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元気に暮らせる住まいの選び方【秋・冬版】

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Kindai Picks編集部

2016.11.11

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オリジナル記事
住宅
断熱
健康
ヘルスケア

私たちが元気に暮らせる住居作りが国家事業として推進されています。このスマートウェルネス住宅について詳しい建築学部の岩前篤教授(建築環境工学)に、その背景と展望を聞いてみました。

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【PROFILE】
岩前 篤(いわまえ あつし)
近畿大学建築学部教授・工学博士
1961年和歌山生まれ。豊かな自然の中に囲まれて育ち、桐蔭高校卒業後、神戸大学工学部環境計画学科に入学。86年春、大学院を修了し、住宅会社の研究所に勤務する。学生時代から一貫して、住宅の省エネ、結露防止に取り組む中で、住宅と暮らしのありように関心を持つようになる。2003年近畿大学に奉職し、健康で耐久性に優れ、燃費も良いといった、より良い住まいについての研究を行っている。国土交通省、経済産業省等の技術委員を歴任、近年は大阪府・大阪市・神戸市などの地域行政への支援も多く行っている。近著「あたらしい家づくりの教科書」(新建新聞社)は発行直後、アマゾンの住宅部門でベストセラーとなった。


進む住宅の高性能化

20世紀の終わり頃、我が国の住宅づくりの最大の問題は、その平均使用期間が30年足らずと、欧州の80~100年と比べ、極端に短いこと。住宅を作るための資源の浪費と、壊した建物の廃材処理による環境への悪影響が問題となってきました。

この建設から解体までのサイクルが短いことは経済の発展には寄与したのですが、いつまでもこのようなサイクルに依存できません。こういったことから、住宅の使用年数を長くすることへの試みが90年代から始められました。

地震に対する不安を払しょくするために、柱を太くする耐震性能の向上、生活スタイルの変化に対応する間取りや内装デザインの可変性などと共に、冬暖かく、夏涼しく暮らせる住宅への希求が高いこともわかってきました。ちょうど、地球環境問題が深刻化していましたので、両方を解決する「断熱性」が重要になってきたのです。



80年代に始まった我が国の住宅の断熱化は、現時点でも欧米社会に比べると遅れてはいるのですが、そのレベルは年々、上がってきています。90年頃30mm程度であった壁の中の断熱材の厚みは、現在では100mm程度になっています。


断熱化の健康への影響

こういった断熱化住宅の中でも特に断熱性の高い断熱性をうたう住宅で住みはじめた人の中で、体調がよくなった、風邪をひきにくくなった、あるいは血圧が下がった、など、健康に良い影響が表れる人が現れました。

6年ほど前、私を含め、住宅と居住者健康性の関係に興味を持つ研究者で調査を行いました。調査は数度に渡りましたが、基本的には引っ越しによって新築の戸建て住宅に住み始めた人を対象としたアンケート調査である点は共通しています。



自覚症状の有無を聞くという、主観的なアンケートであるため、医学的な見地ではありませんが、2万人を超える回答の集計によって、転居後の住宅の断熱性が高いほど、アトピー性皮膚炎、結膜炎、喘息などの日常諸症状が出なくなった人が増えることが示されました。


兼好法師と日本の住宅事情

このころ、欧米各国では実生活における健康阻害要因の解明に関する社会的調査が進められており、イギリスやニュージーランドで高断熱化による健康改善が続々と報告されていました。私たちの結果は、日本においては初の試みのものでしたが、欧米では、建築屋内の温度が低いことで疾病が増えることは極めて当然のことと認知され始めていたのです。

日本では、夏の暑さが大変、ということで、「すまいはなつをむねとすべし」(兼好法師、徒然草第55段)といった言葉が金科玉条のごとく用いられ、その思想で住宅が建てられ続けていますが、どうやら我が国の健康性の実情には合っていないようです。


スマートウェルネス住宅



健康への影響という意味では、断熱性だけではありません。私たちの日々の健康を支えるに重要な睡眠について、うるささ(しずかさ)、暗さ(朝の明るさ)、乾湿感も大きな影響を持っていることが分かっています。こういった様々な屋内環境を実現するのが、スマートウェルネス住宅です。国交省の命名により、3年前からその検証プロジェクトが始められています。

今年の冬は相当寒いとの長期予報が出ています。わが国では、病気や事故によって亡くなる人は冬季に急増します。交通事故で亡くなる人より、家庭内の事故で亡くなる人の方が3倍以上、多くなっています。

安全で安心な住宅とは、地震や台風などの自然災害に強いだけではありません。冬の低温に備えた住宅がとても大切であることを知っていただきたいです。


少しの工夫で冷えを予防



断熱化は工事を伴うので、なかなか手を出せないという人も多く、日常生活で対応できることを訊かれることが少なくありません。なかなか難しいのですが、少しでも寒さを和らげる、という点では、隙間風を塞ぐこと、カーテンを厚手の生地に変えること、適切な厚着をして体を冷やし切らないこと、などがあげられます。

あるいは、エアコンのタイマー設定を上手に使い、起床時にはある程度、部屋が温まっていることも重要です。脱衣所に電気ヒーターを置かれている家庭も多いと思いますが、これもおすすめです。断熱化工事の中には、お手軽なものもあります。ぜひ、専門家にご相談ください。

(※写真はイメージです。本文とは直接関係しておりません。)

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