やタバコもOKになるのかも」って思いました?


一瞬思いました(笑)

「ちゃうんかい!」ってなった。

2人ともすでにいろいろ知っているみたいですね。 この記事の依頼がきて初めて知った私とは大違いだ……! では、シチュエーション別のクイズに答えてくださいね。早速、1問目です!


◯か×でお答えください!


2人とも○ですね。正解! じゃあこれはどうかな?


◯です。TikTokで活躍している高校生社長を見たことがあります。

正解! これまでも高校生の起業はできたけど、今後は18歳になったらオフィスの賃貸契約や融資の契約も自分でできるので「起業しやすくなる」と言えるみたい。すごいよね。



回答は2人とも×ということで、正解です。もうわかってますね……! 責任が全部自分にかかってくると思うと、不安ですか?

成人とはいえ18歳ってまだまだ未熟なので、ちゃんと先のことを考えて行動しないといけないな、と思います。

不安ですね。よくネットサービスとかの利用規約を、バーっとスクロールして「同意する」って押してたけど、これもちゃんと読もうと思いました。

確かに! 身が引き締まる感じ?

今日のクイズでも、「しっかりしないと」と思うところがいくつかありました。


これまで法律上の「成人」について話してきたけど、2人は「大人」にはどういうイメージがありますか?

自分勝手なイメージ。社会的に立場の弱い子どもを守ってくれているのはわかるんですが、大人が子どもの行動を制限してくるのは勝手だなって思います。


自分のやりたいことができなくなるイメージ。僕はずっと続けている習い事があるんですけど、周りには就職や結婚を理由にやめていく人がいて……。働きながら好きなことをやるのは、難しいのかなぁって。

現実的なイメージがあるんですね。2人とも率直な気持ちを聞かせてくださり、ありがとうございました!
大人の「責任」って!? 19歳の近大生に聞いてみた
お次は、近畿大学に通う19歳の2人に、答えてもらいました。
左…成重 楓真さん(経済学部1年生)、右…長江 葵子さん(総合社会学部1年生)

成年年齢が18歳に引き下げられることは、いつ知りましたか?

ニュースで報道され始めた時です。「ちょうど自分が20歳になる年に、18歳・19歳・20歳の新成人が出るんじゃないか?」って思いました。

私も同じですね。「20歳になる前に成人する代なんだな」って友達と話してました。できることが増えるのは知ってるけど、自分の生活にはあまり影響がなさそうなので、特別な思いはないですね。

では、一番身近な問題から!



正解です。知ってました?

もちろん! 自然と耳に入ってきました。

私は気になって調べました。18歳から飲酒OKになったらトラブルが増えるんじゃないかと思って。

えらい! 飲み会ではこれまでと変わらず、ちゃんと線引きをしましょうね。



女性は16歳から結婚できるのでは?

確か、どちらも18歳からになるはず。

はい、答えは×です。これまで女性は16歳、男性は18歳から結婚できましたが、今後は男女とも18歳に統一されます。

18歳に揃ってよかったと思います。女性だけが16歳だと、家父長制度が残っているというか、周りによって強引に結婚させられるイメージがあったので。

16歳は若いなぁと思っていたので、18歳は妥当だと思います。

次は、こんな問題です。



2人とも×ですね。正解です。18歳は成人として賃貸契約やローンの契約、携帯電話の契約など、あらゆる契約ができるし、一度契約したら年齢を理由とした取り消しはできなくなります。例えば「勢いで組んでしまったカードローンを解約したい」、「脱毛サロンの初回無料モニターに参加して『今日年間契約したら50%OFFですよ』と言われて契約したけど、あとから解約したい」という場合も。どう思いましたか?

私はまだ自分で契約をする機会がないので、あまり実感がないです。でも、家庭環境が理由で早く親元から自立したい人にとってはよい面もあると思います。

実家だと親に相談していたけど、いまは地元を離れて一人暮らし。自分でお金を回していかないといけないので、間違った判断をしたり、詐欺に引っかからないように気をつけたいです。

不安に思うかもしれませんが、もしもトラブルに巻き込まれた時は、まずは身近な大人に相談してください。年齢を問わず、特定商取引法や消費者契約法などによりクーリング・オフや契約の取消しができる場合もあります。また、消費者ホットライン188も活用してくださいね。


いろいろ知った上で、成年年齢の引き下げによる変化はありますか?

あると思います。例えば、悪徳商法に引っかかっても「立派な大人でしょ」と言われて、知らなかったじゃすまされなくなるのは怖い。だからちゃんと意識しようっていう、気持ちの変化があります。


18歳から責任が発生することを知らないまま成人してしまったら、トラブルに巻き込まれそう。だから、もっと敏感になっていこうと思いました。

じゃあ、いろんなことを踏まえて、成年年齢の引き下げはよかったと思いますか?

正直、早いなって思ってしまう(笑)。要するに「責任持てよ」ってことじゃないですか。それなら、起こりうるトラブルを高校などでしっかり教えてほしいです。

個人的には妥当だと思います。18歳は、善悪の判断ができる年齢だと思うので。ただ、正しい判断ができるようになるには、成重くんの言うように社会の仕組みを整えていくことも必要ですよね。


2人はもう十分立派な大人だと思いましたよ! ありがとうございました!
なぜ18歳から成人に? 引き下げの背景や想定されるトラブルについて法律に詳しい先生に聞いてみた

4人の学生と話してみると、みんなしっかり18歳成人について把握しているし、きちんと責任意識を持っていることがわかりました。めちゃくちゃちゃんとしてる!
とはいえ、漠然とした不安はあるみたい。
そこで、もっと詳しく知るために、法学部の松久和彦先生にお話を伺いました!
そもそも、どうして成年年齢の引き下げに至ったのか、法改正の背景について、そして起こりうるトラブルやその対処法についても教えてもらいたいと思います!

近畿大学 法学部 法律学科 教授。
民法の中でも、家族に関する法制度(家族法)を研究しています。特に、夫婦の財産関係について、ヨーロッパの法制度を参考に検討しています。また、子どもをめぐる争いにも関心があります。著書に『ユーリカ民法5 親族・相続』(共著)など。

最初に伺いたいのですが、なぜ成年年齢が18歳に引き下がったのでしょうか?

憲法改正の国民投票法で投票年齢を18歳以上としたことから、成年年齢も18歳に統一した方がよいのではということになりました。公職選挙法の選挙権が18歳以上となり、さらに、婚姻適齢の男女差をなくす議論も影響して、成年年齢・婚姻適齢ともに18歳となりました。法律的には、それぞれ目的が違うものなので、勢い、というと語弊がありますが、一気に進んだ印象があります。

勢いで!? 「18歳」という年齢はどこからきたんですか?

多くの国々で成年年齢が18歳だからという理由もありますが、国民投票法の影響が大きいと思います。


18歳からできるようになること(婚姻年齢など)と、20歳からできること(飲酒・喫煙・公営ギャンブルなど)の線引きはなんですか?

飲酒・喫煙は、健康面の影響や非行防止を考えて20歳からと言われています。公営ギャンブルは青少年保護やギャンブル依存症を懸念して、20歳のままとなっています。それぞれ法律の目的があるので、民法の成年年齢が18歳になったからといって、必ずしもそれに合わせる必要はないですからね。


契約関係は18歳からできるようになりますよね。想定されるトラブルについて教えてください。

ネット通販や自己啓発セミナーの高額な授業料などのトラブルが考えられますし、訪問販売などで、「大人なんだから」「いつまでも親に頼るのか」と口車に乗せられて、ついハンコを押してしまうようなシーンが想像できますね。大学進学で、ふるさとを離れて一人暮らしを始める人も多い。さらにコロナ禍で、人と接する機会が一層少なくなっている。友人から誘われたりして、無意識に人との会話を望んでしまって、いつもなら断るような話もついつい聞いてしまったということもありそうです。

「自分は騙されないだろう」と思っている人でも引っ張られることがありそうですね。やはり成年年齢の引き下げでそのようなトラブルが増えそうですか?


国民生活センターの調べでは、消費者トラブルの相談件数は、20歳で急増しています。契約の知識や社会経験の少ない新成人が危ないことがわかります。成年年齢が引き下げられることで、18・19歳がトラブルに巻き込まれ、相談件数が増えることが予想されます。

18歳以上が年齢を理由に契約を取り消すことは、絶対にできない?


絶対にできないです(断言)。

怖い……!

これまで未成年者とされていた18歳・19歳が、契約に関する十分な知識がないまま成人として扱われるようになる。たった2歳の引き下げと思われるかもしれませんが、法的な後ろ盾がなくなる意味は大きいです。

学校や家庭など、新成人のより身近なところでの取り組みは進んでいるのでしょうか? もしかしたら情報を取りこぼしている子もいるかもしれません。


2012年に「消費者教育推進法(消費者教育の推進に関する法律)」が成立するなど、教育の面から消費者被害の拡大を防ぐ取り組みが始まっています。また、主に若年者に多く発生する事例を念頭に置き改正された「消費者契約法」が、2019年より施行されています。とはいえ、対応策や制度の整備は、まだまだのようです。

保護者や先生、大学の先輩など、周りの大人ができることは?

新成人が困った時に、相談できる場所を用意しておくことです。

先生が、学生から実際にそういう相談を受けることはありますか?

あります。しかし、「もっと早く相談してほしかった」ということがほとんどです。とにかく契約時には注意して、怪しいと思ったらきちんと断り、困ったら早めに頼れる大人に相談してほしいです。


契約やローンのことを聞くと不安が大きいですが、一方で成年年齢の引き下げによって「家族からの自立の手助けにもなる」という意見もあります。今後、家族の仕組みや枠組みに変化はあるでしょうか?

そうですね。未成年者を保護することは、同時に未成年者の自己決定の制約にもつながります。自立を促すという点では、すぐ変わることはないかもしれないですが、保護者として責任を持っている大人が伝えないといけないことは増えてくると思います。

ちょっとずつ変化はあるかもしれませんね。

大学などの教育機関に求められていくこともあります。それは、「消費者」として求められる責任や「消費者」に認められる権利、その適切な行使方法を理解した上で、正しい情報を読み解く力を学生に伝えることです。また、保護者にもこれらを伝え、大人側の意識を変えることも大切だと思います。

権利と責任が増えるのに、説明が追いついていない部分があるんですね。


「18歳になったんだからもう大人」と言うのは簡単です。しかし、自立を強いるような、新成人だけに責任を負わせるようなことになってはいけません。「なんかおかしいかも」「これでいいのかな?」と思った時に、遠慮なく身近な大人を頼ってほしいと思います。そして、大人の側も、18歳の新成人が安心できる社会にするためにどうすればいいか、考えるきっかけになればと思います。

成人になる側も、大人側も責任を持って変わっていく必要があるとわかりました。ありがとうございました!
最後に
契約のトラブルなど不安を感じる話も多かったですが、そもそも法律は自分の身を守るためのもの。自分に関わる法律をしっかり把握して、わからないことは周りに相談したり、情報を集めることが大切だということがわかりました。そして、私も「自分は新成人じゃないし、知らなかった!」で終わらせるのではなく、大人側として身近な人が困った時に手助けできるように知識をつけようと思いました!
「18歳成人」の当事者である高校生や大学生の周りでの取り組みとしては、近畿大学附属高校では、3年生の公民分野の授業で18歳成人の内容について触れ、注意喚起を行う予定とのこと。近畿大学では、20歳未満の飲酒や喫煙は引き続き禁止されているとわかる冊子などを新入生向けに配布する予定だそうです。
せっかく18歳からできることが増えるのですから、しっかり情報をキャッチして安心して「大人」を楽しめるようになるといいですね!
この記事を書いた人

狸山みほたん
地下アイドル兼ライター。趣味は漫画を読むことと潰れるまで飲むこと。難ありアイドル『オタフクガールズ』のリーダーとしても活動中。豚に尻をかじられたり、自身のユニットの収支を公開したり、ちょっぴり体当たり系の記事が多い。将来の夢は人気者。
撮影:大越はじめ
企画・編集:人間編集部
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