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商店街に年間200万人の観光客。マンガ・アニメが地方を救う。

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Kindai Picks編集部

2017.06.12

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オリジナル記事
研究
マンガ

近年、マンガやアニメをテーマにした地方活性化が盛んに行われている。その中でも特に有名なのが『水木しげるロード』だ。そのまちづくりの企画概要、そして得られた経済効果は?

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●プロフィール
西野昌克(ニシノマサカツ)
近畿大学 文芸学部 文化デザイン学科 教授
専門はアートプロデュース。現代美術の評論及び昨今のソーシャル型アート(ビエンナーレやトリエンナーレといった町興しアートイベント)を研究。有馬温泉路地裏アートプロジェクトを企画運営。


●こんなにもあった!全国のマンガミュージアム

近年、マンガ・アニメによる町興しが盛んに行われています。例えばマンガミュージアム。独自の集客力があるということで、今ではこんなにもたくさんのマンガミュージアムが設立されています。 


他にも東京アニメセンター、青山剛昌ふるさと館など、全国に22か所のマンガミュージアムが設立されています。

今回は、鳥取県境港市が『ゲゲゲの鬼太郎』で町興しをしている事例をご紹介したいと思います。
私は5年前に見に行きましたが、その時点で『水木しげる記念館』や『水木しげるロード』が作られてから累計2,000万人(2012年)が観光で訪れているとのことでした。

水木しげるさんについてはご存知の方が多いと思いますが、この鳥取県境港市出身で、太平洋戦争中に戦地で爆撃を受け、左腕を失っています。驚くことに右腕一本でマンガを書き続けてきたわけですね。
『ゲゲゲの鬼太郎以外』にも『河童の三平』『悪魔くん』といった代表作を残し、1991年紫綬褒章、2003年旭日小綬章、2010年には文化功労者表彰を受賞されています。そして2015年、93歳で亡くなられました。

境港市の町興しについて欠かせない人物がもう一人。桝田知身(ますだともみ)さんです。この方が『水木しげるロード』の仕掛人で前水木しげる記念館館長、現在は、境港市観光協会会長、境港市観光協会会長、財団法人鳥取県観光事業団理事です。


●官民一体となって行った『ゲゲゲの鬼太郎』による町興し。

境港市というのは、人口が最も少ない鳥取県の中でもさらに一番小さな市。人口はわずか3万7,000人程度(近畿大学の学生数は約3万1,000人)です。しかし、昔から妖怪伝説の聖地で、水木しげるさんの出身地でもあります。
そこで、駅前の商店街は潰れる一歩手前というところで桝田さんが市に働きかけて『水木しげる記念館』を作り、商店街の両脇にキャラクターのブロンズ像を設置して『水木しげるロード』にしました。

『水木しげるロード』はおよそ800m続く駅前の商店街にあり、両側には153体ものキャラクターのブロンズ像が設置されています。



これを1体作るのに必要な費用は100万円。86体目までは市が設置していたのですが、その後は寄付金によって作られました。各ブロンズ像には、寄付をされた方の名前が刻印されています。

この『水木しげるロード』と『水木しげる記念館』は特に有名ですが、境港市の取り組み内容はそれだけではありません。

【鳥取県境港市の町興し事業】
1993年/2万人 「鬼太郎列車」運行開始。
1997年/38万人「第一回世界妖怪会議」開催。
1998年/46万人「水木しげるロード振興会」発足。
2000年/61万人「妖怪神社」建立。
2001年/60万人「妖怪倉庫」お目見え。
2002年/62万人「第一回境港妖怪ジャズフェスティバル」開催。
2003年/85万人「水木しげる記念館」開館。この年、ブロンズ像が86体となり、市はハード事業打ち切りを宣言。

その他、「鬼太郎フェリー(2006年)」「妖怪そっくりコンテスト(2006年)」「妖怪川柳コンテスト(2006年)」「境港妖怪検定(2006年)」「妖怪人気投票(2007年)」「妖怪街灯(42基/2007年)」など。



電車や飛行機、船にももちろん『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターが描かれています。
町全体で『ゲゲゲの鬼太郎』を活かした取り組みをしていることがわかります。




●あえてホテルは作らない?

では、この町興しによってどれくらいの経済効果が得られたのでしょうか。
市が発表しているデータを見ますと、観光消費額だけで72億円、経済波及効果は88億円となっています。境港市に来た観光客は当然温泉にも立ち寄りますし、出雲大社を参拝する方も多いでしょう。そういった周辺の観光エリアの活性化にも繋がっているということです。
実は境港市にはホテルや旅館がほとんどありません。年間200万人もの観光客が訪れるにもかかわらず、です。これは、観光客を境港市だけで抱え込んでしまうのではなく、周辺エリアの温泉旅館に泊まって欲しいという意図があるのではないかと私は考えています。

今回は水木しげるさんの『ゲゲゲの鬼太郎』に関する境港市についてご紹介しましたが、こういった事例は世界中で見られます。
マンガ・アニメと言えば日本というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、実はフランスのアングレームという町では毎年『アングレーム国際漫画祭』が開催されており、世界中から毎年20万人ものお客さんが集まっています。『カンヌ国際映画祭』のようにマンガの祭典となっていますので、「マンガにおけるカンヌ」とも呼ばれています。

また、お隣の韓国でも、ソウル郊外の富川(プチョン)市に『韓国漫画博物館』があり、毎年『富川国際漫画フェスティバル』が開催されています。ここでは特区を作ってマンガ家や出版社を誘致してきました。
さらに富川はテレビや映画など映像文化産業の拠点でもあり、『富川国際ファンタスティック映画祭』も開催されています。

このように、マンガやアニメといったソフトコンテンツを使ってどのように地方創生を行うかが重要なテーマになっています。作品そのものだけでなく、それを活かした都市プロデュースにもぜひ目を向けてみてください。日本の地方を救うのは、もしかしたらマンガ・アニメなのかもしれません。

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